児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦(177条後段)否認事件2件 懲役7年(高岡支部H28.12.9)

 被害者の供述だけ。裏付けがあればそれで十分です。

強姦被告事件
富山地方裁判所高岡支部判決平成28年12月9日
       主   文
 被告人を懲役7年に処する。
 未決勾留日数中160日をその刑に算入する。

       理   由

 【犯罪事実】
(平成28年3月29日付け起訴状記載の公訴事実)
第1 被告人は,平成27年9月19日午後9時30分頃,名古屋市熱田区(以下略)△△1205号室において,A(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,同人を姦淫した。
(平成28年4月19日付け起訴状記載の公訴事実)
第2 被告人は,平成27年9月23日午後3時頃,富山県南砺市(以下略)□□北東更衣室において,前記A(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,同人を姦淫した。
 【証拠】(各証拠書類に付記した番号は,検察官請求の証拠番号である。)
 【事実認定の補足説明】
1 弁護人は,第1事実について,被告人が公訴事実記載の日時に同記載のホテル1205号室におり,同室内にA(以下「被害者」という。)を招き入れたことは認めるものの,被告人が被害者を姦淫した事実はないし,第2事実について,被告人が公訴事実記載の日時に判示□□に立ち入ったことはなく,被害者を姦淫した事実もないとして,いずれの公訴事実についても被告人は無罪であると主張する。被告人もこれと同様の供述をしている。そこで,当裁判所が,被告人の強姦の実行行為を認めて各犯罪事実を認定した理由について,補足して説明する。
 なお,以下において,特に断りのない限り,平成27年の出来事等については暦年の記載を省略する。
2 前提事実
 次の事実は関係証拠から明らかに認められる。被告人においてもこれらの事実を争っていない。
 (1) 被告人は,判示□□において,「□□」の屋号で小中学生らを対象に,有償で柔道の指導を行っている者である。
 (2) 被害者(当時小学4年生)は,柔道の合同練習会において被告人に勧誘されたことを切っ掛けとして,平成25年11月頃,□□に通い始めた。そのため,被告人は,被害者の学年や年齢を認識していた。
 (3) 被告人は,(平成27年)2月8日頃,大阪府内で開催された柔道の大会からの帰途,被害者を自宅に送る際に,初めて被害者(当時小学5年生)の口唇にキスをした。
 それ以降,被告人は,柔道の練習終了後児童らが掃除をしている際に被害者を□□北東更衣室(甲5にいう師範室。以下,便宜上「更衣室」という。)に招き入れるなどして,被害者にキスをしたり,抱きしめたりすることを繰り返すようになった。キスに際し,被告人は,被害者の口腔内に自分の舌を入れることもあった。
 (4) 被告人は,被害者(当時小学6年生)及び被害者とは別の児童(当時小学3年生。以下,便宜上「B」という。)を連れて,3名で,9月19日,翌20日に開催される柔道の大会に参加するため,名古屋市内に赴き,判示ホテルに宿泊した。被告人は判示ホテル1205号室(以下,便宜上「1205号室」という。)を単独で使用し,被害者及びBは判示ホテル2020号室(以下,便宜上「2020号室」という。)を相部屋として使用した。
 (5) 被告人は,9月19日午後9時30分頃,判示ホテルの内線電話を利用して2020号室に電話をかけ,応対した被害者に対し,1205号室に来るよう求めた。被告人は,被害者に,事前にその用件については説明しなかった。なお,被害者が前記電話に応対した時点で,Bは既に就寝していた。
 (6) 被害者は,1205号室を訪れて室内に入り,被告人と2人で同室内に滞在した(被害者の同室滞在中にあった出来事については,検察官と弁護人の各主張に対立がある。)。被害者は,その後,2020号室に戻った。
