児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3年前の強姦事件について告訴なしで逮捕した事例。刑法施行法4条に注意

 h29改正の附則2条2項で、非親告罪化は遡及しますので、告訴がなかった場合には、訴追の可能性が出てきています。
 刑法施行法4条では「刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス」とされていますので、その辺の主張が可能だと思います。法制審議会の会議録でも議論があります。

刑法施行法 抄
(明治四十一年三月二十八日法律第二十九号)
最終改正:平成一四年六月七日法律第六〇号
第四条  刑法施行前旧刑法又ハ他ノ法律ノ規定ニ依リ告訴ヲ待テ論ス可キ罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス

h29改正後の刑法
http://www.moj.go.jp/content/001224163.pdf
第百七十八条の二及び第百八十条を削る。
附則
(経過措置)
第二条この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。
2この法律による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第百八十条又は第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについては、この法律の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、この法律の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができる。

法務省刑制第121号(例規)平成29年6月26日法務省刑事局長(公印省略)「刑法の一部を改正する法律」の施行について(依命通達)
留意事項
1強姦罪等の非親告罪化について 性犯罪については,もとより,被害者のプライバシー等の保護が特に重要であり,事件の処分等に当たっても被害者の心情に配盧することが必要であることは,強姦罪等を非親告罪化した後も変わるものではない。
したがって,本法施行後においても,引き続き,事件の処分に当たって被害者の意思を丁寧に確認するなど被害者の心情に適切に配慮する必要があることに留意されたい。
附帯決議本法の国会審議に際し,衆議院法務委員会において別添1の,参議院法務委員会において別添2の附帯決議がそれぞれなされているので,留意されたい。
・・・
別添1衆議院法務委員会における附帯決議
政府及び最高裁判所は,本法の施行に当たり,次の事項について格段の配慮をすべきである。
一性犯罪が,被害者の人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であることはもとより, その心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続ける犯罪であって,厳正な対処が必要であるものとの認識の下,近年の性犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の趣旨を踏まえ,本法が成立するに至る経緯,本法の規定内容等について, 関係機関及び裁判所の職員等に対して周知すること。
二刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について,被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み, これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに, 司法警察職員,検察官及び裁判官に対して,性犯罪に直面した被害者の心理等についてこれらの知見を踏まえた研修を行うこと。
三性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程において,被害者のプライバシー,生活の平穏その他の権利利益に十分な配慮がなされ,偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにし, 二次被害の防止に努めるとともに,被害の実態を十分に踏まえて適切な証拠保全を図り, かつ, 起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては,被害者の心情に配慮するとともに,必要に応じ,処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
四性犯罪被害が潜在化しやすいことを踏まえ,第三次犯罪被害者等基本計画等に従い,性犯罪等被害に関する調査を実施し,性犯罪等被害の実態把握に努めること。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)附貝ll第九条第三項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに際しては,性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や,被害者の再被害のおそれに配盧すべきであるとの指摘をも踏まえて検討を行うこと。
六性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上,性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であるという性犯罪による1,-被害の特性を踏まえ,被害者の負担の軽減のため, 第三次犯罪被害者等基本計画に従い,被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等ワンストップ支援センターの整備を推進すること。

親告罪」規定撤廃で逮捕 3年前に性的暴行疑い
2017.09.18 共同通信 
 3年前に神戸市内で20代女性に性的暴行を加えたとして、兵庫県警は18日までに、強姦の疑いで容疑者(32)を逮捕した。「頭が真っ白で今は話したくない」と供述している。
 県警によると、逮捕は17日。女性は事件当時、被害届を提出。現場の遺留品などから容疑者が浮上していたが、女性が告訴しなかったため継続捜査していた。7月施行の改正刑法は、起訴に被害者の告訴を必要とする「親告罪」の規定を撤廃し、施行前の事件にも適用できるとしたため逮捕に踏み切った。
 逮捕容疑は2014年9月21日午前1時半ごろ、兵庫区内の集合住宅にある駐輪場で、徒歩で帰宅途中の女性に性的暴行をした疑い。
 改正刑法で強姦罪の名称は強制性交罪に変更された。

