児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自撮り製造は犯罪にならないかのような報道

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この記事だと、女児児童が②裸画像を撮影送信した行為が犯罪にならないようにみえますが、
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170730-00000051-asahi-soci.view-000
 法文上は児童も製造・提供の主体になりますし、そういう解説や判例も存在します。
 それなのに、警察が運用で法を曲げて、児童を検挙しないというチグハグなことをするので、児童に「汝の裸を撮る勿れ」という規範が届かないし、取締が行き届かないのだと思います。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」p190
Q42
18歳未満の児童が、交際相手に対し、自分の裸体の写真や、その交際相手との性交等の写真を渡した場合にも第7条第1の罪は成立するのですか。
A 他人に児童ポルノを提供する行為については、第7 条第1 項の罪が成立し、これは児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがありません
もっとも、第7条第1項の罪が保護しようとする対象は、主として描写される児童の尊厳にあると考えられますから、当該児童ポルノにおいて描写される児童がその交際相手に対して提供したり、交際相手が当該被描写児童に対して提供する場合のように、提供者、被提供者と描写される児童との関係や被描写児童の承諾の経緯、理由等を考察し、当該提供行為について真撃に承諾し、かっその承諾が社会的に見て相当と認められる場合には、違法性が認められない場合もありうると考えられます。

園田寿「いわゆるセクスティングと児童ポルノ単純製造罪一東京高裁平成22年8月2日判決(公刊物未登載)」甲南法務研究No.7
さらに、本判決も認めるように、本罪は、児童に対して「強制的に姿態をとらせる」ことを要件としておらず、被害児童が被写体となることに同意していても本罪が成立するのである。すると、セクステイングの場合は、被害児童が自らの自発的判断に基づいて(すなわち、自己答責的に)、3項製造罪における実行行為の一部である「描写」行為を行ったと解さざるをえないことになる。
では、本件の場合はどうか。確かに、本件では、被告人が、グラビアのモデルの仕事であるなどとA子を欺いて錯誤に陥らせてはいるが、そこに強制的契機はなく、しかもA子は13歳という、刑法で性的同意が有効とされる年齢であり、自分が何を行っているのかは十分に理解できていたと考えることができる。つまり、「グラピアのモデルの仕事」と欺かれたA子が、たとえ「児童ポルノ」の定義を知らなかったとしても、被告人が指示する言葉を理解し、その通りの行動を自らとっているのであって、「児童ポルノ」を製造しているという被告人の認識と、その指示に従っているA子の認識内容は一致しているのである。したがって、本件は、被害児童が被告人の指示に従っているものの、A子自身はなお自由意思を失った状態ではなく、自己の自発的な意思で「姿態」をとり、また「描写」行為を行っていると解されるのである。
ただ、A子は自らの姿態を「描写」しているが、この点はどう考えるべきか。本法は、児童の性的搾取ないしは性的虐待からの保護を目的とするものであるが、およそ児童が児童買春罪や児童ポルノ製造罪の主体となることを否定するものではない。18歳未満の者が18歳未満の者に対して買春行為を行ったり、18歳未満の者を被写体として児童ポルノを製造することはありうることである。自分自身を被写体とした児童ポルノの製造に関しては、「(児童に対して)姿態をとらせ(る)」ことを要件としている3項製造罪は考えられないが、それを要件としていない提供目的製造罪の成立は可能である。実際、18歳未満の者が、自らの裸体などをあらかじめ写真などに写して「ストック」し、他人からの求めに応じて、有償でメールの添付ファイルとして送信しているようなケースもある(この場合、それを取得した者は不可罰である)。
ところで、本件のように、被告人の指示に従って児童がシャッターを押し、メールに画像を添付して被告人指定のアドレスに送信した場合、「描写」行為はいつ完了するのか。これについて、「メールに添付した画像が送信された後、被告人が使用するプロパイダー会社のサーバーに受信されて記憶・蔵置された時点で完成すると解する見解があるが、被告人が同じ行為をした場合には、シャッターを押す行為で「描写」行為は完了するのであり、本件のように被告人の指示に従って児童自らがシャッターを押した場合であっても、これは同じことである。
また、児童ポルノがサーバーに記憶・蔵置されれば、昨今、悪意のコンピュータ・ウイルスによって、管理者の気づかないうちにインターネット上に流出する危険性が高まることから、より早い段階で、児童ポルノが電磁的な記録媒体に書き込まれた時点で既遂と解することには合理的な理由が認められるであろう。さらに、このように解さないと、かりに撮影はされたが、送信はきれなかったというケースでは、児童ポルノじたいが法の規制を受けずに社会に存在し続けることにもなるのである

