児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

岩手大教授(刑法)内田浩氏は「「衣服の上から抱き付いた行為」は、岩手県迷惑防止条例の「卑わいな行為」に当たる可能性がある」と言うけれど、ホテルの居室内であれば、ドア開けてパーティでもやってない限り「公共の場所」ではありません

「衣服の上から抱き付いた行為」は「暴行」で、接吻が「わいせつ行為」だから強制わいせつ罪ですよね。
 ホテルの居室内であれば、ドア開けてパーティでもやってない限り「公共の場所」ではありません

岩手県 公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例
http://www2.pref.iwate.jp/~hp0802/oshirase/seian/meiwaku/jyoubunkaisei.zenbun_H26.pdf
(卑わいな行為の禁止)
第8条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を生じさせ、若しくは嫌悪の情を催させる方法で、卑わいな行為であって次に掲げるものをしてはならない。
(1) みだりに他人の胸部、臀(でん)部、下腹部等(以下「胸部等」という。)の身体の一部に触れること(着衣の上からこれらの身体の一部に触れることを含む。)。
(2) みだりに着衣で覆われている他人の下着等(胸部等の身体の一部を含む。以下同じ。)をのぞき見すること。
(3) みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影し、若しくは撮影する目的で当該下着等を撮影することができる位置に写真機等を差し出し、又は写真機等を使用して着衣で覆われている他人の身体を透視する方法により、裸体(その一部を含む。)の映像を見、若しくは撮影すること。

合田悦三「いわゆる迷惑防止条例について」(『小林充・佐藤文哉先生 古稀祝賀刑事裁判論集 上巻』)
禁止の場所
「公共の場所」については、「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食席、遊技場その他の公共の場所」とされている。有償・無償を問わず不特定多数の者(公衆)が、自由に出入りし利用することができる場所を指すのであり(曾出・前掲331)、飲食店が閉店中であるなど公開されていないときは該当しない(安冨五六頁)。 同様に「公共の乗物」については、「汽車、電卓、乗合自動車、船舶、航空機その他公共の乗物」とされている。 有償・無償を問わず不特定多数の者(公衆)が、自由に利用することができる乗物を指す。 タクシーや貸切りのバス・列車は含まれない(會田・335頁)。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201712/20171206_33056.html
岩手日報社によると、伊達町長は10月中旬、記者が宿泊していた岩泉町内のホテルに朝早く押し掛け、何度もドアをノックして部屋に侵入。記者に無理やり抱き付いて複数回キスをしたという。記者はショックで休職状態が続いており、刑事告訴も検討している。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201712/20171210_33008.html
<岩泉町長わいせつ>刑法論・強制わいせつ該当も
強制わいせつ罪適用の可能性に言及する内田氏
 地元紙の女性記者にわいせつ行為を働いた岩手県岩泉町の伊達勝身町長(74)が9日付で辞職した。識者3人に「ジェンダー論」「議会論」「刑法論」の視点から今回の問題の本質を論じてもらった。
◎岩手大教授(刑法)内田浩氏
 町長も認めている「衣服の上から抱き付いた行為」は、岩手県迷惑防止条例の「卑わいな行為」に当たる可能性がある。抱き付く際に物理力を行使しており、暴行罪の適用もあり得る。
 被害者の主張通り、複数回キスをしたのであれば強制わいせつ罪の構成要件に該当し、6月以上10年以下の懲役となる。強制わいせつ罪は今年7月施行の改正刑法で「親告罪」の規定が外れ、告訴がなくても起訴できるようになった。
 町長はわいせつ目的を否定するが、最高裁は11月に「性的意図がなくても強制わいせつ罪は成立する」と判断を変えた。従ってわいせつ目的の有無は論点にならない。争点はキスをしたかどうかの事実認定だ。
 町長はPTSD(心的外傷後ストレス障害)による幻聴、幻覚があったと説明しており、仮に起訴された場合、刑事責任能力が問題になる可能性がある。
 ただ私が知る限り、PTSDで責任能力の有無や程度が問われ、限定責任能力が認められて刑が減軽された判例は1件しかない。
 辞職は情状酌量の要素にはなり得るが、裁判官によっては「町長の立場を利用した行為」との心証を抱くかもしれない。