児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ致傷罪と姿態をとらせて製造罪は観念的競合(東京高裁h30.1.30)だったり併合罪(高松高裁h26.6.3)だったり

 公開されている裁判例でも食い違っています。
 東京高裁h24.11.1は、ダビング無しの製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)でも一個の行為ではないから併合罪としていましたが、東京高裁h30.1.30は「おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどの暴行を加え」の場合には、製造行為と一個の行為だと評価しています。

高松は併合罪

松山地裁平成26年1月22日宣告
第8
1 H(当時13歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,同月15日午後6時14分頃,同市(以下略)倉庫南側敷地内において,甘言を用いて仰向けに寝かせた同女の上に馬乗りになって同女の上半身の着衣をまくり上げる暴行を加え,その胸部を露出させ,その状況をデジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し,さらに,同女の背後から抱きつく暴行を加え,着衣の上から胸や陰部を触るなどし,もって強いてわいせつな行為をし,引き続き,同市(以下略)公園北側通路において,同女から逃れるため,同女に対し,その首を手で押さえ付け,右顔面を拳で殴るなどの暴行を加え,その際,前記暴行により,同女に加療約4日間を要する右眼窩打撲・腫脹,頭部打撲,頚部打撲の傷害を負わせた。
2 同日午後6時14分頃,前記倉庫南側敷地内において,同女が18歳未満の児童であることを知りながら,前記1のとおり,甘言を用いて仰向けに寝かせた同女の上に馬乗りになって同女の上半身の着衣をまくり上げて胸部を露出させ,その状況をデジタルカメラで撮影して同デジタルカメラに挿入されたSDカードに記録し,もって児童に衣服の一部を着けず性欲を興奮させ,かつ,刺激する姿態をとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した

法令適用
なお,判示第8の罪数関係について付言するに,判示第8の1におけるわいせつ行為には,判示第1及び第3ないし第7における場合と異なり,児童の胸部を露出させた上での撮影行為だけでなく,胸や陰部を触るという児童ポルノ製造罪の実行行為ではない行為が含まれており,加えて,被告人が児童から逃げるための暴行にも及んでいることからすると,強制わいせつ致傷と児童ポルノ製造は,その行為の一部に重なる点があるに過ぎず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,強制わいせつ致傷罪と児童ポルノ製造罪は刑法45条前段の併合罪の関係にあると判断した。

高松高裁平成26年6月3日宣告
原判示第8の罪数について論旨は,原判示第8の1の強制わいせつ致傷罪と同2の児童ポルノ製造罪の罪数については3観念的競合とすべきであるのに,これを併合罪とした原判決には,法令適用の誤りがありこれが判決に影響を及ぼすことは明らかである,というものである。
しかし,原判決がこれを併合罪であると判断したのは正当である。
所論は,原判示第8の1におけるわいせつ行為は,胸部を露出させてその状況を撮影する行為に限られるから,強制わいせつ行為と児童ポノレノ製造行為との実行行為は重なり合っているまた原判決は強制わいせつ致傷罪の関係では,わいせつ行為と逃げるための暴行行為とを一体の行為とみて単純一罪とし, 一個の行為とみているのであるから,児童ポルノ製造罪との関係でも一個の行為とみるべきである,というのである。
そこで検討するに,前記のとおり,原判示第8の1のわいせつ行為には,被害者の胸部を露出させた上で撮影する行為だけでなく着衣の上から胸や陰部を触るという行為も含まれるのであり強制わいせつ致傷罪と児童ポル露出させてその状況を撮影し,さらに着衣の上から胸や陰部を触るなどのわいせつ行為をし,逃げるために暴行を加えて傷害を負わせたという一連の行為について,原判決が強制わいせつ致傷一罪を構成すると評価したのは正当であり構成要件的観点からは一体として強制わいせつ致傷一罪を構成する3が,その観点を捨象した自然的観察の下においては,そのうちの一部の行為が児童ポルノ製造罪に触れる関係にあるというに過ぎず,それぞれにおける-4被告人の動態は社会的見解上別個のものといえるのであり,両罪を併合罪とした原判決の判断は正当である。
所論は採用できず,論旨は理由がない。


東京は観念的競合説

出典
エストロー・ジャパン
文献番号 2016WLJPCA07206016
横浜地裁平成28年 7月20日
 第7 被告人は,F(以下「F」という。)が13歳未満の男子であることを知りながら,平成25年3月10日頃,●●●において,F(当時生後8か月)に対し,おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどの暴行を加え,亀頭部を殊更露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をスマートフォン付属のカメラで撮影し,その静止画データ12点を電磁的記録媒体であるスマートフォン(平成28年押第40号符号1)内蔵の記録装置に記録して保存し,もって13歳未満の男子に強いてわいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,その際,Fに全治約5日間を要する外傷による亀頭包皮炎の傷害を負わせた。【平成27年2月26日付け追起訴の関係】

