児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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匿名起訴について、関係各証拠に照らせば,判示第1の各事実及び判示第2の各事実について,検察官が,被害者の氏名を訴因に記載すれば再被害のおそれがあるとして被害者を匿名にして公訴提起した点はその時点の判断として誤っておらず,かつ,氏名以外の方法による被害者の特定は十分なものであったといずれも認められるから,検察官の各公訴提起の手続に違法はない。また,証拠調べの結果によっても,判示第1の各事実及び判示第2の各事実の被害者の氏名は明らかとならなかった。(金沢地裁h29.9.4)

 証拠上は、児童ポルノ画像で特定できるんだろうな。

金沢地方裁判所平成29年9月4日判決
       判   決
 前記の者に対するわいせつ略取未遂,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官進藤勇樹及び弁護人串田光成各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1(訴因変更後の平成29年3月24日付け起訴状記載の各公訴事実関係)
1 被害者A(当時7歳)が13歳未満であることを知りながら,平成29年1月20日午前7時30分頃,富山県射水市内の体育館駐車場に駐車した自動車内において,前記被害者Aに対し,その陰部を手で触り,その陰部に自己の陰茎を押し付けるなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をし,
2 前記日時場所において,前記被害者Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に,陰部を露出した姿態,被告人が同児童の陰部を手で触る姿態等をとらせ,これらを動画撮影機能付きスマートフォンで動画撮影して録画した上,同日頃,同県高岡市α×××番地所在の被告人方において,その動画データ1点をパーソナルコンピュータを介して電磁的記録媒体であるUSBメモリ(金沢地方検察庁平成29年領第176号符号2)に記録して保存し(データのファイル名「IMG_0362.MOV」),もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,
第2(平成29年4月21日付け起訴状記載の各公訴事実関係)
1 被害者B(当時7歳)が13歳未満であることを知りながら,平成29年1月25日午後3時9分頃から同日午後3時47分頃までの間,石川県七尾市内の公園駐車場に駐車した自動車内において,前記被害者Bに対し,その陰部をなめ,その陰部及び肛門に手指を挿入し,さらに,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をし,
2 前記日時場所において,前記被害者Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童をして前記1記載のわいせつ行為等に係る姿態をとらせ,これを自己の所有するビデオカメラで動画撮影して録画した上,同月27日午後9時13分頃から同日午後9時43分頃までの間,富山県内又はその周辺において,その動画データ18点を同ビデオカメラに挿入されたSDHCカード(金沢地方検察庁平成29年領第177号符号3)に記録して保存し,さらに,同月31日午後11時54分頃から同日午後11時56分頃までの間,富山県高岡市α×××番地被告人方において,同SDHCカードからパーソナルコンピュータ(同庁同年領第177号符号4)のハードディスクに記録して保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,
第3(平成29年3月1日付け起訴状記載の公訴事実関係)
 わいせつな行為をする目的で女児を略取しようと考え、平成29年2月1日午後2時55分頃,石川県小松市内の路上付近において,被害者C(当時8歳)に対し,その手首をつかんで引っ張り,駐車していた被告人使用車両運転席側後部ドアから同車内に連れ込み,もってわいせつの目的で略取しようとしたが,同人が同車助手席側後部ドアを開けて逃走したため,その目的を遂げなかった。
(証拠の標目)《略》
(事実認定の補足説明)
 被告人は,判示第1の2の事実のうちスマートフォンで撮影した動画データを被告人方においてパーソナルコンピュータを介してUSBメモリ(金沢地方検察庁平成29年領第176号符号2。以下「本件USBメモリ」という。)に記録して保存したという点について,記憶がない旨述べ,弁護人も,被告人と同意見であるとして,積極的に争うものではないとしつつも上記事実を否認している。 
 しかしながら,捜査報告書抄本(甲33)を始めとする関係証拠によれば,本件USBメモリには,スマートフォンであるiPhone7 Plusによって判示第1の1の強制わいせつに係る犯行状況を撮影したものであることが明らかな動画データのファイル(ファイル名「IMG_0362.MOV」)及びそれが加工され,再生時間が短縮されてファイル形式も変換された2個の動画データのファイルが記録されていたことが認められ,このことからすれば,何者かが,iPhone7 Plusで撮影された上記犯行状況に係る動画データを本件USBメモリ内に記録して児童ポルノを製造し,かつ,同データの再生時間やファイル形式につき改変を加えた2個の動画データも本件USBメモリ内に記録したことが明らかである。そして,被告人が当時iPhone7 Plusを保有・使用していたこと,上記3個の動画データの「更新日時」及び「作成日時」の各日がいずれも上記強制わいせつの犯行日と同一の平成29年1月20日であること,被告人が同年2月8日の逮捕時にその所有する本件USBメモリを所持しており,被告人自身,本件USBメモリを被告人以外の者が使用することはなかった旨述べていることに照らせば,判示第1の1の強制わいせつに係る犯行状況を撮影した動画データをiPhone7 Plusから本件USBメモリに記録する過程において,被告人以外の第三者が関与したとは考え難いというべきである。さらに,被告人方から押収された被告人所有・管理のパーソナルコンピュータから上記3個の動画データと同形式,同内容の各動画データが復元できたことが認められるところ,このことも併せ考えると,iPhone7 Plusから本件USBメモリへの動画データの移行や,改変の上での移行は,被告人自身の手によって被告人方の上記パーソナルコンピュータを使用して行われたことが強く推認される。
 したがって,被告人が,被告人方において,判示第1の1の強制わいせつに係る犯行状況をスマートフォンで撮影録画した動画データ1点をパーソナルコンピュータを介して本件USBメモリに記録して保存し(データのファイル名「IMG_0362.MOV」),児童ポルノを製造したと優に認められる。なお,動画データの改変は訴因に掲げられていないことなどから,本件USBメモリ内のその余のデータに係る児童ポルノ製造は訴因の内容になっていないものと解した。
(法令の適用)
 判示第1の1及び第2の1の各所為はいずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段に,判示第1の2の所為は包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(2条3項2号,3号),2項に,判示第2の2の所為は包括して同法7条4項(2条3項1号,2号,3号),2項に,判示第3の所為は刑法228条,225条にそれぞれ該当するところ,判示第1の2及び第2の2の各罪についていずれも所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中30日をその刑に算入することとし,金沢地方検察庁で保管中のUSBメモリ1本(同庁平成29年領第176号符号2)は判示第1の2の犯罪行為を,SDHCカード1枚(同庁同年領第177号符号3)及びパーソナルコンピュータ1台(同庁同年領第177号符号4,押収時の品名「パソコン」)は判示第2の2の犯罪行為をそれぞれ組成した物で,いずれも被告人以外の者に属しないから,刑法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収することとする。
 なお,関係各証拠に照らせば,判示第1の各事実及び判示第2の各事実について,検察官が,被害者の氏名を訴因に記載すれば再被害のおそれがあるとして被害者を匿名にして公訴提起した点はその時点の判断として誤っておらず,かつ,氏名以外の方法による被害者の特定は十分なものであったといずれも認められるから,検察官の各公訴提起の手続に違法はない。また,証拠調べの結果によっても,判示第1の各事実及び判示第2の各事実の被害者の氏名は明らかとならなかった。
(量刑の理由)
平成29年9月5日
金沢地方裁判所
裁判長裁判官 田中聖浩 裁判官 千葉康一 裁判官 新谷真梨