児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「わいせつ」(刑法176条)の定義史

 最判H29.11.29が沈黙したために、わいせつの定義が決まらなくなっています。

 

 

 

発表年 著者 書名 保護法益 わいせつ定義
1909 大場茂男 刑法各論 上巻 大正7年 252ページ 性交の自由に対する罪 「猥褻ノ行為トハ客観的ニ之ヲ言へハ淫事ニ関シ風紀ヲ紊ル行為、即チ差恥ノ感覚ヲ惹起スル行為ヲ謂ヒ、主観的ニ之ヲ言へハ行為者カ淫慾ヲ起シ若クハ之ヲ満足セシムル為メニ行フ行為ヲ謂フ
1914 大判大正三・七・二一 大審院刑事判決録第20号1541頁   刑法176条の暴行脅迫を手段とする猥褻罪と刑法177条の強姦罪とはその罪質を異にすると雖も行為の態様と犯人所求の心理観念は二者共に一なり。即ち前者は春情の満足を目的とする異性の狎眤にして後者も亦た同様の目的に出でたる異性の狎眤結合なり
1918 泉二新熊 日本刑法大要P429 狼襲、姦淫及ヒ重婚ノ罪ハ単に風俗を害する行為に過キサモノアリ 直接に個人ノ性交上における自由ヲ侵害スる行為あり 自然的ノ方法に依り情慾ヲ満タサンスル行為
1924 泉二新熊 「日本刑法論 下巻(各論)第35版」(大正13年 有斐閣)p396 直接に個人の性交上におけ自由 猥褻行為トハ淫欲ヲ興奮シ又ハ之ヲ満足セシムル目的ニ出デタル行為ニシテ覚知者ニ羞恥ノ観念ヲ生セシムルモノヲ謂ヒ
1927 新保勘解人 日本刑法要論p232   猥褻ノ行爲トハ性的意異欲望ヲ表現スル行爲即チ性的行爲ニシテ客観的ニ社会公衆ノ性ニ関スル道義感情ヲ侵害スルニ適スルモノヲ言フ
1930 徳岡一男 大衆法律講座刑法各論 性慾生活の秩序の維持 猥褻行爲とは性慾を興奮させ、または性慾を滿足させる目的で行った行爲である。
1932 小野清一郎 刑法講義各論初版 此等の法條に規定する犯罪の或るものは、其の善良の風俗に反するのみならず.個人の私権乃至法益を侵害すること明かなるものである 猥褻の行爲とは、性慾の興奮叉は満足を目的とする行爲にして、善良の風俗に反し、人をして差恥嫌悪を感ぜしむべきものをいふ
#### 佐伯千仭 「タートベスタント序論(1・2完)所謂構成要件の理論のために」京都大学法学論叢 第29巻2・3号     
1934 島田武夫 刑法概論/総論,各論 性交上の風俗を害する罪である 猥褻の行為とは、淫事に関する醜行で、覺知者に醜恥の感を催しめるものをいふのである。異性問の性交はもとより、同性間の鶏姦その他獣姦口淫局部の露出など性欲を刺激し、又は満足せしめる行為がこれに属する。
1934 大竹武七郎 刑法綱要各論S9 p456 善良なる風俗を害する罪 猥褻ノ行爲トハ性慾ヲ昂奮、満足セシムル行為ニシテ人ヲシテ羞恥ノ感ヲ起サシムル行爲ヲイフ。異性間同性間男性叉ハ女性単独ニテ之ヲ為スコトアルベシ。其行爲ノ狼藝ナリャ否ヤハ其時二於ケル普通一般ノ思想感情ヲ標準トシテ決スベキモノナリ。
#### 佐伯千仭 法学論叢三七巻一・ニ号に「主観的違法要素」    
#### 吉田常次郎 日本刑法第5版P369 強制猥褻及上強姦ノ罪
此二種ノ犯罪ハ軌レモ暴行脅迫ヲ用ヒ又は心神喪失抗拒不能ニ乗シ若クハ斯ノ如キ状態ヲ惹起シテ十三歳以上ノ者ニ對シ肉慾ヲ満足セシムル行爲ナリ
強制猥褻及上強姦ノ罪
此二種ノ犯罪ハ軌レモ暴行脅迫ヲ用ヒ又は心神喪失抗拒不能ニ乗シ若クハ斯ノ如キ状態ヲ惹起シテ十三歳以上ノ者ニ對シ肉慾ヲ満足セシムル行爲ナリ
#### 坂本英雄 刑法基本論総論各論 法益は善良なる風俗の確保にある。堅実なる風俗は國家の強化を促し、軟弱なる風俗は國家を衰亡せしむることである。本立の犯罪は右の堅実なる美風をその法盆と為すのである 猥褻行爲とは性慾を刺戟興奮叉は滿足せしむる一切の行為である
#### 小野清一郎 刑法講義全 性欲生活の秩序 猥褻の行爲とは、性慾の興奮叉は満足を目的とする行爲にして、善良の風俗に反し、人をして差恥嫌悪を感ぜしむべきものをいふ
#### 久礼田 益喜 刑法学概説8版 風俗を害する罪の一種である. 性慾を滿足せしむるへき行爲を爲すことを以て其の共通な実質とす
1943 泉二新熊 「日本刑法総論各論s18」 p368 社会的生活上に於ける一般の良習を紊乱する~一面より観察すれば個人の自由に対する罪・・ 猥褻行為トハ淫欲ヲ興奮シ又ハ之ヲ満足セシムル行為ニシテ
1944 大竹武七郎 刑法綱要増補版s19 p456 善良なる風俗を害する罪 猥褻ノ行爲トハ性慾ヲ昂奮、満足セシムル行為ニシテ人ヲシテ羞恥ノ感ヲ起サシムル行爲ヲイフ。異性間同性間男性叉ハ女性単独ニテ之ヲ為スコトアルベシ。其行爲ノ狼藝ナリャ否ヤハ其時二於ケル普通一般ノ思想感情ヲ標準トシテ決スベキモノナリ。
1946 小野清一郎 刑法講義再版 性欲生活の秩序 猥褻の行爲とは、性慾の興奮叉は満足を目的とする行爲にして、善良の風俗に反し、人をして差恥嫌悪を感ぜしむべきものをいふ
1950 宮内裕 滝川ら法律学体系コンメンタール刑法 本章の保護客体は、性的生活を中心として、さまざまの態様に別れる~個人の性的關係における道徳的感情の保護の典型が猥褻罪である この場合の「猥褻ノ行爲」とは、客観的には性的關係における道徳的感情を侵害し、主観的には性欲的意図をもってなされねばならぬ。
1950 安平政吉 改正刑法各論下巻 社会の風俗及び羞恥の感覚に対する行為並びに性欲生活の非合法的な遂行を取り締まろうとするもの  
1952 尾後貫荘太郎 刑法各論 人の性生活に関する風俗 「猥褻の行為」性慾の興奮又は滴足を目的とする行為であって、一般に人をして羞恥嫌悪の念を生ぜしめるものを云う
1954 小野慶二 刑法各論 、杜會生活の生物學的根抵をなす性に関する道義的秩序を維持することを目的とする 性に關する秩序は、いかなる民族においても、原始社会時代から古代・中世にわたって風俗として形成され、それが刑罰によつて嚴格に維持されて來た。現代の社会においても、健全な性的秩序は、國民の道義的秩序を維持する上において、欠くべからざる事項である 猥褻ということの意義について、判例ば、「徒らに性慾を興奮叉は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの」をいう
1954 福田 新法学全集 刑法各論 本罪は、性生活に關する風俗を害するものとして風俗に對する罪の一種であるが、同時に個人の人格的自由の一種としての性的自由を害するものである 猥褻の行爲とは、徒らに性欲を興奮または刺戟せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道徳観念に反する行爲をいう(
1957 井上正治 刑法各論 性的自由に対する罪 猥褻とは、性慾を刺戟し、またはこれを満足せしむべき行為であって、人をして差恥・嫌悪の情を生ぜしめる程度のものをいう。言語によると動作によるとを問わない(木村一三九頁
