児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

スーパーフリー事件を受けて集団強姦罪ができて、最近でも集団強姦事件もあるのに、集団強姦罪は無くなったこと

 

 スーパーフリー事件を受けてH16改正ではこういう条文になりましたが、

第一七七条(強姦かん)
 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦かん淫いんした者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
〔平一六法一五六本条改正〕
第一七八条の二(集団強姦等)
 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
〔平一六法一五六本条追加〕

 スーパーフリー事件は通常の強姦罪で裁かれています。

 その後、集団強姦事件は発生していますが、
  集団強姦罪の量刑が通常強姦罪の法定刑の範囲内であること
  集団強姦罪の件数がそう多くなかったこと
ということで、H29改正で強制性交等の法定刑が5年以上になったついでに消滅したということです。
 集団強姦罪の必要性が強ければ無くならなかったんですが、最近でも学生のそういう事件もあったんですが、法制審議会の議論とはずれてしまって無くなりました。
 凶悪な性犯罪には厳しく臨むという姿勢を示すために集団強制性交等罪として6年以上くらいの法定刑で残しておいてもよかったんでしょうが、そういう意見は強くなかった。

[007/008] 161 - 衆 - 法務委員会 - 5号
平成16年11月09日
○江田委員 わかりました。
 次に、強姦罪等についてお伺いをいたしたいと思っております。
 凶悪犯罪の中でも、この強姦罪や強制わいせつ罪等の性犯罪は、暴力によって被害者の人格や人間性、人権を著しく破壊するものでありまして、このような犯罪に対しましては、加害者の刑事責任を厳正に追及する必要があると思っております。
 最近の新聞報道でございますけれども、婦女暴行等の事件につきまして検察官の求刑十二年を上回る懲役十四年の判決が出されたとのことでありますが、近年の強姦罪に関する裁判所の科刑状況はどのようになっているか、法務当局にお伺いします。
 また、集団による強姦につきましては、皆さんも御存じだと思いますが、私大生らがサークルを利用して女性をパーティーに誘って泥酔させて集団で強姦をしていた、いわゆるスーパーフリー事件の主犯格の判決が最近ございました。これで共犯者全員の一審判決が出そろいましたけれども、この判決結果についてあわせて法務当局にお伺いいたします。
○大林政府参考人 通常第一審である地方裁判所における平成六年から平成十五年までの過去十年間の強姦罪の科刑状況につきましては、平成七年から判決が増加傾向にございます。三年を超える、いわゆる三年超の懲役刑の判決を受けた者の数がおおむね増加にありますけれども、特に三年超五年以下の懲役刑の判決を受けた者は、平成六年から平成七年までの間は六十人台でございましたが、平成十一年から百人台を推移しております。平成十五年には百四十六人となっております。そして、十五年超二十年以下の懲役刑の判決も、平成九年の一名に対する判決以降で初めて平成十四年に二件なされ、平成十五年に三名の者が判決を受けております。
 また、御指摘のいわゆるスーパーフリー事件につきましては、第一審において、主犯格とされた被告人に対し懲役十四年が言い渡されたほか、これ以外の被告人十三名に対しても、その関与の程度等に応じてそれぞれ懲役二年四月から懲役十年までの実刑判決が言い渡されております。

○江田委員 今申されましたように、検察官の、そこを申されたかどうかわかりませんが、最近では、このような強姦罪、婦女暴行事件に関して、検察官の求刑では甘過ぎるということで、裁判所の判断はさらなる長期の判決が出ている、そういう現状にあるかと思っております。
 ましてや、このスーパーフリー事件というのは集団強姦罪としてまことに許せない事件でございまして、そのような事件に対しまして、女性の人権を擁護するということのためには、強姦罪の罰則を強化して集団強姦罪を新たに創設するなど、強姦罪の罰則強化、性犯罪の罰則強化に取り組む必要があると強く考えます。
 公明党は、集団強姦罪の創設を昨年の衆院選マニフェストに掲げて、全力でこれまで取り組んでまいりました。さらに、南野大臣を座長、公明党の浜四津議員を座長代理とする与党女性と刑法に関するプロジェクトチームで、強姦罪や強姦致死傷罪の罰則強化、集団強姦等罪や集団強姦等致死傷罪の創設を当時の野沢法務大臣に強く申し入れてきたところでございます。これらの要望につきましては今回の法案にすべて反映されておりまして、評価するところでございます。
 大臣自身の活動も含めまして、今回、強姦罪を初めとする性犯罪の罰則を強化したその趣旨について、改めてお伺いいたします。