法制審議会
刑事法(性犯罪関係)部会
第7回会議議事録
○加藤幹事御指示の点について説明を申し上げます。
本日お配りいたしました資料34を御覧いただきながら,お聞き取りください。

それから,修正の3点目ですが,要綱(骨子)第四,すなわち強姦罪等の非親告罪化に関
する時間的な適用範囲についてです。
この点については,第5回会議において,事務当局から,次のような考え方について御意
見を伺ったところです。
すなわち,要綱(骨子)第四の趣旨が,告訴をするか否かの判断をしなければならない被
害者の負担を軽減するというものであることに鑑みますと,改正法施行前の行為についても,
非親告罪として取り扱うこととするのが適当であると考えられます。
もっとも,改正法施行前に,既に法律上告訴がされる可能性がなくなっている場合につい
ては,一旦,告訴がされる可能性がなくなり,その結果として起訴される可能性がなくなっ
た被疑者の地位の安定性を考慮し,また,その当時の法に従って意思表示をした被害者の意
思をも尊重して,非親告罪化しないこととするのが適切であると思われます。
そこで,改正法施行時において既に告訴がされる可能性がなくなっているものを除き,改
正法施行前の行為についても新法を適用し,非親告罪として取り扱うこととするのが適当で
あるとの考え方を御説明したところです。
第5回会議においては,この事務当局の考え方について,御意見・御指摘を頂き,その御
議論を踏まえて,事務当局において更に検討しましたが,第5回会議において申し上げた考
え方によることが適当であると考え,また,この内容は,経過措置に関する内容ではありま
すものの,関係者にとって重要な内容であることに鑑みますと,この点についても,要綱
(骨子)に明示した上で,御審議いただくこととするのが適当であると考えるに至りました
ので,その旨を要綱(骨子)修正案の第四の三として追加することといたしたものです。
具体的には,要綱(骨子)修正案第四の三において,「一及び二に係る規定により非親告


罪化がされる罪であって,改正規定の施行前に犯したものについては,改正規定の施行の際
既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き,改正規定の施行後は,告訴がな
くても公訴を提起することができるものとすること。」としております。
ここで,「法律上告訴がされることがなくなっているもの」というのは,いずれの告訴権
者においても法律上もはや告訴をすることができなくなったため,告訴がされる可能性がな
くなっていることを意味するものです。具体的に申し上げると,一つ目として,全ての告訴
権者の告訴が取り消されて,更に告訴をすることができないような場合のほか,二つ目とし
て,被害者本人が死亡し,かつ,生前に告訴をしない意思を明示していたため,刑事訴訟法
231条2項に規定する親族がいるものの,同項ただし書の規定により告訴をすることがで
きない場合,三つ目として,刑法229条ただし書の場合,すなわち,わいせつ又は結婚目
的の略取・誘拐の罪で,被害者が犯人と婚姻した場合においては,婚姻の無効又は取消しの
裁判が確定した日から6か月が経過したときは告訴の効力がないとされておりますところ,
改正法施行の時点でその期間を経過しているときなどは,この「法律上告訴がされることが
なくなっているもの」に当たると考えられます。
他方で,単に告訴権者が告訴の意思を有しない場合や告訴能力を有しない場合などについ
ては,法律上告訴の可能性がなくなっているわけではありませんから,この要綱(骨子)修
正案第四の三にいいますところの「法律上告訴がされることがなくなっている」場合には当
たらないものと考えています。
○山口部会長事務当局から要綱(骨子)の修正につきまして御説明を頂きました。修正につ
いての御意見は後ほど承ることといたしまして,まずは修正に関する御質問がございました
らお願いしたいと思います。
いかがでございましょうか。
(一同発言なし)
○山口部会長特によろしゅうございますか。
それでは,続きまして,この修正部分に関する御意見がございましたら,お願いしたいと
思います。
○宮田委員要綱(骨子)第四の三の適用範囲の部分でございます。遡及をさせるべきではな
いという意見です。
明治41年法律第29号の刑法施行法4条には,「刑法施行前旧刑法又ハ他ノ法律ノ規定
ニ依リ告訴ヲ待テ論ス可キ罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告
訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス」という規定がございます。
この解説書「刑法施行法評釋」(遠藤源六明治大学)62ページには,「けだし,(一)
告訴を待って論ずることは,告訴の有無にかかわらず処断するよりも犯人に利益なること,
(二)告訴を待って論ずべき罪を犯したる者は告訴なき場合には法律上始めより罪とならざ
る行為をなしたるものと異ならず,故に新法においてこれを罪とするも,その施行以前の行
為に遡及せしむるは不穏当なることの二理由による。そもそも,法律は特別の明文あるにあ
らざれば,その施行以前の行為に及ばざるを原則とす。したがって,刑法施行以前において
は,告訴あるにあらざれば罰せざる行為を刑法において告訴の有無にかかわらず罪とし論ず
る旨を規定するもこの規定をもって刑法施行以前の行為を論ずることあたわざるはもちろん
なり。故に,本条の規定は理論上当然のことにして,特にこれを設くる必要なきがごとし」