 (7) 9月23日,被告人は,被害者及び他の児童らとともに,富山市内のワンダーラボという施設に行って遊び,飲食店で昼食をとるなどした後,被害者及び他の児童1名(小学4年生。以下,便宜上「C」という。)を同乗させて,被告人が運転する車で富山県南砺市方面に戻った。被告人は,まず,CをCの祖母宅まで送り届けて降車させた。その後,被告人は,被告人が運転する車で,被害者を自宅まで送り届けた(ただし,Cを送り届けた後,被害者を送り届けるまでの間の被告人の行動等について,検察官と弁護人の各主張に対立がある。)。
 (8) 9月23日当時,更衣室には,水色の敷き布団カバー(甲18の写真第14号参照。被害者はタオル,被告人はタオルケットと表現しているが,いずれも同一のものである。以下「本件カバー」という。)が置かれていた。
3 本件の証拠構造及び各供述の信用性判断
 本件において,被告人の被害者に対する姦淫行為を直接証明する証拠として被害者に対する受命裁判官の尋問調書があるところ,被告人の姦淫行為の有無等の点に関し,被害者の受命裁判官に対する供述と被告人の供述との間に食い違いがあるため,各供述の信用性について検討する。
 (1) 被害者の受命裁判官に対する供述
  ア 供述内容
 被害者は,証拠調期日において,受命裁判官に対して次のとおり供述している。
   (ア) 2月8日,大阪府内での柔道の大会の後,被害者宅に送ってもらう際に,被告人から大好きだよと言われ,初めてキスをされた。被告人から,このことは2人だけの秘密やよとも言われた。その後,週に3回ないし4回の柔道の練習の際,ほぼ毎回,被告人から更衣室に呼ばれてキスやハグをされるようになった。
   (イ) 被告人と被害者及びBは,9月19日,名古屋のホテルに宿泊したが,夕食後,被告人から,9時半に電話するからと言われた。午後9時30分頃,被告人から電話がかかり,先生の部屋に来てと言われたので,翌日の試合の打合せをするのかと思い,1205号室に行った。部屋に入ると,被告人からハグとキスをされ,ベッドに寝てと言われたので靴を脱いでベッドに上がり,横になった。被告人は,被害者の胸や乳首を触り,次いで,右手をパンツの下に入れて直接膣を触り,膣内に指を入れた。さらに,被告人は,被害者のズボンとパンツを脱かせ,シャツを胸より上に上げた。被告人は,被害者の足元に来て被害者の足を開き,被告人の陰茎を握って上下に動かし,被害者の性器に入れようとしてきた。被害者がやめてと言うと,被告人はもう少しで入るからというようなことを言った。恥ずかしかったし怖かったため,手で目をふさいでいたので,被告人が衣服を脱いだ場面は見ていない。被告人は,足と足の真ん中にいて,陰茎を被害者の性器に入れてきた。被害者は,それまでに男性経験がなかったが,膣に強い痛みを感じ,おなかの下付近がもぞもぞしたことから,陰茎を入れられたことがわかった。被害者は,これまでに骨折した経験があるが,陰茎を入れられたときの方が痛かったと思う。被害者の性器に陰茎を入れた後,被告人は,被害者に覆い被さるような体勢になっていた。1分か2分して陰茎を抜いた後,被告人は,被害者の右側にごろんと寝て,陰茎を揉むように言ってきた。被告人は,えっと言う被害者の右手を持って陰茎を包むように握らせ,上下させた。被告人がお風呂に行こうと言い,1205号室のシャワールームで被告人と一緒にシャワーを浴び,被告人が被害者の性器を洗ってくれた。セックスをされた際,助けを呼んだりしたら,被告人から,練習のときにされているように叩かれたり,蹴られたりすると思うと怖くて助けを呼べなかった。
   (ウ) 被害者は,9月23日午前,被告人及びBやCらと一緒に,富山市内にあるワンダーラボという施設に遊びに行った。昼食等の後解散することになり,被害者及びCは,被告人に車で送り届けてもらうことになった。被告人は,富山県南砺市方面に向かい,まず,CをCの祖母宅まで送り届けた。被害者は,被告人がそのまま被害者の自宅まで送ってくれるのかと思ったが,午後3時頃,被告人に□□に連れて行かれた。□□に向かう途中の車内で,被告人は,注射すると言っていたが,そのときは言葉の意味が分からなかった。被告人は,更衣室において,棚の一番下から敷き布団に敷くような水色のタオルと黄土色の座布団を出してきて床に敷いた上,服を脱いでと言ってきた。被害者は,被告人の言う事を聞かないと叩かれたり蹴られたりすると思い,言われたとおりに服を脱いだ。被告人も服を脱いでいた。被告人から寝てと言われ,仰向けに寝たところ,被告人は,被害者の足の真ん中辺りで自分の陰茎を握って上下させた後,それを被害者の性器に入れてきた。