[005/008] 161 - 衆 - 法務委員会 - 7号
平成16年11月12日
○伴野委員 ぜひ、画一から個々対応といいますか、きめ細かな、しかもめり張りをつけた対応を期待していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、治安回復のお話はこれぐらいにさせていただきまして、今回の実体法の改正の方へ入らせていただきたいと思います。
 明治以来なかなか見直しができなかった、どういう見直しをするかという中身は別として、見直しを今回やったという点は私は評価したいな、そんなふうに思っているわけでございますが、では、その見直しがどうであるかということを少し議論させていただければ、あるいはその原因に関連して、今回の実体法の改正に即しているのかどうか、ちょっとお話をさせていただければと思います。
 まず、強姦は魂の殺人だという、先般、参考人の先生方も言っていらっしゃいましたし、私も、ある意味殺人よりも卑劣な行為なんじゃないかなと思います。
 先般、与党の女性議員も訴えていらっしゃいましたが、確かに、身内だからというわけじゃないんですが、自分の娘があるいは自分の周りの女性がということを考えただけでもぞっとしますし、そういった中で、残念ながら、今回の改正のきっかけになったスーフリ問題、スーフリ事件。数字をいろいろ拾っていくと、残念ながら性犯罪がふえていると言わざるを得ないこの状況。しかも、それは凶悪化している。
 この原因は一体どこにあるのか。やはり原因を究明していかないと、なかなか、先ほど申し上げたように、いろいろな対症療法的なことがあるんだと思いますし、対処法だけではいけない、熱が出たから解熱剤だけをやっていればいいんじゃなくて、そもそも体質改善に相当する全体のお話もしなきゃいけない。
 そういった中で、この性犯罪の増加、凶悪化の原因はどこにある、あるいはどうお考えになっているのか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

○南野国務大臣 本当に先生御指摘のとおり、近年の性犯罪、その認知件数も増加しております。十年前と比較しますと、強姦が約一・五倍、強制わいせつが約二・八倍の認知件数となっている。また、凶悪化と言えるかどうかはともかく、凶悪な性犯罪も引き続き起きている。凶悪化しているかどうかということはともかくとして、そのような事実があるということでございます。
 性犯罪を含めまして、犯罪の動向にはさまざまな要因、また複雑に絡み合っておりますので、これを一概に言うことは困難であろうと思いますけれども、性犯罪の中で、特に小学生や中学生を含む少年が被害に遭う事件の増加が著しいということからいたしますと、性に対する意識の変化や、また性に関する情報のはんらんなどによって少年が性犯罪の被害に遭う機会がふえていることも一つの要因として挙げられるのではないかな、そのように思います。
 ちなみに、いわゆる出会い系サイトが性犯罪のきっかけとなるという場合もふえておるのではないかな、そのようなことを考えております。
○伴野委員 今大臣がおっしゃられたこともごもっともだと思いますし、さきのスーフリの事件を考えますと、行われた事柄と同時に、一般的には高学歴で、しかもそれがブランドであると思われる教育を受けている人間がああいう卑劣なことを、しかも集団で、組織的に、継続的にやっているというので今回の厳罰が下されたんだと思うんですね。
 私自身も、まだ小学校三年生なんですけれども、一人の娘を持つ身として、日々本当に教育、一人でも大変です。だけれども、そこへ立ち返らないと、この根本原因は解決できないんじゃないか。女性を暴力で行為たらしめることがどれだけ卑劣かという、この倫理観を植えつけないと、これはどれだけ重罰化しても、これがあるから、殺人罪に問われるあるいは死刑になるからといって思いとどまる人がいればまだいいぐらいの話で、多分、やる人間は、よほど計画犯じゃない限り、衝動的で理性を失ってやっているんだと思うんですが、ぜひそこへ立ち返らないといけないんじゃないのかなと思っております。
 そうした中で、男女平等参画社会という一方で、大人の社会でも見直していかなければいけないことは多々ある。そして、今回の見直しの背景なんかをいろいろ読ませていただいたり、聞かせていただきますと、先ほど言った、やはりどこかに刑法を見直したいという長年の空気があって、そこに今回のスーフリ事件等々、多少、国民的な要求と言っていいのか、この辺はちょっと言葉を選ばなければいけませんが、強姦罪というものが非常に着目されて、クローズアップされて、与党の先生方、女性議員、あるいは我が党の女性議員なんかもそこにやはり目が行って、いろいろ調べていくと、どうも強盗より強姦の方が軽んじられていないか、これは人の軽んじと同時に女性を軽んじているんじゃないかというところの議論もあって、今回、こういう見直しの空気が出てきたんだと思うんです。
 先般、与党の松島みどり議員が熱弁を振るっていらっしゃいました。私もその心情はよくわかりますし、質問をされた内容もじっくり聞かせていただきました。
 今回、集団強姦というのを創設されたりあるいは強姦罪の下限を上げるというようなことが、国民に対するアピール性を含んでいるとすれば、残念ながら、与党の女性議員ですら、そのアピールに対して、そのとおりだというところに落ちついていないようなやりとりに聞こえたんですね。
 また、たしかそのときは政府参考人の方だったと思いますけれども、説明を後から読み返しても、私の頭が悪いのかもしれませんが、そういう説明を受けても、まだちょっと女性を軽んじていないか、あるいは女性を軽んずるなというアピールに対してこたえているメッセージにはどうも読めないあるいは聞こえなかったんですが、このあたり、いま一度、強姦罪と強盗罪を比較して、そうじゃないんだとおっしゃるんでしたら、ぜひもう少しわかりやすく御説明いただけないかな。