児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪は包括一罪なのに、11/13の児童淫行と11/23の児童淫行を併合罪とした事例(秋田地裁H29.10.4)

 この判決では、準強姦2罪だから処断刑期の上限を30年としていますが、児童淫行罪は包括一罪だから、かすがい現象で判示第2は科刑上一罪になって、製造罪が併合罪加重されても、処断刑期の上限は23年ですよね
 弁護人はそういうところをチェックして下さい。準強姦2罪が執行猶予になるとか主張してますけど。


第一七七条(強制性交等)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
第一七八条(準強制わいせつ及び準強制性交等)
2人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

1平成29年10月 4日 秋田地裁 事件番号不祥
PowerSort(重要判例順) 0.6
裁判区分 判決 
事件名 準強姦、児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2017WLJPCA10046008
出典
エストロー・ジャパン
主文

 被告人を懲役6年に処する。
 未決勾留日数中130日をその刑に算入する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,被害者が所属する運動クラブの監督を務め,同人の個人練習等を指導していた者であるが,同人が18歳に満たない児童であることを知りながら,
 第1  別表記載のとおり,平成28年8月6日午後5時13分頃から同日午後5時38分頃までの間,秋田県内において,同児童に,被告人が同児童の乳首をなめる姿態,同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ,これらを被告人の撮影機能付きスマートフォンで撮影し,その動画データ3点及び静止画像データ17点を同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
 第2  被害者に対し,日頃より厳しく指導して指示に従わせていたこと等により,被害者が被告人に逆らうことができない状態であることに乗じて被害者を姦淫しようと考え,
   1  同年11月13日午後2時12分頃から同日午後4時8分頃までの間,秋田県内において,同人を姦淫し
   2  同月23日午後1時15分頃から同日午後4時34分頃までの間,同所において,同人を姦淫し
 もって同人の抗拒不能に乗じて姦淫するとともに,児童に淫行をさせる行為をし
 たものである。
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号,3号に,判示第2の1及び2の所為のうち準強姦の点はいずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条2項? ,177条前段に,児童に淫行をさせる行為をした点はいずれも児童福祉法60条1項? ,34条1項6号にそれぞれ該当するところ,判示第2の1及び2の所為はいずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,いずれも刑法54条1項? 前段,10条により1罪として重い準強姦罪について定めた懲役刑で処断することとし,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条? 前段の併合罪であるから,同法47条? 本文,10条により犯情の重い判示第2の1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役6年に処し,同法21条? を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項? ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 被告人は,運動クラブ内での厳しい指導による被害者に対する絶対的な力を背景にするなどして,同人が被告人の要求を拒絶することができない状況を作出,利用して,年少の被害者を姦淫したり,卑わいな写真を撮るなどしているのであって,犯行態様は同人の人格を無視した卑劣かつ破廉恥で悪質なものであり,常習性も認められる。
 (求刑・懲役8年)
 (裁判長裁判官 三浦隆昭 裁判官 藤田壮 裁判官 佐藤惇)