児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

タナー判定は信用できない(東京地裁h28.3.15)

 だれが見ても児童という事件について、「タナー2度」なんていう医師の鑑定書についてこう主張したら、「タナー」の字句を削除して、再度証拠請求されました。

文献としてはこれ挙げておく。
児童ポルノ事件における児童性の認定方法に関する考察(浅田和茂先生古稀祝賀論文集)
Misuse of Tanner Puberty Stages to Estimate Chronologic Age
The difficult issue of age assessment on pedo-pornographic material
Inaccuracy of age assessment from images of postpubescent

裁判年月日 平成28年 3月15日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平25(特わ)1027号
事件名 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 有罪(懲役1年及び罰金300万円、執行猶予3年(求刑 懲役2年及び罰金100万円)) 上訴等 控訴<破棄自判> 文献番号 2016WLJPCA03156003第6 児童認定写真の各被写体が18歳未満であると認められるか否か(以下,18歳未満と認められることを「児童性が認められる(否定の場合は「認められない」)とも表記する。)
 1 検察官の主張
 検察官は,①D医師が,児童認定写真の各被写体について,18歳未満であると認定していること,②児童認定写真と同一の写真が収録された写真集の中にその被写体が18歳未満であることをうかがわせる記載があることから,児童認定写真の被写体は,撮影当時,いずれも18歳未満であったと認められる旨主張する。
 2 D医師の供述に基づく児童性の認定について
  (1) D医師は,性発達を評価する学問的な方法として世界的によく用いられている手法としてタナー法があり,同法においては,乳房及び乳輪は乳房のふくらみと乳輪の隆起により,陰毛は濃さや範囲により,それぞれ1度から5度のステージで発達段階が定義され,それにより性発達の段階を評価することができること,そして,タナー法の分類と日本人女子の性発達との関係を調査した研究が複数なされており,同研究の結果に照らせば,乳房又は陰部につきタナー何度であれば年齢が何歳から何歳の範囲に入るかを推測できることから,児童認定写真の被写体については,いずれも18歳未満と認められる旨述べる。
 前記のD医師の供述については,同医師が,小児科学,小児内分泌学を専門にする医師として,専門的知見や過去の経験等に基づいて述べられたものであること,タナー法及び同法の度数と日本における女児の思春期の二次性徴の年齢に関するものとして,D医師が資料として引用したものを含め複数の研究がなされていること等からすると,女児の性発達の段階を評価する手法としてのタナー法の存在や,同法における度数の判定に用いる具体的な基準の定立,さらに,日本人女子について同法の各度数と年齢との間に有意な相関関係を示す医学的知見が存在する点については,十分な信用性が認められる。
 しかしながら,他方で,白木和夫ほか総編集「小児科学(第2版)」医学書院(弁1)に「二次性徴の出現時期が正常であるかどうかを評価するには,正常児の発現時期を知る必要がある。しかしわが国では包括的なデータはほとんどない。よく引用されるのはTannerらの英国人小児の二次性徴発現年齢のデータであるが,人種も年代も違うこのデータを,そのまま現代の日本人小児にあてはめるわけにはいかない。」との指摘にも留意する必要がある。この点は,同文献が出版された平成14年以降にD医師が証人尋問において引用した論文(弁2。以下「田中論文」という。)等が発表され,日本における正常児の二次性徴の発現時期に関する研究が進んだと認められるものの,そのことを踏まえても,タナー法による分類に基づく年齢の判定は,あくまで統計的数字による判定であって,全くの例外を許さないものとは解されない。その統計的数字も,例えば,現在のDNA型鑑定に比すればその正確さは及ばない。身長や肌の艶,顔つき,あるいは手の平のレントゲン写真などといった判断資料は一切捨象して,胸部及び陰毛のみに限定して判断するタナー法の分類に基づく年齢の判定は,あくまで,18歳未満の児童であるか否かを判断する際の間接事実ないし判断資料の一つとみるべきである。
  (2) さらに,本件においては,殊にD医師が児童認定写真の被写体の年齢を判定したことについては,以下のとおり,その信用性を慎重に判断すべき具体的な事情が複数存在する。
