児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

監護者性交事件につき娘を含む家族から、被告人を実刑に処することがないよう求める嘆願書が出た事例(懲役6年 大津地裁h30.7.31)

 児童淫行罪の量刑の2倍くらいになっているようです。
 1件で起訴されて余罪として考慮されるので、起訴されていない性行為の回数・期間を争うことがあります。

■28263965
津地方裁判所
平成30年07月31日
国選弁護人 西村一
主文
被告人を懲役6年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、妻及びその父母のほか、実の娘であるAと同居して同人の寝食の世話をし、指導、監督をするなどして同人を現に監護する者であるが、同人が18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交をしようと考え、平成30年3月上旬頃、滋賀県B市●●●所在の当時の同居先において、自室で就寝しようとする同人(当時15歳)に対し、現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交をしたものである。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法179条2項、177条前段に該当するので、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役6年に処し、刑法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入し、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件犯行は、監護者が被監護者に対し性交をする類型の中にあって、出生から継続的に養育に携わってきた実の娘を対象としている点に重大な特徴がある。
 また、被告人は、娘が小学校の高学年の頃から性的行為に応じさせるようになり、その延長上で常習的に本件性交の犯行に及んでいる点にも重大な特徴がある。
 しかも、以上の振る舞いは、妻ら家族と同居する環境で繰り返されていたと認められるし、被告人は、本件に先立つ頃に一度、娘に対する性的接触を察知した妻から厳しく注意され、制止されていたにもかかわらず、自身の性的欲求を満たすためになおも本件に及んだものと認められる。動機に酌量の余地がないことはもとより、守り育てるべき娘の貞操を強い犯意のもとで蹂躙し、その尊厳を著しく傷付けた悪質な犯行であることを指摘せねばならない。
 監護を担う実の親の立場であれば決して揺るがせてはならない倫理に、真っ向から背いたものとして、被告人は、厳しい非難を免れないというべきである。
 もっとも、娘を含む家族から、被告人を実刑に処することがないよう求める嘆願書が提出されたことにも示されているとおり、従前、被告人は、子どもらの養育において、性的に逸脱した部分を除くその余の領域においては様々に尽力し、よって良好な家庭を支える役割を果たしてきたと認められるから、そのような態度もなくかえって家族を虐げていた経緯の事案などと同等の重い評価までは当たらない。そこで、前科もない被告人が罪を認めて反省の態度を示していることとも併せて斟酌し、刑事責任の評価を抑えることができないか検討したが、倫理に背き、規範を逸脱した程度が非常に大きい本件の罪質に照らし、この点の斟酌を深いものとするには至らなかった。
 主文の刑はやむを得ないと判断した次第である。
(求刑・懲役7年)
刑事部
 (裁判長裁判官 伊藤寛樹 裁判官 加藤靖之 裁判官 平井美衣瑠)