児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

裁判員制度と起訴率低下について国会の議論

 裁判員事件対象罪名の起訴率は格段に下がりましたが、裁判員制度との因果関係は不明なようです。
 性犯罪の起訴率低下は話題になっていません。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2015pdf/20150904016.pdf
施行後6年を迎えた裁判員制度の評価と課題
(10)起訴率の低下と裁判員制度との関係
殺人罪や強盗致死傷罪の起訴率の統計を見ると、裁判員制度開始後急激に低下しているように見受けられることから、裁判員裁判対象罪名で受理した事件を、あえて裁判員裁判対象でない軽い罪名で起訴する「罪名落ち」という現象が起きているのではとの指摘があ
り64、これに関連した附帯決議も付された65。委員会での指摘を受けて起訴率の低下に関する分析を行った法務省は、近年の起訴率の低下傾向は殺人罪、強盗致傷罪のいずれも裁判員制度施行前から始まっており、本制度の施行と連動しているものとは言い難いと答弁したが、国民に余計な憶測を呼ばないためにも、今後犯罪白書等において国民にきちんと一連の説明をすべきとの意見が出され、法務大臣は、これから更にデータ収集や分析手法の検討を進め、犯罪白書にどのように表現するかも含めて検討していきたいと述べた66

64 第189回国会衆議院法務委員会議録第10号17頁(平27.4.22)、第11号12頁(平27.4.24)
65 衆議院法務委員会の附帯決議において、「裁判員制度施行後における殺人罪及び強盗致死傷罪等の起訴率の低下と制度の影響との因果関係について、本法の附則に基づく検討までに検証を行うこと。」とされた。
66 第189回国会衆議院法務委員会議録第14号7、8頁(平27.5.15)

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b180321.htm
平成二十四年七月六日受領
答弁第三二一号

  内閣衆質一八〇第三二一号
  平成二十四年七月六日
内閣総理大臣 野田佳彦

       衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員馳浩君提出裁判員制度の検証・見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



衆議院議員馳浩君提出裁判員制度の検証・見直しに関する質問に対する答弁書
一について
 裁判員の参加する刑事裁判(以下「裁判員裁判」という。)においては、裁判員候補者は高い割合で裁判所に出頭し、選任された裁判員等は熱心に審理に取り組んでいるものと承知しており、また、裁判員等の経験者の多くは、裁判員等として裁判に参加したことにつき良い経験をしたと感じ、充実感をもって審理に取り組んでいることがうかがわれることなどから、裁判員制度は、順調に運営され、国民に支持されているものと認識している。
二について
 裁判員裁判において、強姦致傷罪等の量刑が重くなる傾向にあるとの指摘があることは承知しているが、裁判員裁判における量刑の傾向は、個別具体の事案について言い渡された判決の集積であることから、その意義について一概にお答えすることは困難である。
 いずれにしても、これまでの裁判員裁判の判決は、国民の感覚が反映されたものと考えている。
三、五及び六について
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下「裁判員法」という。)附則第九条は、政府が、裁判員法の施行後三年を経過した場合において、裁判員法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、裁判員制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとすると定めていることから、法務省においては、平成二十一年五月二十一日の裁判員法施行後、同年九月に有識者から成る「裁判員制度に関する検討会」を設け、その意見を聴取しつつ、裁判員裁判の運用の実情、制度上・運用上の措置の要否等について検討を行っているところであり、御指摘の点も含め、今後更に検討していくこととしている。
 なお、検察当局においては、裁判員裁判における強姦致傷罪等の被害者のプライバシー等保護のため、裁判員候補者の中に関係者が含まれていないかどうかにつき、被害者の確認を受けるなどした上で、裁判員等選任手続において理由を示さない不選任の請求をするほか、裁判所が刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百九十条の二第一項の規定に基づき被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をした場合、起訴状や証拠書類の朗読等の際に被害者特定事項を明らかにしない方法で行うなどしており、適切に対処しているものと承知している。
四について
 検察統計年報によれば、強姦致死傷では、裁判員制度導入前の平成二十年は、「起訴」が百九十八人、「不起訴」が百三十七人であり、起訴人員と不起訴人員の合計に対する起訴人員の割合(以下「起訴率」という。)は約五十九パーセント、裁判員制度が導入された平成二十一年は、「起訴」が百三十九人、「不起訴」が百三十七人であり、起訴率は約五十パーセント、平成二十二年は、「起訴」が百十人、「不起訴」が百四十八人であり、起訴率は約四十三パーセントである。また、強姦では、平成二十年は、「起訴」が五百二十四人、「不起訴」が五百三十四人であり、起訴率は約五十パーセント、平成二十一年は、「起訴」が四百三十四人、「不起訴」が五百十八人であり、起訴率は約四十六パーセント、平成二十二年は、「起訴」が四百十四人、「不起訴」が四百六十六人であり、起訴率は約四十七パーセントである。このように、裁判員制度の導入後、強姦の起訴率はほぼ横ばいで推移しているが、強姦致死傷の起訴率は低下している。
 検察当局においては、性犯罪に係る事件についても、個別具体の事案に即して、法と証拠に基づき、適切に起訴又は不起訴の判断をしているものと承知しており、その結果である起訴率の低下について、御指摘のような「裁判員裁判の回避傾向により、性犯罪の起訴割合が低下している」ことを含め、その原因を一概に述べることは困難であると考えている。