   ア 児童認定写真の被写体の年齢を検討する際に用いた資料が限られていること
 (ア) D医師は,甲第25号証及び甲第26号証の児童認定書2通を作成した際の状況について,弁護人の質問には,前記各児童認定書別添の紙質の紙にプリントアウトされたものを見て判断したと答え,さらに,この点を裁判官から尋ねられた際には,写真をよく見ることに集中していたので,どのように作成したのかはっきりした記憶がないが,写真を見ながら同書の「乳房」,「陰毛」の所にそれぞれ丸を付けた旨述べる。また,D医師は,甲第26号証画像番号14(児童10)について具体的に説明する中で,「元の写真を見」たかのような供述をしている。以上からすると,D医師は,基本的には,児童認定写真を見て写真の女性の年齢を判定しており,また少なくとも同画像番号14の児童性の判断においては,その写真と基になった写真を見て,前記各児童認定書を作成したものと考えられる。
 こうした画像又は写真に基づいてタナー法による度数の判定を行う場合,実際に対象者を診察して評価を行う場合と比べて,被写体の姿勢,光の当たり方,画質等様々な制約があるため,対象者に関して得られる情報が非常に限定されることから,その正確性についてはより慎重に検討する必要がある。D医師も,写真に基づく評価をする場合について,限られた情報から分かるところで慎重に判断するという立場である旨述べ,「情報が少なければ認定の精度は劣ってくるということになりますよね」との弁護人からの質問に対しても,「はい,そのとおりです。」と答えている。
 以上を前提に,本件においてD医師が前記各児童認定書を作成した際に参照した資料がどのようなものであったかについてみると,前記のとおり,その資料としては,児童認定写真及び更にその元になった写真が想定されるが,後者については,前記甲第26号証画像番号14(児童10)以外の前記各児童認定書別添の写真の児童性判断時に,実際に示されたかどうか,また,同画像番号14の場合を含めて,元の写真なるものが示されたとしてどのようなものが示されたのかは全く明らかでない。また,前記各児童認定書別添の写真は,いずれも画質が粗い上,明らかにピントが合っていないか印刷に問題があると思われるもの(甲第25号証画像番号3(児童2),14(児童11),甲第26号証画像番号3(児童2),14(左側)(児童10)等)や全体が白くなっていたり(甲第25号証画像番号5(児童4),甲第26号証画像番号6(児童5),17(児童13)等),暗くなっていたり(甲第25号証画像番号17(児童14),23(児童16)等)しているものが多くみられ,そこから得られる情報は非常に限定的なものにとどまる。
 (イ) そして,タナー法における乳房及び乳輪と陰毛の発達段階の評価基準が細かく定められているところ,前記のように情報が限定的であることは,その細かな判定にも影響を与えると解される。
 D医師は,タナー法における発達段階の分類について,乳房については,乳房が全く発達していない1度から,やや膨らむ,さらに大きく突出,乳房が肥大する,成人型になるまでの5ステージ,乳輪については,平坦な1度から,やや隆起する,隆起が目立たなくなる,隆起する,平坦になるまでの5ステージ,陰毛については,何もない1度から,僅かに陰毛が生えてくる状態,少し色が濃くなる状態,成人に近くなるが大腿部までは広がらない状態,大腿部まで広がった状態までの5ステージが,それぞれ定義されている旨述べる。
 このタナー法の分類についてみると,乳房については,児童認定写真の被写体の乳房の全体的な印象からその発達の状態を判断することは可能であるように思われるものの,乳輪については,その隆起の有無で発達の評価が分かれるところ,前記のとおり児童認定写真等の限られた情報しかない中で,乳輪の隆起があるかないかという微妙な判断を正確に行うことができるかどうかについては,殊に児童認定写真では多数ぼやけているなどして乳輪が不鮮明なものや被写体が正面から撮影されているため乳輪の隆起の有無が判別しづらいものが多いことからしても,疑問がある。
 D医師は,乳房の大きさと乳輪の隆起の有無から判断する旨を述べるが,他方,前記各児童認定書において乳房についてタナー3度と認定している者について,その認定の理由として,乳房の大きさが成人並みではないという点と併せて,乳輪が隆起していない又は乳腺の発達が不十分という点をいずれにおいても指摘しており,乳輪の隆起の有無が2度と3度又は3度と4度の区別において重要な基準になっているものと認められる。そして,D医師は,成人になっても胸が非常に小さい女性は多くいるように思われるが,その点はどのように考えればよいのかという裁判官の質問に対して,成人で小さいには程があるということに加え,乳房の発達段階については,その大きさというよりも乳輪やその隆起の有無で見ている旨述べており,その供述からも,乳輪の隆起の有無がタナー法における評価において重要な意義を有していることがうかがわれる。
