児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

CG 被告人が、不特定多数の者に提供する目的で、衣服をつけない実在する「自動」の姿態が撮影された画像データを素材として編集した画像データである児童ポルノを製造し、同一のファイルを訴外会社に送信して記憶・蔵置させるとともに、その販売を同社に委託し、不特定の者に販売することで児童ポルノを提供したという件で起訴された件につき、被告人が控訴した控訴審において、原判決が破棄され、被告人が罰金30万円に処せられた事例(東京高裁H29.1.24)

 D1-Law.com判例体系に出ました。

D1-Law.com判例体系
■28250582
平成29年01月24日
上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について、平成28年3月15日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官和久本圭介並びに弁護人山口貴士(主任)、同壇俊光、同奥村徹、同野田隼人、同北周士、同北村岳士、同歌門彩及び同吉峯耕平(いずれも私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する。
被告人を罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
原審における訴訟費用のうち、2分の1を被告人の負担とする。
本件公訴事実第2(平成25年9月3日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの)のうち、児童ポルノである画像データを含むコンピュータグラフィックス集「聖少女伝説」を提供したとする点について、被告人は無罪。

理由
1 本件の概要及び本件控訴の趣意
 本件は、被告人が、不特定又は多数の者に提供する目的で、児童の姿態が撮影された写真の画像データを素材として、画像編集ソフト等を使用して描写したコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)を作成し、このCG集をインターネットを通じて不特定又は多数の者に販売したという、児童ポルノの製造及び提供の事案である。
 本件控訴の趣意は、要するに、第1に、原判決は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下、「児童ポルノ法」という。なお、特に記載がない限り、平成26年法律第79号による改正前のものを指す。)の趣旨の解釈を誤るなどして、〈1〉実在しない児童の姿態を描写したものを処罰の対象としたという点、〈2〉児童ポルノの製造について、被写体となる児童を直接描写することを要しないとした点、〈3〉当該画像等の製造の時点、及び児童ポルノ法が施行された時点において、被写体が児童(18歳未満)であることを要しないとした点、及び、〈4〉罪数評価の点において、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、第2に、原審の訴訟手続は、罪数評価を誤った結果、併合罪関係にある事実について訴因変更を許可した点で、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある、第3に、〈1〉本件におけるCGの被写体が18歳未満である旨述べる医師の証言の信用性を一部認め、一部のCGについて児童であると認定した点、及び、〈2〉本件においてCG集の販売会社の従業員の供述の信用性を認め、情を知らない同会社の従業員をして児童ポルノを販売したとして、児童ポルノ提供罪の間接正犯を認めた点で、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、第4に、被告人を懲役1年(3年間執行猶予)及び罰金30万円に処した原判決の量刑は重すぎて不当であり、罰金刑のみとすべきである、というのである。
・・・
 3 罪数に関する主張(法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反の各論旨)について
 (1)本件3画像の製造を一罪とした点
  所論は、本件CGの製造は、異なる時間に制作された異なる画像であるところ、児童ポルノの製造は、純粋な個人的法益に対する罪であることなどからすれば、その罪数は、描写された児童の人数と描写の回数で決まるべきものであるから、本件CGの製造は併合罪の関係にある、したがって、起訴されたCGのうち、原判決が児童ポルノに該当しないと判断したCGの製造については、それぞれ無罪の宣告をするべきであるのに、これを一罪として無罪の宣告をしなかった原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるという。
  しかし、本件で起訴された児童ポルノ製造の実行行為は、パソコンの編集ソフト等を用いて個々の画像を作成した行為ではなく、被告人が、それらのCGを、CG集(聖少女伝説2)として、被告人所有のパソコンに記憶、蔵置した行為であるところ、その行為自体は一個であると評価することができる。児童ポルノ法の目的及び趣旨をどのように理解するかによって、直ちに児童ポルノ製造罪の罪数が決定されるものではない。よって、本件3画像の製造を一罪と評価した原判決の判断に誤りはない。
 (2)製造罪と提供罪を併合罪とした点
  所論は、児童ポルノの提供目的製造罪と提供罪は、罪名自体からしても、手段目的の関係にあることが明らかであり、牽連犯とすべきであるのに、原判決がこれらの関係を併合罪としたのは誤りである旨主張する。
