児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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数回の児童ポルノ提供行為について最高裁調査官が「併合罪だ」と言うてるのに、「包括一罪」にしてしまって、破棄される地裁判決

数回の児童ポルノ提供行為について最高裁調査官が「併合罪だ」と言うてるのに、「包括一罪」にしてしまって、破棄される地裁判決
 1審H28、控訴審H29で、最高裁が検討中です。平成のうちに出るのかな。
 
 「下級審でも判断が分かれていた(包括一罪とするのは福岡高那覇支判平一七・三・一公刊物不登載、併合罪とするのは東京高判平一五・六・四高検速報平一五・八三、刑集六○・五・四四六、大阪高判平二○・四・一七刑集六二・一○・二八四五)」の弁護人はいずれも奥村で、CGの事件の控訴審では併合罪説になったので、福岡高那覇支判平一七・三・一公刊物不登載の判例違反が主張されています。

判年月日  平成28年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  有罪(懲役1年及び罰金300万円、執行猶予3年(求刑 懲役2年及び罰金100万円))  上訴等  控訴<破棄自判>  文献番号  2016WLJPCA03156003
 第2  ○○2という名称のコンピュータグラフィックス集をインターネット通信販売サイトを運営する株式会社aに販売を委託して提供しようと企て,平成21年12月14日頃,前記被告人方において,インターネットに接続された被告人のパーソナルコンピュータから,前記株式会社aのデータ保管先であるb株式会社が管理する東京都新宿区〈以下省略〉に設置されたサーバコンピュータに前記「○○2_prt.pdf」と同一のファイルを送信して記憶,蔵置させるとともに,前記株式会社aにその販売を委託し,次表のとおり,平成24年4月20日から平成25年3月27日までの間,3回にわたり,同サイトを閲覧した不特定の者であるA1ほか2名に対し,前記コンピュータグラフィックス集を代金合計4410円で販売し,同人らに,インターネットに接続された同人らが使用するパーソナルコンピュータのハードディスク内に「○○2 第二版」というフォルダに含まれる前記「○○2_prt.pdf」と同一のファイル中の画像データ3点(同ファイル中の番号2,15,27として表示される画像。)をダウンロードさせ,もって不特定又は多数の者に児童ポルノを提供したものである。
(法令の適用)
 罰条
 判示第2の所為 包括して同法7条4項後段,2条3項3号
 刑種の選択
 判示第1及び第2の各罪 いずれも懲役刑及び罰金刑を選択
 併合罪の加重
 懲役刑につき 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重)

D1-Law.com判例体系
■28250582
東京高等裁判所
平成28年(う)第872号
平成29年01月24日
上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について、平成28年3月15日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官和久本圭介並びに弁護人山口貴士(主任)、同壇俊光、同奥村徹、同野田隼人、同北周士、同北村岳士、同歌門彩及び同吉峯耕平(いずれも私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人を罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
原審における訴訟費用のうち、2分の1を被告人の負担とする。
本件公訴事実第2(平成25年9月3日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの)のうち、児童ポルノである画像データを含むコンピュータグラフィックス集「聖少女伝説」を提供したとする点について、被告人は無罪。