膣がかなり痛かったので痛いと言ったが,被告人は,もう少しで入るからと言い,また,陰茎を被害者の性器に入れた際は,合体したと言っていた。被告人は,上下に腰を動かしていた。被告人は,陰茎を抜いた後,性器を持ってみたいなことを言って,被害者の右手で被告人の陰茎を握らせて上下させた。被告人は,上手やねというようなことを言っていた。また,被告人は,先生は男性ホルモンが少ないから毛が薄いんやみたいなことも言っていた。被害者が疲れたと言うと,被告人は,じゃあ終わろうかと言い,ティッシュをとって陰茎を押さえていた。被害者は,服を着て,手を洗い,被告人に車で自宅まで送ってもらった。被害者は,この日生理の3日目くらいであった。このとき以外に,被害者が前記水色のタオルに触れたことはない。
   (エ) 平成28年1月30日,友人のDに任天堂DSのフレンド広場で,被告人にセックスをされたことを打ち明けた。それまで,被告人にセックスをされたことを誰にも言わなかったのは,被告人が怒ると思ったことと被害者自身柔道を続けたかったことからである。しかし,同年2月に大阪府内で柔道の大会があり,母親の付き添いなしでの宿泊が必要なため,また被告人からセックスをされると思ったので,Dに打ち明けることにした。Dから,学校の先生にも言った方がいいと助言されたので,同年2月1日,学校の先生に9月19日の件について話した。
  イ 信用性判断
   (ア) 供述自体が具体的で迫真性に富み,流れが自然であること
 被害者の前記供述は,各犯行当時の被告人の行動や発言の内容,被害者がとり又はとらされた行動経過,その際の被害者の身体の感覚や心情,本件各被害を友人に打ち明けた経緯等について具体的で,経験した者でなければ語り得ないような迫真性がある。特に,被告人が被害者に述べたという,もう少しで入るから,合体した,注射しにいく,上手やね,先生は男性ホルモンが少ないから毛が薄いんやといった発言や,被告人の陰茎を包むように握らせて上下させたこと,本件カバー等を床に敷いて性交の準備をしたことなどは,本件以前にまったく男性経験がなく,被害当時12歳(小学6年生)であった被害者が創作できるような内容とはいい難い。また,被害者は,見ていないことは見ていないと述べ,記憶にあることとないことを明確に分けて供述しており,時系列に従って述べる供述の流れも自然である。
   (イ) 客観的事実等と整合していること
    ? 科学的知見に基づき合理的な内容で信用できる証人Fの公判供述及び甲20を始めとする関係証拠によれば,更衣室から押収された本件カバーの2箇所(切り取った試料が甲20にいう試料ア,キ)に人精液の付着が認められ,それらの精子画分から検出されたDNA型が被告人のDNA型と同じ型であったことが認められる。また,同様に,本件カバーにおいて人血の付着があると推定されたうちの2箇所につき,1箇所(切り取った試料が甲20にいう試料C)から検出されたDNA型は2名以上のものの混合と考えられるところ,被告人及び被害者のものの混合として矛盾がなく,また,残る1箇所(切り取った試料が甲20にいう試料B)から検出されたDNA型も2名以上のものの混合と考えられ,被害者のものが含まれるとして矛盾がないと結論付けられたことが認められる。そして,人血の付着のうち後者(試料B)から検出されたDNA型について,被告人のDNA型の1つの座位の1つの型だけが検出されなかったものである上,その検出されなかった型には,基準となる150rfuに満たないものの,2回の検査の結果,116rfu,109rfuというピークが認められた。かかる事実は,第2事実関係のみならず,これと同種の犯行である第1事実関係についても,被害者の前記供述を強く裏付けるものと評価すべきである。
 この点について,弁護人は,被告人の公判供述に基づき,本件カバーは□□の来場者用の敷物等として利用されており,怪我をした児童等の血が付着したと考えられるとか,被告人が,被告人方に持ち帰って就寝の際の敷物として使用していたことがあり,その上で自慰行為をしたことがあるため,その際に被告人の人精液が付着した可能性があるとして,かかる事実は被害者供述の裏付けにはならない旨主張するが,後記のとおり,それらの被告人の公判供述はいずれも公判段階において初めてなされたもので,不合理な内容でもあって,信用することができない。前記の客観的事実は,被告人が本件カバーを床に敷き,その上で被害者を姦淫したという被害者の第2事実に関する供述の核心部分を裏付けるものであって,供述の信用性を相当に高めるものである。そして,第2事実と第1事実は強姦という同種の犯行であることから,この客観的事実は,第1事実の関係でも被害者供述の信用性を裏付けるものである。弁護人の前記主張を採用することはできない。
