児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

かつて 強制わいせつ罪(176条後段)と姿態をとらせて製造罪は併合罪とされたが(東京高裁H24.11.1)、最近観念的競合に戻りつつある(東京高裁H30.1.30)

 かつて 強制わいせつ罪(176条後段)と姿態をとらせて製造罪は併合罪とされたが(東京高裁H24.11.1)、最近観念的競合に戻りつつある(東京高裁H30.1.30)
 判タの裁判官の報告書で、複製なければ観念的競合、複製あれば併合罪というのがあって、そっちに向かってるようです。
 高裁判例がぶれていてわからないので、大法廷H29.11.29では上告理由に挙げたのに取り上げられませんでした。

判例タイムズ1432号35頁
特別法を巡る諸問題[大阪刑事実務研究会]
児童ポルノ法(製造罪, 罪数)
武田正大阪地方裁判所判事
池田知史大阪地方裁判所判事
28)姿態をとらせ製造罪と性犯罪との罪数関係に関する裁判例については,奥村・前掲28頁以下,三浦・前
掲477頁以下に詳しく紹介されている。
以上を考慮すると,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとする例外的な事案を除いては,複製行為の有無や,わいせつ行為と姿態をとらせ行為の事実上の重なり合いの程度いかんを問わず,後段強制わいせつ行為と姿態をとらせ製造行為は, 「社会的見解上-個のものとの評価」を受けることはなく, したがって,両者は併合罪の関係にあると解するのが相当である