 しかしながら,一方で,D医師は,甲第26号証画像番号2(児童1)は乳輪の隆起が明らかでないが2度,同画像番号14(左側)(児童10)は乳輪の隆起がはっきりしないが2度,同画像番号17(児童13)は乳輪の隆起が明らかではないが3度と,それぞれ判定し,その理由として,乳房の隆起がある,乳房の発達がある,4度とするには乳房の発達が非常に悪いなどと述べ,乳輪の隆起の有無の判断ができないときには,乳房の発達度合いを考慮して判定しているかのように述べている。しかし,そうなると,先の乳房が小さい女性もいると思わるが,との問いに対する答えとの整合性は必ずしも明らかではない。
 また,D医師は,胸だけが写っている場合は,判定は非常に難しく,体全体が写っている中で判断するという慎重さが必要だと思う(D医師証人尋問調書(以下「D調書」という。)37頁)旨述べるが,他方で,胸部と陰毛の片方が分からないと年齢を判断できないというものではない(同35頁)とも述べ,弁護人から,反対尋問でD医師に胸部のみが切り取られた写真の4枚目(D調書別紙15)を示された際,躊躇なく「2度というふうに判定できます。」と述べている。そして,D医師は,弁護人から当該写真の女性がアダルトビデオ女優であることから18歳以上であると聞いた後も,「この方は,18歳未満のときに撮影された可能性が極めて高い」などと述べて,自らの判定を再考したりする態度は示していない。この点,検察官は,弁護人が示した当該写真(D調書別紙15)は,アダルトビデオ販売サイト内のサンプル画像を加工したものであり,弁第11号証及び弁第12号証のタイトル等からすれば,当該アダルトビデオ女優の乳房が小さいことを殊更に強調するために加工されている可能性が否定できないと主張しており,確かに,写真データにそのような加工を施すことは容易で,その可能性は否定できない。しかしながら,写真データと比較し修整が困難と考えられる弁第12号証の動画からも,同女優の乳房は,D医師が「成人並みでない」と述べる乳房と比べても発達しているとは到底いえない(なお,幼いことを宣伝文句にした写真をそれらしく加工する可能性については,検察官が素材写真(検・素材画像)の実在欄で掲げる写真集等についても等しく当てはまる指摘というべきである。)。
 またD医師は,甲第25号証画像番号3(児童2),12ないし17(児童9ないし14),23(児童16),28(児童17)及び甲第26号証画像番号8(児童6),10(児童8),25(児童17)について,いずれも乳房は成人に達するほどではない,あるいは成人並みよりも小さいなどと述べているが,乳房部分だけを抜粋して写真から判断した場合,その大きさから,成人に達しない,あるいは成人並みでないと判断し得るとは解されない。
   イ 18歳以上の女性の中に,乳房につきタナー2度ないし4度と評価される女性がいる可能性
 また,D医師は,タナー法の度数と日本人女子の性発達との関係を調査した研究によれば,同法の各度数に分類される年齢は正規分布すること,乳房についてタナー2度に達する平均年齢が9.7又は9.5歳で標準偏差が0.95,タナー3度に達する平均年齢が11.5歳で標準偏差が1.05,タナー4度に達する平均年齢が12.3歳で標準偏差が1.1であること等が分かっており,以上からすると,95.4%の女児が9.7又は9.5歳プラスマイナス1.9歳の間でタナー2度になり(D調書別紙6),15歳までにタナー2度に達しない者は計算上100万人に0.3人くらいということになり(D調書別紙7),18歳以上でタナー2度以下である場合は,1万人に1人を超えないと考えられる(D調書別紙10,11)旨述べる。
 しかしながら,D医師が証人尋問において引用した田中論文の中の日本人女子の乳房の性成熟段階の累積頻度(D調書別紙6)の図を見ると,タナー2度の線については累積頻度が100%のところにほぼ到達しているのに対して,タナー3度の線は93又は94%の辺りで切れており,タナー4度の線は,65%の辺りで切れている。また,田中論文は,その対象者について「東京の私立の女子校生の1983年4月から1986年3月までに生まれた女子で小学校1年(6歳)から中学3年(14歳時)まで経過観察できた226名を対象とし」た旨記載している。そうすると,D医師の述べるとおり,この論文において判明した範囲でタナー法の度数と年齢とがほぼ正規分布の関係にあることや,およそ自然界に存在する生物の特徴として発達度合い等の正規分布が想定されること等を前提に,18歳以上の女性の中で乳房につきタナー2度ないし4度と評価される女性が存在する可能性をそれぞれ理論的に計算することは可能であるとしても,実際に18歳以上の女性の中に乳房につきタナー2度ないし4度と評価される女性がどの程度存在するかについては,前記論文からは実証的に明らかでない。