[005/005] 189 - 衆 - 法務委員会 - 10号
平成27年04月22日
○重徳委員 裁判所からはこのぐらいが限度なのかもしれませんが、趣旨として、健全な国民常識が入ることがそもそもの目的であり、それは、それに沿った運用がされているというふうに受けとめておられるんだと思います。
 その意味では、これまでの裁判官を含む法曹三者のいわゆる常識、よくも悪くもですけれども常識というものに対して、裁判員の方は基本的には人生に一度きりの経験になりますから、いわば素人感覚、それが違う、ずれているというのは当然であり、むしろそれが期待されるということでありますね。
 その結果として、恐らく、先ほどは厳罰化という結果について指摘をしましたが、しかし、その過程において、証拠に対する評価とか心証というものは、プロの裁判官と、人生で一度きりの裁判員とで随分違うんじゃないか。
 よく聞きますのが、裁判員の方は、本当に、人を裁くという重大な、人の人生を左右するような、それも重大犯罪の場合ですから、場合によっては死刑だとか無期懲役とか想像を超えるような人への裁きを下さなきゃいけない、こういう立場に立たされるわけですから、当然、物すごく慎重になりますよね。誰が考えてもそうだと思うんです。
 そうなると、おのずと、証拠に対する、何というんですかね、私も素人ですから言葉がいま一つかもしれませんが、証拠に対する自信が起訴をする側の検察官としてはないような場面、これは裁判員には認めてもらえないんじゃないか、そういう局面というのは出てくると思うんです。
 それで、少し数字を見ていたら、資料二をごらんいただきたいんですけれども、細かい数字が載っておりますが、これは検察統計年報の数字でございます。例として、真ん中に線を引いておきましたが、殺人罪、これは未遂も含むんだと思いますが、平成十九年から二十五年にかけての起訴、不起訴、そして起訴率の数字が並んでおります。
 裁判員制度が始まったのが平成二十一年でありますから、この起訴率というところに着目していただきたいんですが、平成十九年、二十年、二十一年、このあたりは五〇%前後、五二・九%、四八・九%、四八・六%なんです。ところが、裁判員制度が始まった翌年から、平成二十二年は三八・三%、二十三年は三七・一%、二十四年は三一・八%、そして二十五年には何と三〇・七%まで落ち込んでしまうんですね。
 この起訴率の著しい低下、もうちょっと前までさかのぼると、もっと高いときはもちろんありましたけれども、低下していくこの勢いというのが明らかに裁判員制度が始まってから非常に急激に落ちていると見てとれるんですが、これは裁判員制度導入による影響が大きかったのではないでしょうか。いかが受けとめておられますか。


○林政府参考人 御指摘のように、未遂を含む殺人罪についての起訴率、すなわち、検察官により起訴または不起訴の処分がされた人員のうちの起訴された人員の割合、こういったものにつきましては、例えば平成十八年から平成二十五年まで低下傾向にあるものと承知しております。
 しかしながら、この場合の不起訴の理由というのにもさまざまなものがございまして、例えば、犯罪死の疑いがあったことから司法解剖を実施したものの、その結果、犯罪の嫌疑がないことが判明した場合でありますとか、あるいは、被疑者の責任能力を明らかにするために精神鑑定を実施した結果、責任能力がないという判断がされた場合など、犯罪として処罰することができないために不起訴となる人員も多くございます。こういった不起訴となる人員というものについて、その増減がこの起訴率の変動につながっているものと思われます。
 実際に、起訴率といいますのは、さらにさかのぼってみますと、裁判員制度導入以前におきましてもかなり変動幅がございます。時に二〇%台という年もございますし、それから六十数%台まで、大きく変動しております。
 それで、それが裁判員制度導入後の傾向かと申しますと、そういった一定の傾向は見られずに、かなり大きな幅で変動しておりまして、実際に平成十八年から平成二十五年までの低下傾向と申し上げましたが、平成二十一年に実施される前からやはり低下という状況は起きておりますので、これが何によるものなのかというのは断定的に申し上げることはできませんけれども、少なくとも、不起訴になる事案というものが大きく変動する、この増減が実際の起訴率の変動につながっているのではないかと思います。
 したがいまして、裁判員裁判の施行によってこの起訴率が低下したということについて、それを断定する、そのように申し上げることは、まだそういった根拠は持っておりません。

○重徳委員 今、林局長は変動があるんだというふうにおっしゃいましたが、きょう資料として用意しましたのは平成十九年以降ですが、もう五、六年さかのぼっても、基本的にはずっと低下傾向なんですね。
 だから、さっきもちょろっと申し上げましたが、六〇%台だったときもあります。そこから低下傾向というのはわかる。二十一年までの間どういう理由で低下してきたのかというのは、それはまた局長の分析に委ねますが、そこまでの低下傾向の減少率に比べて、明らかに二十一年からは大幅に、だって、五〇%が三〇%まで落ちちゃっているわけですから、六〇が五〇になるのとは全然レベルが違うと思うんですよ。
 これを断定できないというのは、断定までできなくても、関係ないとまでは言えないと思うんですが、いかがでしょうか。関係ないとまでおっしゃいますか。

