児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件の量刑と量刑理由

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件の量刑と量刑理由

改訂版動物愛護管理業務必携
 第六章 罰則

第四十四条
1 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2  愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
3  愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
4  前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一  牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二  前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
解説
本条は、本法の目的である動物の愛護の根幹を揺るがす動物への虐待や遺棄を禁止し、それらの行為に対する罰則を定めた規定であり、本規定による保護法益は本法の目的そのものであると考えられる。
正当な理由のある場合、又は社会通念上多くの人が納得し得る目的の下に、その目的の範囲内でのみ殺すことは認められるものであって、本条は「みだりな」殺傷を禁止し、その違反に罰則を科している。
本条第2項に規定される「虐待」とは、本条第4項各号に掲げる愛護動物に対して、一般的に、不必要に強度の苦痛を与えるなどの残酷な取扱いをすることと考えられる。動物の虐待には、積極的虐待(暴力を加える、恐怖を与える、酷使等) とネグレクト(健康管理をしないで放置、病気を放置、世話をしないで放置等)がある。
本条第3項に規定される「遺棄」とは、本条第4項各号に掲げる愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に離隔することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険にさらす行為のことと考えられる。
[改正点]
愛護動物の殺傷等に対する罰則|こついては、度々強化されてきたところであるが、依然として悪質な事例が後を絶たないことから、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金から、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金へと大幅に引き上げられた。
また、愛護動物の虐待及び遺棄に対する罰則についても、50万円以下の罰金から、100万円以下の罰金に引き上げられるとともに、これまでの虐待の定義(みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等)が、例示として示されている範囲が狭く、一般的に虐待と考えられる事案であっても、本項の動物虐待罪の適用が難しかったことから、改正法においては、その具体的な事例を広範に明記することとしたものである。

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告
福岡地方裁判所平成14年10月21日
       主   文
 被告人を懲役6か月に処する。
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成14年5月6日午後11時10分ころから同月7日午前3時20分ころまでの間,福岡市a区bc丁目d番e号fコーポg号の被告人方(当時)において,愛護動物である猫1匹の尾及び左耳を波板切りはさみで切断してみだりに傷つけた上,その頸部をひもで絞めつけ,自宅付近のh川の水中に投げ捨ててみだりに殺した。
(法令の適用)
1 判示の行為は動物の愛護及び管理に関する法律27条1項,4項1号に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役6か月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
2 訴訟費用は刑事訴訟法181条1項本文により,全部被告人に負担させる。
(量刑の理由)
本件は被告人が猫を虐待して殺害し,同時にその模様をインターネットの掲示板サイトで実況中継した動物の愛護及び管理に関する法律違反の事案である。
 被告人は,犯行当日拾ってきた猫に対する虐待を実行して,その模様をインターネットで実況中継するため,有名掲示板サイトに新たに掲示板を立ち上げ,「猫祭り開催しますか」「血だよ,血塗れ。それがなければ面白くないだろうが」などと書き込んで,インターネット上で虐待方法の意見を求め,その書き込みに答える形で,尾,続いて左耳を波板切りはさみで切断して判示の虐待行為を行うとともに,その状況をデジタルカメラで撮影し,その残虐な画像をインターネットで同時に公開した。そして,「もう飽きちゃったんで一気に〆てもいいですか」などと書き込み,ひもで宙づりにした猫の尾や後ろ足を下に引っ張ってその頸部を絞め付けた上,第二次世界大戦での脱走兵の処刑写真を真似て「私は敗北主義者です」と書いたCDRディスクを首吊り状態の猫の首にかけて撮影して,その画像を公開し,さらに,「近所の川に投げ込むよ」「死体捨てに行ってきます」などと書き込んだ後,猫を自宅アパート近くの川の中に投げ捨てて殺害したものである。インターネットの掲示板という無責任な仮想空間において,悪意を相互に増幅させながら,動物虐待・虐殺行為を現実に実行して見せたもので,悪質な犯行である。
 その動機について,被告人は,猫に餌を与えたところ糞をされ,これを友人らから裏切られたつらい経験に重ね合わせて憤激したためと説明しているが,被告人の犯行時の掲示板への書き込み内容からすると,動物愛護に対する反感や猫の虐待行為自体を面白がって行っていたものと認められ,何ら酌量すべき点はない。
 本件犯行がインターネットで実況中継され,被告人の犯行を見ながら,これを止めようにも手の届かないところで動物虐待・虐殺行為が現実に進行したことで,良識ある多数の人々には不快感,嫌悪感を超えた深い精神的な衝撃を与えた。しかも,本件に追随する模倣犯,愉快犯の出現の危険も高めたものであり,社会に与えた悪影響は大きい。
 以上のとおり,本件犯行は動物の命を弄び軽んじた悪質な犯行であり,その社会的影響も大きく,動物の愛護及び管理に関する法律の立法目的に照らせば,被告人の刑事責任は決して軽くない。
 他方で,インターネット上でも本件が被告人の犯行であることが突き止められて,被告人のみならずその家族までもが,そのプライバシーに関する情報まで公にされた結果,様々な嫌がらせを受けていわば「さらし者」にされており,社会的制裁としても行き過ぎた制裁を既に受けていること,被告人には前科前歴はなく,本件犯行により動物の愛護及び管理に関する法律違反の事件としては異例の長期の身柄拘束を受けたこと,被告人は人間関係が苦手で社会的にも未熟な青年であり,捜査当初は猫は死んでおらず逃げていったなどと虚偽の弁解をしてみたものの,最終的には事実を認め,本件犯行に及んだ自分の心の中の闇と向かい合い,反省していることなど酌むべき事情もあるので,その刑の執行を猶予し,社会内での更生の機会を与えることとする。
(求刑:懲役6か月)
[検察官酒井博史,弁護人名和田茂生各出席]
平成14年10月21日
福岡地方裁判所 第2刑事部
裁判官   冨田敦史