 また,D医師は,前記各児童認定書を作成するに際しては,日本人女性の中にはタナー4度のまま成人となりそれ以上発達しない人もいることから,4度の可能性がある場合には推定年齢が不明であると表現した旨述べている。前記の正規分布に基づく理論的な計算によれば,18歳以上でタナー4度と評価される者が現れる確率は相当程度低くなると思われるところ,D医師自身,前記の正規分布に基づく理論的な観点だけでなく,タナー4度のまま成人となる者もいるという実証的な観点も踏まえて,結論を出しているものといえる。
 そして,D医師は,乳房及び外陰部でみて,タナー2度以下で18歳以上である可能性については,極端な「おくて」言い換えれば,質性思春期遅発症の場合や,性腺機能低下症の場合であると思われるが,概ね1万人に1人未満であると述べる。
 田中論文で調査された年齢の範囲で,その調査対象となったほぼ100%の日本人女性がタナー2度に達したと認められるから,その指摘自体は実証的根拠があるというべきであり,その割合は相当に低いと考えられるが,例外が皆無とは解されず,また,D医師の供述からも,正規分布による理論上の計算以上の説明はされていない。そして,児童性が認められるかの判断にあたっては,そもそも,タナー2度と判断してよいのかという,実際の度数判定の適切さが前提となる。
 そうしてみると,先のアダルトビデオ女優のように,18歳以上と考えられるにもかかわらず,タナー2度と判定される程度にしか乳房が発達していない女性が実社会に存在することは否定できない。また,その事柄の性質上,乳房が十分発達していないことを殊更強調してアダルトビデオ女優になる女性よりも,それを明らかにせずに生活する女性の方が当然多いと考えられることからすると,18歳以上でありながら乳房についてタナー2度と判定されかねない一定数の女性が存在することも否定できないというべきである。
   ウ そして,本件では更に,児童認定写真が修整が加えられた写真である可能性があることも考慮する必要がある。
 D医師は,タナー法によって,陰毛についてもその度数を判定しているが,陰毛については,剃られている可能性があるほか,前記実在性で検討した書籍の発行年月に照らしても,撮影後に陰部付近の画像に修整を加えて出版等がされた可能性があることから,その度数判定については,より慎重な判断が必要である。この点,D医師は,剃毛すると皮膚に赤みや赤黒さを見ることができるので剃毛されたか否かは見分けることができるし,そのような皮膚の色等まで修整がなされるとは考えられない旨述べるが,前記のとおり児童認定写真の被写体の年齢を検討する際に用いた資料の画質が粗いこと等からすれば,上記の点を正確に判断することができるか否かには疑問の残るところであり,また,陰毛や陰部が露骨に表されないように修整が加えられることは十分考えられるところである。そして,甲第25号証画像番号2(児童1)は,陰部に修整が施されている可能性が高い(検察官レイヤー,甲第34号証及び甲第41号証写真番号3は甲第25号証画像番号2(児童1)と同一の写真に見えるが,甲第36号証及び甲第41号証写真番号36,37はこれらの写真よりも陰部付近が鮮明である。弁第13号証の「1_02_0003_wr2_19.jpg」のレイヤーも全体としては白くなって鮮明ではないものの陰毛部については甲第25号証画像番号2よりもはっきりしている。したがって,甲第25号証画像番号2(児童1)は,より鮮明な写真に修整が加えられた可能性が高いことが分かる。さらには,よりはっきりしている写真やレイヤーであってもなお,陰毛部に黒く写っているものが陰毛であると断定できるかについては疑問が残る。)。しかし,D医師は,陰毛がかろうじて写っている,修整された痕跡がないとして,タナー2度であると判定している。
 弁護人から陰裂が見えない不自然さを指摘されても,上記説明を維持しようとしているところ自体において,写真に撮影された陰毛から度数を判定することの限界がうかがわれる。
 こうしたことからすると,タナー法に基づく年齢判定においては,その限界ないし危うさがあるというほかなく,D医師が小児医療を専門とする医師であることから,その意見は尊重するとしても,児童性の認定においては成人女性の性発達等をも考慮する必要があるところ,その面からの統計資料等の証拠はなく,また,判定資料とした写真の不鮮明さや修整の可能性,殊に陰部付近の修整の可能性を考慮すると,少なくとも本件においては,D医師の供述を全面的に信用して,年齢を判断することはできないというほかない。