○林政府参考人 この起訴率について、さらにさかのぼってみますと、例えば私どもの調べたところで言いますと、昭和六十三年とか、そういうことになってきますと、かなり、二〇%台というような年もございます。その後も、平成に入ってからも、三〇%台という年もございます。
 そういった意味で、こういったものが裁判員制度施行によるものなのかということを申し上げる根拠は持っていないということでございます。
○重徳委員 全く関係ないとまでは言えないというところまでは来ていると思うんですが、この場で断定してくださいと言っても、断定はしてくれないと思います。そこまではいいんですが、しかし、やはり無関係ではないと思います。
 それから、別の指摘では、これはちょっとどう認識されているかをお聞きしてみたいんですが、裁判員制度が始まってから、当然、重たい犯罪が裁判員の対象になるわけですから、何の罪で起訴するかということによっても、裁判員にかかるか、従来の裁判官にかかるかということも変わるんですね。
 ですから、いろいろなケースがあると思いますが、例えば殺人未遂でもともと逮捕されて、起訴をどうするかと考えて、結局、殺人未遂では裁判員裁判になってしまうから傷害罪で起訴することにしようと。これは俗に罪名落ちと言うんですかね。法務省でそう呼んでいるかどうかは知りませんが。
 そういう罪名落ちなんという現象も起きているのではないか、それも裁判員制度が始まってからそういうことが顕著になっているのではないかという指摘もあるんですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

○林政府参考人 今委員御指摘のいわゆる罪名落ちということにつきましては、いろいろな論文等でそれが指摘されたことがございまして、それについて、果たしてそういうものがあるのかどうか、当然、そういうことについては注目して見ておるわけでございますが、少なくとも、そういった裁判員裁判対象罪名で受理した事件を、あえて裁判員裁判対象でない軽い罪名で起訴する例というものがふえているという認識はございません。
 これは、今、罪名落ちというときによく言われるのは、例えば殺人罪で受理したものが殺人罪で起訴された比率が低下してきている、恐らく、それが低下しているのは、裁判員裁判対象罪名でない処理がなされているからじゃないかということがそういった論文の中では指摘されておるわけですが、少なくとも、統計によりますと、例えば一年間で検察が未遂を含む殺人罪で受理した件数と殺人罪で処理した件数、これを比べますと、その比率は、裁判員制度導入以前から現在まで大きな変動は見られておりません。要するに、殺人罪で受理して、その処理が同じ罪名で処理されている。
 それで、この場合の処理ということでございますが、処理の中には、当然、不起訴がございます。殺人罪という罪名で不起訴になった事案も含めて処理になりますけれども、もちろん起訴もございますが、起訴と不起訴を合わせて処理件数になります。この罪名ということでいきますと、殺人罪という罪名で受理した件数と殺人罪という罪名で処理した件数というのは、比較しますと、これまで、裁判員制度導入以前から現在まで大きな変動は見られていないところでございます。
 そうしますと、先ほどの御質問にもかかわりますが、果たして不起訴というものがどのように推移しているのかということにもかかわってまいりまして、少なくとも、現時点において、あえて検察において、裁判員裁判を意識して、軽い罪名で、罪名落ちの形で起訴する例というものがふえているという認識は持ってはおりません。

○重徳委員 今局長は認識を述べられましたが、今回の裁判員制度の検証において、いろいろな数字、傾向があると思うんですが、私が見るに、一番劇的なのが起訴率の低下だと思うんですよ。先ほど、求刑を上回る判決がちょっとふえたとか、求刑どおりの判決がちょっとふえたという指摘はさせていただきましたが、しかし、一番劇的なのは起訴率の低下だと思いますよ。
 罪名落ちについては、今、そんなことはないんだとおっしゃいましたが、これも数字が出ていないのでわかりません。
 そこで、大臣、今回の検証に当たって、私、非常に重要なところだと思うんですが、今議論になったものについて、今すぐ出なくても、数字できちんと示した上でこの委員会で議論するべきだと思うんですが、これを出していただけませんか。こんな議論をしていても、わからないです。

○重徳委員 委員長、ありがとうございます。
 裁判員制度があろうとなかろうと、起訴率が余りに低下して、殺人罪は三割しか起訴していないというのは、逆に言うと、では何で逮捕したんだという話にもなります。逮捕した段階でニュースにもなるわけですから。
 ですから、確かに、起訴したけれども結局無罪というのは、これはこれで重大な人権侵害だ、これはわかりますが、その前に逮捕があるわけですし、ニュース、報道によって、これは社会的制裁も十分受けてしまう。制裁というか、結局無罪で起訴されないような事件についても報道されてしまう。被疑者に対しては大変な人権侵害だって起こってしまうわけですから、起訴率の低下というのは非常に重要な問題だと思います。
 今のこの低い状態がおかしい、きょうは私はそういう立ち位置から質問をさせていただいておりますが、今の状態がおかしくないのであれば、今までは何だったんだという見方もある。
 いずれにしても、裁判における有罪率というのは、裁判官裁判の時代も九九%以上、そして今の裁判員裁判になってからも九九%以上ということで、有罪率はちゃんと確保しております。だけれども、それは、そもそものあり方を考えたときに、警察が逮捕しても、それは起訴されるとは限らない、起訴される率がどんどん下がっている。一方で、起訴をされたからには九九%有罪だという意味では、一体、誰が有罪、無罪を決めているんだというような感覚にも及んでしまうわけです。
 ですから、正確な証拠を集めて、より正確な起訴をするというのはいいんですけれども、検察官の仕事の仕方としてそれが全然間違っているとは申し上げませんが、しかし、この起訴率が急激に低下するというのは、余りに、場合によっては起訴すべき容疑者も起訴していないんじゃないかという疑いさえ出てくるわけです。
 大臣、今までの議論をお聞きになって、どう認識されていますか。これはもう全く問題ないと思われますか。

○奥野委員長 ちょっと待って。
 葉梨副大臣は警察上がりなんだよね。さっきからぶつぶつ言っているから、何か言いたいことがあったら言ってもらった方がいいと思うよ、大臣の前に。

