児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ未遂により保護観察付き執行猶予中に痴漢行為をした被告人を罰金10万円に処した原判決の量刑が不当であるとして破棄したものの、罰金刑の選択自体は不当とはいえないとされた事例(東京高裁H29.5.17) 速報番号3603号

       ○裁判要旨
 原判決が被告人を罰金10万円に処したことは、同種犯罪の量刑傾向を逸脱しており、不当に軽いというほかないから、原判決は破棄を免れないが、犯行態様等の犯情を総合的に考慮すると、原判決が罰金刑を選択したこと自体は、量刑の大枠の範囲内のものとして、不当とはいえない。

       ○裁判理由
 被告人には保護観察付き執行猶予の同種前科があるのであるから、本件が同種犯罪の中でも軽い部類に属するとは到底いえない。そうすると、原判決が、被告人を、同種犯罪の中でも軽い部類に属する犯罪に課せられる罰金20万円より、さらに軽い刑である罰金10万円に処したことは、明らかに同種犯罪の量刑傾向を逸脱しており、不当に軽いというほかなく、原判決は破棄を免れない。
 しかし、量刑に当たっては、前科が重要な量刑要素になるにしても、それは単なる一要因に過ぎないのであるから、犯行態様や犯行の計画性等の、その余の犯情をも総合的に考慮する必要がある。そして、本件の犯行態様を見ると、本件は、被告人が被害女性の後方を通り抜けざま、極めて短時間、その臀部を着衣の上から触ったというものであり、犯行態様としては軽い部類に属する。また、本件は、偶発的、機会的な犯行という側面が強い。しかも、被告人が、前刑の判決後、本件に至るまでの間に、他に同種犯罪に及んだ形跡はうかがえない。そうすると、本件は痴漢行為の中でも中間的な部類というべきである。そして、これを前提に、量刑傾向を見ると、中間的な部類に属する痴漢犯罪に対する量刑としては、上限に近い罰金額から懲役3、4月(実刑)程度までの計が考えられるところ、原判決の指摘する被告人に有利な一般情状に加え、被告人が、原判決後、弁護人に示談金を預け、被害弁償の努力をしていることなどを考慮すると、本件に対し、罰金刑を選択すること自体は、量刑の大枠の範囲内のものとして、不当とはいえない。