 なお,被害者は,被告人に姦淫された後,はっきりとではないものの,本件カバーを一応確認してみたところ,血は付いていなかったと供述しており,弁護人は,前記人血が姦淫時に付着したと解することはできないと主張するが,本件カバーに付着した血痕様の染みはそれほど大きなものではないと思われる上,被害者の供述によっても,くまなく丹念に観察したものではないから,血痕を見落とした蓋然性が高い。したがって,弁護人の前記主張を採用することはできない。
    ? 被害者は,受命裁判官による尋問の際に,1205号室の間取図を作成しているが,その間取図のシャワールーム(いわゆるユニットバスのうちトイレと浴槽が1区画になっている型のもの)の構造が客観的に認められるもの(甲4の現場見取図第1図参照)と整合している。しかも,被害者は,1205号室のシャワールームの構造が,被害者が宿泊した2020号室のそれと異なるものであるにもかかわらず,正確に間取りの状況を再現できている。検察官が主張するとおり,それまで男性経験がなかった被害者は,試合の打合せをすると思って赴いた客室で突如として被告人に性的行為を開始されて姦淫され,その直後に被告人の客室で一緒にシャワーを浴びるという極めて特異な体験をしたものであり,被害者に鮮明な印象を残したと考えられるから,この事実も被害者供述の信用性を一定程度高めるものである。
 この点について,弁護人は,シャワールームの構造について,被害者の記憶が正確に保持されていたかそもそも疑問である上,他の機会に宿泊したホテルの客室と混同していたり,たまたま,1205号室のシャワールームと整合する間取図を再現できたにすぎない可能性があると指摘するが,前者については,前記のとおり,むしろ印象に残りやすい特異な体験であるというべきであり,後者についても抽象的な指摘にとどまるものであって,いずれも採用することができない。
   (ウ) D及びEの公判供述と整合していること
    ? 被害者の前記供述のうち,平成28年1月30日に被害者が初めてDらに被害を打ち明けた経緯及び状況に関する部分は,D及びEの公判供述と整合している。D及びEは,公判廷において宣誓の上,偽証罪に問われる危険を冒してまで被告人に不利益な虚偽の供述をする動機がないばかりか,Dの公判供述は,被害者が初めてゲーム機の通信機能を利用して他人に本件被害を打ち明けた状況について,次のとおり,極めて具体的で,迫真性に富む内容である。また,Eの公判供述も,被害者が第1事実に係る被害を打ち明けた状況及びその内容等が具体的である上,被害者及びEが当日作成した書面の内容とよく整合している。そうすると,D及びEの各公判供述はいずれも信用性が高いものと認められるところ,被害者の前記供述部分はこれらの各供述と整合し,各供述は相互に信用性を高め合っている。
〔被害者がDに打ち明けた際のやりとり〕
被害者「柔道の先生が私のこと好きみたいねんけど」
D「何で」
被害者「柔道の練習終わるときとかに,キスとかハグとかしてくるんやぜ」
D「それやばくない」
被害者「もっとやばいことあったんやで」
D「何」
被害者「セ○クス」「柔道のみんなでホテルに行ったときに,先生の部屋でやられた」
   (エ) 供述の一貫性
 被害者の取調状況を録音・録画したBD−R(甲2,3)の証拠請求を検察官は撤回しているが,被害者の受命裁判官に対する供述内容に照らすと,被害者の捜査段階の供述から,重要な供述の変遷があることは窺われない。
 この点に関し,弁護人は,被害者は,Dに対する打明けに際し,1205号室において,被告人にベッドに座らせられたとのメッセージを送信したにもかかわらず,Eに対しては,ベッドに寝ろと言われて寝たと説明し,書面にもその旨記載されていることを指摘し,被害者の説明には重大な変遷があり,この点は被害者供述の信用性を強く減殺すべき事情であると主張する。
