児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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法益論から見た強姦罪等の改正案(嘉門) 犯罪と刑罰26号

 監護者性交・監護者わいせつの保護法益が理解できないようです。

3監護者であることによる影響力の利用について
(1)立法趣旨
第三に、本改正によって監護者であることによる影響力を利用する類型(以下、「監護者類型」と称する)が新しく規定される点が問題となる。
立案担当者によれば、実親、養親等の監護者による'8歳未満の者に対する性交等が継続的に繰り返され、それが日常化してしまっている事案などでは、特定の性交等の場面だけを見ると、暴行や脅迫を用いることなく、抗拒不能にも当たらないような状態で性交等が行われているため、強姦罪、準強姦65罪では処罰できないものがあることが立法趣旨であるとされる。
具体的には、あたらしく監護者としての影響力を利用した性犯罪類型を規定し、「'8歳未満の者」を包括的に保護している。
このような包括的な保護規定の理由として、学説上、保護法益は、「性的不可侵性の侵害」、つまり、他人の性的干渉を受けない権利を段損することであるとして、’8歳未満の者が被害者である場合に関しては、被害者側の「自由な意思決定」の侵害よりも、行為者側の「抗拒不能に陥れるような行為」に着目し、類型的に子どもの性的尊厳を侵害する行為としての処罰を検討すべきとの主張がなさ67れていた。
しかし、いくら18歳未満の未成年とはいえ、自律的な判断が可能な人と、そうでない人の区別が必要ではないだろうか。
前述のとおり、ドイツでは、児童・少年の成長度合いに合わせて、類型の区別がなされており、絶対的に保護を受けるべき年齢の客体と、判断が未熟であるため「利用」されうるとして相対的な保護を受ける年齢の客体とは区別されている。
15歳にもなれば自己の判断で自由に恋愛をすることもあり、「18歳未満の者」としてまとめてしまうのは乱暴な規定であるといわざるをえない。
さらなる疑問として、現状において、13歳以上の未成年者についても、暴行要件の拡張ないし心理的抗拒不能概念を通じて強姦罪や強制わいせつ罪、準強姦罪や準強制わいせつ罪による重い処罰が可能であることから、68監護者類型に関して立法事実は不存在であるとの指摘がなされてきた。
それに加えて、青少年保護育成条例の淫行禁止規定、児童買春規定、児童福祉法上の淫行処罰規定が存在しており、行為者の児童に対する支配性や強制の程度による区別の困難性が指摘されてきた。
そこに、未成年者の性的保護のさらなる充実化のために、今回の改正案における新しい「監護者類型」が加わることになる。
とくに、新しい監護者規定は、強姦罪・強制わいせつ罪と同じ法定刑になる予定であり、ドイツと比較しても非常に重い法定刑が設定されている。
そこで、以下では、既存の各罪と監護者類型との区別について論じる。