児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

法務省刑事局付今井將人 「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修830号

法務省刑事局付今井將人 「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修830号
 刑事局長通達のマニュアルとこれとで、法務省の解釈は明らかになりました。
 後は警察学論集と警察公論と法曹時報に出ると思います。

(2)要件
「性交」とは,改正前の刑法177条の「姦淫」と同義であり,膣内に陰茎を入れる行為をいう。
「肛門性交」とは肛門内に陰茎を入れる行為をいい, 「口腔性交」とは口腔内に陰茎を入れる行為をいう(注4)。
「性交」, 「肛門性交」及び「口腔性交」を合わせて「性交等」ということとされており, これらの行為には, 自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内等に入れる行為だけでなく, 自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為(入れさせる行為)を含む。具体的には,女性が行為主体となって,男性の陰茎を自己の膣内に入れさせる行為や,男性が別の男性の陰茎を自己の肛門内に入れさせる行為も,強制性交等罪による処罰対象となる。
(注4)例えば,陰茎を口腔内に全く入れずに単に舌先でなめる行為や,女性の外陰部をなめる行為などは, 「口腔性交」には当たらない。

4監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法179条)を新設すること
(1)概要及び趣旨
ア本法により,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法179条) として, 18歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合について,強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様の法定刑で処罰する規定が新設された。
イこれまで,実親,養親等の監護者が18歳未満の者に対して性交等やわいせつな行為(以下,両者を合わせて「性的行為」という。)を継続的に繰り返し,監護者と18歳未満の者との性的行為が常態化している事案等においては, 日時,場所等が特定できる性的行為の場面だけを見ると,暴行及び脅迫が認められず, また,抗拒不能にも当たらないため,刑法上の性犯罪として訴追することが困難なものが存在していた。
もっとも, 18歳未満の者は,一般に,精神的に未熟である上,生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に経済的にも精神的にも依存しているところ,監護者が,そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて18歳未満の者と性的行為をすることは,強制わいせつ又は強制性交等と同様に, これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであるといえる。
そこで, このような事案の実態に即した対処を可能とするため,本法により,刑法176条から178条までの罪とは別に,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設することとされた。
(2)要件
ア「監護する」とは,民法820条に親権の効力として定められているところと同様,監督し,保護することをいい, 18歳未満の者を「現に監護する者」とは, 18歳未満の者を現に監督し,保護している者をいう。
「現に監護する者」に当たるといえるためには,本罪の趣旨に照らし,法律上の監護権の有無を問わないが,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要であると考えられる。
具体的には,
①同居の有無,居住場所に関する指定等の状況
②指導状況,身の回りの世話等の生活状況
③生活費の支出などの経済的状況
④未成年者に関する諸手続等を行う状況
などの諸事情を考慮して, 「現に監護する」といえるかどうかという観点から判断されるものと考えられる。

イ「現に監護する者であることによる影響力」とは,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,現に18歳未満の者を監督し,保護することにより生ずる影響力をいう。
したがって, 「現に監護する者であることによる影響力」には,ある特定の性的行為を行おうとする場面における,その諾否等の意思決定に直接影響を与えるものだけではなく,被監護者が性的行為に関する意思決定を行う前提となる人格,倫理観価値観等の形成過程を含め,一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力が含まれるものである。
ウ「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは, 18歳未満の者に対する「現に監護する者であることによる影響力」が一般的に存在し, 当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で,性的行為をすることをいう。
その上で,被監護者である18歳未満の者を現に監護している者は,通常,当該18歳未満の者に対し,このような影響力を及ぼしている状態にあるといえるので,一般的には, 「現に監護する者」であることが立証されれば,当該性的行為の行為時においても, 「現に監護する者であることによる影響力」を及ぼしていたこと,すなわち, 「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できることとなる。
したがって, 「乗じて」といえるためには,通常は,性的行為に及ぶ特定の場面において,影響力を利用するための具体的行為は必要ない。
エ本罪の趣旨に照らし,本罪の成否を論ずるに当たり, 18歳未満の者の性的行為に対する同意の有無は問題とならず,外形的に18歳未満の者が性的行為に同意していたとしても,本罪の成否は妨げられないと考えられる。
したがって, 18歳未満の者が性的行為に同意があったとの行為者の誤信は,故意の存否には影響しないものと考えられる。
(3) 監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設することに伴う改正
監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪について,強制わいせつ罪
又は強制性交等罪等と同様に,いわゆるビデオリンク方式による証人尋問(刑訴157条の4第1項1号)及び被害者特定事項秘匿制度(刑訴290条の2第1項1号),犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律7条の損害賠償命令(同法23条1項2号イ)並びに心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律によるいわゆる医療観察制度(同法2条1項2号)の対象犯罪とされた。