児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

鎮目児童ポルノ販売事件「メディア判例百選 第2版」2018

 取り上げられた京都地裁判決は奥村事件ではありませんが、解説で、奥村事件がずらりと紹介されました。

6現在に至る裁判例を概観すると,性器等の強調や扇情性と必然性・合理性の欠如を重畳的に要求する考え方(①)は,実質的に放棄されるに至ったように思われる。
2004(平成16)年改正により,他人に提供する目的を伴わなくても,児童に2条3項各号に掲げる「姿態をとらせ」,これを搬影等する方法による児童ポルノの製造行為が犯罪化され(同法7条4項),さらに,2014(平成26)年改正により,「ひそかに」2条第3項各号に掲げる児童の姿態を撮影等する方法による製造行為が犯罪化された(同法7条5哩)。
4項製造罪にかかる典型的事案は,児童に対する性犯罪(強制わいせつ・性交等,児童福祉法違反〔児童に淫行をさせる行為〕,児童買春,淫行条例違反)に|姐伴して,児童の裸体等の撮影録画がなされる場合であるが,医師が通常の診察行為の一環として,女子児童(13歳未満)の着衣をずらして乳房を露出させた様子(広高判平成23.5.26LEX/DB25471443),保育士が身体測定の機会に児童(6歳)に指示して上衣を脱がせた様子(前掲富山地判平成24.10.11)等,性器等の強調や扇情性といった要素が希薄な姿態を撮影する行為も,同罪により処罰されている。
また,5項製造罪についても,入浴施設の脱衣所において,男子児童(推定イF齢12歳)が全裸になっている様子(横浜地判平成29.7.l9LEX/DB25546811),自然学校に参加した男子児童ら(当時10歳および11歳)の浴室脱衣場における裸体(神戸地判平成3()・’・l2DlL(1W28260879),保健室で内科検診を受診している女子児童計35名の上半身裸の姿態(函館地判平成30.4.I7DlLaw28262463)等,性器等の強調や扇情M皇の存在に疑問がある姿態の盗撮事案についてlil罪の成立が肯定されている。
かねてより,裁判例の中には,性欲の興奮・刺激要件につき,「同要件は相当程度緩やかに認められる」と述べるもの(前掲富'11地判平成24.1()・’1)が見られ,また,客体該当性判断において,撮影目的(「rl己の性的し好を満足させる目的」)などの主観的要素を考慮することができると|リ」言するもの(|椥掲{'11台尚判平成21.3.3)も見られる。
しかし,性器等の強調や描写内容の扇情性という要素が極端に希薄化したときに,撮影目的という主観的要素を,これに代替して当罰性を基礎づける客体の要素(②)とすることが理論的に可能か,あるいは,製造行為がもたらす法益侵害性(この点につき,仲道。後掲63頁以I、参照)を考慮することによって,客体たる児童ポルノがもつべき法益侵害性の要求を緩和すること(すなわち,行為組型による児童ポルノ概念の相対化)を認めてよいか等が,問題として残るであろう。