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件
広島地方裁判所判決平成24年11月22日
       主   文

 被告人を罰金60万円に処する。
 未決勾留日数中30日を,その1日を金5000円に換算してその刑に算入する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。

       理   由

(犯罪事実)
 被告人は,平成24年8月9日頃,広島市南区(以下略)被告人方において,飼養していたねこ1匹に対し,拳骨で頭部を数回殴るなどして,下唇剥離等の傷害を負わせ,もって愛護動物をみだりに傷つけた。
(証拠)
(法令の適用)
罰条 動物の愛護及び管理に関する法律44条1項
刑種の選択 罰金刑選択
未決勾留日数の算入 刑法21条
労役場留置 刑法18条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 被告人は,これまでもねこを虐待したことがあるのに,広島市動物管理センターからねこを譲り受けて,ねこを傷つけるという本件虐待行為に及んでおり,動物愛護の精神に著しく欠ける行為を行っている。
2 他方,被告人は本件犯行後,知人に連絡するなどしてねこを病院に運び治療を受けさせており,虐待され傷害を負ったねこはすっかり元気になったこと,被告人は本件以後に動物を愛護する活動を行っているNPO法人の関係者と関わりを持つなどして動物虐待の問題性を理解し,今後は動物を愛護して生活することを誓っていることなどの事情がある。
3 検察官は,本件について懲役刑を求めているが,本件はねこ1匹に下唇剥離等の傷害を負わせたことだけが起訴された事案である。被告人が自認している他の虐待行為は,起訴されていない余罪であるから,その事実を実質的に処罰する趣旨で量刑することはできず,被告人に同種前科もないことなどによれば,上記1の事情を踏まえても,本件については罰金刑を選択するのが相当である。
4 なお,被告人には資力がなく,高額の罰金を科すと労役場に留置されることも予想されるが,被告人がねこを引き取った上で虐待した上記の経緯等を踏まえると,ねこ1匹に回復可能な傷害を負わせた事案の中では比較的悪質な事案といえるから,上記1,2で述べた事情等を総合考慮し主文のとおりの罰金刑に処するのが相当と判断した。
(求刑 懲役6月)
(検察官 岡部頌平,弁護人 片山千絵 出席)
  平成24年11月22日
    広島地方裁判所刑事第1部
           裁判官  上岡哲生

動物の愛護及び管理に関する法律違反被告
伊那簡易裁判所平成15年3月13日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 法律時報78巻10号82頁

