児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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「わいせつな行為」とは,性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為をいう(山口厚刑法各論 第2版)

 客観的性的自由侵害行為説じゃないですよね。

山口厚刑法各論 第2版H28
p106
わいせつな行為
「わいせつな行為」とは,性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為をいう(23)。これが, 13歳以上の男女に対しては,暴行・脅迫によって強要される場合に,その者の性的な自由が害されるのである(「わいせつな行為」それ自体に,概念内在的に,法益侵害性が備わっているわけではない)
本罪の「わいせつな行為」と公然わいせつ罪(刑174条)における「わいせつな行為」とは,保護法益が異なっており,その内容は異なる。前者は,本人の(自ら行うか否かについての)性的な自由の対象となる行為であるのに対して,後者は,他人の(他人が行うことを見るか否かについての)性的な自由の対象となる行為だからである。したがって,無理やりキスをすることは,現在のわが国においては,強制わいせつ罪の成立をなお肯定しうるであろうが(東京高判昭和32・1・22高刑集10巻l号10頁参照),公然わいせつ罪の成立を肯定することはできないと解されることになる。具体的には,乳房や陰部などに触れる行為,裸にして写真撮影する行為,男性に性交を行わせる行為24)などがそれにあたる。

23) 被害者が,実際には.怒りを感じたもののまま羞恥心を感じなくとも,強制わいせつ罪は成立する。「わいせつな行為」にあたるか否かは,被害者の具体的な感受性を基準としてではなく一般的基準によって判断される。なお.7歳の女児に対する強制わいせつ罪を肯定したものとして,新潟地判昭和63'8'26判時1299号152頁参照。
・・・
主観的要件〉
判例においては,強制わいせつ罪の成立を肯定するためには, I犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図」が必要であるとする考え方を採るものが存在する (最判昭和 45・1.2 9刑集 24巻 l号 l頁)。 そこから, もっぱら被害者の女性に報復し,又はこれを侮辱し虐待する目的で,同女を襟にして写真撮影しでも,強制わいせつ罪は成立しないとされている。
しかしながら,学説においては, このような「性的意図」は,保護法益である性的自由の侵害の有無とは無関係であるとして,このような要件は不要と解すべきであるとされており(団藤491頁平野180頁大谷III頁,中森64頁.西田87頁,前田121頁林90頁など多数。これと実際上同趣旨の判決として,東京地判昭和 62.9 . 1 6判時 1294号 143頁),正当である。

山口厚 基本判例に学ぶ刑法各論2011
p18
2問題は,強制わいせつ罪が成立するためには,性的自由という法益の侵害があるだけでは足りず,本判決のいうように,「性的意図」がある場合に限られるのかということである。犯人の意図がいかなるものであれ,脅迫により裸にされて撮影されたAの性的自由が侵害されたことには変わりがない。「性的意図」といった法益侵害とは関係しない, しかも明文にない要件を要求する根拠があるかが問われることになろう。本判決に付された反対意見は,そうした処罰の限定に根拠がないとしているのである。これに対し,本判決は「性的意図」が要求される根拠について何も語るところがない
学説では,本判決と同様に,強制わいせつ罪について「性的意図」を成立要件として要求する見解は少数であり,多数の見解は,「性的意図」といった,被害者の性的自由という法益の侵害と関係のない要件を要求する理由はないと解している
本判決の後,女性を従業員として働かせる目的で同女を全裸にして写真撮影をしたという事案について,「強制わいせつの意図」があったとして強制わいせつ致傷罪(181条1項)の成立を認めた下級審裁判例があるが、そこでは.そのような意図はわいせつ行為の認識から肯定されている。これは,実質的には本判決の立場を否定したものであるといえよう。こうした裁判例や学説の動向を考えると,本判決に現在どの程度の先例的価値があるか疑問があるように思われる。

山口厚 刑法
p54
傾向犯
行為者の内心の意図ないし傾向を構成要件要素とする犯罪を傾向犯という。問題は,このような内心の意図が当該犯罪において構成要件要素とされているかにある。われているのが,強制わいせつ罪(刑176条)であり,同罪において行為者における「性的意図」が構成要件要素であるかが問題とされているo 判例は,かつてこれを肯定し強制わいせつ罪が成立するためには,わいせ・つ行為が「犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図」の下に行われることが必要であるとした(報復、侮辱、虐待の目的の場合には,強制わいせつ罪は成立しない。(最判昭和45.1.29)。
しかし,客観的にみてわいせつ行為であれば.「性的意図」の有無に関係なく,保護法益である被害者の性的自由は侵害されるのであるから, 「性的意図」を要件とする上記判例には疑問があり,その後の下級審もこの判例に従った判断を行っているわけではない(東京地判昭和62・9・16判時1294号113頁)。
26) 後述するように(139頁以下).未遂犯の戒立要件は,既遂構成要件が充足される具体的危険であり.構成要件的結果惹起の具体的危険である。

p243
(2) 構成要件
(i) わいせつな行為
わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。

p244
(3) 主観的要件
なお,判例は,かつて,強制わいせつ罪の成立を肯定するためには. 犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図」が必要で. もっぱら被害者の女性に報復し又はこれを侮辱し虐待する目的で同女を楳にして写真撮影しても,同罪は成立しないと解していた(最判昭和45.1.29刑集24巻l号l頁)。しかし学説においては,このような「性的意図」は性的自由の侵害とは無関係であり,不要であるとする見解が多数を占めており,実務においても,上記判例が実質的に維持されているか疑問である(東京地判昭和62. 9・16判時1294号143頁)。