  (3) 以上のとおり,本件においてD医師が児童認定写真の被写体の年齢を検討する際に用いた資料が限定されたものであること,その上での判定内容の危うさ等からすれば,D医師による年齢判定についてもその信用性について慎重な検討が必要となる。
 そのようにしてみると,まず,前記のとおり資料が限定され,修整の可能性がある中で,D医師がどれにも3度以上と判定したものがない児童認定写真の陰毛については(本件CGでは問題とされていないが,D医師は,甲第26号証画像番号9(児童7)の写真において,陰毛を2ないし3として3度もあり得ると判定している。しかし,その写真を見ても陰毛が何度であるかが判定できる程鮮明とは解し難い。),タナー法の度数を判定することは不可能に近いというべきであり,D医師が陰毛に関する同度数によって判定した年齢については採用できない。
 また,D医師が18歳以上の可能性もあると述べる乳房のタナー4度とその可能性を否定するタナー3度とを判別する重要な基準となる乳輪の隆起の有無について,前記のとおり資料が限定されている中で正確な判断ができたかは疑問があり,タナー3度と評価された者の中には,実際は乳輪が隆起しておりタナー4度と評価されるべき者が含まれていた可能性が否定できないことなどからすれば,児童認定写真のうち,D医師が被写体の乳房がタナー3度と評価したものの各被写体が18歳未満である旨のD医師の判定についても,採用することができない(D医師自身,タナー3度を(判定基準に)用いてもいいが,誰が見ても必ずといっていいほどに,ほぼ例外なく18歳未満だと言えるということに関してはタナー2度を基準にしたほうが結論は誤らないという意味で言っている,それは乳房だけでなく,陰毛についても同じである旨述べ(D調書11頁),その供述は,タナー法による判定が3度であっても,それは絶対的なものである,あるいは,その判定に誤りが入り込む余地がないとは断定し切れないことを意味するものと解される。)。
 そうすると,D医師がタナー法で乳房を3度と判定した(なお,D医師が,本件CG集に関連する写真で,乳房につき,4度あるいは3度ないし4度であると判定したものはない。),甲第25号証画像番号2ないし5(児童1ないし4),8(児童6),9(児童7),11ないし17(児童8ないし14),22(児童15),23(児童16),27(左側)(児童17。画像番号22と共通。),28(児童18)及び甲第26号証画像番号3(児童2),5(児童4),6(児童5),8(児童6),10(児童7),13(児童8),17(児童11),21(児童12),23(児童13),25(児童14),26(児童15)の各写真については,各被写体が18歳未満である旨のD医師の認定は採用することができず,18歳以上である可能性に合理的な疑いが残る(別紙1で黄緑色で塗りつぶしたもの。ただし,既に検察官レイヤーと児童認定写真とが一致しないあるいは実在性がないとして黄色等で塗られていたものがあり,その場合には画像番号のみを黄緑色で塗りつぶしている。)。
 これに対し,別紙1の画像番号が黄緑色で塗られていないもの,すなわち,D医師がその被写体の乳房についてタナー1度又は2度と評価した各写真については,前記のとおり,D医師が,乳房についてタナー2度が18歳未満か否かという判断のポイントとなる旨述べているとおり,乳房についてタナー2度以下と判定されて18歳以上である女性が一定数存在することは否定できないとしても,それ自体がまれであるといえる上,これらの写真の被写体は,いずれも一見して顔立ちが幼く,乳房や肩幅,腰付近の骨格等の身体全体の発達も未成熟であること等からすれば,これらの被写体は撮影当時18歳未満であったことが強く推認される。
 3 児童認定写真と同一の写真が収録された写真集に被写体の年齢に関する記載があること
 なお,検察官は,児童認定写真と同一の写真が収録された写真集自体に「『F』13歳」,「K 1972年生まれ。」などと,被写体の年齢に関する記載が存在することからも,被写体が撮影当時18歳未満であったことが推認される旨主張するが,そもそも写真集に記載された年齢や生年月日が正確なものであるとする根拠がない上,児童認定写真に係る写真が収録された写真集には,その表紙や本文に「少女」などの記載があり,幼い女児の写真であることを強調する内容となっていることからすれば,そのような写真集に記載された被写体の年齢や生年月日が正確なものであるかは疑問であり,検察官の主張は採用できない。
 4 小括
 以上によれば,別紙1の黄緑色に塗られていない○○及び○○2の各画像に係る児童認定写真の被写体については,18歳未満であると認めるのが相当であるが,その余については,18歳未満であることについて合理的疑いが残り,18歳未満とは認められない