○葉梨副大臣 裁判員裁判が始まったときにはもう私は警察を退官しておりましたので、最近の状況というのはちょっとわからないところがあるんですが、逮捕された者が起訴されていないというような委員の御指摘でございましたが、この件数は、逮捕の件数ではございませんで、警察が検察に送致をした件数です。
 例えば、被疑者が死亡している場合、こういったものは逮捕になりませんし、先ほども不起訴事由としてございましたけれども、責任能力が問えない、そういうような場合、これを逮捕しない場合というのも相当数あるということです。
 一般的に、私が社会面で知る限りにおいて、警察が逮捕をして相当大きな問題となった事案が公判請求されなかったというような記憶は余りありません。
○重徳委員 今のお話はわかりましたが、それは、ここのところ、起訴率が下がっている理由にはならないと思うんですよ。
 だから、より適切な議論になったという意味では感謝申し上げますが……(葉梨副大臣裁判員裁判が理由かどうかわからない」と呼ぶ)もちろん。そこは、でも、検証しなければわかりません。今マイクに入っていないと思いますので、裁判員裁判が原因だったかどうかは、そこをまさに今検証しようとしているわけですから。
 逮捕と送致と起訴の関係はわかりましたが、いずれにしても、ここ数年間で劇的に起訴率が下がっているということとは今の御答弁は関係ないと思っております。
 大臣、私の本論に戻りまして、起訴率がここまで大幅に急激に、裁判員裁判が始まってからこれまで五年間に下がっているということにつきまして、問題ないでしょうか、問題意識をお持ちでしょうか。お答えください。
○上川国務大臣 起訴率に着目をされて、裁判員裁判が導入された後、これが急激に下がっているという御指摘をいただいた上で、刑事局長から答弁をしたところでございますけれども、長期のトレンドの中でどのように位置づけるかということについて、数字をきちっとした上で評価をしていく、こうしたことになったかというふうに思います。
 そういう意味では、私、変化してきたことに対して、どのような背景があるのかということについてやはり真摯に考えていく必要があるというふうに思っておりますので、今のようなトレンドについてのデータに基づいてまた議論をしていただきたいというふうに思いますし、そもそも、検察におきましては、先ほど御指摘ありましたが、法と証拠に基づいて個別の事案ごとにしっかりと適切に起訴するあるいは不起訴とするという判断をする、そして起訴罪名についての選択をするということ、この基本にのっとってやっていくということが大変大事だというふうに思っております。
 その意味でも、御指摘いただいたということでございますので、きちっと調べて、データを出したいというふうに思っております。

189-衆-法務委員会-11号 平成27年04月24日
○山尾委員 次にといいますか、最後になりますけれども、最初に、真相解明という機能を絶対に害してはいけないんだという私の強い思いも申し上げました。そういう中で、前回、重徳委員が、委員長のお取り計らいで資料も出ましたけれども、殺人罪の起訴率が顕著に低下をしているということを御指摘されていました。また、それは、理事会で出された資料でもありますので、今後明らかになっていくかと思いますけれども、私、残りの時間でもう一つ御指摘をしておきたいと思います。
 お手元に配付をしている資料の、一枚、二枚めくっていただいて、三枚目から。これは、罪名別の起訴率を表にしているものです。
 左側に罪名があって、強盗致死傷というところに線を引かせていただきました。平成十二年からスタートして、丸印を打っております。平成十二年、八六・七、十三年、八八・七、十四年、八四・六、十五年、八五・四、十六年、八六・七、十七年、八七・一、十八年、八〇・一、十九年、七五・八、二十年、七一・四、裁判員裁判が始まった二十一年、六四・一、二十二年、五三・五、二十三年、四四・三、二十四年、三七・七、二十五年、三四・四。
 いろいろな原因がありますから、短絡的には今この場では申しません。ただ、殺人の起訴率も顕著に低下している、強盗致死傷の起訴率も顕著に低下をしている。
 そして、これは致傷も入っていますけれども、この二つの一つの特徴は、人が死亡している事件で、あるいは人が傷害、重傷を負っている事件もあるでしょう、外形的な結果はさることながら、内心が非常に立証の肝となる事件だということです。殺人であれば殺意の有無、強盗であれば強盗の目的の有無。
 重大な結果を生じている事件であって、内心が立証の肝になる殺人と強盗致死傷について、これだけ顕著な起訴率の低下が明らかだ、そして、裁判員裁判が始まって以降の五年間に非常に低下のスピードが速まっているということを、一つの事実として御指摘したいと思います。これは、裁判員裁判の施行が、事件の真相解明に、もしかしたら何か問題点をはらんでいるのではないかという一つの数字だと思います。
 まずはこれを確認していただいて、今後どういった大臣なりの調査研究あるいは検証をされるのか、コメントがあればお伺いしたいと思います。

○奥野委員長 もう時間になっているんですが、これは私にも説明をしなさいと事務方に言ってありますから、これはどこかで公式的な法務省見解を時間をとってやってもらったらいいと思っているんです。だから、私だけではだめだろうと思うから、皆さんにも情報共有化の上でやってもらいたいし、きょう、重徳委員がまたおやりになるから、その中でやっていただくのも一つだろうと思います。
 そういう形にして、今の段階では答弁はなしということにさせてください。