1957 団藤重光 刑法綱要総論    
1957 宮内裕 刑法各論講義中巻 主として性生活の関係における風俗・道徳を保護しようとするといわれており、 「猥褻なる行為」とは、性的意図をもってなされる、性的関係における道徳感情を害すべき行為である。
1958 植松正 刑法概論Ⅱ各論 社会的風俗 p546「猥褻行為」ということを抽象的に定義すれば、性欲を強く刺激し、その他露骨な表現によって、健全な常識ある一般人に差恥感を懐かせる行為である

p551「猥褻ノ行為」の意義が公然猥褻罪におけると大体同様であるのは、当然のことである
1959 木村亀二 法律学全集刑法総論 性的自由に対する罪  
1960 宮内裕 刑法各論講義S35
P272
  「猥褻なる行為」とは、性的意図をもってなされる、性的関係における道徳感情を害すべき行為である。
1960 夏目文雄 刑法提要各論 1960   猥褻の行為とは「「猥褻なる行為」とは、性的意図をもってなされる、性的関係における道徳感情を害すべき行為である。
1960 熊倉武 日本刑法各論p269 1960   ここで「猥褻な行為」といういみは、性欲を刺激.興奮させまたは満足させる意図をもってなされた行為でって、人に羞恥嫌悪の情を生ぜしめるような性質をもった行為をいうのである。
1961 名古屋高等裁判所金沢支部 昭和36年5月2日 下級裁判所刑事裁判例集3巻5~6号399頁   刑法第百七十六条にいわゆる「猥せつ」とは徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することをいう
1961 吉田常次郎 「刑法各論」77頁    
1961 団藤重光 法律学全集41刑法各論 性的自由 わいせつの概念については第一七五条の関係で前述した(性欲を刺激興奮せしめ。。)。ただ、ここでは相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなけ れぱならないので、重点が多少異るのは当然である
1963 青柳文雄 「刑法通論Ⅱ各論」P383    
1963 青柳文雄 傾向犯について」法学研究 第36巻4号    
1963 井上正治 刑法学各則 性的自由に対する罪 猥褻とは、性慾を刺戟しまたはこれを満足せしむべき行為であって、人をして差恥・嫌悪の情を生ぜしめる程度のものをいう
1964 中義勝 刑法各論P86 性的自由中心 わいせつを一般的に定義すれば、「徒らに性慾を興奮または刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」ということになるであろう。
1964 団藤重光 綱要各論 強姦を含む広義では一種の人格的自由としての自由を害する罪である わいせつの概念については第一七五条の関係で前述した()。ただ、ここでは相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなけ れぱならないので、重点が多少異るのは当然である
1965 福田平 木村亀二編体系刑法辞典p103    
1965 所一彦 「団藤重光責任編集」注釈刑法4 各則2 風俗犯としての商をももっていることはたしかであるが,むしろ主として個人の性的自由ないし貞操を保護法益とするものといわなければならない。 174条注3参照。ただし本条では相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなければならないので重点が多少異なる〈団藤・綱要394頁〉。とくに相手の身体に触れる行為の場合にそうであろう。
1965 滝川 春雄,竹内 正 「刑法各論講義」S40 P91   「猥褻ノ行為」とは、一般的には、性慾を興奮又は満足せしめる意図をもってなされた行為であって、人に性的な蓋恥嫌悪の情を生ぜしめるに足る行為をいう。
1966 福田平 「主観的違法要素」木村亀二編体系刑法辞典P103    
1966 柏木千秋 「刑法各論」p307   『猥褻』とは健全な性的道徳観念に反して徒らに性欲を刺戟、興奮させ、また、正常な性的差恥心を害するような態度・状態をいう(最判s26.5.10)。
1966 法務総合研究所 研修教材刑法各論 初版    
1966 木村亀二 体系刑法辞典 現行法との関係では,その全部を通じてやはり性秩序あるいは他全な性風裕の保‘護を意図しているといった認識で,その一般的性絡を把握するのか妥当である  
1967 木村亀二 刑法各論 性的自由に対する罪 性慾を刺戟興奮し又は之を満足せしむる行爲であって人をして差恥嫌悪の情を生ぜしめる程度のものを謂う
1967 滝川ら 刑法概説2 各論 有斐閣双書 個人の身体ないし身体的自由に対する罪であるともいえる 行為について判例は、人の差恥心を害し、性慾を刺戟し、善良な性的道義観念に反するものという三つの要素を掲げてい
1967 澤登俊雄 刑法概論 性的自由 「猥褻の行為」と言えるかどうかは、性的自由の侵害を主眼として考えるべきである。たんなる抱擁・接吻はそれ自体としては猥褻行為でないが、本罪の未遂になることはある
1968 宮内裕 新訂刑法各論講義S43
P213
  「猥褻なる行為」とは、性的意図をもってなされる、性的関係における道徳感情を害すべき行為である。
1968 大塚仁 現代法律学全集刑法各論上巻 、その本質は、むしろ個人の人格的自由の一種としての性的自由の侵害を第一義とするのであって、単に風俗的犯罪としてとらえるべきではない わいせつの行為とは、「徒らに性欲を興奮または刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道徳観念に反すること」をいう
1968 植松正 全訂刑法概論Ⅱ6版   p200「猥褻行為」ということを抽象的に定義すれば、性欲を強く刺激し、その他露骨な表現によって、健全な常識ある一般人に差恥感を懐かせる行為

p207「猥褻ノ行為」の意義が公然猥褻罪におけると同様であるのは、当然のことである
1970   最判s45.1.29    
1970 岡野光雄 「専ら報復または侮辱虐待の目的をもって婦女を脅迫し裸にして撮影する行為と強制わいせつの成否」1970早稲田大学社会科学研究第8号    
1970 植松正 植松正「報復・侮辱の目的による裸体撮影(最近の判例から)」法律のひろば 第23巻6号    
1971 平野龍一 平野竜一「強制わいせつ罪とわいせつの意思」警察研究 第42巻6号 性的自由  
1971 大塚仁 注解刑法(初犯) 性的自由 a. 「猥褻ノ行為」とは, 「徒らに性欲を興奮または刺戟せしめ,且つ普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反する」行為をいう(名古屋高金沢支判昭36.5.2下集35=6.399.
