児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「医師法上、罰金以上の刑に処せられた者には医師免許を与えないことがあると規定されています。性犯罪の加害者である学生が罰金以上の刑に処せられた後、たとえ再び別の大学の医学部に通って医師国家試験に合格しても、犯罪の悪質性からすると医師免許が与えられない可能性は高いと思います(古海健一弁護士)」ということはなく、実刑を受けても執行終了後10年経過すれば医師国家試験に合格すれば医籍登録できます。

 医師免許に際しては倫理関係の欠格事由はなく、医師免許の前科関係の欠格事由は「罰金以上の刑に処せられた者」だけなので、刑事事件でも示談で不起訴になれば欠格にあたらないし、懲役や罰金の実刑になっても刑の消滅の後は欠格がないことになります。
 古海健一弁護士がいうように「罰金以上の刑に処せられた後、たとえ再び別の大学の医学部に通って医師国家試験に合格しても、犯罪の悪質性からすると医師免許が与えられない可能性は高い」という制度はありません。
 医学生が事件を起こすと退学になって単位が足りなくなるので国家試験受験ができないとか遅れるということになります。倫理観に欠ける者をスクリーニングするのは大学しかありません。
 大学受験に際しては前科照会できないし、執行猶予満了とか刑の消滅があれば前科はない扱いになります。
 記事にするなら、倫理観に問題があっても、医師法上問題無く医師になれる点を指摘すべきだと思います。
 

刑法
第34条の2(刑の消滅)
禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

医師法
第二章 免許
第二条  医師になろうとする者は、医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
第三条  未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない。
第四条  次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一  心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二  麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三  罰金以上の刑に処せられた者
四  前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

厚生省健康政策局総務課編「医療法・医師法歯科医師法)解」1994.8
P418
三、「罰金以上の刑に処せられた者」とは、判決の言渡しがあったのち、法定の控訴期間文は上告期間を経過して判決が確定した者をいう。現に公判中の者文は控訴若しくは上告中の者は除外される。「罰金以上の刑」とは、死刑、懲役、禁鋼及び罰金を指す。旧法では、六年以上の懲役文は禁鋼以上の刑に処せられた者は絶対的欠格条件、六年未満の懲役文は禁鋼に処せられた者又は医事に関し罰金に処せられた者は相対的欠格条件としていたが、これを改めてすべて相対的欠格条件に入れ、罪状による自由裁量の余地を残すこととした(昭30.11.16医収第二四四五号、医務局回答)。
なお、執行猶予期間中の者は当然「刑に処せられた者」に含まれるが、刑に処せられることなく猶予期間を過ぎた者については、刑の言渡しの効力はなくなるから(刑法第二十七条)、第二号には該当しないものとされる。また、実際に刑の執行を受付文はその免除を得た者についても、一定年限(禁鋼以上の場合は十年、罰金以下の場合は五年)を、罰金以上の刑に処せられることなく経過した場合には刑の言渡しの効力がなくなるから(刑法第三十四条の二)、同様に第二号には該当しないものとされる。

 医師法の改正前には、前科があると旧医師法14条2号で国家試験自体が受験できない恐れがありましたが、現行法では、14条は削除されましたので、受験に支障はありません。

医療法・医師法歯科医師法)解S32
医師法
〔相対的欠格事由】
第四条
左の各号の一に該当する者には、免許を与えないことがある。
一 精神病者又は麻薬、大麻若しくはあへんの中毒者
ニ 罰金以上の刑に処せられた者
三 前号に該当する者を除く外、医事に閲し犯罪又は不正の行為のあった者
〔試験の相対的欠絡条件〕
第十四条
左に掲げる者については、医師国家試験及び医師団家試験予備試験を受けさせないことがある。
一 準禁治産者
二 第四条各号の一に該当する者
【解】本条は医師国家試験及び医師国家試験予備試験の受験資格の相対的欠格条件を規定したものであって、準禁治産者が加わっている外は第四条の免許の相対的欠絡条件通りである・

〔不正受験行為関係者に対する措置〕
第十五条
医師国家拭験又は医師国家試験予備試験に関して不正の行為があった場合には、当骸不定行為に関係のある者について、その受験を休止させ、又はその試験を無効とすることができる・
この場合においては、なお、その者について、期間を定めて試験を受けることを許さないことができる
【解】本条は医師国家拭験又は医師国家試験予備試験受験者が不正行為をなした場合の制裁規定である・不正行為が試験施行中に明かになった場合には厚生大臣はそれ以後の受験を停止し、試験終了後明らかになった場合にはその試験を無効とすることができる。試験を無効とすることは合格決定の後であっても差し支え無い。又、これとならんで犯情の重い場合には将来に対して一定期間受験を許さないこともできる

一疑義照会回答一
服役者の医師国家試験の受験資格について
〔照会】
(昭和三○・一一。一六医収二四四五)
1現在服役中の者(前科四犯)が今後受験資格を取得した場合、医師国家試験を受けることができるか。
医大を卒業し、インターン中罪を犯し現在服役中であるが服役終了後医師国家試験を受けることができるか。
〔回答.
医師法第十四条の規定に基き、情状によって医師国家試験の受験が許されないことがある。
21に準ずる。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50908?page=3
厚生労働省医政局医事課試験免許室担当者はこう説明する。
「医師国家試験を受けて合格した人に、医師免許申請の書類を提出してもらいます。申請に問題がなければ免許付与という流れとなります。

申請書類には、罰金刑以上の刑罰を受けたことがあるかを問う項目があります。あると書かれた方は、免許を与えていいかどうかの判断を個別に下します。不起訴や示談といった場合には申告義務はありません。ただし執行猶予中の場合は申告が必要です」
車を運転中のスピード違反は申告しなければならないが、婦女暴行なら逮捕されても、不起訴ならば特に問題はないというのである。
では、刑罰について虚偽の申告をした場合はどうなるのか。
「後々に申告していない犯罪歴があったことが判明した場合、虚偽申請という扱いになります。免許取得後であっても行政処分の対象になる可能性があります。一番厳しい処分は医師免許剥奪で、一番軽い処分は厳重注意です。身辺調査まではしていません。あくまで申告されないかぎりはわかりません」(前出・担当者)

まさに抜け穴だらけと言わざるをえない。
・・・
前出の古海弁護士もこう言う。
医師法上、罰金以上の刑に処せられた者には医師免許を与えないことがあると規定されています。性犯罪の加害者である学生が罰金以上の刑に処せられた後、たとえ再び別の大学の医学部に通って医師国家試験に合格しても、犯罪の悪質性からすると医師免許が与えられない可能性は高いと思います」