○山尾委員 はい、結構です。
 以上です。

○奥野委員長 次に、重徳和彦君。

○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
 一昨日に続きまして、資料の提出をいただきましたので、これに基づいて少々補足の質問をさせていただきます。
 提出資料一をごらんください。三枚出していただきましたが、資料一に基づいて質問させていただきたいと思います。
 これが、「殺人罪(未遂を含む)の起訴率の推移について」の法務省から提出された資料でございます。ここ三十年間、昭和五十九年からの起訴、不起訴、そして起訴率が記載をされております。
 起訴率のところが太枠で囲ってありますので、これをごらんいただきますとわかりますように、ずっと数字を追っていくと、この間、二回ほど、極端に起訴率が減少した時期があるんです。それを除くと、起訴率はおおむね五〇%から六〇%台前半であります。
 二回というのは、昭和六十二年、六十三年、ここで大きく下がっています。三七・九%、二二・一%まで下がっている。極端ですね。それから、平成五、六、七年、この三年間が、三五・六%、三九・三%、四三・九%という形ですね。あとはずっと安定した数字で推移しているんです。
 そして、今回問題にしたいのが、二十一年以降急激に下がりまして、平成二十五年は三〇・一%に落ち込んでいるということでございます。
 このあたりの要因につきまして、特に近年五カ年は裁判員裁判の影響との見方もありますけれども、どのように分析をされていますでしょうか。

○林政府参考人 御指摘のとおりに、起訴率というものが、昭和六十二年、六十三年、あるいは平成五年、六年、七年において、その前後の年と比較して低下している、そういう事情がございます。
 これについて、その原因やいかんということでございますが、まず、基本的にはこれは、検察当局において、起訴、不起訴の判断、個別の事案に即して判断した集積であるところの統計でございますので、なかなかその原因を一概に述べることは困難であろうと思います。
 もっとも、これらの年におきましては、不起訴の件数がその前後と比較して相当数増加しておりまして、その中でも、嫌疑なしを理由とする不起訴の件数が特に増加しておりまして、これが全体の不起訴件数の増加及び起訴率の低下というものの一因になっていることはうかがわれるのではないかと思います。ただこれが、では、これらの年において具体的にどういう類型の事案があったかという中身の問題についてまでは、ちょっとここでお答えすることが困難な状況にございます。
 なお、一点付言いたしますと、昭和六十三年の数字につきましては、関連する平成元年版の犯罪白書におきまして、「殺人の新規受理人員四千二百三十四人中二千二百八十三人は、同一受刑者が多数の矯正職員を殺人未遂で告訴・告発した事件であって、事実自体が犯罪とならないもの」だった、こういった指摘がなされておりまして、このあたりについては、六十三年の特殊な事情というようなことをうかがわせているかもしれません。
 以上でございます。

○重徳委員 今局長は、不起訴の数がどんとふえたということが大きな要因だというふうにおっしゃいました。確かに、昭和六十三年なんかは、他の年と比べて二千人規模で不起訴の人がふえているわけでありまして、ここは特殊なケースだったと言えると思います。
 一方で、ここ五年間の状況を見て、不起訴がふえているというのもあるんですが、一方でさらに顕著なのは、起訴の件数が急激に減っているということなんですよ。だから、起訴率というのは不起訴の数がふえればもちろん下がるんですけれども、一方で、起訴の数が減ったことによって起訴率が下がっていると見られるのは、特にこの五年間が顕著だと思います。このあたりをちょっと御説明いただきたいんです。
 ちなみに、せっかくいただいた資料の一番右側に認知件数というのがありますね。警察が出している数字です。警察が殺人事件というふうに認知した件数です。この件数は、先ほどの、この年だけ何千件ふえているとか、そんなようなことはありませんで、認知件数は比較的安定しております。
 私は、この認知件数に占める起訴の割合というものを、分子と分母が必ずしも関係ない部分もありますが、おおむねの傾向を見るために、分母を認知件数、分子を起訴数として、パーセンテージをこの三十年間で独自に計算してみたんですが、ここ五年間に至るまで、実は一貫して五〇%を超えています。五〇%から六〇%台前半の間に全ておさまっています。それが、平成二十年からなんですけれども、四五・六%、二十二年は四〇%を切りまして三五・五%、さらに平成二十五年に至ると三三・二%と、ここは本当に顕著だと思いますよ。
 起訴率の低下の原因を、不起訴がふえたというふうに局長はおっしゃいましたが、起訴がここ五年間著しく減っているということについては、何かコメントはありますか。

○林政府参考人 御指摘のとおり、起訴の人員についてはここ数年のところで減少傾向にあるわけでございますが、その原因、これが何によるものなのかということについては、一概に述べることが困難であります。