1972 吉川経夫 改訂刑法総論P79    
1972 後藤吉成 法学研究 45(10), 132-137, 1972-10
慶応義塾大学法学研究会
専ら報復または侮辱虐待の目的をもって婦女を脅迫し裸にして撮影する行為と強制わいせつ罪の成否(最判昭和45.1.29)
性的自由  
1972 藤木英雄 刑法各論一現代型犯罪と刑法 本条は,強姦罪に該当するもの以外の個人の性的自由,差恥感情をその意に反して害する行為を禁圧することを趣旨とする。体系的にはむしろ個人的法益に対する罪とみるべきで,改正刑法草案もそのような位置づけをしている。 性欲の興奮または満足を目的とする行為で,善良の風俗に反し’一般人に差恥嫌悪の情を感じさせる性質のものをいう。要するに,性的行動のうちで公然と行なうのをはばかるような事項をいい,
1972 飯田忠雄 「刑法要説 各論」P39 一種の人格的自由としての性的自由を侵害するにある 猥褻行為について、判例は、「徒らに性欲を興奮または刺戟させ、かつ普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」行為をいうとする(最判昭二六・五・一○集五巻一○二六頁、最判昭二七・四・一集六巻五七三頁)・主観的・客観的の要件のいづれかを欠く場合には猥褻性を欠くことになる。
1972 団藤重光 刑法綱要総論追補    
1973 平出禾 「刑法各論」p130   「猥褻」という語は、刑法でも数か所で用いられているが、構成要件的行為との関連で若干の二本罪においては、相手の性的自由の侵害という点を主眼として考察することを要する。本罪における猥褻の行為は(乳房・股間)などに接触する行為を主とし、これに準ずる行為を含むと解する
1973 平野龍一 平野竜一「刑法各論の諸問題6」法学セミナー 第205号 強制猥褻罪を、性的自由に対する罪というだけでいいかも問題で
ある。暴行・脅迫を用いたし場合は、たしかに自由に対する罪といいやすい。しかし、とっさに陰部にふれた場合、「陰部にふれられない自由」が侵害されたというだけでは、自由の内容があまりにも無内容である。性的な蓋恥感情・嫌悪感情が保護法益となっていると考えたとき、右の行為の犯罪性を理解できるように思われる
 
1973 安西温 実務刑事法 刑法各論    
1974 西原春夫 刑法各論 性的自由 行為は猥褻の行為である。「狼褒」の意義については前出一五七頁参照。「狼褒の行為」という概念は、公然猥褻罪にもあらわれてくるが、本罪は性的衝動にもとづいて行なわれる犯罪であるとともに、特定被害者の性的自由を侵害するところにその特色があるから、公然狼褒罪におけるそれとは若干意味を異にし、主観、客観両面からその狼褒性を判定すべきである。すなわち、主観的には性欲を刺戟・興奮させるという動機で、客観的には性欲を刺戟・興奮させ、一般人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反する程度の行為のなされることが必要である
1974 西原春夫 現代法学全集36犯罪各論 性的自由 行為は猥褻の行為である。「猥褻」の意義については前出一五七頁参照。「猥褻の行為」という概念は、公然猥褻罪にもあらわれてくるが、本罪は性的衝動にもとづいて行なわれる犯罪であるとともに、特定被害者の性的自由を侵害するところにその特色があるから、公然猥褻罪におけるそれとは若干意味を異にし、主観、容観両面からその猥褻性を判定すべきである。すなわち、主観的には性欲を刺激・興奮させるという動機で、客観的には性欲を刺戟・興奮させ、一般人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反する程度の行為のなされることが必要であ
1974 加藤久雄 刑法200題p137 性的自由  
1975 中山研一 口述刑法各論   何が猥褻かということはきわめて規範的な概念だとされ、その限界の不明瞭さが指摘されているわけです。しかし、相手方が直接被害を受ける本罪のような場合では、たとえば局部にさわるとか、乳房に触れるとか、接吻をするとかいう行為そのものがいわば即物的な形で問題になるといってよいでしょう。たとえば、一七五条の関係では、写真や映画などでの接吻の場面が猥褻だというようなことはもう現在の常識からすれば通用しないでしょう。しかし、いやがる者に無理やり接吻を押しつけるというのはやはり強制狼蓑だといわなければなりません
1975 団藤重光 綱要各論増補 強姦を含む広義では一種の人格的自由としての自由を害する罪である わいせつの概念については第一七五条の関係で前述した()。ただ、ここでは相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなけ れぱならないので、重点が多少異るのは当然である
1975 宮澤浩一 刑法の思考と論理p12 強制猥褻は、犯人の側だけの「性欲満足」という主観的側面に限らず、被害者の性的差恥心に対する保護の面もある。  
1976 中義勝 判例コンメンタール刑法9 p343    
1976 所一彦 「団藤重光責任編集」注釈刑法補巻(1)p150 ,風俗犯としての商をももっていることはたしかであるが,むしろ主として個人の性的自由ないし貞操を保護法益とするものといわなければならない。 174条注3参照。ただし本条では相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなければならないので重点が多少異なる〈団藤・綱要394頁〉。とくに相手の身体に触れる行為の場合にそうであろう。
1976 植松正  再訂刑法概論Ⅱ各論    
1976 植松正 再訂刑法概論Ⅱ各論    
1976 藤木英雄 刑法講義各論初版 、暴力で性的欲求の満足を図ることを主たる目的としてなされる罪であるので、風俗犯罪という面ばかりでなく、私人の身体の安全、性に関する自由の侵害という要素が強く含まれている わいせつ行為とは、性交を除くその他一切の性的欲望を満足させる行為あるいは人の性的差恥心を害する行為、すなわち強姦罪として処罰される以外の、個人の性的自由、差恥感情をその意に反して侵害する行為をいう
1977 大塚仁 注解増補第2版    
1977 大塚仁 注解増補第2版    
1977 大塚仁 注解増補第2版   a. 「猥褻ノ行為」とは, 「徒らに性欲を興奮または刺戟せしめ,且つ普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反する」行為をいう(名古屋高金沢支判昭36.5.2下集35=6.399.