と記載があります。
確かに,刑法施行法は,現行法には関係ない法律で,今回,直接適用されるものではあり
ませんが,この規定の趣旨は,今の解説にあるように,法の一般原則の確認でございます。
この要綱(骨子)修正案の非親告罪化の規定は,このような「遡及するべきではない」と
いう考え方とは合致しないものと思います。
また,憲法の教科書などを見ますと,訴訟条件について憲法39条の適用はないけれども,
その精神を尊重して,被告人の不利益を避けるべきだという意見は,かなり強いものと考え
ています。
例えば,ちょっと古くてすみませんが,橋本公亘先生の憲法の教科書では,事後法の禁止
について,「犯罪の実行行為の後に訴訟法が変更された後であっても,その変更が一般的に
言って被告人に格別の不利益をもたらすものでないときは,もちろん立法前の犯罪の裁判に
適用できる。訴訟法の変更が被告人に不利益をもたらすものであっても,その不利益が限定
されており,被告人の有罪判決を容易にするような性質のものではないときは,また右と同
様である。憲法39条前段後半の規定は,本来実行行為の後に制定された刑罰実体法規で処
罰されないことを主とするものであるから,右のように考えることができる。しかし,訴訟
法の変更が重要なものであって,被告人に対して容易に有罪判決をもたらすような内容であ
るときは,前記条項の精神から見て立法前の犯罪の裁判には適用できないと解すべきであ
る」との記載があります。
昭和25年4月26日の最高裁判決の上告理由を制限した刑訴応急措置法の規定について
は,憲法39条の類推はないとしていますが,この判決文の中には,「憲法39条の趣旨を
類推すべき場合と認むべきではない」としているだけで,「類推すべき場合がある」という
ことは決して排除されていません。
公訴時効の変更について,刑法6条の適用を認めていない裁判例もありますが,認めた裁
判例もあります。最高裁の昭和42年判決は,これを認めているもので,訴訟条件について
はおよそ遡及しないという考えはとるべきではありません。
過去の刑法改正において,非親告罪化については不遡及とされている例があることは,事
務当局から御紹介いただいております。これは法律の制定によって大きな価値判断の変更が
あった,例えば憲法改正などのような大きな価値判断の変化に伴ったような場合には,非親
告罪化を遡及させていないという御説明を頂戴しましたが,今般の改正は性犯罪についての
枠組みを大きく変えて国民の価値観の変更を求める,そのような大きな改正ではないのでし
ょうか。
このような改正の趣旨全体を考えれば,不遡及と考えることが妥当なのではないかと私は
考えます。
○小木曽委員告訴が処罰条件であるから,この改正法案も実体法の変更と同様,遡及は許さ
れない,分かりやすく言えば,今回の法改正によって,それまで告訴がなければ裁判になら
なかったものが裁判になるわけですから,これは新たに処罰根拠を定めた法改正,すなわち
実定法の改正と同様である,したがって遡及は許されないという解釈は,もちろんあると思
います。
他方で,犯罪行為自体は既に処罰されることになっていて,ただ,被害者の意思を尊重す
るという政策的な目的から,告訴がなければ裁判が開始されないことになっている。このよ
うにしたのが親告罪制度であると解することもできると思います。
仮に,今,御紹介がありましたように,前者のように解したとしても,この法案を遡及適
用すると憲法39条に違反するとまでは言えないということについては異論がないとすれば,
あとは立法政策の問題ということになるのだろうと思います。
