児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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撮影型強制わいせつ罪(176条後段) 岡崎支部h30.4.12

 撮影型強制わいせつ罪(176条後段) 岡崎支部h30.4.12
 姿態をとらせて製造罪は罪数がややこしいし起訴しても重くならないので起訴しません。
 強制わいせつ罪(176条後段)5罪で求刑7年、宣告4年。
 こういうのも「わいせつ」の定義を聞くんですよ。争わなくてもよくて聞くだけでいいんです
 

【文献番号】25560152
強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所岡崎支部
平成30年4月12日刑事部判決
       判   決
       主   文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
       理   由

(犯罪事実)
 被告人は,
第1 別紙記載のB(当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,平成28年11月下旬頃から同年12月頃までの間に,別紙記載の愛知県知立市内のC小学校南校舎×階コンピュータ準備室において,同人に対し,「服脱いで。」などと言って,同人の着衣を全て脱がさせた上,同人を机の上に寝かせて,その陰部付近に手に持ったティッシュペーパーを押し当てるなどし,さらに,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第2 別紙記載のD(当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,平成29年3月17日頃,同所において,同人に対し,「けがをしているところがあるから,服脱いで。」などと言って,同人の着衣を全て脱がさせて,その陰茎を露出させた上,同人を机の上に仰向けに寝かせて,その腹部,太もも等を手で触り,さらに,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をした。
第3 別紙記載のE(当時6歳)が13歳未満であることを知りながら,同年5月上旬頃,別紙記載の同市内のF小学校南校舎△階多目的便所において,同人に対し,同人が着用していたズボン及びパンツを脱がせた上,その両脇に両手を差し込んで同人を抱き上げて机の上に座らせるなどしてその陰部を露出させ,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第4 別紙記載のG(当時6歳)が13歳未満であることを知りながら,同月中旬頃,同所において,同人に対し,同人が着用していた半ズボン及びパンツを引き下げてその陰部を露出させた上,その陰部に起動させたローターを直接押し当てるなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第5 別紙記載のH(当時6歳)が13歳未満であることを知りながら,同月下旬頃,同所において,同人に対し,「ちょっと怪我してるんじゃない?見てあげる。ここに座って。」などと言い,その両脇に両手を差し込んで同人を抱き上げて机の上に座らせ,「下脱いで。」などと言って同人に半ズボン及びパンツを下ろさせ,その陰茎を露出させた上,同人を抱き上げて同机の上に仰向けに寝かせ,同人が着用していたTシャツをめくりあげて,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,さらに,その腹部や太もも等を手で触り,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(補足説明)
1 被告人は,公判廷において,判示第2の態様につき,手で直接触ったのではなく,ティッシュペーパーを用いてDの腹部,太もも等を触った旨弁解している。
2 この点,被告人は,検察官に対し,丸めたティッシュペーパーを用いてDの腹部や太もも等に触れた後に,タオルでDの顔全体を覆わせた上で,Dの腹部や太もも等に直接触れたなどと供述している(乙11)ところ,このような事実経過についてDの供述とも矛盾せず,内容が具体的である上,Dに見られないようにその顔をタオルで隠し,行為がややエスカレートしていくなど,特徴的なエピソードを含むものとなっている。
 これに対し,被告人は,検察官に対する前記のような供述は,Hに対する事件と混同して行ったなどと弁解する。しかし,被告人において,HとDに対する各事件について,在校する小学校,学年,担任か否か,犯行場所,そこに誘い込む手口等犯行に至る経緯,犯行状況等について明確に分けて供述していること,取調べの段階では記憶になかったが,後に拘置所に移って一人で考える時間ができるようになってから直接触っていないことを思い出したという供述経過が不自然であること等からすると,弁護人が主張するように,被害者がどちらも男児であることや犯行態様に共通する部分も存すること等を踏まえても,被告人が述べるような混同があったとは認められない。
3 したがって,前記検察官に対する被告人の供述は信用できるから,被告人は,Dの腹部,太もも等を直接手で触ったと認められる。
(法令の適用)
罰条
判示各行為 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により,同法による改正前の刑法176条後段
併合罪の処理 同法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の本刑算入 同法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 約半年間のうちに連続して敢行された本件各犯行には相当の常習性が認められる。当時の勤務先の小学校内において,その勤務時間中に,教員という立場を悪用して,担任を務めていたクラスの被害児童2名や,通りがかりの被害児童3名を,治療等を装い言葉巧みに密室に連れ込んだ上で,判示の各わいせつ行為に及んだものであり狡猾というほかなく,各わいせつ行為それ自体が強度とまではいえないことを措いても,被害児童らの裸の状態等を撮影したり,性玩具を使用したりするなど,卑劣であって、実に悪質である。被告人は,平成25年7月に児童ポルノを提供した罪で罰金刑に処せられた中で本件に及んでおり,児童の教育をつかさどる教員としての立場を顧みず,性欲の赴くままに,被害児童らの人格を顧みない行動に出たことは,強い非難に値する。被害児童らの性的自由の侵害の程度は低くはない上に,心身の発達過程にある年頃で本件被害に遭い,しかも通学先の教員が加害者であったことによる被害児童やその痛みを分かつ親らの衝撃や苦痛は大きく,異口同音に怒りや悲痛な心情を吐露していることは十分理解できる。以上によれば,本件は,強制わいせつ事案の中では,比較的重い部類に属すると評価できる。
 このような点に,被告人において,被害児童1名(H)との間において示談が成立し,Hは被告人の処罰を求めない旨の意思を表示していること,被害児童2名(D,B)に対して賠償金等としてそれぞれ51万円強を供託していること,事実関係についてはほぼ認め,反省と謝罪の意思を示し,再犯防止のため,専門家の力も借りて自らの病的な性癖(DSM-5における小児性愛障害)と今後対峙していく旨の決意を示していること,前記罰金前科以外に前科がないこと,父親が出廷し今後の指導監督を誓約していること等の事情を考慮し,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 
(検察官西川和志,弁護人宮本大祐各出席)
(求刑 懲役7年)
平成30年4月12日
名古屋地方裁判所岡崎支部刑事部
裁判官 野村充