児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「わいせつ行為=被害者の性的蓋恥心を害すべき行為」たのしい刑法各論〔第2版〕

 強制わいせつ罪の保護法益については、「個人の性的自由」として、「わいせつ行為=性的自由を侵害する行為」とはせずに、「わいせつ行為=被害者の性的蓋恥心を害すべき行為」と定義づけています。性的自由→羞恥心という変化に意味あるのかなあ。

 性的不要説の判例として、東京高裁H28.2.19(性的意図がある場合)の公刊されている部分は紹介されています、判決書を入手してないので、性的意図が認定されていることは指摘されていません。上告中の大阪高裁H28.10.27(性的意図無い場合)は紹介されていません。

たのしい刑法I各論〔第2版〕
2017 (平成29)年10月15日第2版1刷発行
(1)性的自由に対する罪とは
性的自由に対する罪は、性的な自己決定(選択の自由)を保護するものである。身体が第一次的に保護されているわけではないことに注意を要する。刑法典の中では社会的法益に対する罪の間に規定されているが、現在では、個人に対する罪として理解することに争いはない。
(a) 類型
日本の刑法は、被害者の性質により犯罪類型に差を設けている。刑法においては、年齢による区別として、13歳未満の者に対する法定強制性交・法定強制わいせつ罪を設け、本人の同意があっても犯罪が成立するとしている。これは、年齢の低い者はまだ性的な自己決定の能力が完全でないことから、バターナリズムに基づいて保護を図るものである。
特別法には、18歳未満の者の性的自由を保護する処罰規定がいくつかある。2017年の刑法改正までは、強姦罪(旧177条)が女子に対してしか成立せず、男子は法定刑の低い強制わいせつ罪(旧176条)でしか保護されないという格差の問題があった。だが、男児への性的虐待などで被害が甚大なケースも起きており、諸外国にも両者を区別しない立法例が多いことから、区別が撤廃された。さらに、監護者わいせつ・監護者性交罪が新設された(179条)
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(2) 強制わいせつ罪・強制性交等罪
(a) 強制わいせつ罪暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対するわいせつ行為は暴行・脅迫を手段としなくても同様に処罰される。
客観的な成立要件として、わいせつ行為を強制する手段としての暴行・脅迫は、反抗を著しく困難にする程度のものであることを要するとされる(第1章第2節●暴行罪(1)参照)。わいせつ行為自体が暴行を構成する場合、これが反抗を困難にするといえるのかが問題となる。この場合には暴行の強度は問題にならないとするのが多数説であるが、反対説もある。痴漢行為などは迷惑行為防止条例などで処罰できることから、反抗を困難にする程度のもののみを強制わいせつとし、その他は暴行罪および条例違反の罪の対象として処罰するという方法もあると考えられる。実務では、準強制わいせつ罪(178条)でカバーされる範囲も広がっているといわれる。
本罪と同じ章には、社会的法益に対する罪である公然わいせつ罪(174条) も規定されているが、わいせつ性の解釈は両罪で異なるとするのが多数説である。たとえば、人前でキスしても公然わいせつではないが、暴行・脅迫によりキスすることは強制わいせつにあたる。強制わいせつ罪にいうわいせつな行為には、裸にして写真を撮る、陰部を触るなど、被害者の性的蓋恥心を害すべき行為があたる。
主観的な成立要件として、故意のほかに、わいせつ目的を要するかが争われている。最高裁には、報復目的で女性を脅迫し、裸にして撮影した事案で、「その行為が犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行われることを要」するとして犯罪の成立を否定した例がある(最判昭和45. 1 .29刑集24巻1号1頁[百選1114事件])。しかし、強制わいせつ罪の保護法益は個人の性的自由であるから、客観的に性的自由を侵害する行為とそれに対応する故意があれば犯罪の成立を認めるべきであろう(同旨、東京高判平成26. 2 . 13高検速報平成26年45頁。「犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図の有無は・・…・法益侵害とは関係を有しない」とする)。