1978 西原春夫 刑法判例百選Ⅱ各論 110頁 1978年4月発行 III 個人的法益に対する罪 2 人格的法益に対する罪 強制わいせつ罪における主観的要素 西原春夫: 性的自由  
1979 団藤重光 「刑法綱要 総論 改訂版」(昭和54年 創文社)p118    
1979 井上正治 江藤孝 全訂刑法学 各則 性的自由  
1981 中義勝 刑法各論初版5刷 姦淫の罪は人の性生活に関する身体および行為の自由を侵害する点に特色を有するものてあるからr これを自由に対する罪として考えるのが適当である わいせつを一般的に定義すれば、「徒らに性慾を興奮または刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」ということになるであろう。
1984 団藤重光  刑法綱要. 総論 -- 改訂版(付第2追補)    
1984 西原春夫 「強制猥褻罪における主観的要素」刑法判例百選Ⅱ各論[第二版] 36頁    
1984 佐伯千仭 刑法講義総論p186    
1984 佐伯千仭 刑法各論訂正版   猥褻行為とは、性欲の満足または挑発に向けられた行為で、健全な常識から見て羞恥嫌悪の情を起させるような性質の挙動であり判例の言葉を借りれば、徒らに性欲を興奮または刺激し、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道徳観念に反する行為をいう
1984 団藤重光 綱要各論増補 性的自由 猥褻の概念については一七五条の関係で前述した。ただ、ここでは相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなければならないので、重点が多少異なるのは当然である。しかし、性的自由の見地からみて猥褻行為とされるものは、性的風俗の見地からみても猥褻性を帯びるものといえる
1984 西原春夫 刑法判例百選Ⅱ各論[第二版] 36頁 1984年4月発行 I 個人的法益に対する罪 2 人格的法益に対する罪 強制猥褻罪における主観的要素  性的自由  
1985 団藤重光 綱要各論改訂版 性的自由 猥褻の概念については一七五条の関係で前述した耐認にと。ただ、ここでは相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなければならないので、重点が多少異なるのは当然である。しかし、性的自由の見地からみて猥褻行為とされるものは、性的風俗の見地からみても猥褻性を帯びるものといえる
1986 福田平,大塚仁 対談刑法総論    
1986 福田平,大塚仁 対談刑法総論    
1986 大谷実 基本法コンメンタール第3版刑法 性的自由ないし性的感情 猥褻行為とは、相手方が性的な蓋恥・嫌悪感情を抱くと一般に考えられる行為をいう
1987 川端博 事例式演習刑法1987主観的違法要素 P40 羞恥心  
1988 法務総合研究所 研修教材刑法各論 改訂版   猥褻の行為とは, 徒らに性欲を興奮又は刺激させ, かつ,普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反するような行為をいう(名高金沢支判昭3652 下集3.5=6.399)
1988 団藤重光 刑法綱要総論 -- 改訂版 増補.    