○重徳委員 今の御答弁では誰も納得しないと思うんです。一概に述べてほしいとまで言いませんが、少なくとも裁判員裁判の影響がゼロではないんじゃないかということは、誰がどう見ても推測されます。
 ちょっと大臣にお聞きしたいのですが、今の局長の御答弁、いかがでしょう。起訴率低下そのものが、それ自体が必ずしも問題とは限りません。もちろんいろいろな事情があるとは思いますが、これは一般論ですけれども、検察が本来起訴すべきでない人を起訴しちゃうのもそれは問題ですけれども、よく問題になっていますが、逆の問題もありますね。重大犯罪ですから、本来起訴すべき、この起訴に過度に慎重になってしまう。こういうことによりまして、重大犯罪に対して適切な処罰が行われない、そういう可能性だってあるわけですよ。
 先ほど山尾委員がおっしゃいましたが、内心というものが立証の肝であるというケースがかなり多いんですね。私は元検察官の方にちょっと個別に意見も聞いたんですが、例えば、未必の故意というのは非常に難しいようですね。ついかっとなってしまったというケースが多い中で、実は心臓部分に包丁を深く刺しているんだけれども、ついかっとなってやってしまったんだということに対して、本当に故意、つまり殺意があったのかどうかを裁判員の方が認めるかどうかというのは、すごく難しいことだと思います。それによって殺人罪なのか傷害致死罪なのかという非常に大きな違いが出るわけでありまして、このあたり、本当に難しいものであります。そういう判断が裁判官裁判と裁判員裁判でちょっと違うんじゃないかとか、そういうことを予見して、今、起訴するかしないかというところに影響しているんだとすれば、これは非常に重要なところです。
 いわば、ちょっと言い方が適切かどうかわかりませんが、起訴するかどうかでそこをコントロールしてしまっているのが今の状況だとしますと、逆に言うと、今まで、裁判官裁判のときと同じような率で起訴されていたとしたならば、もしかしたら有罪率が逆に下がるかもしれませんね、裁判員裁判をやった結果。
 今、裁判員裁判による有罪率は九九%を超えているんですよ。変わりません、これは。裁判官裁判だった時代も九九%以上、今も、裁判員裁判でも九九%以上、この有罪率は維持されているんです。
 これは、言い方は悪いですが、起訴率によって有罪率をコントロールしているんだとすれば、それは非常に裁判員裁判における大問題でありまして、もし今までどおり起訴していたら、有罪率が下がっていたかもしれない。
 このあたり、非常に検証が必要な問題だと思いますが、大臣、どのように認識されていますか。

○上川国務大臣 先ほど、殺人罪等について、内心について問いかけるというのは非常に難しいと。そういう中で、法と証拠に基づいて裁判をするということでありますので、そういう意味では、有罪率とかそういうことも含めまして、やはり裁判所において適正に判断され、また、起訴におきましても、そうした問題意識でしっかりと取り組んでいるというふうに思います。
 コメントを私からということでございますけれども、今、事実としてデータを示していただきましたし、いろいろなデータがクロスしながら比率について出していらっしゃるということもございまして、そういう意味では、そこから、裁判員裁判においてはこうかというような形で導き出すというところまでは、私としては十分なる判断ができないということでございます。
 いずれにしても、法と証拠に基づいて的確にやっていくということについては、いかなる場におきましてもそうすべきであるというふうに思いますし、運用としてもそういう方向でやっているというふうに思っております。

○重徳委員 これは、先ほど委員長御自身もおっしゃいましたけれども、明らかに検証が足りない部分だと思います。刑事局長も、一概には言えないという御答弁ですし、今大臣も、十分判断できない、そういう御答弁でございました。一体、この五年間、六年間の裁判員裁判をどこまで検証したのか。そして、明らかに著しい変化が出ている数字に対して、十分な検証が行われないままに今回の法改正に至っていると思います。
 今回の法改正の中に、本来は、そのあたりも含めて検証した結果を、その課題に応えた内容として法案に盛り込むべきであると思いますし、今後も、引き続きこの部分については不断の検証が必要であると私は考えます。
 いずれにしても、現時点で、このことについて、起訴率の低下について、検証が全く不十分であるということはお認めいただきたいんですが、大臣、いかがでしょうか。

○上川国務大臣 委員御指摘ございました、起訴率の低下の要因の分析についてということで、検証につきましては不断にしていくべきだという、私も、その問題意識は大変重要であるというふうに考えておりますので、そういう意味で、必要性の有無も含めまして検討してまいりたいというふうに思っております。

○重徳委員 今のは、つまり、この委員会においてもしっかり検証を行っていくという御答弁と理解してよろしいでしょうか。

○奥野委員長 理解していいと思います。
 さっき申し上げたとおりで、データだけ出てきていて、読みがないわけですよ。だから、その読みを、二週間時間がありますから、その間にしっかりやっていただいて、ここで議論していても前へ進まないから、もう少し時間を置いてからやったらいかがですか。ちゃんと仕切りますから。

○重徳委員 ありがとうございます。ぜひとも、法務省、裁判所あわせて、きちっとこの場でも、委員会においても検証してまいりましょう。よろしくお願いいたします。

189-衆-法務委員会-12号 平成27年05月12日

○重徳委員 ありがとうございます。
 もう一点、お三方に質問したいと思います。
 裁判員裁判が導入されてからも、これもまた前田参考人の論文の中にあるんですが、検察官の起訴基準というものは変わっていないんですね。最高検察庁裁判員裁判における検察の基本方針においては、「的確な証拠によって有罪判決が得られる高度な見込みがある場合、すなわち公判廷において合理的な疑いを超える立証をすることができると判断した場合に限り、適正な訴追裁量の上で、公訴を提起することになる。」と。この部分は変わっていないということなんです。まあ、そうむやみに変えるものでもないんでしょうけれども。
 ただ、現実、この委員会でも指摘をさせていただいているんですけれども、有罪率は裁判員制度になってからも九九%を超えているんですが、検察による起訴をする率が、五、六年前までは五〇%以上、六〇%台ぐらいが基本だったんですが、ここのところ、三〇%程度まで下がっているということもありまして、ありていに言えば、有罪率を確保するために起訴率がどうしても下がってきてしまう、厳しい裁判員による事実認定に耐え得るような、そんなようなことがあるかもしれない、そういう可能性も感じているところなんです。
 この起訴率といったもの、それから、有罪率が裁判員制度になっても今までどおり維持されるべきなのかどうか、このあたりについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○前田参考人 なかなか難しい御質問で、起訴率の低下の要因がどこにあるのかというのはちょっと私の立場から何とも申し上げかねますけれども、刑事弁護にかかわる立場から申し上げますと、やはり被疑者国選の拡大がございまして、被疑者段階での弁護活動が活性化した、そのことによって、検察官において起訴猶予等をしてもよいという判断をされた事例が、数としてはどのくらいあるかまで把握はしておりませんけれども、一定程度あるのではないかと。起訴率の低下の一つの要因として被疑者弁護活動があるのではないかというふうに、刑事弁護人の立場としては考えているところでございます。
 ただ、検察の起訴基準をどうするかというのは非常に難しい問題でございますけれども、まさに刑事司法手続の全体を、検察を軸に置いた今までのやり方を変えて裁判所に軸を置く、要するに、裁判所でやるべきことが非常にふえるという構造になるわけで、それが全体としてどうなのかというのは非常に難しい問題でございます。ここで私の方で簡単に答えが出るものではないんですけれども、公判中心ということをうたう以上は、従前の、検察官が裁判官に成りかわって有罪か無罪かの判断をした上で、それを裁判所に公訴提起する、そういう構造を変えるということもあっていいのではないだろうかというのが私の個人的な意見ではあります。
 それがまさに裁判所における公判中心主義につながるのかというふうにも考えますが、なかなか難しいところでございまして、何とも答えとしてはすっきりしないというところもございます。

