児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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田村真・岐阜地裁所長「語弊を恐れずあえて言うと、性犯罪の量刑は裁判員裁判になって重い方にシフトしたのではないか。昨年、性犯罪に関す法改正があり、強制性交等罪などの法定刑の下限が引き上げられたのは、裁判員裁判が影響を与えたと感じている。」

 起訴率が大幅に下がって、集団強姦致死傷なんて起訴されなくなったんですが、判決だけ見ているとやや重くなったんです。

裁判員制度導入から9年 地裁・田村所長に聞く ノウハウ徐々に定着 まだ発展途上 性犯罪の量刑 重い方にシフトし

2018.05.21 朝刊 14頁 中日新聞
 【岐阜県裁判員制度が導入されて、二十一日でちょうど九年。刑事裁判に市民感覚を反映させることが期待され、大々的に始まった新しい司法制度は定着が進む一方、課題も浮かぶ。制度開始前の準備段階から携わり、裁判長として七十件近い裁判員裁判を指揮した田村真・岐阜地裁所長(63)に、制度の意義や課題を聞いた。(井上仁)
 -あらためて制度の意義は。
 市民が国の統治作用に直接参加することになる。自分たちのことは自分たちで決めるという、草の根民主主義が定着する契機になれば望ましい。制度が始まると聞いた時は興奮したし、ぜひ担当したいと思った。

 -制度は定着してきたか。
 裁判員裁判では、法廷で裁判官と裁判員が目で見て、耳で聞いただけで判断しなければならない。(導入される前まで)多くの法律家は裁判官が資料を読み込んで判断する「精密司法」に慣れていて、意識改革が大変だった。準備段階から試行錯誤を積み重ね、ノウハウは徐々に定着してきた。ただ、まだ発展途上。法律家が「もうこれで十分だ」と改善の意欲を失ってしまうことを心配している。

 -課題の一つに、初公判の前に事件の争点や証拠を整理する「公判前整理手続き」の長期化がある。
 刑事裁判では誤判ほど恐ろしいものはない。弁護人にきちんとした準備をさせずに、誤って有罪になることは絶対に避けなければいけない。それに配慮しつつも、時間短縮の意識は必要だ。公判前整理手続きが長くなると、証人の記憶が薄れるし、処遇が決まらないまま被告人の勾留期間が長引くのは好ましくない。
 事件にもよるが、検察官や弁護人の活動が不十分だったり、裁判官が適切に指揮できないなど、スキル不足で長引くこともある。これは経験を積むしかない。

 -法廷での審理は十分にできているか。
 不十分な点はある。事前の争点整理が適切でなく、法廷で検察官と弁護人の立証がピンぼけになることがある。証拠を絞りすぎたり、逆に多すぎたりしても、裁判員には分かりづらい。尋問技術の拙さも感じる。特に弁護人は向上の余地がある。検察官と比べて裁判員裁判を経験する機会が少ないからかもしれない。
 -裁判員の負担軽減も課題だ。
 裁判官は十分な審理や評議をしたい気持ちが強く、ゆとりのある日程を組みたいと考える。そのため、裁判員の拘束期間が長くなる。それでは仕事や生活への負担が増す。多くの人が参加できる、負担の少ない日程のバランスが重要だ。

 刺激の強い証拠を見ることも負担になるので、裁判員を選任する手続きの中で、不安がある人には申し出てもらうこともある。そうした証拠を調べる必要性も吟味していい。裁判が終わった後も、メンタル面で不調を感じた人には電話や対面で相談に応じるし、専門家のカウンセリングを受けられる態勢も整えている。

 -制度が判決に与える影響をどう感じるか。
 被告に対する公平性の問題もあり、判決が激変するのは好ましくない。影響は長いスパンで見るべきだ。ただ、間違いなくボディーブローのように効いてくるだろう。二十年後、三十年後に「ああ、変わったな」と思うのではないか。

 語弊を恐れずあえて言うと、性犯罪の量刑は裁判員裁判になって重い方にシフトしたのではないか。昨年、性犯罪に関す法改正があり、強制性交等罪などの法定刑の下限が引き上げられたのは、裁判員裁判が影響を与えたと感じている。

強制わいせつ致死傷罪 受理件数 総数 起訴件数 不起訴件数 起訴率
h18 267 250 166 51 76.5%
h19 279 157 68 69.8%
h20 284 137 83 62.3%
h21 257 117 95 55.2%
h22 273 106 125 45.9%
h23 266 109 119 47.8%
h24 271 115 118 49.4%
h25 295 136 120 53.1%
h26 287 134 121 52.5%
h27 228 113 84 57.4%
h28 246 117 82 58.8%
強姦致死傷罪 受理件数 総数 起訴件数 不起訴件数 起訴率
h18 420 390 253 110 69.7%
h19 436 239 156 60.5%
h20 367 198 137 59.1%
h21 308 139 137 50.4%
h22 295 110 148 42.6%
h23 317 128 162 44.1%
h24 286 129 135 48.9%
h25 323 123 173 41.6%
h26 281 85 165 34.0%
h27 217 104 87 54.5%
h28 166 74 73 50.3%
集団強姦致死傷 受理件数 総数 起訴件数 不起訴件数 起訴率
h18 24 31 19 8 70.4%
h19 46 23 6 79.3%
h20 29 18 4 81.8%
h21 35 21 11 65.6%
h22 16 2 11 15.4%
h23 26 17 7 70.8%
h24 22 6 8 42.9%
h25 22 9 10 47.4%
h26 29 17 8 68.0%
h27 21 8 10 44.4%
h28 15 0 12 0.0%