では,その立法政策に合理性があるかということになるわけですけれども,今回の改正の
趣旨,すなわち立法政策の目的が被害者の負担の軽減にあるとすれば,その負担はできるだ
け早く軽減するのがよい,したがって,この改正を遡及的に適用するという政策判断にも合
理性があるという解釈も成り立つと思われます。
○池田幹事宮田委員御指摘の点については,そのような考え方も成り立つだろうとも思われ
ます。ただ,小木曽委員からも御指摘がありましたように,親告罪の規定は告訴がなければ
公訴を提起することができないという文言になっておりまして,公訴権行使を制限する手続
規定であるとも理解することができます。
手続規定については,法改正があった場合は新法適用が原則であると考えますと,先ほど
御紹介いただいた刑法施行法の規定につきましても,そのような特別の規定を置かなければ
原則どおり新法が適用されるが,それは事柄の性質に反し適切でないという立法政策上の判
断に基づいて,敢えて設けられた特則であると理解することも,可能ではないかと思われま
す。
そうだとすれば,本件についても,新法を適用すべきかどうかというのは,法改正の趣旨
に即して考えることが許される問題だろうと思います。そして,被害者の負担を軽減すると
いうのが,今回の非親告罪化の趣旨であるとするならば,その必要性は施行の前後を問わず
存在するものであり,新法適用を妨げる理由はないのではないかと思われます。
もちろん,そのことにより被疑者の地位が著しく損なわれる,悪化するという事情があれ
ば話は別だと思われます。ただ,これも,処罰され得る地位にあるということについては法
改正の前後を通じて変更がないのでありまして,新法を適用することによって,その地位を
著しく悪化させるということにもならないと思います。
したがいまして,新法の適用が許されないとまでは言えないと考えます。
○加藤幹事事務当局から,宮田委員の御意見について,御発言中に引用されていた文献がご
ざいましたので,その点について若干補足して申し上げます。
宮田委員からは,遠藤源六先生の「刑法施行法評釋」についての御紹介があったのですが,
この刑法施行法についての趣旨を述べた文献として他のものもまたございます。当時の司法
省民刑局が編さんした「刑法施行法参考書」という文献によりますと,刑法施行法4条の趣
旨について,告訴を訴追条件と考えれば,理論上は刑法施行法4条の規定とは反対の結論と
なる,つまり,旧法下で親告罪とされていた罪を犯した場合も,新法において非親告罪とさ
れたものは,非親告罪として取り扱うとの結論になるという考え方を示した上で,この刑法
施行法4条を設けた趣旨については,しかしそのような取扱いは,被害者の予期に反して厳
しすぎることになるきらいがあるなどと説明されているものと承知しております。
これは,旧法で親告罪であった罪については被害者の意向を尊重するという趣旨であると
受け取ることが可能でありまして,そういった趣旨で,このような規定が設けられたと考え
ているようでございます。
これに対して,今般の強姦罪等の非親告罪化につきましては,この改正自体が被害者の精

神的負担を軽減するために行うというものであり,その趣旨に沿って改正後の規定の適用範
囲を定めるとすれば,刑法施行法と必ずしも同様の取扱いとする必要はないと考えたという
ものでございます。
○山口部会長ありがとうございました。
ただいまの点につきましても,ほかの点につきましても結構でございますが,修正部分に
ついての御意見がございましたら,お願いしたいと思います。