1988 福田平 全訂刑法各論 性生活に関する風俗を害する面があることは否定できないが、主として人の人格的自由の一種としての性的自由の侵害を内容とする罪である 狼褒行為の意義については、公然狼褒罪の項(前出狼褒・重婚罪〔二〕(二一二七頁参照)ですでに述べたところであるが、本罪は、被害者の性的自由に対する罪としての性格をもつものであるので、本罪の隈褒行為は、性生活の風俗に対する罪としての公然狼褒罪のそれと若干ニュアンスをことにす
1989 黒木忍  刑法各論 風俗に対する罪は、現代社会における性生活や経済生活、それに宗教生活に共通する善良な風俗を保護しようとするものである 猥褻とは、徒らに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反することである。
1989 佐伯仁志 判例タイムズ708号 63頁  1989年11月15日 展望判例法 刑法 強制猥褻罪における猥褻概念  性的自由  
1990 団藤重光 刑法綱要総論第3版P132    
1990 坂本武志 刑法各論   猥褻の行為については、公然猥褻罪に関して述べたところである
1991 中森喜彦 「刑法各論」63頁 性的羞恥心 端的に、人の性的羞恥心を害する行為をいうとすれば足りる(内田一五八頁、曽根六二頁)o
1992 沼野輝彦 大谷実「要説コンメンタール刑法各論(罪)」P173 性的自由  
1992 大野平吉 刑法判例百選Ⅱ各論第三版 32頁 1992年4月発行 I 個人的法益に対する罪 2 人格的法益に対する罪 強制猥褻罪における主観的要素     
1993 花井哲也 「刑法講義 各論Ⅰp106    
1994 辻本義男 刑法学概要各論〔改訂版〕 本条の猥褻の行為は、善良な風俗の保護を目的とする公然狼褒罪などの狼褒行為と異なり、被害者の性的な自由の侵害に重点を置いて理解しなければならない。 本条の猥褻の行為は、善良な風俗の保護を目的とする公然狼褒罪などの狼褒行為と異なり、被害者の性的な自由の侵害に重点を置いて理解しなければならない。
1994 三原憲三 刑法各論第2版p72    
1994 大野真義、墨谷葵 「要説 刑法各論」p100   猥褻の行為であるというためには、主観的には性欲を興奮または刺激させようとする意図のもとに、客観的には普通人の正常な性的差恥心を害するに足るものでなければならない
1994 団藤・平川 法律学全集41刑法各論新版追補 性的自由 猥褻の概念については一七五条の関係で前述した。ただ、ここでは相手の性的自由の侵害ということを主眼として考えなければならない
1994 井上正治 刑法学各則 性的自由に対する罪 猥褻とは、性慾を刺戟しまたはこれを満足せしむべき行為であって、人をして差恥・嫌悪の情を生ぜしめる程度のものをいう
1994 法務総合研究所 研修教材刑法各論 3訂版P80   猥褻の行為とは, 徒らに性欲を興奮又は刺激させ, かつ,普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反するような行為をいう(名高金沢支判昭3652 下集3.5=6.399)
1994 朝倉京一 刑法各論    
1995 平川宗信 『刑法各論』(有斐閣、一九九五年) 性的自由 p199
「わいせつ」(旧規定では。「猥褻」) は,通説によれば,公然わいせつ罪・わいせつ物頒布等罪にいう「わいせつ」と基本的に同義であり, いたずらに性欲を興禽・刺激させ,普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反することをいうが.同罪が風俗犯であるのに対して本罪は性的自由を害する罪であるから,その重点を異にするとされる。しかし,保護法絡を異にする以上「わいせつ」の概念も別個にとらえられるべきであり,本罪の「わいせつ行為」の意義は,性的自由の侵害の観点から独自に論定すべきものであろう。したがって,本罪の「わいせつ行為」は,一般に性的意味がある行為であって,意に反して行うことが具体的事情のもとで性的自由の侵害とみられるものをいうと解すべきであろう(判
1996 町野 刑法各論のいまp279 を個人の性的自由 個人の性的自由を侵害する行為
1996 大塚仁 刑法概説(各論)第三版p98   「わいせつな行為」の意味について、判例は、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、を害し、善良な性的道義観念に反すること」と解している(名古屋高裁金沢支判昭36.5.2)。
1996 川端博編 刑法総論現代法学双書12    
1997 鈴木彰雄 スタッフ
刑法各論
船山泰範
清水洋雄
中村雄一
性的自由 ここでいう「わいせつな行為Jとは,一般に,「徒らに性欲を興奮又は刺
激せしめ,且つ普通人の正当な性的蓋恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること」と解される(名古屋高金沢支判昭36・5・2下集3・5= 6・399)。本罪は被害者の性的自由を保護法益とするので,公然わいせつ罪(174条)にあたらない行為でも,相手方の意思に反して無理に行う場合には本罪を構成する(たとえば,相手方の意思に反して接吻したり陰部に手をふれる行為)。
1997 日高義博 「強制猥褻罪における主観的要件」現代刑法論争2(p75 強制狼褒罪には被害者の性的自由の保護という面のほかに、現行法上は健全な社会的風俗の維持という目的もあるのである  
1997 岡野光雄 刑法要説各論全訂版p50    
1997 橋爪隆 刑法判例百選Ⅱ各論第四版 30頁 1997年5月発行 I 個人的法益に対する罪 2 人格的法益に対する罪 強制わいせつ罪における主観的要素  強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であるというのが現在の通説的見解である  
1998 大野平吉 強制わいせつ罪における主観的要素補説    
1999 西山富夫 刑法通説 各論」p55    
2001 福田平  刑法各論第三版増補版p183    
2001 東京高裁H13.9.18 東京高等裁判所判決時報刑事52巻1~12号54頁    
被告人の行為は,電車の中で着衣の上から臀部や太ももを触るという行為と同視することはできず,被害者の性的自由を不当に侵害するとともに,一般人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道徳観念に反するものであって,強制わいせつ罪にいう「わいせつ行為」に該当するものというべきである。(吉本徹也・岩瀬 徹・沼里豊滋)
2001 斉藤信治 刑法各論 個人的法誌の一種としての「性的自由」を
保護法益とする。
「わいせつな行為」とは, 普通人である限り著しく性的な嫌悪感・羞恥心をいだくであろうような形で被害者の性的自由を侵害する行為を指し(174・175条の場合とは若干事情を異にする),
2001 中川祐夫ら 刑法2(各論)p67 性的自由 「わいせつ」とは徒らに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義
観念に反することをいう
2002 但木敬一 実務刑法〔三訂版〕 公然わいせつ罪、わ
いせつ物頒布罪は社会的法益としての善良な性風俗を害する行為であるのに対し、強姦罪等は個人の性的自由が保
法益と解される
「わいせつな行為」とは、性的自由の侵害を中心に考えるべきことから、公然わいせつ罪等のわいせつとはやや観点が異なるが、基本的には一見して性的欲望を満足させるための行為と認められるものをい
2003 木村裕三、小林敬 「現代の刑法各論 補正版」(2003年 成文堂)p67    