 (法令の適用)
 罰条
 判示第7の所為のうち
 強制わいせつ致傷の点
 同法181条1項(176条)
 児童ポルノ製造の点
 改正前児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項,2条3項3号
 科刑上一罪の処理 判示第1,第7及び第9ないし第11について,いずれも同法54条1項前段,10条(判示第1について1罪として犯情の最も重い別表1の番号2の児童ポルノ製造罪の刑で,判示第7について1罪として重い強制わいせつ致傷罪の刑で,判示第9ないし第11についていずれも1罪として重い強制わいせつ罪の刑でそれぞれ処断する。)
 (裁判長裁判官 片山隆夫 裁判官 大森直子 裁判官 西沢諒)

東京高裁h30.1.30も観念的競合説
D1LAW
判例ID】 28260882
【裁判官】 大熊一之 野口佳子 景山太郎
【審級関連】 <第一審>平成28年7月20日/横浜地方裁判所/第4刑事部/判決/平成26年(わ)528号...等 判例ID:28243152
【出典】 D1-Law.com判例体系

 参考までに、従前、東京高裁は、ダビング無しの製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)は併合罪としていました。奥村は弁護人ではない事件でした。

前橋地裁平成24年6月8日宣告 
監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【罪となるべき事実】
 被告人は,遊戯中の女児にわいせつな行為をしようと企て
第1 平成23年7月15日午後5時33分頃,        C公園に設置された公衆便所内に,  Å (当時6歳)を誘い込んで,同便所ドア前に立ちふさがるなどして,同女の脱出を不能にし,その頃から同日午後5時38分頃までの間,同女を不法に監禁し
第2 同日午後5時33分頃から同日午後5時38分頃までの間,同公衆便所内において,前記Å,が13歳未満であることを知りながら,同女に対し,そのズボン及びパンティを引き下げ,その陰部を手指でもてあそび,舐めるなどした上,同女をして自己の陰茎を握らせるなどし,もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をし
第3 前記Åが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後5時34分頃から同日午後5時35分頃までの間,同公衆便所内において,同児童に,その陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データを携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって,衣服の一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
第4 同年12月19日午後5時6分頃,      D     ・ 公園に設置された公衆便所内に,  B  (当時6歳)を誘い込んで,同便所ドアの内鍵を施錠して,同女の脱出を不能にし,その頃から同日午後5時13分頃までの間,同女を不法に監禁し
第5 同日午後5時6分頃から同日午後5時13分頃までの間,同公衆便所内において,前記 g が13歳未満であることを知りながら,同女に対し,そのズボン及びパンティを引き下げ,その陰部を手指でもてあそび,舐めるなどした上,同女をして自己の陰茎を握らせるなどし,もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をし
第6 前記 g が18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後5時9分頃から同日午後5時13分頃までの間,同公衆便所内において,同児童に,その陰部を露出させ,その陰部を被告人が触るなどの姿態及び同児童が被告人の陰茎を手淫する姿態をとらせ,これらを撮影機能付き携帯電話機で,2回撮影し,その動画データを携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって,衣服の一部を着けない児童の姿態あるいは他人が同児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
【証拠の標目】

