児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

撮影型強制わいせつ事件(176条後段)につき、児童ポルノ製造罪との罪数 問題を避けた起訴(横浜地裁h30.4.24)

 児童ポルノ画像があるから強制わいせつ罪が起訴されているのに、児童ポル
ノ製造罪は起訴していないというのでは、被告人の行為を評価し尽くしていな
い感じです。
 横浜地検は、観念的競合で起訴したり、併合罪で起訴したりで、わかんない
まま起訴してる感じです。

 罪となるべき事実は
 第1 3/28 A 強制わいせつ罪(176条後段)
 第2 4/1 B 強制わいせつ罪(176条後段)
 第3 7/9 C 強制わいせつ罪(176条後段)
 第4 7月中旬頃~ C 強制わいせつ罪(176条後
段)
 第5 9/5 D 製造罪
 第6 10/25  C 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第7 12/28 E 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第8 12/29 E 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第9 12/29 F 強制わいせつ罪(176条後段) 
となっていて、強制わいせつ罪(176条後段)はいずれも撮影行為を含みます
が、製造罪は起訴されていません。
 Dに対する製造行為は強制わいせつ罪(176条後段)を含みますが、強制わ
いせつ罪(176条後段)は起訴されていません。被害者が強制わいせつ罪(176
条後段)での起訴を望まなかったからか。にもかかわらず製造罪での起訴はい
いのか。弁護人が指摘した形跡がありません。
 わいせつの定義が決まっていないのに、争われた形跡がありません。

裁判年月日  平成30年 4月24日  裁判所名  横浜地裁
事件名  強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰
並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号  2018WLJPCA04246003
出典 ウエストロー・ジャパン
 上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制
及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所
は,検察官寺尾智子並びに私選弁護人藤代浩則(主任)及び同佐藤美由紀各出
席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1  平成27年3月28日(以下の月日は全て平成27年のものであ
る。)午前3時13分頃から午前3時14分頃までの間,沖縄県八重山郡〈以
下省略〉宿泊施設「○○」客室内において,A(当時11歳。アルファベット
による呼称と氏名との対応関係は別紙一覧表記載のとおり。以下同じ。)が1
3歳未満の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその
陰茎を口淫した上,これを自己が使用するデジタルカメラで動画撮影し,もっ
て13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年6月27日付け追
起訴】
 第2  4月1日午前3時54分頃から午前3時55分頃までの間,上記
「○○」客室内において,B(当時10歳)が13歳未満の男子であることを
知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手指で直接触った上,
これを自己が使用するカメラ機能付きスマートフォンで動画撮影し,もって1
3歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年5月31日付け追起
訴】
 第3  7月9日午後5時6分頃から午後5時13分頃までの間,横浜市
〈以下省略〉a協同組合1階男子トイレ内において,C(当時11歳)が13
歳未満の男子であることを知りながら,同人の着衣をずらしてその陰茎を手指
で直接触った上,これを自己が使用するカメラ機能付きスマートフォン(商品
iPhone6)で動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為
をし,【29年3月28日付け追起訴第1】
 第4  7月中旬頃から8月上旬頃までの間に,上記第3記載の男子トイレ
内において,C(当時11歳)が13歳未満の男子であることを知りながら,
同人の着衣をずらしてその陰茎を手指で直接触り,口淫した上,これを上記第
3記載のスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わい
せつな行為をし,【29年3月28日付け追起訴第2】
 第5  9月5日午後10時1分頃から午後10時2分頃までの間,東京都
●●●校庭内に設置されたテント内において,D(当時12歳)が18歳に満
たない児童であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらして,同人の
陰茎を露出した姿態をとらせ,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮
影し,その動画データ1点を同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体である記
録装置に記録して保存し,もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって,
殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性
欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により
電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,【29年7月24
日付け追起訴】
 第6  10月25日,神奈川県横須賀市〈以下省略〉bマンション301
の被告人方において,C(当時12歳)が13歳未満の男子であることを知り
ながら,同人の着衣をずらしてその陰茎を手指で直接触った上,これを自己が
使用するカメラ機能付き携帯型音楽プレイヤー(商品名iPod touch)で動画撮
影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【28年11月
28日付け起訴】
 第7  12月28日午前1時4分頃から午前1時24分頃までの間,群馬
県吾妻郡〈以下省略〉c研修センターC棟2階C601号室において,E(当
時9歳)が13歳未満の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着
ずらしてその陰茎を手指で直接触り,口淫するなどした上,これを上記第3記
載のスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつ
な行為をし,【29年1月31日付け追起訴第1】
 第8  12月29日午前1時14分頃から午前1時15分頃までの間,上
記第7記載のC棟2階C601号室において,E(当時9歳)が13歳未満の
男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手指
で直接触った上,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮影し,もって
13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年1月31日付け追起
訴第2】
 第9  12月29日午前3時24分頃から午前3時32分頃までの間,上
記第7記載のC棟2階C609号室において,F(当時10歳)が13歳未満
の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手
指で直接触り,口淫した上,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮影
し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし【29年3月3日付
け追起訴】
 たものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1ないし第4及び第6ないし第9の各行為
 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の
刑法176条後段
 判示第5の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並び
に児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
 刑種の選択 判示第5の罪について所定刑中懲役刑を選択する。
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も
重い判示第4の罪の刑に法定の加重をする。)
 未決勾留日数の算入 同法21条
 訴訟費用の負担 刑訴法181条1項本文
 (量刑の事情)
 (求刑 懲役7年)
 横浜地方裁判所第4刑事部
 (裁判官 片山隆夫)