 しかしながら,被害者が1205号室を訪れて間もなく,被告人が被害者にキスやハグをし,その流れでベッドの上に被害者を横にならせて被害者に対する性的行為を開始したという供述の核心部分と比較すると,被告人が被害者をベッドに座らせることなく横にならせたのか,最初から横にならせたのかは供述のやや周辺に位置する事情というべきであって,弁護人がいうように被害者の説明に重大な変遷があるなどとはいえない。弁護人の前記主張を採用することはできない。
 また,弁護人は,被害者は,Eに被害を打ち明けた際に,第2事実に係る被害に言及しておらず,むしろそんなことはまだあるのかとEに聞かれて,1回だけと答えたことを指摘し,被害者は虚偽の強姦被害の回数を決めあぐねていた可能性があると主張する。
 しかしながら,被害者は,この点について,1度目の被害(第1事実)の衝撃が大きく,2度目の被害(第2事実)について少し忘れていたが,警察に行って一度しかなかったかと聞かれて思い出したと首肯できる説明をしている。そうすると,この点についても,被害者供述の信用性を減殺するものとはいえない。弁護人の前記主張も採用することができない。
   (オ) 虚偽供述の動機がないこと
 被害者は,証拠調期日において,宣誓の上,真摯な態度で供述している。被害者は,柔道が強くなりたいと思い,2年以上の間,□□に通っていた者であり,真実は姦淫された事実がなかったにもかかわらず,本件被害について供述するような動機があることは窺われない。
 この点について,弁護人は,被害者が,□□を辞めたかったにもかかわらず,いったん被告人の説得で翻意した経緯から,今度こそ辞めるために虚偽の被害申告をした可能性を示唆する。被告人も,そのような動機から被害者が虚偽の事実を周囲に打ち明けた結果,周囲の人間が話を大きくしてしまったのではないかと供述する。
 しかしながら,そもそも,被害者が,□□を辞めるだけのために,友人や担任教師に対して,実際以上に誇張して虚偽の強姦被害を打ち明ける必要はまったくない。被告人からキスやハグをされたとの実際の経過を母親(被害者の両親は,被害者が□□を辞めることに反対の意向を表明していなかった。)だけに話すなどすれば十分にその目的を達することができたことは自明である。強姦被害の申告は,打明け当時小学6年生の被害者にとって,自身が学校関係者等に事情聴取されるなど,多大な精神的苦痛を強いられるという意味で心理的に抵抗のあることであるから,なおさら上記指摘が当てはまるというべきである。
 そして,被害者は,最初に,自身が最も信頼している友人であるというDに対し,第1事実及び第2事実についての被害を打ち明けていることに照らすと,Dが話を大きくしたことはなかったと認められる。また,学校関係者を含むその後に関与した第三者によって話が大きくなったという事情もなかったと認められる。
 この点で,本件は,被害者が,警察に被害申告するまでの間に,周囲の関係者の強い働きかけ等を受けて,実際とは異なる被害を申告したり,供述したりした結果,被害者の公判供述の信用性が否定されたような事案とは完全に異なるものというべきである。
   (カ) 被害者の処女膜に裂傷や破綻が生じているとの客観証拠が請求されていないことについて
 弁護人は,医師作成の診断書や医師の供述調書の証拠請求がないのは,被害者の処女膜に損傷がないことの証左であり,そうすると被害者の前記供述は処女膜が損傷していないという客観的事実に矛盾すると主張する。
 しかしながら,仮に,本件を打ち明けた後の時点で,被害者の処女膜に損傷が生じていなかったとしても,本件各犯行以外に被告人が被害者を姦淫したことはなく,姦淫回数は合計2回であるところ,医学的にみて,女性の体格,当該処女膜輪の形状や大きさ,姦淫の態様,時間等によっては,2回の姦淫によって必ず処女膜に破綻等の損傷が生じるとはいえない上,第2事実に係る被害から被害申告まで約4か月間経過していることから,微細な裂傷などの軽微な処女膜の損傷であれば自然治癒する可能性もあるのであるから,弁護人が指摘する点が被害者供述の信用性に疑いをいれる事情となるとはいえない。弁護人の前記主張を採用することはできない。
   (キ) まとめ
 以上の点からすれば,被害者の受命裁判官に対する前記供述は,全体として信用性が高いものと認められる。