児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦罪の起訴率の低下が著しい。一九九八年の七二・三%から徐々に低下をし て、強姦罪の下限が二年以上から三年以上に引き上げられ、これが二〇〇四年 でしたけれども、この二〇〇四年を経て、二〇〇五年からは低下の一途をたど っています。一昨年は三五・三%に半減しました。(193-衆-法務委員会-21号 平成29年06月07日)

 起訴猶予とか無罪になるというのは事件によるので

193-衆-法務委員会-21号 平成29年06月07日
○池内委員 裁判官が個人的な経験則やまた思い込みによって価値判断を下す
ようなことがあったら、本当に大変なことだと思います。
 裁判員制度の導入の後、性犯罪の量刑というのは、特に強姦致傷罪では若干
重い方へとシフトしています。この点で、裁判員に性犯罪を裁かせることは危
険ではないかと職業裁判官が危惧していましたけれども、むしろ真の危険は、
性犯罪の違法性、保護法益、被害の実態が正確に理解されず、経験則もジェン
ダーバイアスや時代おくれの強姦神話に基づいており、罰せられるべき加害者
が無罪や不当に軽い刑に処され、逆に被害者は二次被害セカンドレイプやP
TSDに苦しんできた、日本の刑事裁判そのものに潜んでいたのではないかと
強調したいと、島岡まな大阪大学教授が厳しく批判をしています。私は、この
ことを肝に銘じるべきだというふうに思うんです。
 強姦罪の起訴率の低下が著しい。一九九八年の七二・三%から徐々に低下を
して、強姦罪の下限が二年以上から三年以上に引き上げられ、これが二〇〇四
年でしたけれども、この二〇〇四年を経て、二〇〇五年からは低下の一途をた
どっています。一昨年は三五・三%に半減しました。
 嫌疑不十分による不起訴が増大しています。不起訴のうち嫌疑不十分が四割
から五割を占めている、この理由は何でしょうか。内閣府の女性に対する暴力
専門調査会では、学識経験者の方がこう言っています、検察は顔見知りの事件
を起訴しない傾向があると。この指摘はどうでしょうか。
    〔今野委員長代理退席、委員長着席〕

○林政府参考人 御指摘の強姦罪の起訴率、ここ十年ほど低下傾向にあるとい
うことは承知しております。ただ、これは刑法犯全体についても同様の傾向が
見られております。強姦罪に限って起訴率が低下しているものとは認識してお
りません。
 また、この起訴率でございますが、個別具体の事案に即しての起訴、不起訴
の判断の集積でございますので、起訴率の低下について、その原因あるいは評
価を一概に述べることはやや困難であろうかと思います。
 その上で、顔見知りの場合と顔見知りでない者との判断で検察官の評価が違
うかどうかということでございますが、この強姦罪について見れば、既に検挙
件数のうち半分半分、顔見知りの者による犯行あるいは顔見知りでない者の犯
行、これはほぼ半々でございます。
 捜査、公判の実務におきましては、被疑者となっている者については半分が
顔見知り、半分が顔見知りでない、そういった件数になっておりまして、こう
いった状況のもとで、検察官が、顔見知りの場合にはどのような起訴をする傾
向があるか、あるいは顔見知りでない場合にどのような起訴をするのかという
ことについては、その判断の中で全くその傾向はないものと考えております。

○池内委員 今、強姦罪の起訴率が低下しているということはお認めになって
いる。
 ほかのも起訴率は下がっていると言ったんですけれども、でも、強盗の起訴
率というのはおおむね六割から七割で推移していますよ。殺人罪だって実質五
割程度。強姦罪は格段に、これはほかとは比べられないぐらいに低下している
ということは私は言っておきたいし、また、半分半分だとおっしゃったけれど
も、暗数が物すごく多いということを考えれば、本来であればもっと性犯罪と
してちゃんと処罰しなきゃいけないものが隠れているということを私は指摘し
たいというふうに思います。
 二〇〇八年六月の大阪地裁の強姦罪無罪判決は、二十四歳の被告が出会って
二日目の十四歳の少女を姦淫した事件ですけれども、被害少女が性交に同意し
ていなかったことを認めながらも、加えられた暴行の程度に関し、被告人が被
害少女の足を開く行為及び被害少女に覆いかぶさる行為が、犯行を著しく困難
にする程度の有形力の行使であるとは認めがたいというふうにしました。結
局、叫ぶほどの拒絶、本気で抵抗するべきものという裁判官の強姦神話、女性
に対する厳格な貞操維持の義務を求めているとしか思えない判決じゃないかと
思います。
 起訴した検察は、こうした無罪判決が出ると、負けてしまうんだったら起訴
しないという方向に流れるんじゃないですか。

○林政府参考人 検察官といたしましては、法と証拠に基づきまして、その場
合に検察官として起訴するかどうかについては、的確な証拠によって有罪判決
が得られる高度の見込みがある場合に限って公訴を提起するという運用が行わ
れてきております。
 この点につきましては、性犯罪あるいは強姦罪とかいうものの罪名にかかわ
らず、全体として、検察官の処理といたしましてはそのように行っているとい
うことでございます。

