児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者(当時16歳)にの陰部等が撮影された画像をインターネット等に流出させる旨申し向けて脅迫し、を抗拒不能に陥らせた上、ホテル客室で、強いてわいせつな行為約1ヶ月後、更に脅迫し、強いて姦淫し、さらに、約3週間後、抗拒不能の状態にあることに乗じ脅迫し、ホテル客室で、通学先の学校の体操服を着用させた同人の容姿を撮影し、強いて姦淫した事例(広島地裁H27.12.7)

 メールによる脅迫でも強姦・強制わいせつ罪になってますよね。

強制わいせつ,強姦,不正指令電磁的記録供用,青少年愛護条例(兵庫県)違反,児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
広島地方裁判所
平成27年12月7日刑事第1部判決

       判   決
       理   由

【罪となるべき事実】
第1 被告人は,平成26年5月6日,神戸市a区bc丁目d番e号の当時の「ホテルA」内において,B(当時13歳)が18歳未満であることを知りながら,同人に対し,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,わいせつな行為をした。(平成27年6月29日付け公訴事実第1)
第2 被告人は,前記第1記載の日にち・場所において,Bが18歳未満であることを知りながら,同人の乳房を露出した姿態及び自己の陰茎を触らせる姿態を自己が使用するカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,その画像データを同携帯電話機内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。(平成27年6月29日付け公訴事実第2)
第3 被告人は,C(当時16歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年11月16日午前10時過ぎ頃,広島市f区g町h丁目i番j号Dビル前路上において,同人に対し,同人の陰部等が撮影された画像を示しながら,「これ流したらやばいよね。流したら犯罪だから。」などと言い,被告人の要求に応じなければ前記画像をインターネット等に流出させる旨申し向けて脅迫し,同人を抗拒不能に陥らせた上,同日午前10時23分頃から同日午前11時50分頃までの間,f区g町h丁目k番l号Eホテル客室において,自己の陰茎を口淫させ,同人を全裸にするなどし,もって強いてわいせつな行為をした。(平成27年3月9日付け公訴事実第1)
第4 被告人は,前記第3記載の脅迫等によりCが抗拒不能の状態にあることに乗じて同人を更に脅迫し,強いて姦淫しようと考え,平成26年12月7日午前10時22分頃から同日午後3時10分頃までの間,広島市f区g町m丁目n番o号ホテルFp号室において,同人に対し,「俺が捕まっても遠隔でネットに流すことができる。俺は友達と一緒にやってるから,画像は消せない。」などと言って脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同人を姦淫した。(訴因変更後の平成27年5月29日付け公訴事実)
第5 被告人は,前記第3及び第4記載の脅迫等によりCが抗拒不能の状態にあることに乗じて同人を更に脅迫し,強いて姦淫しようと考え,平成26年12月28日午前10時22分頃から同日午後5時14分頃までの間,前記第4記載のホテルFq号室において,通学先の学校の体操服を着用させた同人の容姿を撮影し,同人に対し,「学校にばれたらまずいよね。」などと言って脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同人を姦淫した。(訴因変更後の平成27年3月9日付け公訴事実第2)
第6 被告人は,正当な理由がないのに,別表(省略)記載のとおり,平成26年12月7日午前11時19分頃から同月28日午後1時49分頃までの間,3回にわたり,前記第4記載のホテルFp号室外1か所において,Cが使用する携帯電話機に,「アンドロイドアナライザー」及び「アンドロイドロスト」と称し,いずれもインターネット回線を通じて携帯電話機の通話履歴及びショートメッセージサービス履歴の取得等の指令を与えるプログラムを,同人にその機能を秘して蔵置した上,そのプログラムが実行可能な設定を行い,もって人が電子計算機を使用するに際してその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録を,人の電子計算機における実行の用に供した。(平成27年3月27日付け公訴事実)
【証拠の標目】
(省略)
【法令の適用】
[罰条]
判示第1の行為 青少年愛護条例(兵庫県)30条1項2号,21条1項
判示第2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項2号,3号(平成26年法律第79号附則2条により同法による改正前のもの)
判示第3の行為 刑法176条前段
判示第4及び5の各行為 それぞれ刑法177条前段
判示第6の各行為 いずれも刑法168条の2第2項,1項1号
[刑種の選択]
判示第1,第2及び第6の各罪 いずれも懲役刑を選択
併合罪] 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
[未決勾留日数の算入] 刑法21条
【量刑の理由】
 まず,Cに対する犯行を見ると,被告人は,Cの承諾を得ることなく撮影していたCの陰部等の画像を利用して脅し判示第3の強制わいせつに及ぶにとどまらず,Cが抗拒不能の状態にあることに乗じて更に判示第4及び第5の各強姦を重ねた。判示第5の犯行では避妊の措置を採らず膣内に射精している。上記一連の犯行の態様は卑劣かつ執ようなものであり,被告人の刑を重くする重要な事情である。上記各犯行によりCが受けた肉体的な苦痛及び精神的な打撃は計り知れず,Cが当時16歳であったことを考えると,生じた結果も被告人の刑を重くする方向の事情として重視すべきである。
 被告人は,恋愛感情からの犯行であったと述べるが,結局はCを性交渉の対象と考えて自身の性欲を満たすためだけに上記各犯行に及んだことを自認している。その自己中心的で身勝手な動機に酌むべき点はなく,Cの私生活をのぞき見して監視するために判示第6の不正指令電磁的記録供用の各犯行に及んだことを考えると,Cに対する性的な執着は尋常ではなく,その非難の程度は高い。 
 さらに,C及びその両親が被告人に対する厳しい処罰感情を有していること,被告人が,当時13歳のBに対しても,その未熟さに付け込み,性欲を満たすために判示第1及び第2の各犯行に及んだことも,量刑上無視することはできない。
 そうすると,被告人が,事実関係を認めた上で各被害者らに謝罪の意思を示すなどして反省の姿勢を示していること,被告人の母親及び知人が被告人の更生に対する援助を誓っていることなどの事情を被告人に有利に考慮しても,被告人の刑事責任は重く,主文の刑を科するのが相当である。
(検察官G,弁護人H〔主任〕,同I各出席)
(求刑 懲役8年)
平成27年12月10日
広島地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 丹羽芳徳 裁判官 三芳純平 裁判官 高橋安紀子