児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

師弟関係の性的行為について、青少年条例違反のみを検討する弁護士〜少女漫画や学園ドラマの定番設定!教師と生徒の恋愛、OK・NGのボーダーラインは?

 警察のファーストチョイスは児童淫行罪です。
 真剣交際の抗弁が認められた例はありません。
 師弟関係の児童淫行罪は7〜8割が実刑になりますので、これを知らないで対応していると、対応が不足して、児童淫行罪で実刑判決を受けることになります。

児童福祉法
第34条〔禁止行為〕
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為
第60条
1第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 児童淫行罪の要件である影響関係とか性交・性交類似行為が立証できないに出てくるのが青少年条例違反で、これは罰金ないし執行猶予付きの懲役刑になります。
 判例がいう真剣交際の抗弁が認められたのは名古屋簡裁の1件だけです。
 暴行脅迫は普通考えられないので、強姦・強制わいせつ罪は検討しなくていいでしょう。

http://getnews.jp/archives/1490490
少女漫画や学園ドラマの定番設定!教師と生徒の恋愛、OK・NGのボーダーラインは?
教師と生徒の恋愛・・・。昔から少女漫画における“定番の設定”と言えるでしょう。実際に、学校の先生に憧れていた女性(男性)も意外と多いのではないでしょうか?このありがちな設定、少女漫画だけでなく、ドラマなどでも良くみかけます。代表的なところで言えば、真田広之桜井幸子(世代が別れるところですが)による「高校教師」など、まさに教師と生徒の恋愛を描いた名作と言えるでしょう。

一方で、実際に学校でこのような関係が露呈されれば、瞬く間にショッキングなニュースとして報道番組で取り上げられ、世間からは大きなバッシングを受ける事でしょう。教師と生徒の甘酸っぱい恋愛・・・。年齢や立場の壁を越えて結ばれる2人・・・。そんな結末を幸せと感じられるのは、やはり漫画やドラマの中だけの話なのでしょうか?

という事で今回は、教師と生徒の恋愛について、弁護士の視点から「何がダメ」で「何が許されるのか」法律的な見解について聞いてみました。教えて下さるのは、アディーレ法律事務所の篠田恵里香先生です。

–記者
まず、教師と生徒の恋愛についてですが、一体どの部分が法に触れるのでしょうか?

–篠田先生
教師と生徒の恋愛について、「犯罪となる」ケースや「違法行為となる」ケースが考えられます。

まず、犯罪となるケースとしては、「青少年保護育成条例違反」となる可能性があります。各地域の青少年保護育成条例では、「青少年(18歳未満)に対する淫行を禁止」しています。東京都の条例では「みだらな性交または性交類似行為を禁止」といった表現となっています。ただ、この「みだらな性交等」や「淫行」というのは、最高裁判例によれば、「青少年を誘惑したり、威迫・欺罔したりして性交や性交類似行為を行うこと」のように考えられているので、真摯な恋愛に基づく性交渉まで禁止されるわけではありません。

ただ、未成年者の未熟さを考慮すれば、特に年齢が若ければ若いほど「真摯な恋愛」という主張が通らない可能性もありますので注意は必要です。教師は生徒にとって、やはり「逆らい難い」立場の人間であることを十分に意識する必要があるでしょう。それでもなお、お互いの自由な意思により恋愛関係に至ったということであれば犯罪にはならないといえそうです。なお、13歳未満の未成年に対しては、相手の真摯な同意があったとしても強姦罪や強制わいせつ罪が成立します。あまり想定しがたいですが注意してください。

また、「教師と生徒の恋愛」は、学校の規則で禁止されていることも多く、公立の学校であれば、地方公務員法33条の信用失墜行為に当たる可能性があります。私立の学校であっても、学校に対する労働契約違反となる可能性があります。生徒との恋愛が「学校の教育上好ましくない。信用を害する。」と判断されれば、場合によっては違法行為として「休職・解雇」等の懲戒処分が下される可能性もあります。

–記者
一言で“恋愛”と言っても、片思い、告白、付き合う、肉体関係を持つ、場合によっては婚姻関係を持つなど、様々なケースが考えられると思いますが、やはり関係性や状況によっても、判断は変わってくるものでしょうか?

–篠田先生
そうですね。ひとことで、「教師と生徒の恋愛」といっても、その関係性や恋愛に陥る経緯によって様々な評価が考えられます。

まず、片思いであったり、単純に告白してフラれただけであれば、犯罪に該当するとはいえません。ただ、教師側からの行動が生徒に不快を与えるようであれば、セクハラやパワハラに該当する可能性が出てきます。恋愛感情がエスカレートして、つきまとったり執拗に手紙を送って交際を要求する等の行為に至った場合は、教師側も生徒側もストーカー規制法違反となる可能性が出てきます。

付き合う、肉体関係を持つ、といったレベルに至ると、先ほどの青少年保護育成条例違反や強姦罪・強制わいせつ罪の問題が出てきます。「お互いが自然に恋愛感情を有するに至り、真摯な恋愛関係に至った」ケースであれば問題ありませんが、「教師側から積極的に生徒を誘惑し、生徒が正常な判断能力を欠くに至りそのような状況で関係に至った」ということであれば、これらの犯罪が成立する可能性も出てくるでしょう。この場合は、年齢や教師の働きかけの程度などが判断要素となってきます。

実際に婚姻関係に至った場合は、さすがに「生涯を共に生きよう」とお互いに合意しているわけですから、通常は「真摯な恋愛関係」と評価されます。逆に、このような真摯な恋愛関係まで法的制裁を受けるいわれはないといえるでしょう。

学校との関係については、ボーダーラインは難しいところですが、周囲から嫌悪感を抱かれるような行動は控えた方が無難といえるでしょう。

–記者
改めて、教師と生徒の恋愛における“注意点”を教えて頂けますでしょうか?

–篠田先生
教師との恋愛に憧れる生徒も多いようで、実際に「お互いが恋愛感情を持つに至る」というケースも少なくないと思われます。しかし、生徒との恋愛については様々な法規制もありますので、その法規制の趣旨をしっかり把握しておくことが大事です。あくまで生徒は未成年であり、その未熟さゆえに特別な法的保護が与えられているわけなので、そのような未熟さに配慮し、生徒の意思を尊重して恋愛関係を持つことが大事です。教師側からしつこく勧誘する行為はもちろん、教師としての優越的地位をちらつかせるなどの行為もNGです。あくまで「自由な意思で真摯な恋愛をしている」と誰から見ても判断できるよう、誠実な恋愛を心掛けてください。

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という事で、今回はドラマや漫画で良くある“教師と生徒の恋愛”について、弁護士の視点から法的な見解を解説して頂きました。ただ単に「未成年と恋愛すると法律に触れる」という単純なものではなく、あくまで互いに想い合う“真摯な恋愛”である事が重要との事。非常に勉強になります。

もちろん学校という場所に限定してしまえば、校則や教師側の規則などもあるでしょうから、「法律に触れなければOK」というわけにはいかないのでしょうが、一般的な社会においても、「未成年との恋愛」というだけで不安に思う方も多いような気がします。そんな方は是非、「互いに想い合い、真摯な恋愛と言えるかどうか」を振り返ってみるのが良さそうです。

・取材協力
篠田恵里香(しのだえりか)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所