【法令の適用】
1罰  条
  判示第1,第4の行為   各刑法220条
  判示第2,第5の行為   各刑法176条後段
  判示第3の行為      児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児
               童の保護等に関する法律7条3項,2条3項3号
  判示第6の行為      (包括して)同法7条3項,2条3項1号ないし
               3号
2刑種の選択
   判示第3,第6      懲役刑を選択
併合罪加重          刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯
               情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
4未決勾留日数の算入      刑法21条
5訴訟費用の不負担       刑事訴訟法181条1項ただし書
(罪数についての裁判所の判断)
1 検察官は,①被害者をトイレに監禁してわいせつ行為を行った行為(判示第1と第2,判示第4と第5)は観念的競合であり,②被害者にわいせつ行為をした行為とそれを撮影して児童ポルノを製造した行為(判示第2と第3,判示第5と第6)は併合罪で,③2名の被害者をそれぞれ撮影して児童ポルノを製造した行為(判示第3と第6)は併合罪であると主張する。
  他方,弁護人は,①被害者をトイレに監禁してわいせつ行為を行った行為(判示第1と第2,判示第4と第5)は観念的競合あるいは牽連犯であり,②被害者にわいせつ行為をした行為とそれを撮影して児童ポルノを製造した行為(判示第2と第3,判示第5と第6)は観念的競合で,③2名の被害者をそれぞれ撮影して児童ポルノを製造した行為(判示第3と第6)は包括して一罪であるから,かすがい現象により,本件は結局一罪であると主張する。
  裁判所は,いずれも併合罪と判断したので,補足する。
2 ①について
  検察官は,監禁行為はわいせつ行為を目的とし,両者がほぼ同時に行われ,監禁行為がわいせつ行為を容易にしていることから,両者は社会的に1つの行為であることを観念的競合の理由とする(弁護人も同趣旨と解される)。
  しかし,本件においては,2つの行為が同時的に併存しているとはいえ,内鍵をかけたり,ドア前に立ちはだかる行為等の監禁行為と被害者の陰部を触る等のわいせつ行為は,被告人の動態として別個である上,両罪の実行行為として重なりはない(本件では,わいせつ行為に向けられた暴行,脅迫はなく,監禁行為自体が脅迫ともとれない)から,自然的観察の下で,社会的見解上1個の行為と評価されず,観念的競合とはならない。
  また,本件では,監禁行為がわいせつ行為を目的とし,かつ,容易にしているとしても,両者は通常の手段結果の関係にはないから,牽連犯ともならない(最高判昭24・7・12参考)。
  なお,本件では,検察官も弁護人も科刑上一罪を主張しており,争いはないが,罪数判断は裁判所の判断事項であるので,検察官,弁護人にも意見を求めた上,併合罪と判断した。
 3 ②について
  弁護人は,児童の陰部を露出させて撮影することによる児童ポルノの製造行為は,撮影それ自体がわいせつ行為に該当し,両者が日時場所を同じくして行われていることから,両者が観念的競合であるとする。
  しかし,児童ポルノの製造行為と強制わいせつ行為には,一部行為に重なりがあるものの,製造行為が必ずしもわいせつ行為を伴うものでもなく,また,撮影行為を伴わないわいせつ行為も可能であるから,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,製造行為とわいせつ行為を行う被告人の本件動静は,社会的見解上別個の行為とみるべきであるから,両者は観念的競合にはならず,併合罪とするのを相当とする。
4 ③について
  弁護人は,2名の被害者についての児童ポルノは,いずれも同じ携帯電話機で撮影されたもので,流通の危険を生じさせる可能性は1つであるから,包括一罪であるという。
  しかし,1つの記録媒体を使用したものであっても,撮影の日時場所,児童も異にして行われた製造行為は,別々の製造罪と評価できるからに包括一罪とはならず,別個に製造罪が成立し,併合罪となるのを相当とする。
 平成24年6月8日
  前橋地方裁判所刑事部第2部
      裁判官  野口佳子

判例番号】 L06720804
       監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決
【判決日付】 平成24年11月1日
【掲載誌】  高等裁判所刑事判例集65巻2号18頁
       高等裁判所刑事裁判速報集平成24年158頁
       東京高等裁判所判決時報刑事63巻1~12号220頁
       判例タイムズ1391号364頁
       判例時報2196号136頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 判例時報2238号161頁
       法学新報123巻1~2号227頁
 2 法令適用の誤りの論旨について
  (1) 児童ポルノ該当性について
    所論は,原判示第3及び第6の動画は,一般人を基準とすれば性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらない旨主張する。しかし,被告人は,原判示第3については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影,記録し,同第6については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させ,その陰部を被告人が触るなどの姿態をとらせ,これらを撮影,記録したのであるから,これらの動画の上記部分は,各被害児童の年齢が当時6歳であったことを考慮しても,社会通念上,一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに該当する。
  (2) 罪数関係について
   ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
     所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いずれも,①性的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して被告人の性的欲求を満足させる行為であるから,監禁行為とわいせつ行為は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。
     そこで検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いずれも,わいせつ行為をする目的で公衆トイレ内に誘い込んだ後,内鍵を施錠したり(原判示第4),ドアの前に立ちふさがるなどして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものであるが,わいせつ行為に及んでいること自体がドア前に立ちはだかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行為が終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんど重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのドアの前に立ちふさがるなどして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりながらわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉じこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基づく一体的な動態というべきであるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合の関係にあるものと解される。
   イ 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
     所論は,原判示の各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪について,いずれも,①被告人が,被害児童に陰部を露出させる姿態等をとらせ,これらを撮影した行為は,撮影行為も含めて全体として,児童ポルノ法7条3項に触れる行為であるとともに刑法176条後段にも触れる行為であり,行為の全部が重なり合う上,わいせつ行為として同質であるから観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても包括一罪である旨主張する。
     そこでまず①の点について検討すると,その事実の概要は,被告人が,13歳未満の被害児童に対し,そのパンティ等を下ろして陰部を手指で触り,舐めるなどした上,自己の陰茎を握らせるなどする(以下,これらの行為を「直接的なわいせつ行為」という。)際に,性的欲求又はその関心を満足させるために,これらの姿態をとらせてその一部(原判示第2,第3の場合)又はそのほとんど(原判示第5,第6の場合)を携帯電話で撮影して児童ポルノを製造したというものである。
     確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為が児童ポルノ法7条3項の構成要件的行為であることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いがあるといえる。しかし,本件では,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとしたものではないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当でない。また,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為は,上記のとおり構成要件的行為ではあるが,児童ポルノ製造罪の構成要件的行為の中核は撮影行為(製造行為)にあるのであって,同罪の処罰範囲を限定する趣旨で「姿態をとらせ」という要件が構成要件に規定されたことに鑑みると,そのような姿態をとらせる行為をとらえて,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とが行為の主要な部分において重なり合うといえるかはなお検討の余地がある。
     そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。
     また,児童ポルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広がりを持って行われることが想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものであるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為が同時性を甚だしく欠く場合が想定される。したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとすると,例えば,複製行為による児童ポルノ製造罪の有罪判決が確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効が及ぶ事態など,妥当性を欠く事態が十分生じ得る。一方で,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為がない場合は観念的競合の関係にあるが,複製行為が行われれば併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必ずしもその有無が明らかになるとは限らない上,同じ撮影行為であるにもかかわらず,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価が変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
     以上のとおり,本件において,被告人の刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為は,その行為の重なり合いについて上記のような問題がある上,社会的評価において,直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為は,別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり,一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性は認められず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
     次に,②の点については,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の保護法益の相違や,上記のとおり両行為の性質が相当異なることなどからすると,包括一罪にはならないというべきである。

