児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自撮り規制について青少年問題協議会委員の坪井節子様からのコメント

 確かに児童ポルノ法の方は、規制派の言われるままに細かく規制入れてますから、条例で補充する必要はないんじゃないですかね。
 自撮り規制を入れなかったのは、立法の故意か重過失。

第 3 1 期 東京都青少年問題協議会
第 5 回 児 童 健 全 育 成 部 会 (拡大 専門部会 )
平成 29 年5月 16 日(火)
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/singi/seisyokyo/31ki-menu/senmon5/gijiroku.pdf
○部会長 では、また後で何かあればと思いますけれども。
本日ご欠席の坪井委員からコメントを頂戴しているということですので、本日の議論をより深いものとするために、ご披露したいと存じます。
事務局からご紹介いただけますでしょうか。
○青少年課長 ご紹介いたします。
自画撮り被害防止に関する諮問に対する意見書案について。
青少年問題協議会委員の坪井節子様からございます。
ご多忙の中、被害の実態を確かめ、施策の検討をなされ、意見書の作成に当たられた委員の皆様のご尽力に敬意を表します。
本日の拡大部会に出席がかないませんので、事前に私の意見をお伝えしておきたいと思います。
子供たちが曝されている自画撮り被害の深刻さを受けて、この被害防止のための策を早急に講じるとする意見書の目的には、異論はありません。
自画撮り被害は、子供たちの性を商品化した経済的利益をあげる性的搾取、子供たちの性を自らの欲望の対象として傷つけ、顧みない性的虐待のいずれの被害にも繋がるものであり、加害者のSNS内での個別の働きかけの容易さに比して、その後の被害の甚大さ、拡大の深刻さが子供の予想をはるかに超えるものとなるという点において、画像を送信すること自体を防ぐための措置が必要であることも、理解できます。
第1、教育上の課題。
個人間の通信の中で行われる加害行為であって、外部からの介入が著しく困難であるという特質からするなら、一刻も早くその実情を多くの大人たち、子供たちが知り、被害から身を守るすべを身につけることが何よりの防止策だと思います。
その意味において、私は何より重要なのは、教育現場における子供たち、そして保護者への性被害の予防方法の周知だと思います。
この点において教育現場の取組について、次の3点について、さらに検討を頂ければと思います。
1)性教育について。
性が人間の尊厳に深く関わる事柄であり、その内実の豊かさと大切さを理解すると共に、性の搾取、虐待がどれほどに深刻な被害を子供に与えるかを踏まえて、性を考える教育に真剣に取り組むことでございます。
学校教育における性教育の取組は、残念ながらネット上に氾濫する子どもに誤った知識、偏った情報を与える性情報に太刀打ちできるレベルにはありません。
人権としての性教育が行われないまま、性侵害が深刻な被害をもたらすという恐怖だけを植え付ければ、子どもたちが性を嫌悪、忌避し、将来的に豊かな人間関係の形成、また出産、子育ての喜びを実感できなくなっていく危険もございます。
子供たちの性を本当に守りたいのと思うのであれば、教育庁区市町村教育委員会の協力を得て、学校現場で躊躇することなく、正面から子どもの性に向き合い、性を大切にすること、そして加害者、被害者にもならない方法を共に考えていく姿勢を持たなければならないと思います。
2)SNS東京ルールについて。
SNS東京ルール、SNS東京ノートが学校現場に導入されることによりネット上のいじめ、犯罪被害防止に着実に成果をあげていることが報告されています。
自画撮り被害についても、教育庁の協力を得て、このルールに明記するなど改訂版を作成し、子どもたち、保護者への周知を行うことが必須だと思います。
3)保護者への周知啓発活動について。
子どもたちのネット被害、自画撮り被害について、保護者に実情と防止策を周知するため、PTAの主催による家庭教育学級等のテーマとしてとり上げてもらい、講師派遣もできることについて広く情報提供してください。
区の教育委員として、PTA会長の方たちと懇談会などでお会いしますと、ネット被害の実情などについて、どこからどのように情報を得ればいいのかわからないという戸惑いがあることがわかります。
対策本部から市区町村の教育委員会等を通じ、小学校、中学校のPT22A連合会に情報提供があれば、かなりの関心を集めることと思います。
第2、技術上の課題。
子どもたちが自画撮り被害の勧誘に対し、子ども自身が困惑しながらも、その場で、自ら「NO」を表明することができなければ、被害の未然防止には至らないだろうと思います。
ネットに関する技術的な知識はないのですが、子どもたちにとってスタンプの送信により気持ちを表すということは、言葉で断るよりもハードルが低いのではないかと思います。
LINEのスタンプアプリで、勧誘者に対し、「お断りします」、「少し待ってください」、「ちょっと東京都に相談してみます」、「これって自画撮り被害じゃないですか」、「自画撮り被害というのがあると学校で聞きました」などを表現するユーモアのあるスタンプを開発し、子どもたちに配布する工夫はできないでしょうか。
第3、規制上の課題。
自撮りを勧誘すること自体を犯罪と適示し、被害防止に繋げたいという狙いは理解できないわけではありません。
しかし子供の権利擁護のためではあっても、罰則規定を伴う通信の秘密という重要な人権にかかわる法的規制には、慎重であるべきだと思います。
今回の条例における罰則規定の追加については、送信前の行為の摘発は事実上非常に困難であり、効果が期待できないこと、構成要件が曖昧で現実の適用において、プライバシー侵害にかかわる微妙な問題発生が予想されること、捜査段階での通信の秘密の侵害などの捜査権乱用につながる危険があることなどの懸念があります。
また児童ポルノ規制法においては、画像の提供、作成等に加え、単純所持の処罰規定も盛り込まれました。
勧誘者が自撮り画像を取得した時点で単純所持罪は成立するわけですが、その規制、摘発すら実効性を発揮していない現状で、勧誘段階での、このような罰則をさらに設けることには疑問があります。
これらの点について十分ご審議くださいますよう、お願いいたします。
という内容でございます。