児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノの静止画像を入れた記憶媒体を売却していたというような事例については,画像ソフトによる加工がされた(例えば,画像処理により恥毛等の第二次性徴を消した等)との主張がなされる可能性が一層強くなるので,事案に応じて,捜査段階から,コンピュータ画像の専門家や医師の意見を聴取するなどして立証に備えるべきである。北岡克哉Q&A 実例 証拠収集の実際

 CG事件は静止画像なので大多数無罪になっています。
 動画の事件の場合は、タナー判定要らないと思うんですよ。画像と自白で有罪になる。

北岡克哉Q&A 実例 証拠収集の実際
72児童ポルノビデオテープの画像に関する留意事項
A警察署警察官甲らは、レンタルビデオショップの店員であるxが同店経営者yとともに、いわゆる児童ポルノであるビデオテープを販売しているとの情報を得て捜査に着手した。甲らはXのビデオショップから少女が全裸で陰部を広げている模様等が撮影されたビデオテープを押収したが,XやYを取り調べても,撮影対象を特定することができなかった。
甲らは,Yらを児菫買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(当時。以下「児菫ポルノ法」という。なお,現児童買春・児童ポルノ禁止法)違反の被疑事実で処罰するために,どのような立証を行う必要があるか。
A 大阪高裁H12.10.24判決をモデルとした事案である。原審で有罪判決を受けた被告人側から控訴がされ、弁護人側から①本件ビデオの被撮影者が何人であるかは特定されておらず,それらが人間であることについてすら合理的な疑いを容れる余地がある,②思春期遅発症や小人症等の可能性を考えれば,被撮影者が18歳未満の児童であると断言することはできない,③児童ポルノ法自体が違憲である,④児童ポルノ法違反の規制対象となる児童ポルノは,被撮影者が具体的に特定できていなければならない等の主張がされたが,本判決は,弁護人側の主張をいずれも排斥した。
本項では,特に,①及び②について,画像以外に手がかりがない場合の立証及びその程度・方法,という観点に着目してみたい。
本判決て.は,①被撮影者の実在性について,「捜査報告書写真撮影報告書、Xの警察官調書及び被告人の警察官調書など,原判決が挙示する関係証拠によれば,本件各ビデオテープにおいては,本件各写真の被撮影者である少女が性交又は性交類似の行為を行っている模様や全裸になって陰部を拡げている模様などが撮影されていることが認められるから,本件各ビデオテープ°の被撮影者が実在する人であることは明らかである。」とした。
そして,②の年齢立証の問題については,「上記関係証拠ことに捜査報告書窓いし写真撮影報告書中の本件各写真から窺われる各被撮影者の容貌,体格,発育状況などに照らすと,本件各ビデオテープ・の各被撮影者はいずれも児童であると認められる。
なるほど,当審証人である医師Aの証言及び同人作成の前記鑑定書によれば,本件各写真の被撮影者が思春期遅発症や小人症である可能性を医学的に否定することはできず,各被撮影者の年齢が18歳未満であると,100パーセントの確率で断言することはでき難いという。
しかし,もとより,刑事訴訟における証明は,医学等の自然科学における証明とは異なり,裁判官に合理的葱疑いを容れない程度に確実であるとの心証を抱かせれば足りるものであるところ,医師Aの当番証言によれば,本件各写真の各被撮影者が,思春期遅発症や小人症などであることを窺わせる徴候はないというのであるから,上記の証言及び鑑定書によっても,本件各写真,ひいては本件各ビデオテープの各被撮影者が18歳未満の者であることに合理的恋疑いを容れる余地はないというべきである。」と判示して認定した。
実務上も,いわゆる児童ポルノの被撮影者が誰かということはむしろ特定できないことがほとんどであると思われ,その場合,その実在や年齢が18歳未満であることを数学的な意味で100%の確率で立証することは不可能であろう。
本判決は,このような自然科学的な立証が不能な場合であっても,裁判官に合理的な疑いを容れない程度に真実であるとの心証を抱かせれば足りるとし,ほとんど画像一本から事実を認定しているが,極めて常識的な判断であると考えられる。
設例でも,上記判決で示された考え方に立ち,当該画像のみで立証が足りる場合が多いであろうが,ビデオのような比較的長時間にわたる連続した画像の場合に比して,例えば,児童ポルノの静止画像を入れた記憶媒体を売却していたというような事例については,画像ソフトによる加工がされた(例えば,画像処理により恥毛等の第二次性徴を消した等)との主張がなされる可能性が一層強くなるので,事案に応じて,捜査段階から,コンピュータ画像の専門家や医師の意見を聴取するなどして立証に備えるべきである。