児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「一般に,被害者を裸にして写真を撮影する行為は,被害者に直接触れていなくとも,わいせつ行為に当たると解されている」ので児童を脅して裸体画像を撮影送信する行為は強制わいせつ罪(岡山地裁h29.7.25)

 「一般に,被害者を裸にして写真を撮影する行為は,被害者に直接触れていなくとも,わいせつ行為に当たると解されている」そうですが、奥村が担当した高裁岡山支部とか東京高裁の事件では強制わいせつ罪ではなく強要罪となっています。同じ行為ですが、強制わいせつ罪になる方がマイナーです。
 被害者13歳未満なのに、法令適用が「強制わいせつ罪(176条前段)」になっているのはミスです。20回のわいせつ行為を単純一罪にしていますし、法令適用がバラバラです。
 「撮影」という点で一部重なり合っているのに観念的競合にならないいうのですが、判示第1の2の製造罪だけが確定してしまうと、一事不再理効で第1の1のわいせつ行為の核心である「衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ撮影」という行為を起訴できなくなりますから、強制わいせつ罪も起訴できません。結局、製造罪の一事不再理効は強制わいせつ罪にも及ぶことになります。これを公訴事実が同一だといいます。併合罪説はここで破綻します。

岡山地裁平成29年 7月25日 
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官武用訓充出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 A関係
 1(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったA(当時歳。以下「A」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年9月13日頃から同月21日頃までの間に,大阪市〈以下省略〉被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5)からAが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,Aが「C」を名乗る被告人を怒らせた旨及び「あなたが天誅リストに載っています。」「学校や家にあることないこと言われる。」「実際に学校にも来られる。」「その結果,学校に行けなくなる。」等のメッセージを送信し,さらに「C」を名乗り,「今頃きてなにいってんねんな」「天罰な」「後悔すればいいわ」「おまえがエッチ以外は何でもするって言ったんやろ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンに送信するよう要求し,同年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,●●●内のA方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成26年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,A方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を使用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,

 (法令の適用)
 罰条 第1の1,3,5,第2の1,第3の1,第4の1,第6の1の各所為
 いずれも刑法176条前段(第1の3,5を除き,包括して)
 第1の2,第2の2,第3の2,第4の2,第5の2,第6の2,第7の2,第8の2,第9の各所為
 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ処罰法」という)7条4項,2項,2条3項3号(第9を除き,包括して)
 第1の4,6の各所為
 いずれも児童ポルノ処罰法7条4項,2項,2条3項1号(第1の4は包括して)
 第5の1,第7の1,第8の1の各所為
 いずれも包括して刑法176条
 第10の各所為
 別表番号ごとに,いずれも児童ポルノ処罰法7条6項後段,前段,2条3項3号
 第11の所為
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織犯罪処罰法」という)10条1項前段
 刑種の選択 第1ないし第9につき,いずれも懲役刑
 第10,第11につき,いずれも懲役刑及び罰金刑
 併合罪の処理 刑法45条前段
 懲役刑につき,刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第1の5の罪の刑に加重)
 罰金刑につき,刑法48条1項,2項
 未決勾留日数の算入 刑法21条(懲役刑に算入)
 労役場留置 刑法18条
 没収 刑法19条1項2号,2項本文(平成29年岡地領第188号符号3,5は第1の1の,符号10は第2の1の,符号11,12は第3の1の,符号18は第1の4の,いずれも犯行供用物件)
 追徴 組織犯罪処罰法16条1項本文(第11の罪に係る同法13条1項5号の犯罪収益等に該当するが,既に費消して没収できない)
 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書


