児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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強制sextingを強制わいせつ罪で逮捕した事例(愛媛県警)

 こういうのは強要罪にすることが多いんですよ。
「裸にして撮影するのはわいせつ行為だが、被害者自身に撮影させるのはわいせつ行為にはなりにくい」って金沢支部の検事は答弁してましたけどね。

強制わいせつ容疑で逮捕 新居浜
2016.08.27 愛媛新聞
 ◆強制わいせつ容疑で逮捕 新居浜署は26日、強制わいせつの疑いで広島県福山市の無職A容疑者(20)を逮捕した。
 容疑は、4月16日午前0時10分〜1時5分ごろ、会員制交流サイト(SNS)を利用し、県内の女性(19)を「顔写真や事実でないことを拡散されたくなかったら言うことを聞け」などと脅し、裸の動画や画像を撮影送信させるなどした疑い。署によると、2人は今年初めごろにSNSを通じて知り合った。

答弁書
名古屋高等検察庁金沢支部.
検察官検事 立石英
(3) 判示第 1の 1-2の事実,判示第2の 1の各事実は,告訴なき強制わいせつ罪(同未遂罪)を構成するので,無罪である旨の主張についてデ一般論として, 「実体法のレベル」では,強制わいせつ罪が成立すればその一般法的性格を有する強要罪は法条競合により成立しないことは,弁護人による懇切丁寧なご指摘を待つまでもなく,検察官としても異論を唱えるものではない。具体的な事実関係を離れた,抽象的な法理論としてはそのとおりである。しかし,かかる一般論はさておき,本件における弁護人の前記主張は,以下の点において理由がない。
イ弁護人は,多数の判例を挙げて,本件においても,これらの判例同様に,被告人が被害児童らをして自らの写真撮影行為が強制わいせつ罪における「わいせつ行為」に該当する旨主張する。
しかしながら,弁護人が掲げる判例は,いずれも,被告人自らが「撮影する行為」に関する判断であって,被害者自身に「撮影させる行為」に関するものではないし,他の裁判例の事案においても同様である。
例えば
①東京高判昭 29.5.29(特報 40号 138頁)'"写真師が 15ないし 22歳の女性に対し水着写真を撮ってやるなどと申し向け,着替えるや水着や下着をはぎ取って裸にし,手で陰部を開いて写真を撮った事案につき,強制わいせつ罪の成立を認めた事例
②東京地判昭 62.9.16(判時 1294号 143頁)'"全裸写真を撮影して弱みを握り,自己の店舗で従業員として稼働することを承諾させようとして,女性に暴力を加え負傷させた事案につき,被害者を全裸にして写真を撮影する行為が自らを男性として刺激興奮させる性的意味を有した行為であることを認識しながらあえて敢行した以上,強制わいせつ致傷罪が成立するとした事例
①静岡地浜松支判平 11.12.1(判タ 1041号 293頁)'"幼児性癖(ロリータコンプレックス)を有する被告人が 11歳と 8歳の少女二人を言葉巧みに自己の自動車内に連れ込み,全裸にさせてわいせつ写真を撮影した事案につき,強制わいせつ罪(176条2項)を適用した事例

などについても,撮影に至る経緯や撮影状況については若干の差異はあるものの,いずれも,被告人自らが「撮影する行為」を強制わいせつ罪における「わいせつ行為」として認定したものであって,被害者自身に「撮影させる行為」に関する判断ではない。
被告人自らが撮影する場合と,被害者に撮影させる場合とでは,被害者にとってみれば,他人に自らの恥ずかしい姿態を撮影されることと,自らがそれと知りつつ撮影することの違いが生じているのであって,その性的差恥心の程度には格段の差があり,必然的に強制わいせつ罪の保護法益である「性的自由 」の侵害の程度も両態様を比較すれば大きく異なる。。
かかる差は強制わいせつ罪における「わいせつ行為」か否かの判断においては重要な要素を占めているものと思われるのであり,被害者の恥ずかしい姿態を被告人自ら撮影する行為がわいせつ行為であると認定されたとしても,被害者に恥ずかしい姿態を撮影させる行為をもって,直ちに強制わいせつ行為であると認定するには鴎踏せざるを得ない。弁護人が緩々掲げる判例,裁判例が存在するにもかかわらず,これまで,本件のみならず,暴行脅迫により被害者自らに恥ずかしい姿態を「撮影させた」事案は多数件にわたり発生しているものと恩われるところ,かかる事案を強制わいせつ,罪として積極的に処断した事例はほとんどないものと思われるが,それはかかる理由によるものであろう。
ウこの点,弁護人は, 「被害者を強要して撮影させる行為も間接正犯と構成するまでもなく,性的意図を満たす行為であれば,わいせつ行為である」とのみ記載する。弁護人が「間接正犯と構成するまでもなく」との文言の意味は定かではないが,間接正犯として構成できるかどうかは,実際に撮影した者が被害者自身であっても,行為者自らが「撮影する行為」として認定できるかどうかの分水嶺であるほど重要な争点であって,およそ「間接正犯と構成するまでもなく」の一言で片付けられる事情ではない。また,強制わいせつの間接正犯が成立するような場合は,むしろ準強制わいせつ罪の対象になるものと思われる。しかしながら,本件の事実関係を前提にするならば,およそ準強制わいせつ罪の成否が問題となる事案ではなく,また,間接正犯の成立が考えられる事案でもないことは明らかである。この点につき,弁護人何ら理由が示されていない。加えて, 「性的意図を満たす行為」であればわいせつ行為である旨の論旨はおよそ理由がない。