児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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被告人がAの排尿を介助し陰茎の異物を除去するなどの行為の際に性的意図を有しているものと推認して強制わいせつ罪(176条後段)の成立を認めた事例(横浜地裁H29.7.19)

横浜地方裁判所平成29年07月19日
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因:わいせつ誘拐、強制わいせつ)及び未成年者誘拐被告事件について、当裁判所は、検察官金岡佑樹及び私選弁護人大村俊介各出席の上審理し、次のとおり判決する。

第3 (平成29年2月28日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
 被告人は、●●●(当時4歳。以下「A」という。)が13歳未満の男子であることを知りながら、わいせつな行為をしようと考え、平成28年3月28日午後3時29分頃から同日午後3時31分頃までの間、東京都●●●公園公衆トイレ内において、Aの陰茎を手指で直接触るなどし、これを被告人が使用する前記ビデオカメラを用いて動画撮影し、もって13歳未満の男子に対し、わいせつな行為をした。
第4 (平成29年2月28日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 被告人は、Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記日時場所において、Aの陰茎を露出した姿態及び被告人がその陰茎を手指で直接触るなどの姿態をとらせ、これを前記ビデオカメラで動画撮影し、その動画データ1点を同ビデオカメラ内蔵の電磁的記録媒体である記録装置に記録して保存し、さらに、同動画データを、同日午後11時12分頃、●●●当時の被告人方において、パーソナルコンピュータ(平成29年領第736号符号4)内蔵の電磁的記録媒体であるハードディスクに記憶蔵置させ、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。