○大澤参考人 大変難しく、かつ、刑事司法のあり方を変えていく上での本質にかかわる御質問だというふうに受けとめました。
 それで、まず、従前、有罪率が非常に高かったというのは、これは検察官が起訴の段階で緻密に事件を振り分けて、危ない事件については基本的に起訴しないという運用をかなりしていたというところが一つ大きな影響を持っていたのだろうと思います。
 まさに起訴、不起訴の段階で本当に起訴すべき事件を緻密に振り分けようということだとしますと、その前提として、捜査が非常に詳細に行われなければならないということになります。まさに、従来の取り調べを中心とした詳細な捜査というのは、それを支えていたわけです。
 その点で、先ほど引用された平野先生などは、むしろ、捜査をあっさりさせるとともに、起訴もあっさりさせるべきだということを言われておりました。ただ、起訴をあっさりとするためには、起訴された後、公判に行って無罪になってしまう、それがたくさんふえるということが直ちによいことかというのも、これまた難しい問題でございます。
 そうすると、捜査の段階では必ずしも固まっていなかったけれども、公判の段階で新たにプラスアルファとして出てくるようなものというのがあって、それを期待しつつ起訴をするというような仕組みができてくれば、そのような動きというのもあるのかもしれません。そのあたりとの関係で考えなければいけないところかと思います。
 ただ、全体として、取り調べ、供述調書に過度に依存した捜査のあり方ということについて反省の動きが出てきていますので、起訴の基準、有罪の確信を持てるというラインそのものは変わらないかもしれませんけれども、事件の固まり方自体は少し変わってくるというところがあって、それがまた、弁護側から公判でいろいろと防御活動をしていくことで事件の帰趨が変わっていくというようなことにもつながっていくのかなというふうには思っております。

○江川参考人 起訴率が低下しているということについては、その内容はきちっともう少し分析した方がいいと思います。何も、裁判員裁判だから下がっているという問題ではないんじゃないかなと。例えば、殺人で逮捕されたけれども不起訴になった例がふえているかというと、そうでもないんじゃないかなという感じがするんですよね。
 ちょっと思い当たるのは、知的障害者の問題であります。
 刑務所の中にも知的障害者がたくさんいるということで問題になり、そして、取り調べの録音、録画のときに、知的障害のある人たちも対象にしようということを検察が始めた。そういう中で、かつてだったら、刑事司法のライン、捜査、裁判、刑務所、つまり、捜査、司法、矯正のラインをぐるぐる回っていた人が、そうではなくて、むしろ福祉のラインの方に乗せなければいけないんじゃないかというような意識が法務省の方の中にも高まってきて、刑務所の中社会福祉を入れるとか、あるいは捜査段階でそういった専門の方の助言を得るとか、あるいはそういう施設といろいろ相談をするとか、そういう動きが少しずつ始まってきているんですね。
 やはりこういうことがどんどん広がって、とにかく刑事のラインでぐるぐる回っているというのではなくて、もっと福祉との連携というのができるようになり、そして起訴率が下がっていくということであれば、これは結構なことだと思うんですね。
 ですから、先生方も、ここは法務委員会でしょうけれども、厚生労働関係のことをやっている先生方とも連携して、やはり刑事のラインとそれから福祉のラインの連携というのをもっともっと進めていただきたいなというふうに思います。

○重徳委員 ありがとうございました。
 今後もしっかりと審議してまいりたいと思います。ありがとうございました。

189-衆-法務委員会-14号 平成27年05月15日

○重徳委員 ありがとうございます。ぜひ、ともに取り組んでいくことができればと思います。よろしくお願いいたします。
 さて、次に、奥野委員長のリーダーシップによりまして、今回、殺人罪等の起訴率の推移に関する報告というものを法務省の方から提出していただくことができました。
 正直、十分納得できるだけの情報がない中で、裁判員制度と連動しているとは言いがたいという部分を非常に強調しているという感もあるんですが、まず、この資料の内容について、簡単で結構ですので、ポイントを御説明いただけますでしょうか。

