児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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強制性交罪(既遂)につき、酌量減軽した上で懲役3年執行猶予5年とした事例(東京地裁h29.11.15)

 法定刑は上がりましたが、量刑は変わっていないようです。酌量減軽が多用されることになりそうです。
 示談して「告訴を取り下げる」などと述べてもらえば、重視されるようです。

東京地方裁判所平成29年11月15日
主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、●●●(当時26歳。以下「被害者」という。)に強制性交をしようと考え、平成29年7月16日午前5時頃から同日午前6時15分頃までの間、東京都(以下略)当時の被告人方において、被害者に対し、その左手首を右手でつかんでベッドの上に引き倒し、同人の両肩を両手で押さえつけながら同人の唇に無理矢理接吻した上、同人の両足を両手で押さえつけるなどの暴行を加え、その反抗を抑圧して同人と性交したものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法177条前段に該当するところ、なお犯情を考慮し、同法66条、71条、68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し、情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
 被告人は、飲食店で同僚らと飲酒していた際、被害者らに声をかけて共に飲食することとなり、うまくいけばセックスできるかもしれないなどと考えて、酔った被告人を介抱するつもりの被害者に自宅内まで付き添わせ、本件犯行に及んでいる。被告人は、被害者が被告人方から帰ろうとするや、手をつかんでベッドの上に引き倒し、被害者が何度もやめて欲しいと述べて、終始抵抗していたにもかかわらず、これを意に介さず、判示のとおりの暴行を加えて、性交に及んでいる。その犯意は強固であり、被害者の人格を無視した欲望の赴くままの自己中心的な犯行であって、卑劣というほかない。被告人に対しては強い非難が妥当し、その刑事責任は重い。
 もっとも、本件では、被告人は、両親の協力の下、被害者に対して400万円を支払って示談し、被害者が宥恕の意思を示し、被害届、告訴も取り下げる意向を示している。この点は、本件の量刑を決めるに当たって一定の重みを持つ事情である。加えて、本件の暴行は同種事案の中ではそれほど強度のものとは認められないこと、さらに、被告人に前科前歴がなく、被告人の母が出廷し、今後、被告人と同居して監督していく旨述べていることなど被告人にとって酌むべき事情も認められ、これらを併せ考慮すると、被告人に対しては、酌量減軽をした上で、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑 懲役4年)
刑事第15部
 (裁判長裁判官 鈴木巧 裁判官 梶山太郎 裁判官 宇野由隆)