児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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16歳の援助交際で妊娠中絶した事案(訴額600万円)で被害児童の慰謝料として150万円を認容した事例(東京地裁h25.12.19)

主文
 1 被告は,原告に対し,189万1629円及びこれに対する平成25年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
 4 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,600万1599円及びこれに対する平成25年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 本件は,原告が被告との性交渉により妊娠して堕胎し,精神的苦痛等を受けたとして,不法行為責任に基づく損害賠償請求を求める事案である。
 2 前提となる事実(争いがない事実及び証拠により認められる事実)
  (1) 原告X(以下「原告X」という。)は,平成8年○月生まれで,懐胎当時16歳の高校1年生であり,A(以下「父A」という。)は,同女の親権者父である。
 被告は,昭和59年○月生まれで,原告Xの懐胎当時28歳であった。
  (2) 被告は,原告Xと,平成23年10月ころインターネットの交流サイトを通じて知り合い,同女が中学3年生で15歳であることを知っていた。
  (3) 被告は,平成24年11月初めころ,自宅において,また,同年12月中旬ころラブホテルにおいて,原告Xと性交渉をもった。
  (4) 原告Xは,平成25年1月22日,妊娠7週1日(出産予定日同年9月9日)と診断され,同月25日人工妊娠中絶手術を受けたが,子宮外妊娠をしていて,同年2月5日,再手術を受けた。(甲1から3,A)
 3 原告の主張
  (1) 被告は,平成24年11月初めころ,原告XをJR池袋駅東口付近に呼び出し,甘言を弄して被告の自宅に引き入れて性交渉におよび,交通費と称して3000円を交付した。
 また,被告は,同年12月中旬ころ,原告Xを誘い,池袋のラブホテルにおいて性交渉におよび,交通費と称して3000円を交付した。
 被告の上記行為は,児童買春・児童ポルノ禁止法違反に該当する違法行為である。
  (2)ア 被告は,平成23年にも,未成年児童との性交により児童を妊娠させ,東京都条例違反行為で逮捕された。
   イ 被告は,自らの性向を逮捕により知悉しながら,原告Xとの淫行におよび,望まない妊娠に至らしめて2度の人工妊娠中絶手術を受けさせ,傷害を負わせた。
   ウ 原告Xは16歳で,性交渉による結果の招来について判断に乏しく,被告は,このような者と性交渉を繰り返せば懐胎することを予見できた。
  (3) 被告の上記不法行為により,原告X及び父Aは以下の損害を被った。
   ア 治療費 17万2239円
 (内訳)
 共立習志野台病院 8650円
 千葉西総合病院 13万4070円
 医薬品 520円
 入院雑費 2万8999円
   イ 入通院慰謝料 28万円
   ウ 交通費 4万9360円
 (内訳)
 タクシー利用料 2840円
 高速道路代(所沢―京葉原木インター間) 4100円
 ガソリン代7日間分
 (往復120km,1リットル145円) 1万2180円
 祖母の見舞交通費(いわき湯本―薬園台) 3万0240円
   エ 慰謝料
 原告X 300万円
 父A 200万円
   オ 弁護士費用 50万円
  (4) よって,原告は,不法行為に基づく損害賠償金600万1599円及びこれに対する手術を受けた日である平成25年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
 4 被告の認否反論
  (1) 3(1)のうち,被告が原告Xを呼び出し,甘言を弄して部屋に引き入れたことは否認し,その余は認める。
 被告と原告Xとは,1年間程度メール等で交流し,合意の下で関係を持った。原告Xは16歳の高校生で性交渉を経験済みであったから,性交渉による結果を十分認識した上で男女関係を持っており,被告のみが責任を負う理由はない。
  (2)ア 3(2)アのうち,被告の前科は,否認する。
 被告は,未成年者に性的行為を第三者にさせていたことで児童福祉法違反の前科がある。なお,被告は18歳未満の者と性交渉して示談したことはあるが,刑事事件にはなっていない。
   イ 3(2)イウにつき,原告Xの妊娠及び手術は知らない。原告Xの妊娠が被告との性交渉によることを否認する。原告Xは,被告と性交渉を結ぶ前から性交経験があり,被告以外の者との性交渉が原因であると考えられる。
  (3) 損害は否認し争う。
第3 当裁判所の判断
 1 前記前提となる事実のとおり,原告Xと被告が性交渉をもったことは当事者間に争いがなく,その時期からして,原告Xの妊娠は,被告との性交渉による可能性があるところ,被告が主張する他の男性との性交渉については,時期及び相手が特定されていない。
 そして,証拠(甲10,A)によれば,原告Xは,父Aに生理がこないことを相談したものの,相手が誰かを語らず,父Aが原告Xを離婚した妻の元へ連れて行き,元妻が原告Xから事情を聞いて被告が特定された経緯が認められ,これを踏まえると,原告Xにおいて,妊娠の心当たりがある相手は被告であったと認められる。
 よって,原告Xの妊娠は,被告との性交渉によるものと推認する。
 2 次に,原告Xの堕胎についての被告の責任を検討するに,原告Xが16歳の未成年女子であること,原告Xと被告が知り合った経緯や互いの関係等を考慮すれば,原告Xが妊娠した場合に,出産して養育することができないことは被告も承知していたもので,性交による懐胎を回避する責任は,成人男性である被告にあったというべきであり,被告が原告Xと性交して懐胎させて堕胎に至らしめ,原告Xに肉体的精神的苦痛を与えた行為は,不法行為にあたるとするのが相当である。
 3 証拠(甲4から6(枝番号含む。),A)及び弁論の全趣旨によれば,原告Xの妊娠堕胎に伴う治療費及び交通費として,父Aは,第2の3(3)ア及びウの費用,合計22万1629円を負担したことが認められる。
 そして,証拠(甲10,A)によれば,原告Xは,手術の翌日に退院したものの,子宮外妊娠であったことから2回目の手術をしており,また,手術や体調不良による欠席にて進級できずに転校に至っていること,父Aは父子で生活していたこと等が認められ,これら事情を考慮し,慰謝料(イ及びエ)は,原告Xの慰謝料として150万円を認めるのが相当である。
 そして,弁護士費用は,上記22万1629円及び150万円の合計172万1629円の1割に相当する17万円をもって相当とする。
 すると,被告が負担すべき損害賠償の合計額は189万1629円となり,これに原告Xが手術を受けた日である平成25年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で原告の請求には理由がある。
 3 以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があるので,主文のとおり判決する。
 (裁判官 今井和桂子)