児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強要未遂4件につき「検察官は、被告人が動機を正直に述べていない疑いがあること及びこれから派生する一般情状事実などといった、行為責任の本質とはいえない部分に拘泥するあまり、これらを過大に評価したか、未遂や弁償の点などを過少に評価した結果、重い求刑に至ったものともうかがわれるので、本件では求刑を参考にしない。」として懲役2年執行猶予3年とした事例(大津地裁h29.3.22)

(求刑・懲役3年(実刑も考慮、執行猶予の場合には付保護観察あるいは相当長期の猶予期間))

津地方裁判所平成29年03月22日
 上記の者に対する強要未遂被告事件について、当裁判所は、検察官●●●、私選弁護人●●●各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 平成28年12月13日付け、同月28日付け、平成29年1月20日付け及び同年2月24日付けの各起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これらを順次引用する。
(法令の適用)
(罰条)それぞれ刑法223条3項、1項(判示各事実)
併合罪加重)刑法45条前段、47条本文、10条(判示各罪、犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定加重)
(刑の全部執行猶予)刑法25条1項
(量刑の理由)(求刑・懲役3年(実刑も考慮、執行猶予の場合には付保護観察あるいは相当長期の猶予期間))
 被告人は、ドライブインで男性の車に乗り換えたり、ホテル付近にいたりした40歳前後の女性4名がいずれも不倫をしていると考え、その家を確かめたり、写真を合成したりするなどの準備をした上で、平成28年9月から11月にかけて、映像の入ったDVDを近所や職場に届ける旨などが記載された書面を被害者宅等に置いて脅迫し、指定の場所に赴くことや携帯電話番号を教えることを強要したが、いずれも未遂に終わったものである。被告人は、何ら関係のない女性らの私生活に踏み込んだ上、その羞恥心等に付け込み、陰湿な方法で多大な不安や恐怖感を与えて自らの要求を飲ませようとする行為を繰り返したもので、相当に悪質な犯行といえる。被告人は、勤務先の小学校で不憫な思いをしている生徒がいたことから、子どもがそのような思いをする背景の1つとなり得る不倫をやめさせなければならないなどと考えて本件各犯行に及んだと供述しているところ、自らの行動を合理的に説明できているのか疑問は残るが、この供述を前提にしても、独善的で歪んだ考えを多大な精神的苦痛を与える行為という形で具現化させた点は非難を免れない。
 以上のような犯情事実のほか、被告人に前科前歴がないこと、合計145万円を支払って、被害者全員との間で示談が済んでおり、うち1名からは宥恕も得られていることなどといった重要な情状事実も認められる。個人的法益が保護法益である本件において、弁償や宥恕の点は格別の考慮を与えるべきである。
 同種事案の量刑傾向を前提に、指摘した諸事情を考慮すると、犯情及び重要な情状事実に見合った量刑の幅としては、検察官の求刑を下回る程度の懲役刑に執行猶予を付したもの以外には考えにくい(なお、被告人の供述を排斥したからといって、量刑の基礎となる社会的類型を異にする程度の具体的な動機が直ちに認定できるわけではない。主張立証の分量や内容に鑑みると、検察官は、被告人が動機を正直に述べていない疑いがあること及びこれから派生する一般情状事実などといった、行為責任の本質とはいえない部分に拘泥するあまり、これらを過大に評価したか、未遂や弁償の点などを過少に評価した結果、重い求刑に至ったものともうかがわれるので、本件では求刑を参考にしない。)。
 そこで、その他の一般情状について検討すると、被告人が犯罪事実を認めて反省の弁を述べていること、犯行を繰り返した原因に対応した具体的な再発防止策までは構築されておらず、対処療法的といわざるを得ないが、被告人の妻がGPSによる監視など踏み込んだ監督を公判廷で誓約していること、自業自得ではあるが、退職金全額不支給処分といった一般の被告人にはない厳しい社会的制裁を受けていることなど、被告人に有利な事情も認められる。これらもしんしゃくして、主文の執行猶予判決が相当であると判断した。
刑事部
 (裁判官 小野裕信)
起訴状
平成28年12月13日
公訴事実