裁判年月日 平成24年11月 1日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件名 監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 控訴棄却 上訴等 確定
文献番号 2012WLJPCA11019004
主文
 本件控訴を棄却する。
 当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入する。 
理由
 1 控訴の趣意
 本件控訴の趣意は,要するに,第1に,原判決は,13歳未満の児童2名に対する監禁罪(原判示第1,第4),強制わいせつ罪(同第2,第5),児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪(同第3,第6)の成立を認めた上で,すべての罪が併合罪の関係にあるとしたが,①原判示の各被害児童を撮影した動画は,いずれも一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらないから児童ポルノ製造罪は成立しない,②各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合又は牽連犯の関係にあり,各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪は,いずれも観念的競合の関係にあるか又は包括一罪であり,各児童ポルノ製造罪は包括一罪であるから,結局,原判示第1から第6までは全体として一罪になる,したがって,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤りがある,第2に,被告人を懲役3年に処した原判決の量刑は重すぎて不当であるというのである。
 2 法令適用の誤りの論旨について
  (1) 児童ポルノ該当性について
 所論は,原判示第3及び第6の動画は,一般人を基準とすれば性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらない旨主張する。しかし,被告人は,原判示第3については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影,記録し,同第6については,女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させ,その陰部を被告人が触るなどの姿態をとらせ,これらを撮影,記録したのであるから,これらの動画の上記部分は,各被害児童の年齢が当時6歳であったことを考慮しても,社会通念上,一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに該当する。
  (2) 罪数関係について
   ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いずれも,①性的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して被告人の性的欲求を満足させる行為であるから,監禁行為とわいせつ行為は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。
 そこで検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いずれも,わいせつ行為をする目的で公衆トイレ内に誘い込んだ後,内鍵を施錠したり(原判示第4),ドアの前に立ちふさがるなどして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものであるが,わいせつ行為に及んでいること自体がドア前に立ちはだかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行為が終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんど重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのドアの前に立ちふさがるなどして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりながらわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉じこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基づく一体的な動態というべきであるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合の関係にあるものと解される。
   イ 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪について,いずれも,①被告人が,被害児童に陰部を露出させる姿態等をとらせ,これらを撮影した行為は,撮影行為も含めて全体として,児童ポルノ法7条3項に触れる行為であるとともに刑法176条後段にも触れる行為であり,行為の全部が重なり合う上,わいせつ行為として同質であるから観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても包括一罪である旨主張する。
 そこでまず①の点について検討すると,その事実の概要は,被告人が,13歳未満の被害児童に対し,そのパンティ等を下ろして陰部を手指で触り,舐めるなどした上,自己の陰茎を握らせるなどする(以下,これらの行為を「直接的なわいせつ行為」という。)際に,性的欲求又はその関心を満足させるために,これらの姿態をとらせてその一部(原判示第2,第3の場合)又はそのほとんど(原判示第5,第6の場合)を携帯電話で撮影して児童ポルノを製造したというものである。
 確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為が児童ポルノ法7条3項の構成要件的行為であることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いがあるといえる。しかし,本件では,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとしたものではないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当でない。また,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為は,上記のとおり構成要件的行為ではあるが,児童ポルノ製造罪の構成要件的行為の中核は撮影行為(製造行為)にあるのであって,同罪の処罰範囲を限定する趣旨で「姿態をとらせ」という要件が構成要件に規定されたことに鑑みると,そのような姿態をとらせる行為をとらえて,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とが行為の主要な部分において重なり合うといえるかはなお検討の余地がある。
 そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。
 また,児童ポルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広がりを持って行われることが想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものであるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為が同時性を甚だしく欠く場合が想定される。したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとすると,例えば,複製行為による児童ポルノ製造罪の有罪判決が確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効が及ぶ事態など,妥当性を欠く事態が十分生じ得る。一方で,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為がない場合は観念的競合の関係にあるが,複製行為が行われれば併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必ずしもその有無が明らかになるとは限らない上,同じ撮影行為であるにもかかわらず,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価が変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
 以上のとおり,本件において,被告人の刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為は,その行為の重なり合いについて上記のような問題がある上,社会的評価において,直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為は,別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり,一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性は認められず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 次に,②の点については,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の保護法益の相違や,上記のとおり両行為の性質が相当異なることなどからすると,包括一罪にはならないというべきである。
   ウ 各児童ポルノ製造罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各児童ポルノ製造罪について,児童を性の対象とする風潮を防ぐという社会的法益を主な保護法益とするから,被害児童が別であっても,犯行の日時場所が乖離せず被告人の犯意が継続しており,かつ,記録媒体が同一である本件においては,包括一罪となる旨主張する。
 しかしながら,児童ポルノ製造罪は,被害児童の人格や権利も保護法益とするものであるところ,原判示第3と第6の被害児童は別人であること,各犯行は約5か月離れて場所も異なるため異なる機会に新たに犯意が形成されたものというべきであることからすると,記録媒体が同一であっても,一罪として1回の処罰によるべき事案とは考えられず,包括一罪にはならないと解すべきである。
   エ 小括
 上記アのとおり,監禁罪と強制わいせつ罪とは観念的競合の関係にあるから,これを併合罪の関係にあるとした原判決には法令適用の誤りがあるが,上記イ及びウを踏まえれば,この誤りによって最終的な処断刑の範囲は変わらないから,判決に影響を及ぼすものとはいえない。
 3 量刑不当の論旨について
 本件は,被告人が,平成23年7月と12月に,それぞれ別の被害児童を公園の公衆トイレに誘い込んでトイレ内に監禁し,その間,13歳未満の児童に対してわいせつ行為をするとともに,その姿態を携帯電話で撮影,記録したという,各2件の監禁,強制わいせつ,児童ポルノ製造の事案である。
 被告人は,いずれも公園で一人で遊んでいた見知らぬ当時6歳の児童に声をかけ,その未熟さや性的知識のなさにつけ込んで密室のトイレに誘い込み,自己の性的欲求を満たすために犯行に及んだものであり,卑劣かつ悪質な犯行である。被告人が難病による大きなストレスを抱えていたことを考慮しても,身勝手な動機に酌量の余地は乏しいと言わざるを得ない。いずれも10分足らずの犯行であったものの,陰部を舐めたり自己の陰茎を握らせるなどして射精するに至っているほか,その一部を後で見るために撮影しており犯情は極めて悪いというほかない。各被害児童は過激なわいせつ行為をされ,その顔が特定できる形で撮影までされたのであって,その精神的衝撃や不安感,不快感は大きく,成長過程における悪影響も否定できないし,その保護者らにも多大な衝撃を与えたものである。
 そうすると,被告人の刑事責任は重いというほかなく,事実を認めて反省し,謝罪の手紙を書くなどしているほか,被害児童の保護者の一人との面会を契機に更生の意を強くしていること,被告人の両親がカウンセリング等の受診を検討した上で今後の監督を約束していること,被害児童側に各80万円を支払い示談が成立していること,2万円を贖罪寄付したこと,比較的若年で前科前歴がないこと,難病を患っていること,その他所論が指摘する酌むべき事情を十分考慮しても,原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。所論は,原判決後の事情として,被告人が反省を深め,性癖矯正のため依存症治療の専門クリニックの相談員と文通を始めたことや,上記の面会した保護者が原判決の量刑は重すぎる旨の考えを示していること等を指摘するが,その責任の重大性に鑑みると,これらを考慮しても,上記の判断は変わらない。
 4 結論
 よって,論旨はいずれも理由がないから,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入し,当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。
  (裁判長裁判官 村瀬均 裁判官 倉澤千巖 裁判官 池田知史)