児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪の成立には「性欲を満たす意図」が必要かどうかが争われた刑事裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は、検察側、弁護側双方の意見を聞く弁論を10月18日に開くことを決めた。

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 奥村の上告趣意書は「簡潔」です。

上告理由第1 判例違反・法令違反~強制わいせつ罪に性的意図は不要とした点 5
1 原判決が性的傾向不要としたのは誤りである 5
2 被告人には性的意図が全くなかったこと 6
3 強制わいせつ罪の保護法益は純粋な被害者の性的自由ではなく、わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)と定義されていること 8
4 学説も傾向犯説が通説であること 9
(1)最判s45までの学説状況 9
(2)最判s45以降の学説状況 36
西原春夫「強制猥褻罪における主観的要素」刑法判例百選Ⅱ各論[第二版] 36頁 61
5 判例違反~傾向犯の判例最判s45.1.29)にあからさまに敵対していること 62
最判S45.1.29 62
①広島高裁h23.5.26*5(強制わいせつ罪(176条後段)) 62
東京高等裁判所H28.2.19*6(強制わいせつ罪(176条前段)) 62
③広島高裁岡山支部H22.12.15*7(強制わいせつ罪(176条前段)) 63
福岡高裁h26.10.15*8(強制わいせつ罪(176条後段)) 63
⑤東京高裁h13.9.18*9(強制わいせつ罪(176条前段) 64
6 性的意図不要説を採っても結局違法性判断で性的意図を考慮せざるを得ないこと 64
7 実務上の弊害 64
①処罰範囲が不明確 65
②不要説だと「わいせつ」の定義が定まらないこと 65
③乳幼児の保護に欠ける 69
強要罪との区別 70
東京高等裁判所H28.2.19 70
広島高裁岡山支部H22.12.15 70
8 まとめ 70
広島高裁h23.5.26(強制わいせつ罪(176条後段)) 71
福岡高裁h26.10.15(強制わいせつ罪(176条後段)) 71
上告理由第2 法令違反・判例違反~強制わいせつ罪の「わいせつ」の定義を「被害者の性的自由を侵害する行為」とした点 72
1 原判決 72
2 わいせつの定義についての判例違反(最判s26.5.10 名古屋高裁金沢支部S36.5.2 東京高裁h22.3.1) 72
3 強制わいせつ罪の保護法益は純粋な被害者の性的自由ではないこと 73
4 保護法益を個人の権利と解したとしても、性的意図不要という結論にはならないこと 86
5 弊害 87
①処罰範囲が不明確 87
②乳幼児の保護に欠ける 89
6 まとめ 89
上告理由第3 法令違反・判例違反(第1の2と3は牽連犯) 91
上告理由第4  法令適用の誤り・判例違反(第1の1の強制わいせつ罪と判示第1の2の製造罪は観念的競合) 96
1 はじめに 96
2 刑法54条1項の「一個の行為」の意味 99
3 罪数判断は、訴因の比較により、訴因外の事実は考慮されない。 107
4 わいせつ行為(176条)とは 108
東京高裁H22.3.1 108
仙台高裁H21.3.3 108
札幌高裁H19.8.28 109
阪高裁H22.3.26 110
5 児童ポルノ製造罪が立件されない場合の撮影行為の法的評価=わいせつ行為 113
最高裁s45.1.29*17(但し、性的傾向を欠くので強要罪。) 113
東京高裁s56.1.27*18 113
東京高裁H18.10.11*20 114
東京高裁H22.3.1*21 114
東京高裁H22.3.1 114
仙台高裁H21.3.3 115
阪高裁H23.5.20 115
6 わいせつ罪に加え児童ポルノ製造罪を立件した場合の罪数処理 116
①仙台高裁H21.3.3*25 118
名古屋高裁h22.3.4*26 119
③高松高裁h22.9.7*28 120
④広島高裁h23.5.26*29(訴因変更) 121
⑤大阪高裁H23.12.21*30(原判決 神戸地裁H23.3.18*31)~提供目的製造罪 121
⑥大阪高裁h25.6.21*32 121
7 被告人の行為 122
仙台高裁H21.3.3 125
8 最決h21.10.21*33(児童淫行罪と児童ポルノ製造罪)の射程について 127
(1)本件は提供目的製造罪であること 127
(2)児童淫行罪の実行行為は「性交・性交類似行為」であるのに対して、強制わいせつ罪の実行行為は「わいせつ行為」であって、しかも撮影=わいせつ行為であるという重なり具合であること 127
名古屋高裁h22.3.4 128
高松高裁h22.9.7 129
阪高裁H23.12.21 129
(3)一事不再理効が広くなるという指摘について 131
(4)通常伴わないという指摘について 133
東京高裁H22.3.1 134
仙台高裁H21.3.3 134
9 東京高裁h24.11.1*36の射程について 135
10 警察統計でも、13歳未満への製造罪は強制わいせつ罪(176条後段)が伴うものがほとんどであること 140
11 提供目的製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)とを観念的競合とする判例(大阪高裁H23.12.21)違反 143
12 観念的競合の判断基準についての判例最判s49.5.29)違反 144
13 まとめ 145
上告理由第5 法令違反・判例違反~判示第1の2は「性交類似行為」にあたらない

http://www.yomiuri.co.jp/national/20170720-OYT1T50107.html
性欲満たす意図「必要」見直しか…強制わいせつ
2017年07月20日 20時01分
 強制わいせつ罪の成立には「性欲を満たす意図」が必要かどうかが争われた刑事裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は、検察側、弁護側双方の意見を聞く弁論を10月18日に開くことを決めた。
 大法廷の弁論は判例変更などをする場合に開かれるため、年内にも言い渡される判決では、「性欲を満たす意図」が「必要」とした1970年の最高裁判例が見直される公算が大きい。