 (強制わいせつ罪の成否と児童ポルノ製造罪との罪数関係)
第1 弁護人の主張
 弁護人及び被告人は,①被害女児が自らの陰部等を撮影して被告人に送信してきた,いわゆる自撮り行為(第1の1,第2の1,第3の1,第4の1,第5の1,第6の1,第7の1(1),第8の1(1))は,わいせつ行為には当たらず,強制わいせつ罪は成立しない,②仮に強制わいせつ罪が成立するとしても,その他の強制わいせつ罪(第1の3,5,第7の1(2),第8の1(2))も含め,各児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり,一罪であると主張する。
第2 強制わいせつ罪の成否
 1 関係証拠によると,被告人は,インターネット上で知り合った11歳ないし14歳の被害女児に,第三者を装って天誅リストに載っているから被告人に謝った方がいいなどと言うとともに,謝ってきた被害女児にごめんなさいで許すわけがない,胸と顔を出した写メを送れなどと言って脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,被害女児の自宅において,衣服を脱いで乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,被害女児のスマートフォン等付属のカメラでその姿態を撮影させ,その画像データや動画データを被告人が使用するスマートフォンに送信させるなどしたことが認められる。
 2 一般に,被害者を裸にして写真を撮影する行為は,被害者に直接触れていなくとも,わいせつ行為に当たると解されているところ,本件において,被害女児らは,被告人の要求に従い,衣服を脱いで乳房や陰部等を露出したり陰部を指で開いたりする姿態をとり,それをスマートフォン等で自ら撮影して被告人に送信しているのであって,被害女児は被告人と全く面識がないこと,被害女児が撮影して送信した写真や動画は容易に複製や頒布が可能な拡散可能性の高いデータであったことなども考慮すると,被害女児らの性的羞恥心は著しく害されているといえ,被害女児らの性的な自由の侵害という点からみて,撮影者が被告人であるか被害者であるかに質的な違いは見出し難い。
 確かに,女性が密室において一人で自らの陰部等を撮影する行為が,直ちにわいせつ行為といえるかには疑問もある。しかし,本件において,被害女児らは,被告人から衣服を脱いで乳房や陰部等を露出したり陰部を指で開いたりしている写真等を自ら撮影して被告人に送信するよう要求されて,その要求どおりに撮影しているのであって,被害女児らが自らの陰部等を撮影した行為は,被告人に送信することのみを目的として行われたものである。
 また,本件においてわいせつ行為に当たるか否かが問題となっているのは,被害女児らのいわゆる自撮り行為のみではなく,自撮り行為により撮影した写真や動画を被告人のスマートフォンに送信したことまでを含めた一連の行為であって,その一連の行為は被告人も予定していたものであり,被告人は自撮り行為が行われた状況をリアルタイムで認識していないとはいえ,自撮り行為により撮影された写真や動画を予定どおり自撮り行為後間もなく認識している。
 弁護人は,このような行為がわいせつ行為に当たるとすると,子どもが自発的に撮った写真を率先して送信したのでない限り,ほぼ全ての児童ポルノ製造行為が強制わいせつ行為となると指摘するが,強制わいせつ罪の成立には,被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行脅迫が立証される必要があることなどに照らすと,その指摘は当たらない。
 また,弁護人は,同様の事案において強要罪児童ポルノ製造罪の成立を認めた裁判例(東京高判平成28年2月19日判例タイムズ1432号134頁)の存在を指摘するが,強制わいせつ罪ではなく強要罪として起訴された事案における判断であり,本件とは事案が異なる。
 3 以上によると,本件においては,被害女児らが陰部等を自ら撮影して被告人に送信するなどした行為はわいせつ行為に当たるというべきであり,強制わいせつ罪が成立する。
第3 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数
 本件において罪数が問題となっている強制わいせつ罪は,被告人が,被害女児を脅迫してその反抗を著しく困難にした上,被害女児に自らの陰部等を撮影させて被告人に送信させたり,被害女児に被告人の陰茎を口淫させたり,ビデオ通話機能で接続した状態で被害女児に陰部等を露出させて動画配信させたりしたというものである。他方,児童ポルノ製造罪は,被告人が,被害女児に陰部等を撮影させた写真を送信させてそれをa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させたり,被害女児が被告人の陰茎を口淫するなどの姿態を動画で撮影して被告人のパーソナルコンピュータに記録・蔵置したり,ビデオ通話機能で接続した状態で被害女児に陰部等を露出させた動画配信を録画機能を利用して被告人のパーソナルコンピュータに記録・蔵置したりしたというものである。
 これらに照らすと,本件のような場合,強制わいせつ罪の行為と児童ポルノ製造の行為とは,一部重なり合う部分があり,特に,被害女児に陰部等を自ら撮影の上送信させて児童ポルノを製造した場合には,相当部分が重なり合うともいえる。しかし,本件強制わいせつ行為の中核部分は,脅迫により反抗が著しく困難な状態となった被害女児に,陰部等を撮影させて送信させたり,口淫させたり,陰部等を露出させて動画配信させたりしたわいせつ行為にある一方,本件児童ポルノ製造行為の中核部分は,それらをコンピュータに保存・蔵置した製造行為にあるのであって,前記の両行為が,通常伴う関係にあるとはいえず,また,行為に同時性があるとしても,社会的事実として強い一体性・同質性までは認められない。
 そうすると,本件において,強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,社会的見解上別個のものといえるから,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあるというべきである。
 (国選弁護人溝渕順子 求刑懲役7年及び罰金100万円,主文同旨の没収・追徴)
 岡山地方裁判所第1刑事部
 (裁判官 後藤有己)