2003 小田直樹 刑法判例百選Ⅱ各論第五版28頁 2003年4月発行 I 個人的法益に対する罪 2 人格的法益に対する罪 強制わいせつ罪における主観的要素  今日では,性的自由という個人法益を保護する罪と捉えられている。  
2003 田宮 板倉 ホーンブック刑法各論〔改訂新版〕   わいせつとは「いたずらに性欲を興奮または刺激させ,かつ,普通人の正常な.性的蓋恥心を害し,善良な性的道義観念に反するものをいう」(雌判昭26. 5.10刑集5 . 6 . 1026)とされており,後述13章のわいせつ文書等頒布罪における定義と基本的に同じに考えられる。
2004 板倉宏 刑法各論 人格的自由としての性的自由を害する罪である。 「わいせつな行為」とは,本罪は,性的自由を第一次的保護法益一社会的法益としての性風俗は第二次的法益一としていることから,公然わいせつ罪(174条)やわいせつ物頒布等の罪(175条)におけるわいせつ概念よりも広く,被害者の性的蓋恥心を害する行為ととらえるべきであろう(西田,中森)。
2005 日高 刑法各論講義ノート第3版    
2005 日高 刑法各論講義ノート第3版 本罪の保護法益は、被害者の性的自由のほかに、健全な性風俗環境の維持が考えられる。さらに、主観的違法要素は全面的に排斥しえない。  
2005 曽根威彦 刑法各論3版補正2版 個人の性的自己決定の自由ないし性的感情を侵害する犯罪である わいせつは、一般に「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的荒恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と定義されているが、強制わいせつ罪の「わいせつ」概念の定義としては、被害者の観点が欠落しており適当でない(内田158)・右の定義は、特定の被害者の性的自由を害するおそれのない行為をもわいせつと評価しうる点で広すぎるし、反面、現に被害者の性的自由を侵害していながら、右の定義に抵触しないかぎりわいせつでないとする余地を残している点で狭すぎる。
2007 斉藤彰子 アクチュアル刑法各論 伊藤ら 個人の性的自由 P88
本罪の「わいせつ」概念について,判例は,「徒らに性欲を典蒋又は刺戟せしめ, かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的同義観念に反すること」と(名古屋高金沢支判昭36・5・2下刑集3・5= 6・399) . 公然わいせつの罪におけるのと同様の定義を用いている6)。しかし,公然わいせつ罪等は健全な性風俗,公衆の性的感情に関する罪であり, したがって,そのわいせつ性は,公然と行われることが妥当かどうかという観点から定義されるのに対して,本罪の保護法益は個人の性的自由であるから,端的に,被害者の性的自由を害する行為をいうと解すべきであろう(中森64頁)
2007 松村格 日本刑法各論教科書2版 本罪の「わいせつ性」の判断基準は、一般人を基準とする「公然わいせつ罪」や「わいせつ物頒布罪」に対して、被害者の性的差恥心である。  
2008 法務総合研究所 改訂研修教材刑法各論その1 行刑法は, これを体系的に社会的法益としての公の風俗に対する罪とみている力:, その本質は,むしろ, 個人の人格的法益である性的自由に対する犯罪であり,最近の立法例はこれを個人的法益に対する罪として取り扱う傾向にある。 「わいせつな行為」とは,徒らに性欲を興奮又は刺激させ,かつ普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反するような行為(最判昭26.510下集5。6・1026)
2008 立石二六 刑法総論第3版p126    
2008 木村裕三・小林敬 「現代の刑法各論」p68    
2008 丹羽正夫 刑法判例百選Ⅱ各論第6版 32頁 2008年3月発行 Ⅰ 個人的法益に対する罪 被害者の性的自由を保護法益とみる通説が妥当であり,性風俗の維持を論拠とする必要説には十分な理由がないように思われる。  
2010 東京高裁h22.3.1     2 原判示第2の女児の下着の撮影行為について
 所論指摘のとおり,原判決が,原判示第2の女児(当時8歳。以下,単に「第2の女児」という。)のスカートを手でまくり上げた上で,その下着(パンツを指す。以下同じ。)をカメラ付き携帯電話機で撮影した被告人の行為(以下「本件撮影行為」という。)がわいせつ行為に当たると判断していることは明らかである。
 しかしながら,第2の女児のような小学校低学年の女児の下着は,スカート等の形状や女児の動作によって,日常の生活の中で他者の目に触れることがしばしばあり得るものであって,学校,公園その他の場所で,この年代の女児の下着を目にしたとしても,社会一般には,いたずらに性欲を興奮,刺激させ,性的羞恥心を害して性的道義観念に反するとはとらえられていないと思われる。無論,このような下着を単に目にする行為と,記録化する目的でこれを撮影する行為とでは,その意昧合いが異なり得るが,上記のようなこの年代の女児の下着を目にすることに対する社会通念のほか,一定のわいせつ性が認められ得る成人女性のスカート内の下着を撮影する行為(盗撮行為)であっても,強制わいせつ罪より刑の軽い迷惑防止条例違反として検挙,処罰されているのが通例であることにもかんがみると,この年代の女児の下着を撮影する行為は,通常,刑法176条の「わいせつな行為」には当たらないと解するのが相当である。そして,本件についてみても,第2の女児が犯行当時着用していたスカートは丈が短く,公園等で遊んだりしている際に,他者に下着が見えることもあり得ることが容易に想像される形状のものであって(原審甲第12号証写真添付の8,同14号証添付の写真③),本件撮影行為も,同女児のスカートをまくり上げて同女児が着用している下着をそのまま1回撮影しただけで,特に執ようであるなど別異の評価が問題となり得るような特別の態様のものではないから,本件撮影行為は,わいせつ行為には当たらないというべきである。
2010 井田良 「講義刑法学・総論」(2010年 有斐閣) p109 被害者の性的自由  
2010 設楽裕文編 「法学刑法2 各論」p28   「わいせつな行為」とは,「徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ,且つ普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する」行為をいう。
2011 高山佳奈子 楽しい刑法Ⅱ各論P76 性的自己決定権 強制わいせつ罪にいうわいせつな行為には、裸にして写真を撮る、陰部を触るなど、被害者の性的差恥心を害すべき行為があたる。
2012 山本雅昭 成瀬幸典ほか編『判例ラクティス刑法I 各論』[2012]92頁    
2012 山口厚 刑法各論第2版p72 性的自由 性的な意味を有する行為すなわち本人の性的羞恥心の対象となる行為
2013 川端博 レクチャー刑法各論3版 被害者の性的な意思決定の自由を侵害する犯罪で 徒に性欲を興奮または刺激せしめ,且つ普通人の正常な性的蒸恥心を害し,善良な性的道徳観念に反すること」をいいます(名古屋高裁金沢支判昭36. 5 . 2下刑集3巻5=6号399頁)。これは,通常は,性欲を興奮または刺激させようとする意図のもとになされますが,客観的には,一般人の正常な性的蓋恥心を害し善良な性的道徳観念に反する行為がなされることを要する趣旨であると解されます。
2014 伊藤亮吉 刑法判例百選Ⅱ 各論 第7版(2014年) 性的自由  
2014 島田良一 大野真義 加藤久雄ら刑法各論 、個人の性的自由を侵害する罪 本罪における「わいせつな行為」とは、行為者の性欲を満足させる意図のもとに、客観的にも性欲を刺激・興奮させるとともに、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為であるとされる