○池内委員 これだけ不起訴がふえています。その理由が何なのか。暴行、脅
迫要件の立証が困難なのか、故意の認定が困難なのか、顔見知り、監護者以
外、親族からの被害がどの程度かなど、さまざま要因があると思うんですね。
 法務省自身が、なぜここまで不起訴がふえているのか検証していただきたい
し、研究者などがその内容をトレースできるように情報も提供すべきだと私は
思います。この点も強く検討を求めたいというふうに思います。
 次に、内閣府の調査では、性暴力事件の七割から八割程度が顔見知りの加害
者によって行われている、このことが明らかになっています。これは、民間団
体の相談現場での実感や、諸外国の傾向とも重なるものです。
 顔見知りの間でこそ、暴行、脅迫を立証しにくい、被害が潜在化している。
嫌疑不十分の不起訴というのがこれだけふえているというのは、私は何度も繰
り返していますけれども、ますます潜在化していくのではないか。積極的に起
訴すべきじゃないでしょうか。

○林政府参考人 先ほど申し上げましたが、被疑者と被害者が顔見知りである
か否かによってその被害者の例えば信用性を判断している、そういったことは
ございません。やはり個別の具体的な事案に即して、関係証拠の中で起訴すべ
き事件は適切に起訴しているものと承知しております。

○池内委員 顔見知りの間だと、暴行、脅迫というのは必ずしも必要ない場合
がやはり多いわけですよね。必ずしも必要ではない。そうすると、この暴行、
脅迫要件というのが被害者にとってはどう働くかといえば、やはり被害の選別
化に働いているのではないか、みずからの被害を立証するときに物すごく大き
なハードルになっている。性行為の同意の有無こそ、構成要件にすべきじゃな
いですか。

○林政府参考人 同意の有無そのものを直接の構成要件にした場合、これにつ
いては、同意というものの立証というのは非常に困難なものがございます。そ
ういったことによりまして、同意の有無を直接構成要件にした場合に、かえっ
てその立証のハードルが高くなるといったことはあり得ることと考えます。
 さらには、立証のみならず、同意の有無で構成要件を考えた場合に、どの場
合に犯罪が成立するかということになりますと、交際関係のある例えば男女の
場合に、どのような場合に犯罪が成立し、どの場合に犯罪が成立しないかとい
うことについては、当事者にとりましてもなかなか予測が困難、可能性が低く
なる、こういった問題もございます。
 そういったことから、同意の有無そのものを構成要件とするということ、す
なわち、例えば暴行、脅迫という構成要件を撤廃して、構成要件の中に同意が
あるかないか、同意がない場合の性交を犯罪とする、こういうふうに定めた場
合には、その立証の点におきましてもそうですが、当事者における犯罪成立の
予測可能性というものもかなり低くなってしまう、そういった問題があろうか
と思います。

○池内委員 現実に、被害者がどれだけ抵抗したかということが常に問題にさ
れる。でも、被害者からすれば、嫌なものは嫌だし、つまり、ノー・ミーンズ
・ノーと世界の女性たちが声を上げているように、嫌なものは嫌なんですよ。
 立証が難しいとおっしゃった。でしたら、なぜ同意があると思ってしまった
のか、加害者の側に挙証責任を負わせるべきじゃないですか。

○林政府参考人 もちろん、仮に加害者の側に同意があったものの挙証責任を
負わせるという形にすれば、立証は非常に容易なものとなると思います。しか
しながら、刑事訴訟法におきましては全て検察官が挙証責任を負うというのが
大原則でございまして、その部分について挙証責任を転換するということにつ
いては、刑事訴訟法の基本構造との関係で、かなりそれは問題が大きいものと
考えます。

○池内委員 刑事訴訟法の基本構造で個人の人権が虐げられるというのはおか
しいと思います。性犯罪のときにやり方を変えるということは幾らでもできる
んじゃないか。今おっしゃいましたよね、挙証責任を加害者に負わせれば立証
は大分やりやすくなる、容易になると。だったら、やってください、被害者の
個人の人権を守ってくださいよということを私は言いたいと思う。
 実は今、私が何だかとっぴなことを言っているとお感じになるかもしれない
けれども、世界ではこのような法改正が進んでいるということなんです。
 欧米諸国では三十年から四十年前から刑法を改正してきて、韓国もそうです
ね、我が国が参考にしてきたドイツでも、昨年の改正で、被害者の明示した意
思に反すれば暴行、脅迫は不要、このように改正をしました。そのほかにも、
加害者と被害者の年齢差や、社会的地位、親族からの被害や、教師と教え子、
地位や関係性を利用した類型を処罰するという法改正が何度も重ねられていま
す。レイプシールド法とあわせて、被害者が身の安全を確保する、訴えやすい
状況を社会としてふやしてきているわけです。こうした刑法や刑事司法の手続
の改革が、女性が積極的に被害を訴えられるように変化をもたらしている。
 法務総合研究所の研究が指摘しているフランスの事例を読み上げてくださ
い。

○高嶋政府参考人 御指摘の箇所は、法務総合研究所研究部報告三十八の十六
ページ目、下から五行目から十七ページ目三行までの八行ということでよろし
いかと思いますが、読み上げます。
  フランスにおける性犯罪の発生件数は増加傾向にあるが、この背景には、
性犯罪を警察に届け出やすい環境の整備(例えば、既述の性犯罪に関する公訴
権の消滅時効に関する法改正等)及び国民、特に女性の権利意識の変化がある
ようである。すなわち、以前は性犯罪の被害、特に家庭内や親族間で起きた強
姦事件等については、被害者である女性が警察に被害届を出さない傾向が見ら
れたが、二十年ほど前から、女性の人権意識(自己の権利はだれにも侵される
ことのない絶対的で崇高な性質のものであるとの意識)の高揚とともに、自ら
警察への被害届や通報をためらわずに行うなど、女性の性犯罪の被害に関する
意識が徐々に変化しており、これが統計的に性犯罪の増加をもたらした大きな
要因の一つであると考えられている。
以上でございます。