児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

同一機会の青少年ABに対するわいせつ行為を包括一罪とした事例(和歌山地裁H29.8.31)

 観念的競合でいい。
 「手を乳房に押し当てて」というのは強制わいせつ罪の暴行にはならないようです。

和歌山地方裁判所平成29年8月31日刑事部判決

       判   決

無職 a 昭和35年○○月○日生
 上記の者に対する和歌山県青少年健全育成条例違反被告事件について,当裁判所は,検察官氷室隼人及び私選弁護人前畑壮志各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成29年5月23日,和歌山市■の■中学校■において,
1 ■(当時13歳。以下「被害者A」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
2 ■(当時13歳。以下「被害者B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後5時頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
もって,それぞれ青少年に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
1 罰条 包括して和歌山県青少年健全育成条例33条1項,26条1項(判示の各わいせつ行為は,同一の犯行場所において犯行時刻を一部重なり合って行われたものであるから,包括一罪として処理)
2 刑種の選択 懲役刑を選択
3 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,被害者らが18歳に満たない青少年であることを知りながら,同被害者らの背後から手を乳房に押し当てて弄んだという和歌山県青少年健全育成条例違反の事案である。その態様は,当時中学校教師であった被告人が,被害者ら生徒のために開いた補習授業において,解答の誤りを指導する口実で各被害者の肩に触れた際に,胸元まで手をまわして乳房に押し当てるというものであって,教師の立場を利用した悪質なものである。
 その上,被告人は,平成29年3月下旬頃から同様のわいせつ行為を繰り返す中で本件犯行に及んでいる。本件犯行当時、被告人が過重労働状態にあったことはうかがわれるものの,初めてわいせつ行為に及んだ後に自省する機会があったにもかかわらず,被害を受けた生徒が抵抗や被害申告をしないことに乗じて,その後も自己の性的欲求を満たすため同様の行為を繰り返して本件犯行に及んでいるのであるから,本件犯行は卑劣というほかなく,経緯にもさほど酌むべき点があるとはいえない。
 また,被害者のうち1名は,本件犯行の発覚後に欠席日数が増えるなど,本件犯行が当時中学2年生の青少年である被害者らの心身に与えた影響は計り知れず,当然のことながら,被害者らやその母親らはいずれも厳しい処罰感情を有している。 
 以上によれば,被告人の刑事責任は軽視できるものではなく,懲役刑をもって臨むほかない。
 しかしながら,他方において,被告人には,事実関係を認めた上,公判廷においても被害者らに対する謝罪の意思を表明するなど反省の態度を示していること,本件により懲戒免職処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けていること,被告人には前科前歴がないことなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。
 そうすると,被告人を今直ちに刑務所に送ることにはいささかためらいを感じる面があることを否定できないから,当裁判所は,以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文の懲役刑を科してその刑事責任の重さを明らかにした上,今回に限りその刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断し,主文の刑を決めた次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
(検察官求刑-懲役1年6月)
平成29年8月31日
和歌山地方裁判所刑事部
裁判官 奥山浩平