 被告人は、平成28年10月1日に滋賀県E市〈a〉所在の〈1〉ドライブイン駐車場で見かけたA(当時46歳)が男性の車両に乗車する状況を目撃したことに乗じて、前記Aに自己の要求を受け入れさせようと考え、同月23日午後1時30分頃、同県X所在の前記A方前路上において、同人に対し、「この前、〈1〉ドライブインにいたでしょ。」、「あなた、浮気しているでしょ。」、「さっき出て行ったのがご主人でしょ。」、「映像もありますし、謝るなら今のうちですよ。」などと言い、さらに、同年11月上旬頃、「なぜ男の車に乗り込んだのか…?追跡した結果、その行き先はなんと…」、「ご主人にバレると、きっと終わっちゃいます。」、「11/13と11/20の14時に一人で写真の場所に来たら相談します。14時30分になったら〈2〉15時になったら〈3〉、15時30分になったら元のところに移動してください。」などと記載し、前記Aが前記〈1〉ドライブイン駐車場で前記車両に乗車する状況を撮影した画像を貼り付けた書面を同人方ガレージに置き、同月12日午前10時50分頃、同所において、同人にこれを閲読させ、前記書面に記載の日時場所に1人で来るよう要求し、その要求に応じなければ、同人の名誉等に危害を加える旨告知して同人を怖がらせ、同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人が警察に通報したため、その目的を遂げなかったものである。
●●●
起訴状
平成28年12月28日
公訴事実
 被告人は、かつて滋賀県E市〈b〉所在のホテル〈4〉付近でBが男性と一緒にいる状況を目撃したことに乗じて、前記Bに自己の要求を受け入れさせようと考え、平成28年9月上旬頃、同県Y所在の前記B方ガレージにおいて、「男とホテルから出てきた映像あるよ」、「バレたら娘泣くよ」、「だまっててほしいならタオルを丸めてダッシュボードに置いとけ」、「この紙にケータイ番号書いて同じところにはさんどけ」、「カメラとかいらんことしたらバレるよ」などと記載した書面を同所に置き、同月9日午前10時頃、同所において、前記Bにこれを閲読させ、さらに、同年11月中旬頃、「ボカシのないものを今度もってくるね」、「11月27日にEの〈5〉の〈6〉前に来たら相談にのります」、「14時に1人で来ること」、「来なかったり、二人以上なら近所に配ります。(顔もうつってるよ)」などと記載し、前記B車両が前記ホテルに駐車しているかのように合成した画像を貼り付けた書面を前記B方ガレージに置き、同月19日午前7時30分頃、同所において、同人(当時40歳)にこれを閲読させ、前記書面に記載の日時場所に1人で来るよう要求し、その要求に応じなければ、同人の名誉等に危害を加える旨告知して同人を怖がらせ、同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人が警察に通報するなどしたため、その目的を遂げなかったものである。
罪名及び罰条
強要未遂 刑法223条3項、1項
●●●
起訴状
平成29年1月20日
公訴事実
 被告人は、平成28年9月28日午後8時頃から同日午後9時頃までの間に滋賀県E市〈a〉所在の〈1〉ドライブイン駐車場で見かけたC(当時41歳)が男性の車両に乗車し、同県F市〈c〉所在のホテル〈7〉に入る状況を目撃したことに乗じて、前記Cに自己の要求を受け入れさせようと考え、その頃から同日午後10時20分頃までの間に、前記駐車場において、「男のハイブリッドボクシーでホテルに入っていくところさつえいしました」、「顔もバッチリうつってます」、「職場も家も知ってるよ」、「だまっててほしいなら2まいめにケータイばんごうをかいて後ろの〈8〉のかんばんの土台のうしろにおいとけ」、「おいてなかったら職場と家、近所にDVDが届くよ」などと記載した書面を前記Cの車両の運転席側ドアノブに挟み、同日午後10時36分頃、同県G市〈d〉所在のH〈9〉店駐車場において、同人にこれを閲読させ、前記書面に記載した場所に同人の携帯電話番号を記載した紙を置くよう要求し、その要求に応じなければ、同人の名誉等に危害を加える旨告知して同人を怖がらせ、同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人が警察に通報したため、その目的を遂げなかったものである。
罪名及び罰条
強要未遂 刑法223条3項、1項
●●●
起訴状
平成29年2月24日
公訴事実
 被告人は、かつて滋賀県E市〈a〉所在の〈1〉ドライブイン駐車場でDが男性の車両に乗降する状況を目撃したことに乗じて、前記Dに自己の要求を受け入れさせようと考え、平成28年9月8日午後6時頃から同日午後8時30分頃までの間に、前記駐車場において、「男の車から降りてくる映像ありますZ家も知ってるよ シャッターの車庫だね 男に言わずもどってきてね。でないと近所にDVDを届けるよ。わかったね、Dさん。」「けいたいばんごうをかいてうしろのうえこみにおいといて」などと記載した書面を前記D(当時37歳)の車両の運転席側ドアノブに挟み、同日午後8時30分頃、同駐車場から同県Zに向けて走行中の同車内において、同人にこれを閲読させ、前記書面に記載した場所に同人の携帯電話番号を記載した紙を置くよう要求し、その要求に応じなければ、同人の名誉等に危害を加える旨告知して同人を怖がらせ、同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人が警察に通報したため、その目的を遂げなかったものである。
罪名及び罰条
強要未遂 刑法223条3項、1項