  しかし、児童ポルノ法は、児童の権利保護のため、児童ポルノの提供行為とは別に、製造行為それ自体について、児童の権利を侵害する行為として規制の対象としているのであり、製造された児童ポルノが現実に提供された場合であっても、その製造行為の違法性を、提供罪に包摂して評価するのは相当でなく、両者は社会的に別個の行為として評価されるべきものであるから、これらを併合罪とした原判決の判断に誤りはない。
  よって、所論は採用できない。
 (3)本件3画像の提供罪を一罪とした点
  (ア) 所論は、〈1〉被告人が「聖少女伝説」をアップロードした時期と、「聖少女伝説2」をアップロードした時期とでは、1年2か月が経過しており、含まれる画像も素材画像の写真の被写体も全く異なっている上、〈2〉3名の購入者のダウンロードの時期も1年ほど離れているのであるから、児童ポルノ提供罪については、「聖少女伝説」及び「聖少女伝説2」の各CG集ごと、及び、各購入者ごとに、それぞれ児童ポルノ提供罪が成立し、それらは全て併合罪の関係になるはずである、しかるに、原判決はこれを一罪と評価した上、〈1〉原判決が全てのCGについて児童ポルノに該当すると認めなかった「聖少女伝説」の提供については、無罪を言い渡すべきであるのに、これを言い渡さなかった点で、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、〈2〉購入者を追加する内容の訴因変更は、併合罪の関係にある以上、許可すべきでないのに、これを許可した原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるという。
  (イ) まず、1名に対する児童ポルノの提供を3名に対する提供へと変更する訴因変更を許可した点について検討すると、そもそも、本件における児童ポルノ提供罪は、その構成要件上、不特定又は多数の者に提供することが予定されているから、購入者の追加は、公訴事実の同一性の範囲内であることが明らかであって、この点について訴因変更を許可した原審の訴訟手続に何ら法令違反はない。
  (ウ) 次に、提供罪の罪数について検討すると、記録によれば、被告人は、平成20年8月頃、CG集である「聖少女伝説」を完成させたこと、被告人は、Eに、同CG集の販売を委託し、そのデータを同社に送信して、同月28日以降、同CG集がインターネット上で販売されたこと、被告人は、「聖少女伝説」をアップロードした後、これを見たインターネットサイトの利用者から、他のモデルの画像のリクエストが多数寄せられたことなどから、その要望に応じて、平成21年11月頃、「聖少女伝説」と同様のCG集である「聖少女伝説2」を完成させたこと、被告人は、同CG集についても、「聖少女伝説」と同様に、Eに販売を委託したこと、同月27日以降、「聖少女伝説2」がインターネット上で販売されたことが認められる。
  これによれば、被告人は、「聖少女伝説」をアップロードした後、新たに犯意を生じて、上記アップロードの約1年3か月後に、「聖少女伝説2」をアップロードしたといえるから、前者の提供行為と後者の提供行為とは、別個の犯意に基づく、社会通念上別個の行為とみるべきであって、併合罪の関係に立つとみるのが相当である。そうすると、両者の関係が一罪に当たるとの前提に立ち、前者の提供行為について、児童ポルノに該当するものがなく、その提供に当たらないとしながら、主文で無罪を言い渡さなかった原判決には、法令の適用に誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
  論旨は理由がある。
  よって、量刑不当の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
 4 結論
  そこで、刑訴法397条1項、380条により原判決を破棄し、同法400条ただし書に従い、被告事件について更に判決する。
  原判決が認定した事実に法令を適用すると、被告人の判示第1の行為は、平成26年法律第79号附則2条により同法による改正前の児童ポルノ法7条5項、同条4項、2条3項3号に、判示第2の行為は、同法7条4項後段、2条3項3号に該当する。そこで、量刑について検討すると、起訴された34点の本件CGのうち、「聖少女伝説」に含まれる18点全てと「聖少女伝説2」に含まれる13点については児童ポルノに該当せず、本件3画像のみがこれに該当すると認められるにとどまること、本件3画像の素材画像となる写真が撮影されたのは、前記のとおり、昭和57年ないし昭和59年頃であり、本件3画像は、その当時児童であった女性の裸体を、その約25年ないし27年後にCGにより児童ポルノとして製造されたものであって、本件各行為による児童の具体的な権利侵害は想定されず、本件は、専ら児童を性欲の対象とする風潮を助長し、将来にわたり児童の性的搾取及び性的虐待につながるという点において、違法と評価されるにとどまることなどを考慮すると、違法性の高い悪質な行為とみることはできず、体刑を選択すべき事案には当たらないというべきである。そこで、各所定刑中、いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法48条2項により、判示第1及び第2の各罪の罰金の多額を合計した金額の範囲内で、被告人を罰金30万円に処し、刑法18条により、その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとし、原審における訴訟費用のうち2分の1については、刑訴法181条1項本文を適用して被告人に負担させることとする。本件各公訴事実中、公訴事実第2のうち、「聖少女伝説」を提供したとの点については、前記のとおり、犯罪の証明がないから、同法336条により、無罪を言い渡すこととする。
  よって、主文のとおり判決する。
第10刑事部
 (裁判長裁判官 朝山芳史 裁判官 杉山愼治 裁判官 市原志都)