(3)本件3画像の提供罪を一罪とした点
  (ア) 所論は、〈1〉被告人が「聖少女伝説」をアップロードした時期と、「聖少女伝説2」をアップロードした時期とでは、1年2か月が経過しており、含まれる画像も素材画像の写真の被写体も全く異なっている上、〈2〉3名の購入者のダウンロードの時期も1年ほど離れているのであるから、児童ポルノ提供罪については、「聖少女伝説」及び「聖少女伝説2」の各CG集ごと、及び、各購入者ごとに、それぞれ児童ポルノ提供罪が成立し、それらは全て併合罪の関係になるはずである、しかるに、原判決はこれを一罪と評価した上、〈1〉原判決が全てのCGについて児童ポルノに該当すると認めなかった「聖少女伝説」の提供については、無罪を言い渡すべきであるのに、これを言い渡さなかった点で、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、〈2〉購入者を追加する内容の訴因変更は、併合罪の関係にある以上、許可すべきでないのに、これを許可した原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるという。
  (イ) まず、1名に対する児童ポルノの提供を3名に対する提供へと変更する訴因変更を許可した点について検討すると、そもそも、本件における児童ポルノ提供罪は、その構成要件上、不特定又は多数の者に提供することが予定されているから、購入者の追加は、公訴事実の同一性の範囲内であることが明らかであって、この点について訴因変更を許可した原審の訴訟手続に何ら法令違反はない。
  (ウ) 次に、提供罪の罪数について検討すると、記録によれば、被告人は、平成20年8月頃、CG集である「聖少女伝説」を完成させたこと、被告人は、Eに、同CG集の販売を委託し、そのデータを同社に送信して、同月28日以降、同CG集がインターネット上で販売されたこと、被告人は、「聖少女伝説」をアップロードした後、これを見たインターネットサイトの利用者から、他のモデルの画像のリクエストが多数寄せられたことなどから、その要望に応じて、平成21年11月頃、「聖少女伝説」と同様のCG集である「聖少女伝説2」を完成させたこと、被告人は、同CG集についても、「聖少女伝説」と同様に、Eに販売を委託したこと、同月27日以降、「聖少女伝説2」がインターネット上で販売されたことが認められる。
  これによれば、被告人は、「聖少女伝説」をアップロードした後、新たに犯意を生じて、上記アップロードの約1年3か月後に、「聖少女伝説2」をアップロードしたといえるから、前者の提供行為と後者の提供行為とは、別個の犯意に基づく、社会通念上別個の行為とみるべきであって、併合罪の関係に立つとみるのが相当である。そうすると、両者の関係が一罪に当たるとの前提に立ち、前者の提供行為について、児童ポルノに該当するものがなく、その提供に当たらないとしながら、主文で無罪を言い渡さなかった原判決には、法令の適用に誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
  論旨は理由がある。
  よって、量刑不当の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
 4 結論
  そこで、刑訴法397条1項、380条により原判決を破棄し、同法400条ただし書に従い、被告事件について更に判決する。
  原判決が認定した事実に法令を適用すると、被告人の判示第1の行為は、平成26年法律第79号附則2条により同法による改正前の児童ポルノ法7条5項、同条4項、2条3項3号に、判示第2の行為は、同法7条4項後段、2条3項3号に該当する。そこで、量刑について検討すると、起訴された34点の本件CGのうち、「聖少女伝説」に含まれる18点全てと「聖少女伝説2」に含まれる13点については児童ポルノに該当せず、本件3画像のみがこれに該当すると認められるにとどまること、本件3画像の素材画像となる写真が撮影されたのは、前記のとおり、昭和57年ないし昭和59年頃であり、本件3画像は、その当時児童であった女性の裸体を、その約25年ないし27年後にCGにより児童ポルノとして製造されたものであって、本件各行為による児童の具体的な権利侵害は想定されず、本件は、専ら児童を性欲の対象とする風潮を助長し、将来にわたり児童の性的搾取及び性的虐待につながるという点において、違法と評価されるにとどまることなどを考慮すると、違法性の高い悪質な行為とみることはできず、体刑を選択すべき事案には当たらないというべきである。そこで、各所定刑中、いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法48条2項により、判示第1及び第2の各罪の罰金の多額を合計した金額の範囲内で、被告人を罰金30万円に処し、刑法18条により、その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとし、原審における訴訟費用のうち2分の1については、刑訴法181条1項本文を適用して被告人に負担させることとする。本件各公訴事実中、公訴事実第2のうち、「聖少女伝説」を提供したとの点については、前記のとおり、犯罪の証明がないから、同法336条により、無罪を言い渡すこととする。
  よって、主文のとおり判決する。
第10刑事部
 (裁判長裁判官 朝山芳史 裁判官 杉山愼治 裁判官 市原志都)

任介辰哉「最高裁刑事破棄判決等の実情(中)ー平成二一年度ー」判例時報第2092号P23 2010
次に、児童ポルノの提供行為とその提供目的所持行為とが併合罪であるのか、包括一罪であるのかについては、この点に関する最高裁判例はなく、下級審でも判断が分かれていた(包括一罪とするのは福岡高那覇支判平一七・三・一公刊物不登載、併合罪とするのは東京高判平一五・六・四高検速報平一五・八三、刑集六○・五・四四六、大阪高判平二○・四・一七刑集六二・一○・二八四五)。
包括一罪とする説は、児童買春・児童ポルノ等処罰法七条の罪をわいせつ図画罪と同様のものと考えているものと思われる。
すなわち、平成一六年に改正される前の同条の体裁は、わいせつ図画罪の条文とほぼ同様のものであり、各構成要件に該当する行為は、その性質上、いずれも反復・継続する行為を予想させるものともいえるからである。
児童買春・児童ポルノ等処罰法制定当時からの解説書においても、そのような包括一罪との解釈が示されていた。
他方、併合罪とする説は、児童買春・児童ポルノ等処罰法の被害法益の違いから、わいせつ図画罪とは同様に考えられないとするものである。
すなわち、児童買春・児童ポルノ等処罰法は、同法一条に明記されているとおり、当該児童の権利保護をも目的としているところ(平成一六年の児童貿春・児童ポルノ等処罰法一条の改正により、児童の権利保護の面がより強調されている。
島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」ジュリ一二七四・六一参照)、児童ポルノは、その提供によって初めて当該児童の権利が侵害されるのではなく、提供に至らない製造、所持等も、それ自体において当該児童の性的権利を侵害する行為であり、製造、所持等された児童ポルノが現実に提供された場合、製造、所持段階の児童への侵害が吸収される関係にもないから、これらを提供に包括して評価するのは相当でないとするのである。
本決定は、児童の権利を擁護しようとする児童買春・児童ポルノ等処罰法の立法趣旨を根拠に、併合罪説をとることを明示した。
下級審においては、必ずしも訴訟上の争点にならなかった場合も含めて、包括一罪として処理されていた例が少なくなかったようであるが、今後は併合罪として処理されることになろう。