児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

前刑確定前の余罪について、再度の執行猶予の要件を検討する弁護士

 条解刑法には、法律上は「懲役3年執行猶予も可能」と書いてある。
 この弁護士の見解なんでしょうね。

条解刑法P56
10)余罪と執行猶予
 執行を猶予された罪の余罪の場合本条1項l号の要件を文字どおりに解釈すると,ある罪について執行猶予を言い渡す有罪判決が確定した後にその確定前に犯した罪について刑を言い渡すべき場合でも執行猶予を言い渡すことはできないように思われる。しかし判例は,もしこれらが同時に審判されていたら一括して本条I項により刑の執行を猶予することができたのであるから,それとの権衡上,本条1項l号の欠格事由がないものとして更にその刑の執行を猶予することができるとする(最大判昭28・6・10集76~1404)。判例はこの考え方を更に進め,同時審判を受ける可能性がなかった余罪,すなわち,前の裁判の言渡し後確定前に犯した罪も同様に解している(最大判昭32・2・6集112 503)。したがって,ここでいう余罪とは,前の裁判確定時を基準としてそれ以前に犯した罪をいい,この場合の執行猶予は本条2項ではなく1項によって言い渡すべきことになる(最大判昭31・5・30集105 760)。この場合に前の刑と余罪の刑とが合算して3年以下であることを要するかという問題があるが,消極に解すべきであろう(大阪高判昭42・10・6高集20-56230 なお,本条注15参照)。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_1410/b_497889/
Q 2016年10月31日 18時47分
2年前に金融商品取引法違反で懲役1年6月執行猶予4年罰金300万が確定し、罰金は納めました。
その1年後、確定判決前の余罪で詐欺で起訴(被害額1300万、複数回に分けて)になりました。
検察側の求刑では、示談は成立したものの、金額も大きく複数回に渡っていて常習的として、相当期間、矯正施設での教育が必要とし、懲役2年6月でした。

川面 武弁護士2016年10月31日 19時32分
質問者が納得
質問者がありがとう
> 詳細が足りないかもしれませんが、この場合に予想される判決をお聞かせ下さい。
事案の詳細を精査すれば,異なる意見も考えられますが,懲役1年6カ月程度の実刑を予想します。以下理由を述べます。
本件のような確定判決前の余罪についての裁判も,執行猶予中の裁判には変わりありません(なお,近時の法改正で,執行猶予は正式には刑の全部の執行猶予となりましたが,従前からの用語を使用します。)。そこで原則的には,執行猶予は付けられません(刑法25条1項)。これに対する例外は,刑法25条2項の厳格な要件をクリアした場合のみです。
具体体には,「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者」については,?新たな刑が「一年以下の懲役又は禁錮の言渡し」であること,?「情状に特に酌量すべきものがあるとき」であること,?「次条(刑法25条の2)第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者」でないことという要件です。
では,本件は,この例外に該当するでしょうか。
通常は,執行猶予の恩恵を受けながら,猶予期間中に新たな犯行に及ぶことから,反省もなく,執行猶予取り消されて合わせて長期の服役もやむを得ないと考えられています。
ところが,確定判決前の余罪が裁かれるケースでは,執行猶予の恩恵を受けて反省する余地はないことから,被告人に気の毒にも思えます(刑法25条1項が「前に」(裁判前にの意味)と規定し,「実行行為前に」と規定していないのは立法の過誤と言えるかもしれません)。
そうすると,刑法25条2項の?の要件は柔軟に適用されるべきとも考えられます。
しかし,刑法25条2項には,それと独立の要件として?の要件があるのです。被害額1300万円の詐欺事案というのは,いかに前科前歴のない人間による犯行であったとしてもぎりぎり懲役3年で4年か5年の執行猶予が付く(保護観察付の可能性も大)という事案です。ここはどんなにおまけしても懲役1年にすることは考えられません。
したがって,実刑判決自体は免れません。
もっとも,執行猶予の恩恵を受けた後に新たに悪いことをしたわけでもないのに,執行猶予を取り消されて合わせて服役するのは気の毒であることも事実ですので,少し多めに4割くらい求刑(求刑自体も少し割り引かれています。)を割り引くのではないかと予想します。
2016年10月31日 19時32分

 前も指摘したのに訂正せず食い下がった人だな。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1095/b_443682/
川面 武 弁護士
東京 豊島区
弁護士ランキング 東京都7位
ありがとう
> 質問させてください。
> 執行猶予判決後の執行猶予期間中に犯罪を犯して逮捕されると、執行猶予が取り消されてその後の判決による懲役と前の判決の懲役が合算されてしまうというのはよく聞く話です。
>
> では執行猶予判決後の執行猶予期間に執行猶予判決前の犯罪が明るみになって逮捕、起訴された場合はどうなるのでしょうか?
> 執行猶予判決後に改心して真面目に生活していても執行猶予が取り消され、懲役が合算されてしまうのでしょうか?

そのとおりです。

私は刑事弁護人として,同種余罪を多数抱えた方の弁護をする場合,同種の余罪が多数ありそれらについても反省していることを被告人質問などで述べさせるようにしています。最初の執行猶予判決の捜査・公判で,こうしたことがなされていれば,可及的に,質問者の想定されるようなケースは回避できると考えています。


川面 武 弁護士
東京 豊島区
弁護士ランキング 東京都7位
ありがとう
一番上の弁護士の「執行猶予判決後に改心して真面目に生活していても執行猶予が取り消され、懲役が合算されてしまうのでしょうか?そのとおりです。」というのも誤りで、前刑が懲役2年執行猶予だとして、前刑確定前の事件の判決については、刑法25条1項の要件で執行猶予が検討されて、併合審理した場合でも執行猶予相当だとすれば、前刑確定前の事件について、さらに、懲役1年とか2年とか3年で執行猶予付きの判決が宣告されることがあります。合計の刑期が3年を越えることもあり得るというのが判例です。

私は,弁護士ドットコムの質問者に対する回答として,先の回答が誤りとは考えていません。
まず,質問者の設例が再度の執行猶予の適用がなく,適用される法令としては,刑法26条2号,同50条であることは指摘されているとおりと思います。
ここで,条解刑法(私の所持しているのは第2版)192頁に,「本条(刑法50条)は,余罪についてさらに処断する場合における処断の基準については定めていない」と記載されています。これに続いて,「この点,実務上余罪については,それのみを裁判する場合と同じように量刑するのではなく,同時に全部の罪を裁判した場合における量刑を念頭に置いて刑を定めているのが通例である」との記載があります。しかし,この通例が実感として違うなという事案を振り込め詐欺の共犯事案などで見聞きしました。
なお,刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)は,まだ施行されていません(平成28年6月1日施行)。 2016年04月17日 23時09分

川面 武 弁護士
東京 豊島区
弁護士ランキング 東京都7位
ありがとう
私の最初の回答は,曲解されていますが,質問者の従前の質問を読んでおらず,有名人のケースなどを想定して,今回の質問について,後に立件された犯罪が執行猶予が付かなければ,執行猶予判決後に何ら悪いことをしていなくても,執行猶予が取り消されることはあるという刑法26条2号(この規定はかつて合憲性が争われた規定です。)の規定に沿った回答をしたに過ぎません(質問者の従前の質問を合わせて読めば適切でない回答であったかもしれません。後の犯罪が単独では執行猶予事案であるケースは想定していませんでした。)。