児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

淫行勧誘罪に詳しくない弁護士です。

 見かけないので、誰も分からない罪名です。

 客体が「女子」に限定されているので、最近の風潮からすると、法の下の平等に反するとか言えそうですね。
 脅迫があるのなら、強制性交等罪とか強制わいせつ罪でいけそうです。

刑法第一八二条(淫行勧誘)
 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 使われない罪名なので、注釈書の記載も僅かです。

条解刑法
l ) 本条の趣旨
本条の趣旨については,見解が分かれており,淫行の常習のない女子の保護という人格的な法益の保護を主たる目的とする見解(注釈(4)277)と,風俗の乱れの防止という社会秩序の保護を主たる目的とする見解(大コンメ2版(9)101)とがある。
2) 客体
本罪の客体は,淫行の常習のない女子である。淫行とは,淫らな性行為,すなわち,手段・動機等において健全な性道徳からは許容されない種類の性行為をいうものと解される(青少年保護育成条例の淫行に関する最大判昭60・10・23集396-413参照)。淫行の常習の有無は年齢に関係ないから13歳未満の女子であっても,淫行の常習があるとされる場合があり得る(大判大8・4・24録25-596)。しょうよう
4) 勧誘
勧誘とは,客体である女子に対し姦淫する旨の意思決定を慾渇する一切の行為をいう。金銭的な対価の提供による場合.女子と身分的,社会的関係等による影響力を利用する場合,偽計・困惑を用いる場合等が含まれる。しかし女子の意思決定の自由を奪うような暴行,脅迫等による場合は除かれる。この場合には,売春防止法7条2項の罪又は強姦罪の正犯若しくは共犯が成立するであろう。女子が既に意思決定している場合が問題となるが勧誘して姦淫させること
が必要で、あるから,女子が姦淫を実行するに当たって勧誘行為が何ら影響していないのであれば,本条に該当しないが勧誘行為が具体的な姦淫を実行する一因となっているのであれば,それが女子の自由な意思決定によるものであっても.本条に該当することになろう(注釈何回Z,大コンメ2版( 9)102)。
5)姦淫
姦淫の意義については,見解の対立があり, 177条の場合と同様に518 § 182 注6)~8)・183 注1)単なる性交と解する見解(注釈(4)322)と,本条の淫行と同様,道徳的に非難されるべき性交のうち.社会通念上刑罰をもって防止すべき違法性があるものと解する見解(大コンメ2版(9)102)がある。

判例コンメンタール刑法
(淫行勧誘)
第182 条
営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、3 年以下の懲役又は30 万円以下の罰金に処する。営利の目的が要件で、性交の相手方が不可罰で、親告罪でないことから、性的風俗に関する罪とするのが有力である。ここでの姦浅は女性本人の自由窓思による性交をさす。
今日現実には、特別法である売春防止法7 条(附惑等による売春)、児烹福祉法60 条I 項、34 条1 項6 号(淫行罪)、児童春法6 条(児童買春勧誘)などが機能しており、本条は存在意義を失っている。
なお、本条との関係上、強姦罪等の客体は淫行の常習のない女性に限られない(前出広島地判昭43 ・12 . 24) 。(地本壽美子)

http://www.sankei.com/affairs/news/180119/afr1801190005-n1.html
 アダルトビデオ(AV)に出演経験のない女性を説得し、撮影現場に派遣したとして、警視庁保安課は19日までに、淫行勧誘と労働者派遣法違反の疑いで、容疑者ら男3人を逮捕した。逮捕日は17日。
逮捕容疑は平成27年6月、画像を無修正で配信するAVであることを隠したまま女性を勧誘し、撮影現場となった東京都中野区のスタジオへ派遣、出演させるなどした疑い。
 保安課によると、女性はプロダクションに所属し、AV出演を拒否したが、容疑者らは「あなたのプロフィル写真の撮影にいくらお金がかかったと思っているの」などと言って、出演させていた。

http://news.livedoor.com/article/detail/14179746/
AV出演強要、淫行勧誘罪を適用「摘発の道、開けた」
AV出演強要が社会問題化するなか、警視庁は2016年6月、所属女性をAV撮影に派遣したとして芸能事務所社長ら3人を労働者派遣法違反(有害業務就労目的派遣)の疑いで逮捕した。

 同年10月にも、同容疑で別の芸能事務所社長ら12人を書類送検している。

 これまでは、撮影のためのわいせつな行為が有害業務にあたるとして同法や職業安定法を適用する例が多く、有罪判決も出ている。

 だが、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」(HRN、東京)事務局長の伊藤和子弁護士によると、被害者側に契約書が渡されるケースはほぼないため、契約関係や内容について被害者から詳しく聞き出して「労働者」とみなして立証するハードルが高い場合もあるという。

 また、一連の有罪判決を受けて、出演者と契約を交わす際、「雇用契約」ではなく、「業務委託」などの形をとって、労働者派遣法などによる摘発を避けようとする業界側の動きもあるという。伊藤弁護士は「淫行勧誘罪を適用した意義は大きい。AVに出たことのない女性を不当な方法で勧誘して撮影で性交渉をさせたら、シンプルに摘発する道が開けた」と話す。