児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪の保護法益を個人の性的自由と解した場合の「わいせつ行為」の定義

  性的自己決定権を害する行為
  性的自由を害する行為
ということでしょうか。
 一般人基準は外れますので、○○されると著しく性的興奮する人がいて、○○されない性的自由もあるわけで、そういう性的自由を侵害するために暴行・脅迫した上で○○する行為も強制わいせつ罪になります。足を踏まれると興奮する人とか、首締められると興奮する人とか、鞭打たれると興奮する人、同性に触られないと興奮しない人なんかがいるとすると、それぞれそういう性的自由が観念できますね。

中森各論P64
本罪が個人の性的自由に対する罪であるとすれば、端的に、人の性的自己決定を害する行為をいうとすれば足りる(内田一五八頁、曽根六五頁)。 中森各論P64

内田各論P158
 「猥褻」の行為とは、被害者の「性的自由」を侵害するにたりる行為としてとらえられなければならない。一般的にいえば、被害者の承諾なしに性器・性感帯に接触し、あるいは着衣をはぎとって性器を露出させるなどの「性的行為」を指称することになろう

曽根各論p65
(2) 行為
姦淫以外のわいせつ行為を強制することである。ただし、13歳未満の者に対する関係では、強制の要素が擬制されている。わいせつは、一般に「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を筈し、善良な性的道義観念に反すること」と定義されているが、強制わいせつ罪の「わいせつ」概念の定義としては、被害者の観点が欠落しており適当でない(内田158頁)。上の定義は、特定の被害者の性的自由を害するおそれのない行為をもわいせつと評価しうる点で広すぎるし、反面、現に被害者の性的自由を侵害していながら、この定義に抵触しないかぎりわいせつでない、とする余地を残している点で狭すぎる。例えば、接吻は合意のもとになされるかぎりわいせつ行為でないが、相手の意思に反して強制的に行えば本罪を構成するのである。
※ 主観的違法要素
最判昭45・1・29(刑集24-1-1)は、報復しまたは侮辱・虐待する目的で女子を脅迫し裸にして、その立っているところを縄影したという事業につき、その行為が犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行われたものではない、として本罪の成立を否定した。しかし、強制わいせつ罪は、行為者の性欲抑制義務違反を処罰するものではないから(内田160頁)、本罪が成立するためには、客観的に被害者の性的自由を侵害する行為があり、かつ、主観的に行為者がそのことを認識して行為すれば足りるのであって、故意のほかにわいせつ的意図ないし内心の傾向といった特殊な主観的要素は必要でないと解すべきである(総論67頁参照)。