児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件についてストレージサービス「Aボックス」に公開設定をして、公開用のURLの発行を受けた段階で、画像データ及び動画データの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置いたとみるべきであるから、被害者以外の者に対して公開用のURLを伝えていないとしてもいずれの罪も既遂に達している(大阪地裁H28.12.15)

高裁で一部無罪になっています。

大阪地方裁判所平成28年12月15日
上記の者に対する強要未遂、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件について、当裁判所は、検察官皆川剛二、弁護人奥田昌宏(国選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 平成28年8月28日午後11時44分頃、
  被告人方において、同所に設置されたパーソナルコンピュータを使用して、元交際相手 (以下「被害者」という。)が使用するメールアドレスに、裸の同人を撮影した画像データ等とともに「0時までに返信なかったらばらまく」などと記載した電子メールを送信し、その頃、同人にこれを閲読させて、同電子メールに返信をするよう要求するとともに、その要求に応じなければ同人の名誉に危害を加える旨告知して、同人を怖がらせ、同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人がこれに応じなかったため、その目的を遂げず、
第2 平成28年8月29日午後3時15分頃から同日午後6時29分頃までの間、前記被告人方において、前記パーソナルコンピュータを使用して、インターネットを介し、被害者の顔を撮影した画像データとともに、別表記載の同人の露出した胸部等を撮影した画像データ及び動画データ25点及び同人の陰部を撮影したわいせつな画像データ5点(前記25点中の5点)を、A株式会社が管理する東京都(以下略)内に設置されたサーバコンピュータ内に開設された「Aボックス」に送信して記憶、蔵置させるとともに、不特定多数のインターネット利用者に対し、前記各画像等の閲覧が可能な状態を設定し、もって第三者が撮影対象者を特定できる方法で、衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものである私事性的画像記録物を公然と陳列するとともに、わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列し
たものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1の所為 刑法223条3項、1項
 判示第2の所為
  私事性的画像記録を公然と陳列した点
  私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律2条1項3号、3条2項
  わいせつ電磁的記録の記録媒体を公然と陳列した点
  刑法175条1項前段
科刑上一罪の処理
 判示第2の罪 刑法54条1項前段、10条(1罪として重い私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反罪の刑で処断)
刑種の選択
 判示第2の罪 懲役刑を選択
併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
刑の全部執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用 刑事訴訟法181条1項本文(負担)
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は、判示第2事実につき、被告人は公然と陳列していないので、いずれも無罪である旨主張する。被告人は、判示第2事実に係る画像データ及び動画データを「Aボックス」に記憶、蔵置させ、公開設定したものであるところ、刑法175条1項前段及び私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条2項にいう「公然と陳列」するとは、画像データ及び動画データの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、実際にそれらの内容を再生閲覧することまでは必要ではないと解すべきである。そうすると、本件においては、被告人が「Aボックス」に公開設定をして、公開用のURLの発行を受けた段階で、画像データ及び動画データの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置いたとみるべきであるから、いずれの罪も既遂に達していると解すべきこととなる。被害者以外の者に対して公開用のURLを伝えていないとの弁護人の主張を前提としても、判示第2の各罪が成立することは明らかである。
(求刑・懲役2年)
第7刑事部
 (裁判官 長瀨敬昭)
別表