       主   文

 被告人を罰金15万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

       理   由

(罪となるべき事実)
被告人は,長野県上伊那郡A町B番地及びその周辺土地において「C乗馬牧場」を経営し,同所に設置された厩舎において被告人が所有・管理する愛護動物である馬2頭(クォーターホース1頭,シェトランドポニー1頭)を飼育していた者であるが,平成13年3月9日ころから同年4月11日までの間,上記馬2頭に対し,死馬2頭が放置されていた上に馬糞の清掃もなされていない不衛生な環境の下,十分な給餌をせず栄養障害状態に陥らせる虐待を行ったものである。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
1 弁護人は,「2頭の馬の給餌を減らしていたこと及びその結果として2頭の馬の各体重が減少していたことは事実であるが,『伏せ』の調教課程として給餌を通常の約半分に減らしていたにすぎないし,結果として2頭の馬も衰弱などしていなかったから,虐待には該当しない。」旨主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。
2 動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に規定する「虐待」とは,愛護動物の飼育者としての監護を著しく怠る行為を指すものであり,その代表的な行為として「みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる行為」が例示されているものと解される。したがって,必ずしも愛護動物が「衰弱」していなければならないものではなく,著しく不衛生な場所で飼育し,給餌又は給水を十分与えず愛護動物を不健康な状態に陥らせるといった行為も,上記「虐待」に該当するものと言うべきである。
これを本件においてみると,確かに,平成13年4月11日前後の時点における2頭の馬の体重の正確な測定値は記録に残っていない。しかしながら,①平成13年3月2日にヘイキューブ(30キログラム入り)12袋が本件牧場に配達(なお,これは,牧場の地主であるDがA町役場から「牧場に餌がほとんどない。」と告げられて手配したものである。)され,さらに同月28日にもヘイキューブ(30キログラム入り)1袋をDが上記牧場に持参したものであるところ,同年6月ころに上記牧場に残存していたヘイキューブは7袋(内1袋は使いかけのもの)(総量約202.7キログラム)であったから,平成13年3月2日から同年4月11日までの間に使用されたヘイキューブの量は約187.3キログラムと推定できる(平成13年4月11日に馬2頭が保護されて以降は上記牧場には飼育馬が1頭も存在しない状況となったから,同年6月時点で残存していたヘイキューブの量が上記保護時点における残存量と推定できる。)。そうすると,この間の1日当たりの平均飼料使用量は約4.57キログラムとなるが,保護馬2頭分の飼料必要量として算出される1日当たりの平均量約11.3キログラムをかなり下回っていると言える。②次に,その結果として,保護されたクォーターホースは,ボディコンディションスコア1(削痩)もしくはスコア2(非常にやせている)と判定され,栄養消耗症と推定されている。また,保護されたシェトランドポニーは,上記スコア3(やせている)もしくはスコア4(少しやせている)と判定され,栄養失調症と推定されている。③さらに,被告人は,毎日上記牧場にいるわけではなく,自分が仕事等の用事がある時には別の人物に給餌及び給水をしてもらう必要があったが,世話を依頼していたEは平成13年1月下旬まででその役目を辞め,その後に「電話した時に世話をしてくれ。」と依頼していたFも2回しか上記牧場に赴いていない(しかも,1回は馬に与える餌がなかった状態である。)。そして,その他に上記牧場で馬の世話を継続的に行っていた者もいないのであるから,少なくとも平成13年3月9日から同年4月11日までの間,被告人が上記牧場において給餌・給水を含む馬の世話をきちんと行っていなかった蓋然性は高いと言わざるを得ない。④また,平成13年4月7日の時点における厩舎の状況を見ても,周囲の馬糞が除去されず,しかも厩舎内及びその手前に死んだ馬2頭(しかも腐敗が進行していたものである。)がそのまま放置されており,建物自体もボロボロと言っても過言ではないものである。保護された馬2頭は,そのような厩舎内に,それほど長くない綱(1メートル前後)で繋がれた状態にあったことに鑑みれば,極めて不衛生な状況下で飼育されていたと言わなければならない。⑤その上,被告人は,平成13年4月28日,生きている馬2頭の所有権の譲渡をGから求められ,それほど強く反対することもなくこれに応じている。このことは,被告人自身が今後適切に馬を飼育していくことはできないと認識していたことを推認させる。以上の諸点を総合考慮すると,被告人は,本件2頭の馬に対し,十分な給餌をせず結果的に不健康な状態(栄養障害状態)に陥らせた上,著しく不衛生な状況下で飼育していたものであって,馬の調教の事実の有無・内容を検討するまでもなく,愛護動物の飼育者としての監護を著しく怠っていたと評価せざるを得ない。したがって,被告人は動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に規定する「虐待」を行ったと認定するのが相当である。
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも動物の愛護及び管理に関する法律27条2項に該当するが,これは1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重いクォーターホースに対する虐待罪の刑で処断することとし,所定刑期の範囲内で被告人を罰金15万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は,乗馬牧場を経営していた被告人が,そこで飼育していた馬2頭に対し,極めて不衛生な状況下で,十分な給餌をせず栄養障害状態に陥らせたという事案であり,生命ある動物を苦しめた被告人の行為は非難されなければならない。特に,上記2頭の馬は,5年以上もの間,被告人の下で飼育されてきており,十分な餌を与えられなくなっても,被告人を信頼して従順に空腹に耐えていたであろう様子を想像すると,まことに不憫である。
これらの点を考慮すると,被告人の刑事責任を軽視することはできない。
しかしながら,被告人が上記2頭の馬の世話を適切に行えないようになったのは,傷害ないし病気の影響で被告人の体が不自由になったことと無関係ではないと推察され,この点は酌む必要があること,上記2頭の馬は栄養障害状態には陥ったが,シェトランドポニーは未だ栄養消耗状態にまでは陥ってはいなかったこと等,被告人に有利に斟酌できる事情も認められるので,これら諸般の情状(なお,上記牧場においては平成13年1月20日前後に2頭の馬が死亡しているが,その死因は解明されておらず,本件公訴事実においても問擬されていないから,この点を量刑に当たって反映させることは許されない。)を総合考慮して,主文のとおり量刑した。
よって,主文のとおり判決する。
(出席検察官 大井良春)
(出席弁護人 鷲見皓平)
(求刑 罰金30万円)
平成15年3月13日
    伊那簡易裁判所
        裁 判 官       藤   田   昌   宏