児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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医師による準強制わいせつ罪(行為否認)で懲役2年実刑(長野地裁H29.12.4)

長野地方裁判所平成29年12月04日
 上記の者に対する準強制わいせつ被告事件について、当裁判所は、検察官大川晋嗣並びに国選弁護人山浦能央(主任)及び同米山秀之出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役2年に処する。
未決勾留日数中170日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、(住所略)所在のE病院に精神科医として勤務していたものであるが、自らが担当医を務めていた入院患者の●●●(以下「被害者」という。当時●●●歳。)が自閉症スペクトラムを患っており、かつ、同人の担当医(指導医)としてその退院を決定できることに乗じ、早期退院に必要な行為であるかのように装って同人にわいせつな行為をしようと考え、平成27年12月20日午後9時28分頃から同月21日午前零時8分頃までの間、埼玉県内、群馬県内又は長野県内において、同人に対し、被告人が使用する携帯電話機からアプリケーションソフト「F」を利用して、「今夜診察した方がよければ、それが早期退院につながるかもですね。」「今夜どうしても自分と会って、どんな診察になっても最短で退院になるのを望むしか無いでしょうね」「産婦人科の検査をやらないと退院できない。」などとメッセージを送信し、または、通話した上で、同日午前零時20分過ぎ頃、前記E病院本館1階B病棟●●●において、被害者に対し、「ズボンを脱いで。」「パンツも脱いで。」などと言い、同人に早期退院に必要な行為であると誤信させて同人を抗拒不能の状態に陥らせ、同人の膣内に手指を挿入し、乳房をなめるなどし、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
 (証拠の標目)
 (事実認定の補足説明)
1 弁護人は被害者に対するわいせつ行為の事実を争い、被告人からわいせつ行為を受けたとする被害者供述は信用できないと主張する。
  しかしながら、当裁判所は判示の事実を認めたので、以下、その理由を補足して説明する。
5 以上によれば、信用できる被害者供述に沿って、判示のわいせつ行為の事実を認定することができる。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法178条1項、176条前段に該当するので、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中170日をその刑に算入することとし、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 被告人は、被害者の担当医(指導医)として被害者の退院を決定できる立場と、被害者が早期の退院を望んでいることを利用して、早期の退院に必要な検査であるかのように装って、本件犯行に及んだもので、欲求本位の身勝手で卑劣な犯行である。犯行態様は、膣内に指を入れたり、乳房を直接なめるなどしたというものであり、計画性が強いものではないことや、比較的短時間であったと推察されることを考慮しても、比較的悪質な部類に属するものといえる。被害者は、担当医として信頼していた被告人からわいせつ行為を受け、大きな精神的苦痛を被っただけでなく、本件当時未成年であった被害者の人格形成に悪影響を及ぼしかねないといえる。被害者の処罰感情は厳しい。また、被告人は、前記のとおり不合理な弁解に終始しており、これまで被害者に対する慰謝の措置はとられていない。
 以上に鑑みると、被告人に前科がないことなど被告人のために酌むことのできる事情を十分に併せ考慮しても、被告人を主文の刑に処するのが相当である。
(求刑懲役3年)
刑事部
 (裁判長裁判官 室橋雅仁 裁判官 荒木精一 裁判官 加納紅実)