児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

AV強要「児童に対し,性交等をしたり,児童ポルノを製造したりしたとして,懲役3年,5年間執行猶予の有罪判決の宣告を受け」執行猶予中に行ったわいせつ電磁的記録記録媒体頒布,職業安定法違反,強要,わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件で保護観察付き執行猶予とした事例(大阪地裁h29.10.20)

 検察官控訴実刑になったようです(大阪高裁H30.3.28)

職業安定法
第六三条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
二 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

大阪地方裁判所
平成29年10月20日第6刑事部判決
       判   決
 上記の者に対するわいせつ電磁的記録記録媒体頒布,職業安定法違反,強要,わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件について,当裁判所は,検察官鈴木美香及び同藤原真心並びに私選弁護人谷岡俊英(主任)及び同菅谷幸彦各出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

被告人を懲役3年及び罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の全部の執行を猶予する。
被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。


       理   由

[罪となるべき事実]
 被告人は,インターネット通信販売サイト「△△△△△△」を運営して成人男性向けDVDを制作・販売し,同サイトで販売するための性交場面等を含むDVDにモデルとして出演させる女性を,コスプレモデル募集サイトを利用して募集し,対価を支払って自ら制作・販売する成人男性向けDVDに出演させていたものであるが,
第1
1【平成29年5月26日付け起訴状記載の公訴事実】
 平成28年10月29日午前0時32分頃,「△△△△△△」を介して購入を申し込んだ不特定の者であるbに対し,同月31日,女性器を撮影記録したわいせつな電磁的記録に係る記録媒体である「◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇」と題するDVD1枚を東京都渋谷区α□丁目□□番□号cビル□◆にある「△△△△△△」事務所兼撮影スタジオ(以下「東京撮影スタジオ」という。)から宅配便で発送し,同年11月1日,兵庫県伊丹市β□丁目□□番地d□□□号室にあるb方に到着させ,その頃,同所において,これをbに受領させて,代金合計20万7750円(ただし,前記DVD1枚及びこれと同時に販売されたDVD20枚並びに送料750円の合計額)で販売して頒布した。
2【平成29年7月12日付け起訴状記載の公訴事実第3】
 「△△△△△△」で有償頒布する目的で,平成29年5月15日,別紙1の一覧表記載のとおり,大阪市γ区δ□番□□号e□□□□号室ほか4か所において,女性器を撮影記録したわいせつな電磁的記録に係る記録媒体である「◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇」と題するDVD合計698枚を所持した。
第2【平成29年7月12日付け起訴状記載の公訴事実第1】
 平成26年7月19日午前8時18分頃,東京撮影スタジオにおいて,成人男性向けDVDの出演者として性交等をさせる目的で,コスプレモデル募集サイトを介して応募してきた別紙2記載のC(当時18歳)と面接し,撮影承諾の確認書に氏名,生年月日等を書かせるなどして成人男性向けDVDのモデルとして出演するよう勧誘し,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った。
第3【平成29年7月12日付け起訴状記載の公訴事実第2】
 平成26年7月19日午後7時23分頃,東京撮影スタジオにおいて,Cに対し,前記第2記載の確認書に「実技エッチも私の意志でしました。」との文言を書き入れさせようとして,顔を近づけてCに対し,「書かないと帰せないよ。」などと強い口調で言って脅迫し,これに応じなければCの自由に害を加える旨告知してCを畏怖させ,よって,その頃,同所において,Cに,前記確認書に前記文言を書き入れさせ,もって人に義務のないことを行わせた。
第4【平成29年6月19日付け起訴状記載の公訴事実第1】
 平成26年11月2日,大阪市γ区δ□番□□号e□□□□号室にある被告人の撮影スタジオ(以下「大阪撮影スタジオ」という。)において,前記第2記載の目的で,コスプレモデル募集サイトを介して応募してきた別紙2記載のA(当時18歳)と面接し,Aを説得して撮影承諾の確認書に「実技エッチもあることを確認しました。」と書かせるなどして成人男性向けDVDのモデルとして出演するよう勧誘し,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った。
第5【平成29年6月19日付け起訴状記載の公訴事実第2】
 平成28年1月9日,大阪撮影スタジオにおいて,前記第2記載の目的で,コスプレモデル募集サイトを介して応募してきた別紙2記載のB(当時18歳)と面接し,Bに対し,「ほんの少しだけ露出はあるよ。特定の人にしか見られることはないから大丈夫だよ。」などと言って成人男性向けDVDのモデルとして出演するよう勧誘し,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った。
[証拠の標目]《略》
[法令の適用]
罰条
判示第1の1,2の各所為
包括して刑法175条1項前段,2項
判示第2,第4,第5の各所為
いずれも職業安定法63条2号
判示第3の所為 刑法223条1項
刑種の選択
判示第1の罪 懲役刑及び罰金刑を選択
判示第2,第4,第5の各罪
いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段
懲役刑につき 刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき 刑法48条1項
労役場留置 刑法18条(金5000円を1日に換算)
刑の全部執行猶予
懲役刑につき 刑法25条1項(5年間)
保護観察 刑法25条の2第1項前段
[量刑の理由]
(検察官の求刑:懲役3年及び罰金30万円,弁護人の科刑意見:執行猶予付き判決)
平成29年10月25日
大阪地方裁判所第6刑事部
裁判長裁判官 松田道別 裁判官 海瀬弘章 裁判官 馬場梨代

別紙1
番号 場所                    枚数
1  大阪市γ区δ□番□□号e□□□□号室    26
2  東京都渋谷区α□丁目□□番□号cビル□◆  28
3  同区ε×番××号f荘×××号室       619
4  名古屋市ζ区η×丁目×番××号g×××号室 12
5  福岡市θ区κ×丁目×番××号h××××号室 13
合計枚数                     698
別紙2
A i
B j
C k
以上