2014 東京高裁h26.2.13 東京高等裁判所判決速報3519 性的自由 本件犯行によって,被害者の性的自由が侵害されたことに変わりはないのであり,犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図の有無は,上記のような法益侵害とは関係を有しないものというべきである。そのような観点からしても,所論は失当である。
2015 宮崎万寿夫 主観的違法要素の再検討 青山法学論集201503    
2015 前田雅英 刑法各論講義第6版 単に性的自己決定権が害されるということではなく身体と人格的尊厳についてのより重大な侵害を伴う犯罪である わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものとされるが(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)、公然わいせつ罪わいせつ物頒布罪に関するものであり、本罪は個人の性的人格・身体を直接侵害する以上別異に考えられる
2015 中森喜彦 刑法各論第4版 個人の性的自由 人の性的自己決定権を害する行為
2015 大谷實 刑法講義各論新版第4版補訂版 性的自由及び性的感情 わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいう(金沢支判S36.5.3)~本罪は個人の性的自由及び性的感情を保護法益とするものであるから、その重点を異にし、公然わいせつ罪・わいせつ物頒布罪におけるものより広い概念となる
2016 佐藤陽子 強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について 法律時報2016.10 被害者の性的自己決定権ないし性的不可侵性 「被害者の性的差恥心を害する行為」「被害者の性的自由を害する行為」との定義は、幼児など性的差恥心・判断力を持たない者に対する保護が及ばないかのような誤った印象を与えうる。176条のわいせつな行為を、単に、性的性質を有する侵襲24)と定義した方が、被害者の性的自己決定権ないし性的不可侵性25)を十分に保護しつつも、この
ような誤解を避けられうるように思われるのである。また、176条の法定刑は比較的高く、迷惑防止条例における「卑狼な行為」などがより軽く処罰されている以上、本罪成立のためには、ある程度の重大性が必要であろう26)。以上のことから、「わいせつな行為」とは、「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と定義することができよう。
2016 松宮孝明 「刑法各論講義(第4版)」2016成文堂 p116
本条は、個人の性的自由を保護法益とするものとされている
自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという行為
2016 成瀬幸典 強制わいせつ罪の主観的要件として犯人の性的意図は必要ではないとした事例神戸地裁h280316法学教室210609号 同罪の保護法益としての性的自由の本質は「意思に反して,他者の性的衝動・性的欲求の対象として扱われないこと」にある),  
2016 和田俊憲 注釈刑法第2巻各論1p621 本罪の保護法益は,性的自由ないし性的事柄に関する自己決定権と解するのが通説である。 これは客観的に性的自由を害する行為であり,被害者の立場に立った一般人から見て客体とされることにつき一定程度以上の性的差恥心の対象となる行為をいうものと解される
2016 井田良 講義刑法学各論 その保護法益は, 身体的内密領域を侵害しようとする性的行為からの防御権という意味での性的自己決定権として捉えられるべきである 被害者の意思に反して, 上記のような身体的内密領域を侵害し、そのことにより被害者の性的蓋恥心を害し, かつ一般通常人でも性的蓋恥心を害されるであろう行為のことをいう。
2016 山中敬一 刑法各論第三版 性的自由ないし性的不可侵性 わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)
2016 井田良 入門刑法学各論 性的自由 性的自己決定権 被害者の意思に反するそして被害者の性的羞恥心を害し、かつ、普通の人でも性的羞恥心を害されるであろう行為
2016 川端博 レクチャー刑法各論第4版 性的自由 わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することをいいます(金沢支判S36.5.2)~ 本罪のわいせつ行為は被害者の性的自由の侵害の観点から把握されるべきですから、性的風俗の保護を主たる目的とする公然わいせつ罪におけるわいせつ行為ちがその内容を異にします。
2016 松原芳博 刑法各論 性的自由 わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為である(金沢支判S36.5.4)。もっても本罪では個人の性的自由が保護法益であるから第三者からみた行為の意味ではなく被害者からみた行為の意味が重要となるため 公然わいせつ罪よりも広くなる
2016 阪高裁h28.10.27   被害者の性的自由 強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され,同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである。
2017 井田良ら 井田・佐藤「新論点講義シリーズ2  刑法各論 第3版」 個人の性的自由ないし性的自己決定権 個人の性的自由ないし性的自己決定権を保護する罪であるから、被害者の意思に反してふつうの人でも性的蓋恥心を害されるであろう行為を行うとき、本罪の成立を認めるべきである
2017 島伸一 楽しい刑法Ⅱ各論第2版 性的自由に対する罪は、性的な自己決定(選択の自由)を保護するものである。身体が第一次的に保護されているわけではないことに注意を要する。刑法典の中では社会的法益に対する罪の間に規定されているが、現在では、個人に対する罪として理解することに争いはない。 わいせつ性の解釈は両罪で異なるとするのが多数説である。たとえば、人前でキスしても公然わいせつではないが、暴行・脅迫によりキスすることは強制わいせつにあたる。強制わいせつ罪にいうわいせつな行為には、裸にして写真を撮る、陰部を触るなど、被害者の性的蓋恥心を害すべき行為があたる。
2017 関哲夫 講義刑法各論 本罪は、個人の性的自由・性的自己決定を保護法益とするものである わいせつとは、被害者の性的自由性的自己決定を侵害するものをいうと解すれば十分で、性的羞恥心ではなく、性的自由・性的自己決定を重視する区別説が妥当です。
2017 橋本正博 刑法各論 ここでは, さしあたって,性的自由に対する犯罪とする立場に立つ 「わいせつな行為」とは,被害者の性的差恥心を害する行為であって,通常人であれば著しく性的な嫌悪感・差恥心を抱くであろう行為をいう。風俗の観点から考盧される社会的法益に対する罪の場合に比較して,個人的法益に対する罪におけるわいせつ性は,問題となる行為が行われる場合に個人の性的自己決定に基づく必要があるか否かという観点から判断されるべきである。
2018 大塚裕史ら 大塚ら基本刑法Ⅱ各論 第2版 強制わいせつ罪等の保護法益は、通説によれば、性的自由(性的蕾恥心を
抱くような性的事項についての自己決定の自由)である。
「わいせつな行為」とは、徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいう。例えば、無理やりキスしたり、陰部に手を触れたり、裸にして写真を撮ったりすることである。
