児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「強いてわいせつな行為をしようと考え,同年11月26日午後8時38分頃,名古屋市名東区内のマンション4階に停止しているエレベーターの出入口付近において,エレベーター内の奥側にいたC(当時17歳)に対し,「見てくれ。見てくれ。」などと言いながら,その面前で自己の陰茎を露出させて自慰行為をして射精するなどし,もって強いてわいせつな行為をした,」という強制わいせつ事件(名古屋地裁H28.4.5)

 眼前自慰

「平成29年版 警察実務 重要裁判例」警察公論第72巻第8号付録2017立花書房
被告人が,エレベーターの出入口付近において,その奥側にいた被害者の面前で自慰行為をして射精した行為につき,脅迫及びわいせつな行為に当たるとして強制わいせつ罪の成立を認めた事例

3強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮又は刺激させ, かつ,普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道徳観念に反する行為をいうものと解されている(名古屋高金沢支判昭和36年5月2日下刑集3巻5=6号399頁)。
本判決は,被告人が, エレベーター内という狭く逃げ場のない空間で,至近距離にいる被害者の面前で自慰行為を行った点をとらえて,被告人の行為が明らかに被害者の性的蓋恥心を害し, その性的自由を害するものであるとして, 「わいせつな行為」に該当すると判示した。
なお,本判決は,被害者が被告人の陰茎等を直接見ていないことは強制わいせつ罪の成否に影響しないと判示した。本件においては,被害者が被告人の自慰行為等のわいせつ行為の存在を認識しており, その性的蓋恥心及び性的自由を侵害するものであったことは明らかであるので。判示はもとより正当である。
本件におけるわいせつ行為は、被害者の身体への接触を伴うものではないが。被害者の身体への接触を伴わない場合であっても。例えば裸にして写真をとる行為は「わいせつな行為」に該当すると解されている(東京高判昭和29年5月29日高刑特報40号138頁。東京地判昭和62年9月16日判時1294号143頁)。
本判決は,強制わいせつ罪が成立し得る事実関係について具体的に判示したものであり,実務上参考になると思われる。

強制わいせつ致傷,住居侵入,強姦,強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所判決 平成28年4月25日
 被告人は,
第1 強姦の目的で,平成26年6月11日午後11時頃,愛知県大府市内のA方に,その無施錠の玄関ドアから侵入し,その頃,同所において,同女(当時22歳)に対し,「声を出したら殺す。」などと言って脅迫した上,ベッドに横たわる同女に覆いかぶさるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫した,
第2 強姦の目的で,同年7月22日午前2時10分頃,名古屋市千種区内のB方に,その無施錠の玄関ドアから侵入し,その頃,同所において,同女(当時22歳)に対し,その口に手を当てた上,「声出したら殺すよ。」などと言って脅迫して,その反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫した,
第3 強いてわいせつな行為をしようと考え,同年11月26日午後8時38分頃,名古屋市名東区内のマンション4階に停止しているエレベーターの出入口付近において,エレベーター内の奥側にいたC(当時17歳)に対し,「見てくれ。見てくれ。」などと言いながら,その面前で自己の陰茎を露出させて自慰行為をして射精するなどし,もって強いてわいせつな行為をした,
第4 強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年2月11日午後11時58分頃,名古屋市名東区内の路上において,D(当時30歳)に対し,その上半身に腕を回して抱き付き,「騒ぐな。」,「殺すぞ。」などと言って脅迫し,さらに,同女の頸部を手で絞めるなどしてうつ伏せに転倒させた上,その頸部を手で押さえ付けるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,同女が履いていたパンツ内に手を差し入れてその陰部に手指を挿入して弄び,同女を立ち上がらせて近くの民家北側の路上まで連行し,「いかせてくれるだけでいい。」,「やらないとレイプするか殺す。」,「仲間を呼ぶぞ。」,「刃物を持っている。」などと言って脅迫し,さらに,同女を同民家敷地内のガレージ内に連行し,露出させた陰茎を示しながら,「なめて。」,「殺すぞ。」,「刺すよ。」,「やらないと本当に殺すよ。」などと言って脅迫し,同女に陰茎を口淫させ,もって強いてわいせつな行為をし,その際,上記暴行により,同女に全治約1週間を要する頸椎捻挫,前額部及び両膝関節部擦過傷等の傷害を負わせた,
第5 強いてわいせつな行為をしようと考え,同月16日午後9時21分頃から同日午後9時30分頃までの間,名古屋市港区内のマンション北東側出入口付近において,E(当時22歳)に対し,その背後から抱き付き,同女の着衣の中に右手を入れて,その左胸を揉み,タイツの上から左手で陰部を触るなどした上,その口に接吻し,さらに,面前で自慰行為をして射精するなどし,もって強いてわいせつな行為をした。
・・・
2 判示第3の事実について
  弁護人は,事実関係を認めた上で,判示第3の行為が強制わいせつに該当することについては疑問を呈している。
  そこで検討するに,被告人は,マスクをして顔面を隠し,夜間,マンションのエレベーター内において,当時17歳の女子高校生であったCに対し,上記エレベーターの出入口(間口80センチメートル程度)を塞ぐようにして立ち,自身の陰茎を露出した上,数十センチメートルの距離に近づいて「見てくれ。」などと迫るように言い,Cが「やめてください。」と言うのも構わず,自慰行為を行ったことが認められる。このような状況からすれば,Cとしては,自慰行為にとどまらず,何らかの性的な行為をされるかもしれないと感じ,抵抗することが著しく困難になると認められる。したがって,被告人の行為は脅迫に当たる。
  また,被告人は,上記のとおり,エレベーター内という狭く逃げ場のない空間で,至近距離にいるCの面前で自慰行為を行った。このような行為は,明らかにCの性的羞恥心を害し,その性的自由を侵害するものであるから,わいせつ行為に当たる。なお,Cは,被告人の陰茎等を直接見ていないことがうかがわれるが,面前で自慰行為を行うことにより強制わいせつ罪が成立するから,Cが直接これを見たか否かはその成否に影響しない。