第5 (平成29年1月12日付け追起訴状記載の公訴事実関係)
 被告人は、●●●当時11歳。以下「B」という。)が未成年者であることを知りながら、Bを誘拐しようと考え、Cと共謀の上、平成28年4月17日午後1時頃、静岡県●●●のスーパーマーケット●●●(以下「本件スーパー」という。)敷地内において、以前から「お肉買ってきたからステーキ食べよう。」などの甘言を用いて誘惑していたBを、同所に駐車していた自動車内に乗車させた上、その頃から同日午後4時26分頃までの間、前記Cが所有する●●●マンション●●●(以下「本件マンション」という。)内等に連れ込み、Bを被告人及び前記Cの支配下に置き、もって未成年者を誘拐した。
第6 (訴因変更後の平成28年12月5日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
 被告人は、Bが13歳未満の男子であることを知りながら、わいせつな行為をしようと考え、同日午後4時5分頃から同日午後4時26分頃までの間、本件マンションにおいて、Bの下着をずらしてその陰茎を手指で直接触った上、これを被告人が使用するデジタルカメラで動画撮影し、もって13歳未満の男子に対し、わいせつな行為をした。
第7 (訴因変更後の平成28年12月5日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 被告人は、Bが13歳未満の男子であることを知りながら、Bを誘拐してわいせつな行為をしようと考え、平成28年5月7日午後1時15分頃、本件スーパー敷地内において、以前から「お肉買ってきたからステーキ食べよう。」などの甘言を用いて誘惑していたBを、同所に駐車していた自動車内に乗車させた上、本件マンション内等に連れ込み、Bを被告人の支配下に置き、もってわいせつ目的でBを誘拐した上、同日午後1時40分頃から同日午後2時9分頃までの間、同所において、Bの下着をずらしてその陰茎を手指で直接触った上、これを被告人が使用する前記ビデオカメラで動画撮影し、もって13歳未満の男子に対し、わいせつな行為をした。
(争点に対する判断)
第1 判示第3の事実について
 1 判示第3のAに対する強制わいせつの事実に関し、被告人は、当公判廷において、Aの排尿の介助及び糸くず様の異物の除去のためにAの陰茎を触ったもので、わいせつなことをしようと触ったわけではない旨供述し、弁護人も、同供述を前提に、被告人がAの陰茎を触った行為につき、性的意図がないからわいせつ行為に当たらず、強制わいせつ罪は成立しない旨主張する。そこで、当裁判所が被告人の行為につき強制わいせつ罪が成立すると判断した理由を以下に補足して説明する。
 2 関係証拠によれば、次の事実が認定できる。
  被告人は、Aと共に判示の公衆トイレに入り、Aが小便器で排尿する状況等を腕時計型ビデオカメラで動画の撮影をしていた。被告人がAの動画撮影を開始して約11秒後から約16秒後までの間(以下全て動画開始からの秒数である。)、Aが排尿しており、約17秒後から約25秒後までの間、被告人が、Aの陰茎を右手で触り、陰茎の先についたしずくを振り落としている。約34秒後頃、被告人がAの正面に回り、約35秒後にAの陰茎を右手で触って持ち上げ、約37秒後、Aの陰茎の包皮を数回伸ばしながら、「大丈夫か。」などと発言しており、この時点でも、Aの陰茎には尿が付着していたので、被告人がしずくを落としている。約40秒後、被告人が腕を動かしたため、公衆トイレ内が撮影されているが、約42秒後、被告人は「ごみがついてるぞ。」などと発言し、この間Aは「さわると病気になるんだよ。」などと発言している。約48秒後から再びAの陰茎が映され、被告人が「はい、大丈夫かな。」「OK。」と発言し、約50秒後以降、Aの陰茎は映っていない。約54秒後に、被告人が「糸くずがいっぱいついてるから。」「はい、よしOK。」と発言し、Aと被告人は公衆トイレを出た。
 3 被告人は、Aの排尿が終了してもなお約30秒の間Aの陰茎の包皮を伸ばすなどしてその陰茎を触り続けている。また、被告人は、自らがAの陰茎を触る様子について1分間以上も動画の撮影を続け、犯行当日の夜には自己が所有するパーソナルコンピュータに当該動画を保存するなどしている。さらに、被告人からは、Aの陰茎に触っている様子を動画撮影しその動画をパーソナルコンピュータに保存した理由につき、「Aの姿が自分にとって和む、癒される」旨(被告人供述調書(2)47頁)、「Aの陰茎を撮影したかった」旨(同(2)47頁)、「撮影できたかどうか後で見返したかった」旨(同(2)49頁)の供述以外に、説明が特に見受けられない。後記のとおり被告人が排尿の介助や異物の除去のつもりでAの陰茎に触ったならば、例えば、自己の一連の行動の正当性を客観的に裏付けるため動画に撮影して保存したものであるなどの説明が被告人から語られてしかるべきである。
  以上の認定に係る事実関係によれば、被告人において、自身が述べるように、その好みの年齢幅(10歳から13歳くらい)からA(4歳)が外れている上、Aが映っている動画で自慰行為をしていなかったとしても、前記行為の際に性的意図を有していたことを推認するに十分である。
  なお、弁護人は、性的欲求と性的関心を区別してその主張を展開するけれども、性的欲求の範ちゅうに含まれる性的関心の部分をいわば切り出して問題視するものであって、当裁判所とは見解を異にする。
 4 ところで、被告人は、Aの陰茎に触った理由として、Aの排尿を介助するためであり、その際、陰茎に黒いごみ(糸くず様の異物)が付着していたのでこれを除去した旨供述し、実際、前記の動画撮影時にも「ごみがついてるぞ。」と発言するなどしている。被告人が撮影した動画の映像上Aの陰茎に黒いごみが付着していたとの確証は得られないものの、被告人は、当公判廷で、糸くずの付着箇所に丸を付け(被告人供述調書(2)24、58頁)、その丸の中に薄暗いはん点様の部分が見受けられ、この部分を念頭に置いて被告人が「綿ぼこりみたいな形で表面にべっとり付いていた」(同(2)48頁)と述べたとの理解も可能である。そして、実際に被告人がAの陰茎の先についたしずくを振り落とすなどしている点で排尿を介助していたといえ、また、Aの陰茎に黒いごみが付着し被告人がこれを取り除いた可能性が残る以上、異物を除去していたとの被告人の供述部分も排斥できないことになる。もっとも、このように外形的な推移としてAの排尿の介助と陰茎に付着する異物の除去があったからといって、これにより被告人の内面の問題である性的意図の有無が直ちに左右されるものではない。そして、当裁判所において、被告人がAの排尿を介助し陰茎の異物を除去するなどの行為の際に性的意図を有しているものと推認したことは前記のとおりである。
 5 よって、被告人には前記行為時に性的意図があったと認められ、結局、関係証拠に鑑み、判示のとおり強制わいせつ罪が成立する。
(検察官意見 懲役4年、主文同旨の没収)
(弁護人意見 付全部執行猶予)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 本間敏広 裁判官 伊東智和 裁判官 澁江美香)