本罪のわいせつは、個人の性的自由との関係が重要なので、性的風俗との関係が問題になる公然わいせつ罪におけるわいせつよりも広い概念である。
2018 大谷實 刑法各論第5版 個人の性的自由および感情を保護法益とする 「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮または刺激させ,かつ,普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいう。わいせつの意義は,性的風俗を保護法益とする公然わいせつ罪(174条)およびわいせつ物頒布等罪(175条)における「わいせつ」と基本的には同じであるが( 334頁, 336頁),本罪は個人の性的自由・感情を保護法益とする罪であるから, その重点を異にし,原則としてそれらの犯罪よりも広い概念
となる。例えば,接吻や陰部に手を触れる行為など,単に人の正常な差恥心を害するにすぎない行為であっても, わいせつな行為となる(新潟地判昭和63.8.26判時1299・152)。
2018 川端博 レクチャー刑法各論5版 被害者の性的な意思決定の自由を侵害する犯罪です。 本罪の行為は, わいせつな行為をすることです。わいせつな行為とは, 「徒らに性欲を興奮または刺激せしめ,且つ普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反すること」をいいます(名古屋高裁金沢支判昭36. 5. 2下刑集3巻5=6号399頁)。これは,通常は,性欲を興奮または刺激させようとする意図
のもとになされますが,客観的には,一般人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道徳観念に反する行為がなされることを要する趣旨であると解されます。

本罪のわいせつ行為は,被害者の性的自由の侵害の観点から把握されるべきですから,性的風俗の保護を主たる目的とする公然わいせつ罪におけるわいせつ行為とは, その内容を異にします。
2018 西田典之(橋爪補訂) 刑法各論第7版 性的自由が保護法益である 「わいせつな行為」とは,性的自由が保護法益であることから,公然わいせつ罪(174条)におけるわいせつ概念より広く,被害者の性的差恥心を害する行為をいうと解すべきである(中森65頁)。したがって,相手の意に反して接吻する行為は,現在では公然わいせつ罪にはあたらないであろうが,本罪を構成する(東京高判昭和32. 1 .22高刑10巻1号10頁)。ただし,一般人の見地からみても性的差恥心を害する行為であることが必要であろう。
2018 井田良 「入門刑法学各論[第2版]」 176条から181条までに規定された犯罪は、個人的法益としての性的事由(性的'自己決定椎)に対する罪であり、それ以外の犯罪(特に. 174条と175条の罪が重要ですが. それらは個人的法硴に対する罪ではなく, 社会的法益〔風俗ないし道徳的秩序〕に対する罪です)とは根本的に異なります。性的自由とは,性的行為を行うかどうか、誰をパートナーとしてイ丁うかに関して自分で決めることのできる自由(それを他人に強制されない防御権)のことです. 強制わいせつ罪におけるわいせつ行為とは,被害者の意思に反する, そして,被害者の'性的蓋恥心を害し・かつ、ふつうの人でも性的差恥心を害されるであろう行為のことです。たとえば。陰部,乳房,尻や太もも等に触れる行為,全裸の写真を撮る行為, キスする行為などはその人の意思に反して行われる限りこれにあたります。その行為がそれを見る人に与えるいやらしさなとミは(174条や175条の場合とは異なり)重要ではないのです。
2018 東京高裁h30.1.30   強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
  しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。
2018 馬渡香津子 「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」ジュリスト1517号 現在では,強制わいせつ罪の保護法益を個人的法益と捉えることに異論がなく,昭和45年以降,性的な被害に係る犯罪に対する社会の受けとめ方は大きく変化しているのであって,今日では,本判決が判示しているとおり,「強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべき」であると考えられる。
 そうであるとすると,当該行為自体が客観的にみて「わいせつな行為」に該当していて,その被害者の法益が現に侵害されていると認められるにもかかわらず,独立の要件として行為者自身の性的意図を一律に要求し,それがなければ,強制わいせつ罪が成立しないとすることは,現在の性的な被害に係る犯罪に対する社会の受け止め方に照らせば,到底容認できないように思われる。
そもそも,「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。また,「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって,「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ,これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
 そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。
 本判決が,「わいせつな行為」の定義そのものには言及していないのは,このようなことが考えられたためと思われる。もっとも,本判決は,その判示内容からすれば,上記名古屋高金沢支判の示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思われる(なお,実務上,「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては,従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねを踏まえて,「わいせつな行為」の外延をさぐりつつ判断していかなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる)。
2018 嘉門優 強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について 立命館法学   このようにわいせつ概念の変更の要請が現在非常に高まっているといいうる。
ただし,仮に,本罪におけるわいせつ概念を単純に「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と理解し,さらに,判例のように,社会通念に照らして客観的に「性的意味」や「その性的な意味合いの強さ」を判断するとした場合であっても,その具体的な判断方法が問われざるをえない。学説上,判断に当たっては, 関係する部位,接触の有無・方法,継続性,強度,性的意図,その他の状況が,総合的に考慮されなければならないといわれている12)。本稿もこの結論に同意するものであるが,それぞれの要素が性的侵襲の「重大性」判断にどうかかわるのかという点についてさらに検討する必要があると思われる。
この検討に当たって,保護法益や性的侵害の内実について抽象論を繰り広げても,望ましい解答がえられるとは考えにくい。そこで,強制わいせつ罪については多くの裁判例がこれまで集積されてきていることから,次章以下において,本罪が認められた裁判例をその行為態様ごとに類型化し,その性的侵害の内実を分析するという手法を採用することとしたい。