○林政府参考人 御指摘をいただきまして、起訴率の低下について一定の分析を試みたところでございますが、一つには、やはり近年の起訴率の低下傾向について裁判員制度の施行の影響を検討したところ、この低下傾向は、殺人罪、強盗致死傷罪のいずれも裁判員制度施行前から低下傾向が始まっておりまして、裁判員制度の施行と連動しているものとは言いがたいものと考えました。
 その他、起訴人員の減少あるいは不起訴人員の増加ということについても裁判員制度の施行前にさかのぼって検討しておりますけれども、特に不起訴人員の増加というところにおきましては、不起訴全体の中で被疑者不詳として処理される事件が非常に大きな割合を占めており、そうして被疑者不詳として処理された事件の増加というものがこういった不起訴人員の増加の一因となっているというふうにうかがわれたと考えております。

○重徳委員 委員の皆様方にもお配りしていただいていますので、皆さん方にもごらんいただきたいんですが、例えば殺人罪の起訴率につきましては、このグラフの赤いラインが示しますように、確かに、見方によっては平成十六年あるいは十八年ごろから低下傾向にある、これはそのとおりだと思うんですが、減少が始まったのが十六年ごろだよという説明をもって裁判員制度と連動しているとは言いがたいという説明なんですが、でも、二十一年以降も低下しているのも事実なんですから、だから、連動しているとは言いがたいとは言えても、連動していないとも言いがたいというのがフェアな言い方じゃないかと私は思います。
 また、被疑者不詳のものが非常に多かったという御説明がありますが、皆さん方のお手元の資料でいうと、一枚めくったところに被疑者不詳を除いたグラフが、殺人罪、その次には強盗致死傷罪について起訴率が載っています。もちろん、三〇ポイント、五〇ポイントという極端な落ち方はしていませんが、基本的には低下傾向にあるということも言えると思います。
 ですから、これ以上要因分析をする材料が現時点ではないんだというのが実情ではございましょうから、私も別に、裁判員制度が始まったから起訴率が下がったことは間違いないとか、絶対そういうふうに結論づけたいというわけでもないし、そういう確証まで私自身も持っているわけではありませんので、これ以上の言い方はできませんけれども。
 いずれにしても、私が今回、この一連の質疑のやりとりの中で指摘をしたいのは、この起訴率低下というのは、裁判員制度が始まる前だろうが後だろうが、起訴率が上がったり下がったりするというのは、これは非常な臆測を呼んでしまうんだと思うんです。まして、この五、六年の間に起訴率が大幅に下がったのを見て、どっちかというと、少なくともぱっと見では、連動しているんじゃないかと思う方が自然だと思うんですよ。
 そうじゃないなら、そうじゃないということもきちんと説明をしなくちゃいけないと私は思います。起訴、不起訴の判断権というのは、誰が判断するかというのは、それはもうひとえに検察が判断するわけですから、最近えらく起訴率が上がっているなとか、下がっているな、激しく上下しているな、これを見たら、やはり皆さん不安を覚えても仕方がないと思うんです。だから、こういういろいろな臆測を呼ぶのは当たり前のことだと思います。
 したがって、きょう私が申し上げたいのは、法務省として、例えば、毎年出している犯罪白書というのがあるんですね。見てみますと、ちゃんと、起訴、不起訴の人員等の推移とか一応の不起訴人員の理由とか、そういうものが、二十六年版でいうと四十九ページに一ページ使ってあるんです。まだ余白もありますから、そういうところにちゃんと、なぜ起訴率が上がったり下がったりしているのか、起訴人員がふえたり減ったりしているのか、不起訴人員がふえたり減ったりしているのか、これを、わからないなりに、今回一応こういう文書で出していただけたわけですから、一概にはわからないけれどもという前置きを置くなりして何か説明を加えていかないと、これは場合によっては余計な臆測を呼ぶこともあると思うんです。
 この点を踏まえまして、大臣、犯罪白書等において、以後、国民にきちんとこの一連の説明を書くべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○上川国務大臣 起訴率のトレンド、そして要因の分析について、さまざまな条件のもとでという中ではありますけれども、今回こうしてお出しすることができたということについては、この委員会での質疑の上でということでございまして、大変大事な御指摘をいただいたというふうに思っているところでございます。
 分析の前提となるデータが、なかなか、過去のトレンドを全て表現するということに足るものではないということを勘案したとしても、これからさらに、そうしたデータ収集も含めまして、分析手法につきましても検討を進めてまいりたいというふうに思っております。白書にどのように表現するかということにつきましても、あわせて検討してまいりたいというふうに思っております。

○重徳委員 ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。期待をしております。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

189-衆-法務委員会-20号 平成27年06月05日
○山尾委員 私たちがこの委員会で言ってきたのは、例えば裁判員裁判のときは、その議論の過程で、裁判員裁判前後から今に至るまで重大事件の起訴率が見過ごせないほど低下をしている理由は何なのかと。それについては、一定の説明はありましたけれども、これ以上はデータがとってないのでわかりません、そういう説明でした。
 そして、今回、新たに司法取引を入れても、もしその取引の内容の供述が虚偽であったら、新設の罪名で五年という重い罰則があるから大丈夫なんだとおっしゃるから、では、今まではそういう仕組みの中でちゃんと起訴されて罰せられた事例があるんですかと聞いても、それがわからないと。私、そんな変な、重箱の隅をつつくようなデータを出せと言っているんじゃないと思いますよ。
 少なくとも、今、この二点はもう一度問題意識を持たせていただきましたので、改めて、きょうからでも、毎日事件は起きていますので、そして毎日事件が処理されていますので、しっかりとそれに対応できるようなデータのとり方をしていただきたいと思います。

○奥野委員長 ちょっと、今の話、私もそれは賛成なんですけれども、具体的にどういう形にするかというのは理事会で少し検討してみましょうよ。それじゃないと進まないと思うからね。