児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

石飛勝幸「刑法(平成29年法律第72号による改正前のもの)176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考盧すべき場合はあり得るが,行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではないとした事例>>刑集71巻9号467頁」警察公論2018/8

 大法廷h29.11.29の問題点は性的意図不要としつつわいせつの定義を示さなかった点ですね。

(3) 「性的性質が明確」な行為について
ところで,本判例は,上記のとおり,本件における行為については「性的性質が明確」であるとしているが,そのほか, どのような行為が「性的性質が明確」といえるかについては必ずしも明らかにしていない。
この点,判決文において, 「強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で」とされていることからすれば,姦淫(性交)に類似するような行為,例えば,肛門性交や口腔性交(「刑法の一部を改正する法律」[平成29年法律第72号])に「連なる行為」についても, 「性的性質が明確」といえるものとも思われる。

しかしながら,具体的にどのような行為が「強姦罪に連なる行為」等として「性的性質が明確」といえるか否かについては,必ずしも本判例からは判然とせず,事例の集積を待つほかないものと考えられる。
(4)今後の捜査への影響
このように,本判例は,強制わいせつ罪の成立について,性的意図を一律に要件とすることを否定したものと考えられる点で意義があるが,捜査機関としては, 「わいせつな行為」に当たるか否かの判断において,行為者の主観面を考慮すべき場合があり得ることをも示唆されたことに留意する必要がある。
そして, どのような場合に行為者の主観面を考慮するかについての判断基準は必ずしも明らかではなく,個々の事案における具体的事情に応じて判断されることになると思われる。
したがって,今後の強制わいせつ事件の捜査においても,引き続き,行為者の動機や目的,性的嗜好等といった主観面に関する証拠を収集する必要があり, また,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況,被害者の精神的ダメージ,被害者が抱いた性的差恥心などの事情についても,十分な捜査が求められる場合があるものと考えられる。
⑤おわりに
性犯罪に関しては,近年の実情等に鑑みて,事案の実態に即した対処を可能とするために,強姦罪の構成要件を改め,法定刑を引き上げて強制性交等罪とするとともに,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設し,さらに,強姦罪等を親告罪とする規定を削除することなどを内容とする法改正がなされるなど変動期にある。
これに対応するため,改正法を含めた関係法令を十分に理解し厳正に運用することが不可欠であるが,本判例は改正前の強制わいせつ罪についてのものであるものの,改正後の強制わいせつ罪においてもその解釈の参考となり得るものと思われる。