児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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法務省刑事局付渡辺裕也「13歳未満の被害者に対する強姦事件において,性交が被害者の意思に反するものであったと断定できない場合の量刑への影響について言及した事例(平成28年5月26日福岡高裁判決)」

 13未満の売春事案(強姦+児童買春)は量刑的に軽く執行猶予も見受けられるというのは、児童側が性交に積極的だからでしょうね。

研修(平29. 7. 第829号)新判例解説

第1 はじめに
13歳未満の女子と性交する行為には,刑法177条後段に規定する強姦罪が成立するところ, その際被疑者が暴行・脅迫を用いたか否か,被害
者が性交を承諾していたか否かによって, 同罪の成否は左右されないものと解釈されており(#Fl) , この点に異論はないものと思われる。もっとも,この種事案において,被疑者が「被害者の承諾の上で性交に及んだ」旨主張することも珍しくないところである。その場合, このような主張が犯罪の成否に影響しないとしても,情状の点で, いかなる意味を持つのか必ずしも明らかではないと思われる。本判決は, 13歳未満の被害者に対する強姦事件について,性交が被害者の意思に反していたか否かが量刑にいかなる影響を及ぼすのかについて判断を示した事例として実務
上参考になると思われるので紹介する。なお,本稿中,意見にわたる部分は, もとより筆者の私見である。
第2事案の概要等
1 事案の概要(争いのない事実)
(1) 被告人(当時44歳)は,平成21年8月頃, 元妻と結婚前に交際する中で,元妻元妻の連れ子(当時10歳)及び被害者(元妻の姉の子。当時11歳小学校5年生) と共に泊まりがけで海水浴に行くことになった。しかし 直前に元妻が参加できなくなったことから,被告人は, 元妻の子と被害者の二人を連れて海水浴に行きホテルに宿泊した。その夜被告人は,被害者と性交した。
(2) 被害者は, 小学校2, 3年生の頃から被告人と家族ぐるみで付き合っており‘被告人に懐いていたものの,被告人と交際関係にはなかった。
被害者が性交するのは本件が初めてであった。その際,被告人が暴行・脅迫を加えたことはない上‘被害者も性交を明確に拒絶したことはなかった。
2第一審における争点と判断
第一審において, 被告人は,本件犯行を認めつつも,性交は被害者の意思に反していない旨述べ,弁護人も. 「無理矢理セックスされた,怖かったり気持ち悪かったりして声も出せなかった」旨述べる被害者の供述調書の信用性を争ったが‘ 第一審判決は,被害者の供述調書に信用性を認め,本件犯行が被害者の意思に反していたのは明らかであるとした。その上で,第一審判決は,被告人に不利な情状として, 「実質的には姪の関係にある, 当時1l歳と性的に未熟な被害者に対し, その意思に反して姦淫したというものであり, 人倫にもとる身勝手極まりない卑劣な犯行である」ことなどを指摘した上で,被告人に懲役5年を言い渡した。
第3本判決の概要
これに対して,被告人は,本件の性交は被害者の意思に反するものではなく, これを認定した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるなと.として控訴に及んだ。この事実誤認の点に対する本判決の判断は以下のとおりである。
まず,本判決は, 「一般論として,性犯罪に直面した被害者が恐怖や衝撃から抵抗できない状態に陥ることは十分ありうるから, かかる外形のみに着目して性行為への黙示的承諾があったなどと速断すべきではな」いとしながらも㈱本件発生から被害者の調書作成までに相当大きな時間的隔たりがあり↑被害者の発達段階も大きく異なっていること,被告人と被害者とは本件以降特異な人間関係を形成していたが,被害者の調書作成時点ではその関係が崩壊していたこと,原審では被害者の証人尋問が実施されておらず, その供述の細かな意図まで確認できないことといった事情を踏まえ, 「被告人に無理矢理セックスされたとする供述調書の記載によって,本件の性交が, その当時における被害者の意思に反していたと断定することには, なお一抹の濤曙を覚えざるを得ない」とし, 「他に適当な証拠もない以上,本件の性交が被害者の意思に反するものであったことが合理的な疑いを差し挟む余地無く立証されたとはいえず, これが明らかに認められる旨を判示した点で,原判決に事実誤認があることは否定できない」とした。
その上で‘ 本判決は, 「量刑への影響を検討するに, 13歳未満の女子との関係では,暴行・脅迫が強姦罪の要件でないことはもとより(刑法177条後段),承諾がある場合も性交自体が同罪を構成するのであるが,これは‘年少者が心身の未成熟故に抗拒困難の状態にある上に,性的行為の意味も十分把握しえず、的確な自己決定を期待できないという理解によるものと解される。そして, この法意は, 同罪の成否のみならず,その量刑判断においても通底すると解するのが相当である。すなわち,13歳未満の女子に対し,暴行・脅迫に及ぶことなく,或いは,外形上承諾を得て性交渉を持ったとしても, それは年少者の非力や知慮浅薄に乗じたというに過ぎず, そのような女子を対象として性欲を満たすこと自体,抵抗を実力で排除した場合にも劣らない刑罰的非難に値するというべきだからである」とし. 「暴行・脅迫を伴ったわけでも,明示的抵抗があったわけでもない本件において,性交渉が被害者の意思に反するものであったか否かは同人が当時11歳に過ぎなかった以上量刑判断において本質的差異をもたらすものではないというべきであり,結局この点の事実誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえないことに帰する」(下線は筆者による。) とし,事実誤認の論旨に理由はないとした。