児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

口腔性交・肛門性交を強姦罪に取り込む議論~井田良「性犯罪の保護法益をめぐって」研修806号2015.8月

井田良「性犯罪の保護法益をめぐって」研修806号2015.8月
 口腔性交・肛門性交の分化が見られます。

このように男性の女性に対する膣性交の強制のみを特別扱いすることとは諸外国の立法例に鑑みてというばかりでなく, 上述の保護法益の観点から正当性がないと考えられる。立法論としては, 現行法の「強姦」の範囲を拡大すること, すなわち,強姦に加えて一定の「性交類似行為」を強制わいせつ行為の中から切り出してこれを強姦と同じく扱うべきではないかが問題となる。いいかえれば, 二分法を前提として,加重類型(いわば「加重強制わいせつ罪」) として類型化されるべき行為の範囲が問題となるのである。
ここには二つの異なった問題が生じよう。まず, 強姦と同視され
るべき性的侵害行為の範囲である。前述のような性犯罪の法益の本質から考えるならば,膣性交と並んで、肛門性交及び口淫については加重類型に加えるべきである。なぜなら,後者の二つの場合も
も男性器の身体内部への挿入をともなうという点において,いずれより濃厚な性的接触であり, 身体的内密領域への侵害性が高いと理解されるからである。膣性交, 肛門性交,そして口淫の三つは,同じ重い評価に値するグループに属すると考えられ,諸外国の立法を見ても,それらが足並みそろえて基本的に同じ評価に値する行為としているのは理由のあるところであろう。
このうち,口淫については,膣性交及び肛門性交とは現象的形態がかなり異なるとする意見もありうるが, しかし強姦事件の際に,口淫があわせ行われる例が多いことに示されているように,性的欲求の対象となる度合いが高くそれだけ被害者の強い保護が要請されるという点で,膣性交・肛門性交と同じに扱うべきものであろう。なお,口淫は被害者の顔に近いところで行われまたそれは排池のために使う身体部位を食事のために使う器官の中に入れるのであるから,身体的内密領域の侵害という点で顕著なものがあるということも付け加えることができょう。
次に,犯人が自己の膣・肛門・口腔に,被害者の男性器を挿入させる行為についてどのように考えるべきかが問題となる。結論を先に述べれば,これらの(被害者の)男性器を「挿入させる行為」も(加害者の)男性器を「挿入する行為」と同一に扱い,加重類型(したがって,強姦と同ーの類型)に加えるべきであろう。なぜなら,男性器の身体への挿入をともなう濃厚な性的なコンタクトの経験の共有を強いるという,行為の本質的部分においては,「挿入する行為」の場合と何ら相違がないからである。行為の外形に拘泥し従来の強姦のイメージを固定しておいて,それとの距離を測るという見方をするのではなく,保護法益の実質と性的行為の本質に遡って考えるときには,これらを区別する理由はない。また,「挿入する行為」と「挿入させる行為」とを区別して刑の重さに差異を設けるとすると,ジェンダーニュートラルな規定にならないという問題も生じる。そして,その差別的扱いの根拠を尋ねられたときには,直感や感覚を引き合いに出すほかなくなってしまうのである。