児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第101号

 文言上は「第三者陰茎」「第三者肛門」がなくなったな。
 含むようですが。

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500027.html
法制審議会第177回会議(平成28年9月12日開催)
○ 議題
1  性犯罪に対処するための刑法の一部改正に関する諮問第101号について
2  民事執行法の改正に関する諮問について
○ 議事概要
1  刑事法(性犯罪関係)部会長から,諮問第101号について,同部会において決定された,要綱(骨子)に関する審議結果等の報告がされた。
  審議・採決の結果,同要綱(骨子)案は,全会一致で原案どおり採択され,直ちに法務大臣に答申することとされた。

http://www.moj.go.jp/content/001204028.pdf
法制審議会第177回会議配布資料刑1
要綱(骨子)
第一 強姦の罪(刑法第百七十七条)の改正
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、五年以上の有期懲役に処するものとすること。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とすること。

第二 準強姦の罪(刑法第百七十八条第二項)の改正人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、第一の例によるものとすること。

第三 監護者であることによる影響力があることに乗じたわいせつな行為又は性交等に係る罪の新設
一 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、刑法第百七十六条の例によるものとすること。
二 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第一の例によるものとすること。
三 一及び二の未遂は、罰するものとすること。
第四 強姦の罪等の非親告罪
一 刑法第百八十条を削除するものとすること。
二 刑法第二百二十九条を次のように改めるものとすること。第二百二十四条の罪及びこの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
三 一及び二の適用範囲
一及び二に係る規定(以下「改正規定」という。)により非親告罪化がされる罪であって、改正規定の施行前に犯したものについては、改正規定の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、改正規定の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができるものとすること。
第五 集団強姦等の罪及び同罪に係る強姦等致死傷の罪(刑法第百七十八条の二及び第百八十一条第三項)の廃止
刑法第百七十八条の二及び第百八十一条第三項を削るものとすること。
第六 強制わいせつ等致死傷及び強姦等致死傷の各罪(刑法第百八十一条第一項及び第二項)の改正
一 刑法第百七十六条若しくは第百七十八条第一項若しくは第三の一の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処するものとすること。
二 第一、第二若しくは第三の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処するものとすること。
第七 強盗強姦及び同致死の罪(刑法第二百四十一条)並びに強盗強姦未遂罪(刑法第二百四十三条)の改正
一 次の1に掲げる罪又は次の2に掲げる罪の一方を犯した際に他の一方をも犯した者は、無期又は七年以上の懲役に処するものとすること。ただし、いずれの罪も未遂罪であるときは、その刑を減軽することができるものとすること。
1 第一若しくは第二の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は第六の二の罪(第三の二の罪に係るものを除き、人を負傷させた場合に限る。)
2 刑法第二百三十六条、第二百三十八条若しくは第二百三十九条の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又
は同法第二百四十条の罪(人を負傷させた場合に限る。)
二 一ただし書の場合において、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除するものとすること。
三 一の1に掲げる罪又は一の2に掲げる罪の一方を犯した際に他の一方をも犯し、いずれかの罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処するものとすること。