神戸地裁h24
罪となるべき事実
被告人はa17が児童であることを知りながら、同女と共謀の上 平成25年12月8日午後11時40分ころ、大阪市北区西天満所在の同女方において、同女に上半身裸で乳房を露出した姿態をとらせた上 同女において 同女の携帯電話機のカメラ機能を利用して静止画像として自ら撮影して、平成25年12月8日午後11時46分ころその画像データを被告人が使用する携帯電話機にあてて電子メールの添付ファイルとしてそれそれ送信してそのころ 東京都千代田区の被告人方において 同画像データを 同携帯電話機に受信してこれを記憶させて蔵置して もって 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをとらせ これを視覚により認識する事ができる方法により電磁的記録にかかる記憶媒体に描写し、当該児童にかかる児童ポルノを製造した
主位的訴因について
主位的訴因にかかる公訴事実においては被告人が単独で児童ポルノを製造したとされており この点 検察官は被告人が自らの携帯電話機に画像データが添付されたメールを受信してそのデータを保存した行為が児童ポルノ製造の実行行為であると主張する
しかし 当裁判所は証拠上 被告人が製造行為を行ったとはみとめず 従って単独正犯としての被告人の罪責を問うことはできないと判断して 予備的訴因(児童との共同正犯)に基づき有罪と認定した
その理由は次の通りである
 本件のメールの受信については関係証拠によっても被告人がその受信のさいに事故の携帯電話機を用いて何らかの具体的操作を行ったことを示唆する証拠はない 昨今の携帯電話機のメール機能ではサーバーから自動的に個々の携帯電話機にメールデータが保存される設定となっているのが通常であり(これは公知の事実である) 被告人の携帯電話機も同様であったとうかがわれること(甲5)、からすれば 被害児童が当該画像データを添付したメールを被告人の携帯電話器宛に送信したことにより その後 被告人において特段の操作を行うことなく サーバーを介して自動的に同携帯電話機かそのデータを受信し、メールに添付された画像データごと同携帯電話機に保存されたものと推認される
このように メールの受信が自動的に行われ 被告人の側で受信するメールを選別したり 受信するかどうかを決定することができない状態であったこを踏まえれば このような方法で行われるメールの受信(厳密にはメールデータの携帯電話への保存)をもって 被告人による製造行為ととらえることは困難というほかない
 以上の通り 被告人が児童ポルノの製造の実行行為を行ったとは認められず 主位的訴因については犯罪の成立を認めることができないと判断した(なお 付言すると 当時16歳という被害児童の年齢や 被告人は要求の際に欺罔脅迫等の手段を用いて織らず、被害児童が被告人の要求に応じた主たる理由は被告人への好意にあったことなどすれば 本件については証拠上 間接正犯の成立も認めることができない)。
併合罪(重い第1の罪に加重)
国選弁護人

・・・
広島高裁H26
要するに,原判決は,Aの原判示の姿態を撮影して,その画像データを被告人の携帯電話機に送信し,その携帯電話機の記録媒体に蔵置させるに至らせるという,児童ポルノ製造の犯罪の主要な実行行為に当たるものを行ったのはA自身であるという事実を摘示しているが,Aが共同正犯に当たるとは明示しておらず,被告人に関する法令の適用を示すに当たっても,刑法60条を特に摘示していない。
他方,原判決は,本件について間接正犯の関係が成立するという事実を示しているものでもなく,本件の関係証拠に照らしても,間接正犯の成立をうかがわせる事実関係があるとは認め難い。
しかし,原判決は,罪となるべき事実として,Aが上記の実行行為を自ら行ったという事実は摘示し,これらの行為は,被告人が,自らの意思を実現するため,Aとの意思の連絡の下,Aに行わせたものであるという趣旨と解される事実関係を摘示しているものと理解することが可能であるし,かつ,そうした事実関係を前提に犯情評価等を行っていると見ることができることなどに照らすと,原判決が,被告人とAとの共謀の存在を明示せず,法令の適用に刑法60条を挙示していないことが,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認ないし法令適用の誤りに当たるとは,いまだいい難いと考えられる。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170730-00000051-asahi-soci
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170730-00000051-asahi-soci.view-000
ある男子生徒が「裸の画像を(自分で)撮影して送って」と女子生徒に要求し、複数人分の画像を入手。その後、別の生徒らの間で転送が繰り返されたという。

 県警は、画像提供を求めた男子生徒を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造、提供)容疑で、画像を転送した男子生徒2人を同法違反(提供)容疑でそれぞれ書類送検。男子生徒と画像を交換し合った女子生徒1人も同法違反(製造)容疑で立件した。

 交際相手が関わるケースも。同県内の高校では一昨年から昨年にかけ、相手から求められて自画撮りした女子生徒の裸の画像が同級生17人に拡散したほか、別の学校では「元彼」が性行為の動画を別の生徒に送り、約20人の高校生に広まる事件も起きた。県警は、両事件でそれぞれ5人以上の生徒を同法違反容疑で書類送検した。


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