   ウ 各児童ポルノ製造罪の罪数関係について
     所論は,原判示の各児童ポルノ製造罪について,児童を性の対象とする風潮を防ぐという社会的法益を主な保護法益とするから,被害児童が別であっても,犯行の日時場所が乖離せず被告人の犯意が継続しており,かつ,記録媒体が同一である本件においては,包括一罪となる旨主張する。
     しかしながら,児童ポルノ製造罪は,被害児童の人格や権利も保護法益とするものであるところ,原判示第3と第6の被害児童は別人であること,各犯行は約5か月離れて場所も異なるため異なる機会に新たに犯意が形成されたものというべきであることからすると,記録媒体が同一であっても,一罪として1回の処罰によるべき事案とは考えられず,包括一罪にはならないと解すべきである。
   エ 小括
     上記アのとおり,監禁罪と強制わいせつ罪とは観念的競合の関係にあるから,これを併合罪の関係にあるとした原判決には法令適用の誤りがあるが,上記イ及びウを踏まえれば,この誤りによって最終的な処断刑の範囲は変わらないから,判決に影響を及ぼすものとはいえない。
 3 量刑不当の論旨について
   本件は,被告人が,平成23年7月と12月に,それぞれ別の被害児童を公園の公衆トイレに誘い込んでトイレ内に監禁し,その間,13歳未満の児童に対してわいせつ行為をするとともに,その姿態を携帯電話で撮影,記録したという,各2件の監禁,強制わいせつ,児童ポルノ製造の事案である。
   被告人は,いずれも公園で一人で遊んでいた見知らぬ当時6歳の児童に声をかけ,その未熟さや性的知識のなさにつけ込んで密室のトイレに誘い込み,自己の性的欲求を満たすために犯行に及んだものであり,卑劣かつ悪質な犯行である。被告人が難病による大きなストレスを抱えていたことを考慮しても,身勝手な動機に酌量の余地は乏しいと言わざるを得ない。いずれも10分足らずの犯行であったものの,陰部を舐めたり自己の陰茎を握らせるなどして射精するに至っているほか,その一部を後で見るために撮影しており犯情は極めて悪いというほかない。各被害児童は過激なわいせつ行為をされ,その顔が特定できる形で撮影までされたのであって,その精神的衝撃や不安感,不快感は大きく,成長過程における悪影響も否定できないし,その保護者らにも多大な衝撃を与えたものである。
   そうすると,被告人の刑事責任は重いというほかなく,事実を認めて反省し,謝罪の手紙を書くなどしているほか,被害児童の保護者の一人との面会を契機に更生の意を強くしていること,被告人の両親がカウンセリング等の受診を検討した上で今後の監督を約束していること,被害児童側に各80万円を支払い示談が成立していること,2万円を贖罪寄付したこと,比較的若年で前科前歴がないこと,難病を患っていること,その他所論が指摘する酌むべき事情を十分考慮しても,原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。所論は,原判決後の事情として,被告人が反省を深め,性癖矯正のため依存症治療の専門クリニックの相談員と文通を始めたことや,上記の面会した保護者が原判決の量刑は重すぎる旨の考えを示していること等を指摘するが,その責任の重大性に鑑みると,これらを考慮しても,上記の判断は変わらない。
 4 結論
   よって,論旨はいずれも理由がないから,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入し,当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 村瀬 均 裁判官 倉澤千巖 裁判官 池田知史)