法制審議会−刑事法(性犯罪関係)部会 > 第7回会議(平成28年6月16日)
http://www.moj.go.jp/content/001199100.txt
○加藤幹事 御指示の点について説明を申し上げます。
  本日お配りいたしました資料34を御覧いただきながら,お聞き取りください。
  また,従前の要綱(骨子)は,お手元の資料1に付いておりますので,そちらも必要に応じて御覧ください。
  前回までの部会における委員・幹事の皆様からの御指摘・御意見を踏まえて,事務当局において,諮問に係る要綱(骨子)を再度検討いたしました結果,本日の配布資料34のとおり,3点について一部修正するのが適当であると考えるに至りましたので,その修正内容及び理由について説明いたします。
  まず,要綱(骨子)第一の修正についてです。
  要綱(骨子)第一においては,処罰対象となる行為を「性交等」とし,括弧書きを用いて,「相手方の膣内,肛門内若しくは口腔内に自己若しくは第三者の陰茎を入れ,又は自己若しくは第三者の膣内,肛門内若しくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為をいう。」と定義することとしていました。
  この点につき,第4回会議において,構成要件の明確性の要請を踏まえつつ,より端的な用語で表現することができないかという御意見がありましたので,これを踏まえて事務当局において検討を行いました結果,要綱(骨子)修正案第一のとおり,「性交,肛門性交又は口腔性交」と表現した上で,これらを合わせた略語として,「性交等」を用いることとするのが適当であると考えるに至ったものです。
  これは,従前の要綱(骨子)第一の意味内容を変更する趣旨の修正ではなく,これまで説明をしてまいりました意味内容を維持したまま,より適切な表現を用いようとするものです。
  要綱(骨子)修正案第一の案文に即して,具体的に説明します。
  まず,従前の要綱(骨子)の括弧書きにおいては,その前半部分で,「相手方の膣内,肛門内若しくは口腔内に自己若しくは第三者の陰茎を入れ」る行為を記述し,「又は」以下の後半部分で,「自己若しくは第三者の膣内,肛門内若しくは口腔内に相手方の陰茎を入れ」る行為,すなわちこれまでの議論の中では,便宜上,「挿入させる行為」などと呼んでいた行為を記述しておりました。
  修正案では,これらの行為のうち,膣内に陰茎を入れる行為を「性交」,肛門内に陰茎を入れる行為を「肛門性交」,口腔内に陰茎を入れる行為を「口腔性交」と表現しています。このような表現を用いることにより,行為者が,自己又は第三者の陰茎を相手方,すなわち被害者の膣内等に入れる行為のほか,被害者の陰茎を自己又は第三者の膣内等に入れる,いわゆる「挿入させる行為」をも含むものとして,過不足なく表現することができるものと考えております。
  より具体的に申し上げますと,現行刑法177条は「女子を姦淫」と規定しておりますところ,この「姦淫」とは「性交」を意味し,また「性交」とは一般に男女が性器を交えること,すなわち膣内に陰茎を入れる行為をいうものと解されております。しかし,同条では客体が「女子」に限定されているため,男性が主体となって,女性の被害者の膣内に陰茎を挿入する行為のみが処罰の対象となると解されています。
  これに対し,今回の要綱(骨子)修正案においては,「十三歳以上の者に対し,……性交……をした」という構成要件としており,客体の性別を問わないものとしておりますことから,「性交」との文言で,男性が女性の被害者の膣内に陰茎を入れる行為だけでなく,男性の被害者の陰茎を女性の膣内に入れる行為をも当然に含むものとして表現できていると考えています。
  同様に,「肛門性交」及び「口腔性交」についても,被害者の肛門内や口腔内に陰茎を入れる行為だけでなく,被害者の陰茎を肛門内や口腔内に入れる行為をも含むものとして表現できているものと考えています。
  また,修正案においては,誰の陰茎を誰の膣内等に入れるのかについて限定していませんので,被害者に第三者と性交等をさせる場合をも含むものとして表現できていると考えています。
  なお,これまでの議論においては,口腔内に陰茎を入れる行為を「口淫」という言葉で表現することも多かったのですが,この言葉は必ずしも口腔内に陰茎を入れる行為に限らず,もう少し広い意味,例えば女性器を舌でなめる行為などについても使われる場合があることから,従前の要綱(骨子)の内容を明確に示す意味では,この「口淫」という言葉ではなくて「口腔性交」との用語が適切であると考えたものです。
  さらに,括弧書きの定義を置かないこととしたことに伴い,括弧書きの中に書き込まれていました「相手方」という文言を用いる必要がなくなりましたので,この際,刑法176条の強制わいせつ罪と同様の構文として,「十三歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交……をした」という表現を用いることとしております。
  以上が要綱(骨子)修正案第一についての説明です。
  次に,修正の2点目として,要綱(骨子)第三の罪の修正案について説明します。
  第5回の会議において,事務当局から要綱(骨子)第三の罪の「影響力を利用して」という文言の意義につき,「18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在し,かつ,その影響力が遮断されていない状況で,性交等を行ったことをいう」旨の考え方を説明いたしましたところ,複数の委員から,「影響力を利用して」という表現では,被害者に向けられた具体的な利用行為が必要であるようにも読めるため,文言を工夫した方がよいのではないかとの御指摘を頂いていました。
  そこで,事務当局において検討しましたところ,要綱(骨子)修正案第三のとおり,「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」と修正するのが適切であると考えるに至ったものです。
  なお,この修正は,従前の要綱(骨子)第三で示そうとしていたことを,より適切な表現に修正したものでございますので,第5回会議で申し上げた考え方や意味内容を変更するものではなく,「十八歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした」とは,「18歳未満の者に対する監護者の影響力が一般的に存在し,かつ,その影響力が遮断されていない状況で,性交等を行った」ことをいうものです。
  このほか,要綱(骨子)修正案第三の二において,冒頭に「十八歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる」としておりますのは,要綱(骨子)第一の修正に合わせて,構文を整理したものです。